男はつらいよ
テンプレート:告知 テンプレート:Otheruseslist
『男はつらいよ』(おとこはつらいよ)は、渥美清主演、山田洋次原作・監督(一部作品除く)のテレビドラマおよび映画である。テキ屋稼業を生業とする「フーテンの寅」こと車寅次郎が、何かの拍子に故郷の葛飾柴又に戻ってきては何かと大騒動を起こす人情喜劇シリーズ。毎回旅先で出会った「マドンナ」に惚れつつも、失恋するか身を引くかして成就しない寅次郎の恋愛模様を、日本各地の美しい風景を背景に描く。主人公の名前から、作品自体も「寅さん」と呼ばれることが多い。
目次
概要
1968年(昭和43年) - 1969年(昭和44年)に、フジテレビが制作・放送したテレビドラマが最初である。このテレビ版はヒットしたが、最終回で寅次郎がハブを取りに行こうとして、逆にハブに噛まれ、毒が回り死んだという結末に視聴者から多数の抗議が殺到して、映画化につながった。
映画シリーズは、松竹によって1969年(昭和44年)から1995年(平成7年)までに全48作が、1997年(平成9年)に特別編1本が製作された。なお、第1作は1969年8月に上映された。
山田洋次が全48作の原作・脚本を担当。第3作、第4作を除く46作を自ら監督した。第3作の監督は森崎東、第4作は小林俊一である。第5作を山田が再び監督し、シリーズを完結させる予定であったが、あまりのヒットに続編の製作が決定した。
以降、全作品がヒットして松竹のドル箱シリーズとなり、30作を超えた時点で世界最長の映画シリーズとしてギネスブック国際版にも認定された。ただしこれは作品数においてであり、年数では『007』シリーズの方が長い。渥美の死去により、1995年(平成7年)に公開された第48作『寅次郎紅の花』をもって幕を閉じた。その後、ファンからのラブコールが多かったとのことで、『寅次郎ハイビスカスの花』を再編集し、新撮影分を加えた『寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』が1997年(平成9年)- 1998年(平成10年)に公開された。また渥美の死により、第49作および本来の最終作となるはずだった第50作が未撮影になった。
作品内容
テンプレート:Infobox Film 主人公、「フーテンの寅」こと車寅次郎は、父親、車平造が芸者、菊との間に作った子供。実母の出奔後父親のもとに引き取られたが、16歳の時に父親と大ゲンカをして家を飛び出したという設定。第1作は、テキ屋稼業で日本全国を渡り歩く渡世人となった寅次郎が家出から20年後突然、倍賞千恵子演じる異母妹さくらと叔父夫婦が住む、生まれ故郷の東京都葛飾区柴又・柴又帝釈天の門前にある草団子屋に戻ってくるところから始まる。
物語は、寅次郎が旅先や柴又で出会うマドンナに惚れてしまい、マドンナも寅次郎に対して好意を抱くが、それは多くの場合恋愛感情ではなく、最後にはマドンナの恋人が現れて寅次郎は振られてしまう。そして落ち込んだ寅次郎が書き入れ時である正月前、もしくは盆前に再びテキ屋稼業の旅に出て行くという結末で終わるパターンが多い[1]。
マドンナが寅次郎に恋愛感情を持っていることが示唆されたり、ある種の愛の告白をするケースも少なくないが[2]、この場合は、寅次郎の方が逃げ腰になり、自ら身を引く形となっている。こんな寅次郎について甥の満男は、「手の届かない美しい人には夢中になるけれど、その人が伯父さんに好意を持つと逃げ出してしまう」と端的に語っている[3]。
また、マドンナと「うまくいっている」と誤解している時点で、寅次郎が柴又に帰り、さくら達にマドンナとの楽しい体験を話す場面は、渥美清の語りは落語家のような名調子で、スタッフやキャスト達は「寅のアリア」と呼んでいた。
第42作以降の4作品は、寅次郎の相手となる通常のマドンナに加え、さくらの息子満男(吉岡秀隆)が思いを寄せる泉(後藤久美子)がマドンナとして登場するようになり、寅次郎が満男のコーチ役にまわる場面が多くなっている。渥美が病気になり快活な演技ができなくなったため、満男を主役にしたサブストーリーを作成、満男の恋の相手が必要になったため、当初は予定されていなかった泉が登場することとなる。山田監督の話によれば第49作で泉と満男を結婚させようと考えていたらしいが、渥美の死去により幻になった(『紅の花』で泉の結婚式を妨害し、結婚式を中断させたのは結婚への伏線であったとも考えられる)。
レギュラーとして登場する人物は、寅次郎、さくらのほか、さくらの夫・諏訪博、草団子店を経営する叔父・竜造と叔母・つね、博が勤務する印刷会社「朝日印刷所[4]」の社長で寅次郎の幼馴染・タコ社長こと桂梅太郎[5]、帝釈天の御前さま、寺男で寅次郎の舎弟・源公などがいた。マドンナとして複数回登場した女優もいるが、リリー、泉、歌子(吉永小百合)以外は、別人の役で出演している。おいちゃんこと叔父・竜造役は初代が森川信、2代目は松村達雄、3代目は下條正巳が演じた。その他、毎回役柄は違うものの、サブキャラクターとしてレギュラー出演する俳優も多く存在した。
青年時代に、実際にテキ屋体験がある渥美ならではの見事な口上も、ファンの楽しみであった。また、このシリーズは原則としてお盆と正月の年二回公開されたが、お盆公開の映画の春から夏への旅は、南から北へ、正月公開の秋から冬への旅は、北から南へ旅することが多かった。画面に映し出される日本各地の懐かしい風景が、シリーズの魅力の一つでもある。
なお、第48作まで一貫してエンドロール表示は設定されず、出演キャストや製作スタッフ等の字幕表示はオープニングでされた。
2001年 - 2003年に、TXNで全シリーズが放送、2005年 - 2007年に、BS2で全シリーズが放送された。2011年 - 2012年には、WOWOWにてシリーズ全作品が初めてハイビジョン画質で放送された。現在は、BSジャパンにて全作品の放送が行われている(2013年10月~)他、衛星劇場の「松竹チャンネル」内でも放送されている。
エピソード
- 第1作の観客動員数は54万3000人だったが、徐々に動員数を伸ばし人気シリーズとなった。全48作で延べ7957万3000人の観客を動員している。
- 御前様役を演じていた笠智衆は、第45作(1992年)終了直後に亡くなっている。しかし第46作で、御前様の娘・冬子役の光本幸子が久々に出演、さくらと冬子が御前様の近況の会話をする描写があるほか、さくらが源公に「御前様お元気?」と聞くシーンもあり、御前様は健在であるという設定になっている。
- オープニングテーマの前に始まる、寅次郎が旅先で見る様々な夢は、全撮影の最後に撮影されている。夢のシーンは『科学者の寅次郎が怪獣を倒す』等の、本編とは全く関係のない話が多い。なお、出演者には直前まで内容は秘密にされていたという。
- 山田洋次が柴又を知ったのは、『下町の太陽』を監督する際、作家の早乙女勝元に教授してもらうために早乙女宅を訪問した際、すぐそばにあった帝釈天を案内されたのがきっかけである。それまで舞台をどこにするか決めるために様々な所を歩き回り、一時は舞台が浦安に決まりかけていたと言うが、柴又に来た時に「渥美ちゃんがふらっと出て来そうだね」と盛り上がって、舞台が柴又に決まったと言う[6]。
- フジテレビで、登場人物を動物に置き換えたテレビアニメ版『フーセンのドラ太郎』が放送された。また、TBSでもテレビアニメ版が放送され、映画シリーズ9作品に出演した岡本茉利がさくらの声を演じている。これらのアニメ版はそれぞれ制作会社も制作時期も異なり、関連性はない。
- 源公役の佐藤蛾次郎は、第8作だけはポスターに名を連ねたものの、撮影直前に交通事故にあい緊急入院したため出演していない。
- 寅次郎の名は、映画監督の斎藤寅次郎にちなむ。
- 映画の舞台に使用した柴又の団子屋が、実際に「とらや」に屋号を変更したため、作中の「とらや」の屋号は、第40作から「くるまや」に変わる。
- 柴又の店舗で撮影されていたのは第4作までで、それ以降は松竹大船撮影所のセットである。
- 出川哲朗は若手時代に、第37作から第41作の5作品に端役で出演し、全ての出演シーンでなぜかはちまきをしている。第37作・第39作ではセリフもある。本人のコメントによると、撮影現場で渥美清に「君は普段何をしてるのかね?」と尋ねられたという。また、第37作ではエドはるみも端役で出演している。
- 第46作には、本作と同時上映として製作されていた『釣りバカ日誌』の主人公である、西田敏行演じるハマちゃんがカメオ出演している。釣具を背負ったハマちゃんが釣りに向かう途中、くるまやの前を通って、おばちゃんと会話を交わすというもので、松竹の二大シリーズ間でクロスオーバーが行われた。
- 2001年(平成13年)8月4日、奇しくも渥美清の5回目の命日に、柴又八幡神社古墳において帽子や顔の輪郭などが「寅さん」にそっくりな埴輪が出土した。現在は複製が寅さん記念館に展示してある。このことは、フジテレビのバラエティ番組『トリビアの泉』でも紹介された。考古学者によると、この埴輪は6世紀のものであるといい、この埴輪を見た山田監督は驚いたという。新聞で紹介されたときは「君は寅さんのご先祖様かい?」という見出しがついた。
- さくらと博が住む川沿いの家は、毎回同じではなく変わっている。
- 1986年8月は、山田洋次監督の『キネマの天地』が公開されたため、『男はつらいよ』シリーズは制作されていないが、寅さんファミリー総出演である。主人公、小春(演:有森也実)の父親である喜八を渥美清が演じ、親子役で倍賞千恵子が、ゆき(弘吉の妻)、前田吟が弘吉(ゆきの夫、都電の運転手)、吉岡秀隆が満男(息子)。その他でも健二郎(演:中井貴一)の下宿のおかみ、貞子を三崎千恵子、健二郎の父親、島田庄吉を下條正巳、留置場の男、留吉を佐藤蛾次郎が演じている。
- 正月映画としての公開が毎年の恒例だったことから、「寅さん」は冬の季語にもなっている[7]。
- 長野県小諸市には、渥美清こもろ寅さん会館という記念館があったが入館者の減少と渥美と親交のあった館長の死去により2012年冬より休館となっている[8]。
- 京成電鉄は初回より撮影に協力。日本の鉄道事業者で初めて鉄道施設内での撮影を可能とした(当時は日本国有鉄道でも鉄道施設内の撮影は例外を除き認められていない)。
- 渥美の死去により、2代目寅さんの誕生が噂され、片岡鶴太郎や西田敏行らが候補とされた。実際に報道もされたが、「寅さん=渥美清」という山田監督の意向もあってお蔵入りとなっている。1996年・1997年には、本シリーズに代わる新たな松竹正月映画として、西田主演、山田監督、寅さんファミリーと呼ばれる常連出演者勢ぞろい、男はつらいよとほぼ同じスタッフが参加した『虹をつかむ男』が公開された。その後の松竹の看板正月映画は、1988年から2009年まで続いた、西田主演で山田洋次が脚本家としても携わる『釣りバカ日誌』シリーズに受け継がれることとなる。
- 全48作中9作がキネマ旬報・ベストテンに入選している。同ベストテンでは、プログラムピクチャーシリーズ(『駅前』『社長』『若大将』など)やその他時代劇も含め、シリーズ物の映画はほとんど無視される傾向がある。同様に高く評価された『仁義なき戦い』は、ストーリーが進行・完結していくタイプの五部作であり、永劫回帰型のシリーズとして何度もランクインしたのは本シリーズのみといって良い。
- 特に、ブラジルのサンパウロにある日本人街「リベルダージ」の映画館では、1990年代に至るまで最新作が毎作上映されていた。なお、ブラジルの法律で「8歳以上指定作品」となっていた。
- また、同じく1990年代までは、日本航空の機内で最新作が上映されていた。また日本航空は海外ロケの製作協力もしていた。
- 721年(養老5年)に作成された「正倉院古文書正集(しょうそういんこもんじょせいしゅう) 第二十一巻」に収録された下総国葛飾郡大嶋郷戸籍 (しもうさのくにかつしかぐんおおしまごうこせき)の中に、姓は「孔王部(あなほべ)」、名は「刀良(とら)」という33歳の男性と、別の世帯に同姓の「佐久良賣(さくらめ)」という34歳の女性の名があり、話題となったことがあった。
- 元内閣総理大臣の小渕恵三は寅さんファンクラブ会員No.1。昭和天皇もファンで、ビデオを全巻持っていた。
- 北朝鮮の金日成や金正日も寅さんファンである。金日成は日本からの議員訪朝団との懇親会の席などで、寅さんのテキ屋叩き売りを物まねで演じて場を笑わせた。また、「日本を訪問することがあったら必ず柴又にいく」と周囲に話していた(金日成も金正日も生涯、訪日することはなかった)。金正日は日本映画好きなことから1985年には東宝の特撮スタッフを招いて『プルガサリ』という怪獣映画をプロデュースしたこともある。
登場人物
レギュラー
- 車寅次郎
- 渥美清
- 主人公。昭和15年11月29日、葛飾柴又の帝釈天にある老舗の団子屋「とらや」(40作以降は「くるまや」)の5代目主人、車平造と、芸者の菊との間に生まれる。生後まもなく平造とさくらの実母に育てられるが、不良で16歳の時に葛飾商業高校を中退[9]。父とケンカをして家を飛び出し、放浪の果てにテキヤとなる。それから約20年後、帝釈祭りの日に柴又に帰省して父の団子屋に戻って来て以来、年に数回とらやにふらりと帰って来ては家出を繰り返している。家を飛び出してから全国各地を回って祭りなどで物を売りさばくのが日課。商売柄、口が非常に達者で、思いつきやデタラメに作り上げた会話で人を笑わせる、快活で拍子抜けに明るく、明朗な性格である一方、中身は子供のままで、感情が顔に出やすく、ちょっとしたことで血の気が多くなりケンカざたになる。また、美女を目にした途端にのぼせ上がり、それが毎度色恋沙汰を引き起こす。人情に厚く、義理堅い面もあり、家族のことも大切に思っているが、真面目に孝行しようと必死になるたびに、気持ちのすれ違いから空回りしてケンカが起きることもしばしば。小学校までしかまともに教育を受けておらず、字をまともに書くことができない。喫茶店も「きっちゃてん」と呼ぶ。和食党で好物は芋の煮っころがしやがんもどき。歌はうまく、旅先で鼻歌、替え歌を口ずさむことを好む。腹違いの妹・さくらのことを常に気にかけている。
- 諏訪さくら
- 長山藍子(ドラマ版)→倍賞千恵子
- とらやの先代の主人、平造の長女で、寅次郎の腹違いの妹。本名は櫻。性格と容姿は寅次郎とは似ても似つかない。幼い頃、寅次郎が家出をしたときに最後の最後まで引き止めようとし、寅次郎が家出をして間もなく両親と残された秀才の兄を亡くし、叔父の竜造夫婦に育てられる。その後、たったひとりの異母兄の寅次郎と20年後に再会する。寅次郎の一番の理解者でありながら、毎度ドタバタを起こすことに冷や汗をかく。いつか寅次郎がかたぎの生活に戻ってくれることを祈っている。幼い頃は松竹歌劇団に入ることを夢見ていた。第一作では高校卒業後、一流企業の丸の内オリエンタル電機のOLとして勤務し、上流階級の御曹司とお見合いをしたが、同席した寅次郎の職業と下品なおしゃべりが原因で破談となる。その後、家の裏手の印刷工場で働いている職工の諏訪博と結婚して満男を産む。とらやが「くるまや」に変わってからは店を切り盛りするようになる。
- 諏訪博(博士)
- 井川比佐志(ドラマ版)→前田吟
- さくらの夫。満男の父。岡山県高梁市生まれ。父親は大学教授で、博自身は家庭環境としては高等教育を受けられる立場にあったが、父親と対立し高校を中退して家出したことで機会を逸し、新宿でくすぶっていたときにタコ社長と出会い、印刷工場の職工として生計を立てる。主任技師の立場にあり、独立を考えて退職しようとしたことがある。妻のさくらとは恋愛結婚。会社の寮からさくらの部屋が丸見えで、さくらに思いを馳せていた[10]。当初寅次郎には「大学を出ていない」という理由でさくらとの結婚を反対されていた。結婚後は寅次郎を「兄さん」と呼び唯一謙虚で常に謙っているが、寅次郎が茶の間で暴れたときには柔道の技で押さえ込むことができる唯一の人物。博識で、寅次郎に時折知的な助言をする。岩波書店の『世界』や労働問題の雑誌を抱えていることが多い。息子の満男には必要以上の期待をかけている。焼きなすが好物。喫煙者。なお井川比佐志が演じたドラマ版では父親と同じ大学教授であり、メガネにスーツ姿と映画版とは対照的な風貌であった。
- 車竜造(おいちゃん)
- 森川信(ドラマ版、第1作 - 第8作)→松村達雄(第9作 - 第13作)→下條正巳(第14作 - 第48作)
- 寅次郎の叔父。葛飾柴又の帝釈天にある老舗の団子屋「とらや」の6代目主人。兄の平造の死後、団子屋を引き継いだ。平造が夢の中で枕元に立ち、「寅次郎とさくらのことを頼む」と言い残してから、責任を持って二人の親代わりをしている。若い頃は満洲に行って馬賊になることを夢見ていた。基本的な設定は同じものの演じる俳優によって性格がやや異なり、森川信が演じた当初は喜劇的なキャラクターで、毎度と色恋沙汰でドタバタを起こす寅次郎に冷や汗をかきつつ、また「バカだねえ…寅は」と口癖にしながら心配しつつも、寅次郎同様に頭に血がのぼってケンカになってしまうこともしばしばであった。松村達雄になってからは、やや大人しくなる。下條正巳になると当初のコミカルな味はかなり抑えられており、妻のつねが母親のように寅次郎に愛情を注ぐのに対し、寅次郎に対し時にはクールな所がある。
- 車つね(おばちゃん)
- 杉山とく子(ドラマ版)→三崎千恵子
- 寅次郎の叔母。昔ながらの元気なおばちゃん。寅次郎の夢の中や、旅行に行くとき以外は着物姿である。昔は日本橋の呉服屋の女房になることを夢に見ていた。夫の竜造とは恋愛結婚[11]。子どもがないこともあってか、実の母親のように寅次郎に愛情を注ぐ。さくらとともに寅次郎の理解者。泣きやすいところがある。
- 諏訪満男
- 中村はやと(第1作 - 第8作、第10作 - 第26作)沖田康浩(第9作のみ)→吉岡秀隆(第27作 - 第48作)
- 昭和44年生まれ。第1作の終盤に誕生。さくらと博の長男で一人っ子。寅次郎からは甥にあたる。両親の期待を一身に受けて育つが、1年間の浪人生活を経て、城東大学経済学部経済学科に入学、卒業し中小企業の靴メーカーの営業職に就職(47作)する。浪人中に、後藤久美子演じる及川泉に恋をする。晩年のシリーズでは寅次郎より満男と泉の関係にスポットを当てた作品も見られた。吉岡秀隆に代わった第27作より、寅次郎との絡みのシーンが増えている。第16作(1976年)で小学校入学で第34作(1984年)で中学校に入学という矛盾が見られる。
- 桂梅太郎[5](社長・タコ社長)
- 太宰久雄
- とらやの裏に構える印刷工場「朝日印刷」の社長。とらやの人々とは家族ぐるみの付き合い。印刷工からたたき上げで経営者にまで上り詰めたものの、常に金策に追われ、経営難をとらやの面々に愚痴っている。しかし貧困ということではなく、キャバレーで遊んだり、ゴルフを嗜んだり、電車内で駅弁代を払えなかった寅さんの分の代金を黙って出してあげたりもする。お人好しな性格でおしゃべりだが、何かとタイミングが悪く、そのことで毎度寅次郎の怒りを買い、時々とらやの庭で二人で乱闘を演じることもあるが、根っこのところでは寅さんと相性は悪くない。さくらと博の結婚式では仲人をつとめたが、手形の支払いのためにあやうく挙式に遅れそうになって寅さんに叱られた。毎度トラブルに見舞われた際に「コロっと忘れてた」「オラ知らねぇよ」と、その場から逃げることが多い。妻とは見合い結婚だが、見合いをしたのは別人で妻の妹だった。仲人を問いつめるが仲人に借金をしており言うことを聞かざるをえず、姉の方と結婚する。妻との間に4人の子供がいるが、長女のあけみが年頃になってトラブルメーカーとなったことがより悩みを増やしている。シリーズ全般におけるコミックリリーフ的キャラクター。
- 御前様
- 笠智衆(第1作 - 第45作)
- 柴又題経寺[12]の住職。姓は坪内。正式には日奏上人だが、とらやをはじめ近所の人々からは親しみを込めて御前様と呼ばれている。人格者であり、幼いころからの寅さんの理解者であるが、世間知らずでとぼけたところもある。とらやの面々は寅さんのことでトラブルがあると御前様のところに相談や愚痴を言いにいき、御前様はそれを受けて時として寅さんを叱りつけることもある。寅さんはまったく頭が上がらない。「困ったぁ」が口癖。ルンビニー幼稚園[13]の園長でもある。
- 源公(源吉[14])
- 佐藤蛾次郎(第8作を除く)
- 題経寺の寺男。寅次郎の幼友達で孤児。大阪出身で関西弁を話す。母親は彼を生んですぐに消えてしまった[15]。寅次郎を「兄貴」と呼び、成人後も寅次郎にあごで使われる関係だが、時に「逆襲」することがある。シリーズ初期ではとらやの従業員や寅の舎弟だったこともある。また当初は良識人であったが、シリーズが進むにつれて、コミカルなキャラクターへと変更されていった。台詞もほとんど喋らないが、独特の風貌と所作で、可笑しみを与えている。ドラマ版では寅次郎と同じくテキヤであり、気が弱い性格であった。
準レギュラー
- 川又登
- 津坂匡章(現・秋野太作)(ドラマ版、第1作、第2作、第4作、第5作、第9作、第10作、第33作)
- 寅次郎の舎弟。
- 寅次郎を「兄貴」として慕う。八戸出身。しかし、後にテキ屋稼業から足を洗い結婚して所帯を持ち、堅気となって盛岡で食堂(今川焼もやっている)を営むようになる。
- 坪内冬子(御前様の娘/第1作のマドンナ)
- 光本幸子(第1作、第7作、第46作)
- 寅次郎の幼なじみ。幼い頃に寅次郎にデメキンとあだ名付けられイジめられた過去があるが、見違えるほど美しく成長した冬子を前に、寅次郎は恋心を抱くが、大学の先生と結婚する。以後も度たび画面に登場する。
- 諏訪飈一郎(ヒョウイチロウ)
- 志村喬(第1作、第8作、第22作)
- 博の父で元北海道大学名誉教授。大学ではインド古代哲学の教鞭を執っていた。物静であるが、博の人生選択に強く対立し反発を受け、博の家出を招く。博とさくらの結婚式で久しぶりに親子対面し、和解を果たす。この博の結婚式で父としての不明を詫びる感動的なスピーチをし、感極まった寅次郎やとらやの面々は泣き出してしまった。第8作では妻を亡くし葬儀が営まれる中で研究一筋だった自身の過去を振り返って、家族の大切さ、人生のはかなさを放浪暮らしの寅次郎に切々と説く。第22作では旅をしていたところ、やはり旅の途中の寅次郎と偶然出会い、しばらく行動を共にする。寡黙な知的人物で、寅次郎とはまったく対称的な性格であるが、寅次郎の素直な性格をかなり好んでいるようで、不思議に通じあうものをもっている。寅次郎のことを「大人物」と表現している。22作出演後、演じる志村喬が死去と共に設定上でも死去。32作目には三回忌の法要が行われる。
- リリー(松岡リリー、松岡清子)
- 浅丘ルリ子(第11作、第15作、第25作、第48作)
- マドンナ。
- スナックやキャバレーなどでドサ回りをしながら活動している三流歌手。気が強く心優しい女性。一時寿司屋の主人(演:毒蝮三太夫)と結婚しそこの店の女房となるが、性分に合わず離婚してしまう。寅次郎の理解者であり、マドンナの中で寅次郎とつり合いの地位にあり、相思相愛となる女性の一人。
- 坪内散歩
- 東野英治郎(ドラマ版、第2作)
- 寅次郎高校時代の教師。寅次郎の恩師であり、寅の高校中退の経緯も知っている理解者の一人。
- 久しぶりに柴又に帰ってきた寅次郎の訪問で歓喜し、人生を語り合う。京都にいる実母、菊に会うことを寅に勧めるが、冷たくあしらわれたことで、寅を慰める。その後急死する。
- お菊
- 武智豊子(ドラマ版)→ミヤコ蝶々(第2作、第7作)
- 寅次郎の母。
- 深川の芸者であり、寅次郎の父親と内縁関係で寅次郎を生む。ただし寅次郎の養育には関わっていない。現在は京都で連れ込みホテルを経営している。女手一つで世智辛い世の中を生きてきたため気が強く、息子とは顔を合わすたびにケンカをしてしまう。ちなみに演じるミヤコ蝶々は息子役の渥美清とは8歳しか歳の差がない。ドラマ版で菊を演じた武智豊子は第9作の冒頭で居眠りをする寅次郎の頭を振り払う女性役でカメオ出演している。
- 桂あけみ
- 美保純(第33作 - 第39作)
- タコ社長の娘。
- 明るく陽気な娘で、少し蓮っぱなところがある。
- 及川泉
- 後藤久美子(第42作 - 第45作、第48作)
- 満男の高校時代のブラスバンド部の後輩で交際相手/マドンナ。
- 及川礼子
- 夏木マリ(第42作 - 第45作、第48作)
- 泉の母。
- 三平
- 北山雅康(第40作 - 第48作)
- くるまやの店員。
- 加代
- 鈴木美恵(第46作 - 第48作)
- くるまやの店員。
サブキャラクター
- 赤塚真人 - マドンナのばあやの孫、知床の漁師マコト、警官役など。
- 関敬六 - 第一作ではさくらの結婚式の司会者。シリーズ後半は、寅のテキヤ仲間ポンシュウ役ほか多数。
- 桜井センリ - 市の観光課長、平戸の教会の神父、タクシー運転手、観覧車係員、麒麟堂、島の和尚、委託駅員役など。
- 松村達雄 - 一時期はおいちゃん役、地元や地方の医者、定時制高校の教師、お寺の住職、教授役など。
- 河原崎國太郎 - 画家の恩師役。
- 米倉斉加年 - 交番の警官、大学助教授、証券会社課長役など。
- 柄本明 - 陶芸家の弟子、ノイローゼのサラリーマン役ほか。
- 笹野高史 - 下田の長八、区の結婚相談員、泥棒、アパートの大家、旅館の主人、車掌、ホモのライダー、釣り人、警官、新郎の叔父役ほか。
- 梅野泰靖 - 博の長兄・毅、タンカーの船長役。
- 穂積隆信 - 博の次兄・修。
- 八木昌子 - 博の姉・信子、菜穂の母役。
- すまけい - 劇場の男、船長、病院長、花嫁行列の父親、製靴会社の専務役など。
- 犬塚弘 - 交番の警官、小学校の同級生、タクシーの運転手役など。
- じん弘 - 看板屋の親方、東北弁のツアー客、地方駅の駅長、テキヤ仲間役など。
- 大村崑 - マドンナの亡弟が勤めた会社の主任役。
- イッセー尾形 - 病院の医師、車掌、警官、海外旅行会社社員、田舎の老人役など。
- マキノ佐代子 - 朝日印刷所事務員ゆかり役は準常連、他に婚約者、女子大生、証券会社相談係嬢役など。
- 石井愃一 - 朝日印刷所工員役。
- 左ト全 - 宿屋の番頭役。
- 谷よしの - 近所の人、花売り、行商、仲居、田舎の老婆役などシリーズで36作品に出演。1本で3役の時もあり。
- 出川哲朗 - 近所の板前、地方の祭りやテキヤの若衆役など。
- 吉田義夫 - 旅の一座の座長、映画冒頭の夢のシーンで常連悪役、父親役など。
- 岡本茉利 - 旅の一座の大空小百合、仕出し屋の従業員、夢のシーンの召使い、朝日印刷所の事務員役など。
- 三木のり平 -殿様の執事吉田六郎太役。
- あき竹城 - スルメ工場のおばさん、親方の新妻役。
- 広川太一郎 - 第一作でさくらのお見合い相手役。
- 津嘉山正種 - オープニングでは画家、サックス奏者役など常連。沖縄の医師、 陶芸家の弟子、証券会社部長、泉の母の恋人役など。
- 石井均 - 平戸の船長、佐賀の遺跡保存会員役など。
- アパッチけん - オープニングに測量技師などで登場。島の小学校卒業生の青年役。
- 佐野浅夫 - 詐欺師役。
- 神戸浩 - 島の連絡船係、宿屋の従業員、リリーの家のお手伝い役など。
- 寺尾聰 - 市の観光課員、警官、泉の父親役など。
- 石倉三郎 - そば屋の店員役など。
- 大滝秀治 - 寺の住職、旅僧、古書店主役など。
- 光石研 - 島の小学校卒業生の青年役など。
- 川合みどり - 源公の友達、ウエイトレス、店員、女客、記者、カメラ助手、旅館の売店係、結婚式場の着付け係役など。
- 田中世津子 - 旅館の仲居、アパートの隣人、茶屋のおかみ役など。
- 石川るみ子 - 印刷工場の工員役。
- 山崎一 - たんか売の客役。
映画シリーズ一覧
未撮影作品
- 1996年12月28日公開予定 『男はつらいよ 寅次郎花へんろ』
- (マドンナ:田中裕子 ロケ地:高知県 原作:室生犀星「あにいもうと」)
- シリーズ第49作のマドンナは田中裕子で、その兄役で西田敏行が出演の予定だった。物語は、妹が中絶した子供の父親が寅さんかと兄が疑い、それから寅さんがこの兄妹の後見人になる、また泉と満男を結婚させる、というものだったらしい。公開日は1996年12月28日と決まり、秋からの撮影を控えていた。「渥美清の伝言」によると、1996年6月28日に秋から始まる撮影に向けて意欲を燃やしていたが、渥美の死去により実現しなかった。
- ロケ地となるはずだった高知県安芸市伊尾木地区に2002年に開業した土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線伊尾木駅のイメージキャラクター「いおき トラオくん」が寅次郎をモチーフにしたのはこの経緯によるものである。
- 1997年12月公開予定 タイトル不明
- (マドンナ:黒柳徹子[18] ロケ地:未定)
- 山田洋次は、最終作で寅次郎が幼稚園の用務員になり、子供たちとかくれんぼをしている最中に息を引き取り、町の人が思い出のために地蔵を作るという構想を早くから持っていた。このことは1990年8月25日に放送されたTBS『クイズダービー』(第754回)の第7問(三択問題)で出題されており、遅くとも同年時点でこの構想があったことがわかる(正解は1枠の北野大、3枠のはらたいら、5枠ゲストの山崎浩子)。なお、本シリーズにマドンナとして出演した実績がある、レギュラー解答者の竹下景子は、2枠の井森美幸と同様に「温泉のストリップ小屋(で眠るように死んでしまう)」と書いて不正解だった。
シリーズのロケ地
『男はつらいよ』シリーズの撮影はほぼ全国で行われているが、高知県と富山県と埼玉県では撮影が行われていない[19]。 ただし、高知県では第49作の撮影が決定していた。また、セリフ上では第8作で高知へ行ったということになっており、本作と縁がなかったのは埼玉県と富山県と言うことになる。
高知県と富山県では後に、『男はつらいよ』以後松竹の看板映画シリーズになった『釣りバカ日誌』において、連続して撮影が行われた。
虹をつかむ男
「花へんろ」公開予定だった1996年12月28日にほぼ同じキャスト、ロケ地で『虹をつかむ男』が渥美清への追憶映画として公開された。BGMやEDも本作のものが使用されている。倍賞千恵子、前田吟、吉岡秀隆の三人はこの映画でも親子役であり、渥美清もCGではあるが、1シーンだけ登場している。
寅次郎ハイビスカスの花 特別篇
テンプレート:Main 1997年に公開された『寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』は、根強い寅さん人気に応える形で作られた作品である。満男が寅さんを回想する内容で、タイトルになっている第25作『寅次郎ハイビスカスの花』だけではなく、第11作『寅次郎忘れな草』、第15作『寅次郎相合い傘』のシーンが使われている。映像技術の進歩によって制作できた作品とも言え、満男が見た幻として寅さんが既存映像の流用によるCG合成で登場した。主題歌を八代亜紀が歌っている。
有名なシーン・セリフ
有名なシーン
- 「寅のアリア」
- (第15作・男はつらいよ 寅次郎相合い傘)
- リリーをキャバレーまで送った寅次郎は、そのあまりの環境の劣悪さに驚き、肩を落としてとらやに帰って来る。「俺にふんだんに銭があったら…」寅次郎は大ステージで歌い上げるリリーの姿を想像し、臨場感たっぷりにさくらたちへ語って聞かせる。寅次郎の切ないまでの愛情が渥美清の演技によって表現されている。山田洋次によれば[20]、後日リリー役の浅丘ルリ子がこのシーンを見て涙を流していたという。このシーンに限らず、渥美清独特の語り口によってなされる“一人語り”はスタッフの間から「寅のアリア」と呼ばれていた。
- 「メロン騒動」
- (第15作・男はつらいよ 寅次郎相合い傘)
- 寅次郎の世話になった男から高級メロンをもらったとらやの面々。切り分けて食べ始めたところへ寅次郎が外出から戻ってくる。寅次郎の分をうっかり勘定に入れ忘れていたことに気付いた一同は、大慌てで場を取り繕うとする。そんなとらやの人々を心が冷たいと激しくなじる寅次郎だったが、リリーが核心を突いた言葉で一喝してしまう。
- 「ぼたんの涙」
- (第17作・男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け)
- 芸者のぼたんが200万円の大金を騙し取られるが、法の盲点を突いたやり口になす術が見つからない。悲嘆に暮れるぼたんを横目に寅次郎はすっと立ち上がり、優しく別れの言葉を告げてとらやを飛び出していく。相手のところへ殴り込みに行こうとする寅次郎の捨て身の愛情に触れたぼたんは、幸福の涙を流す。
有名なセリフ
男はつらいよシリーズには、繰り返し使用されるセリフが多数ある。以下はその代表例である。
- 「それを言っちゃあお仕舞いよ」
- ケンカの際においちゃんが言う「出てってくれ」に対して寅次郎が返すセリフ。第1作で渥美清がとっさに放ってしまったアドリブだったが、セリフの持つ意味に感心した山田洋次がその後脚本に多用するようになった[21]。
- 「相変わらず馬鹿か?」
- 柴又に帰ってきた寅次郎が、備後屋などの顔なじみと交わすあいさつ。これも、もともとは渥美清のアドリブであった。
- 「労働者諸君!」
- 寅次郎が、とらやの裏にある朝日印刷の印刷工に向かってかける言葉。マドンナに寅次郎の想いが伝わったと思い込み、寅次郎の機嫌がよい時にかけられることが多い。
- 「おいちゃん、店じまいにするか」
- 旅先で出会ったマドンナがとらやに訪れ、近所の者が見物したさに集まったときに、とらやを臨時休業にすることが多い。寅次郎が客に向かって、満面の笑顔で「今日はもうおだんご売り切れなの」と言って、店を閉めるパターンもある。
- 「今夜はこのへんでお開きってことにするか」
- とらやの茶の間で妄想などを含んだ語りが終わり、自分の部屋に上がる際に言い残す言葉。
- 「貴様、さては(さしずめ)インテリだな?」
- 寅次郎が言い合いで負けたときや、自分が理解できないことを言われたときによく使用する。寅の知識や才覚が、半生の中で身についたことを証明する台詞とも考えられる。
- 「結構毛だらけ猫灰だらけ」
- 商売の啖呵から派生している、寅次郎の口癖。投げやりになったり、すねている際などに吐くこともある。その後にお尻の周りは糞だらけと続く場合が多い。
- 「見上げたもんだよ屋根屋のふんどし、たいしたもんだよ蛙の小便」
- これも商売の啖呵から派生している、寅次郎の口癖。相手に感心したことを茶化して言うことが多い。「たいしたもんだよ」は「田へしたもんだよ」との掛詞になっている。
- 「四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立ち小便」
- 寅次郎が的屋商売でよく使う口上である。
主題歌
テンプレート:Infobox Single 同名の主題歌レコードは1970年2月に日本クラウンから発売され、シングルで38万枚のセールスを記録した[22]。売り上げこそ1970年代の曲としては平凡だが、映画の主題歌としては息の長い曲となった。
もともとは、テレビ版の主題歌であり、当初の歌い出しは、妹が嫁に行けない事を嘆く内容だった。しかし、妹さくらが結婚したため、自分がやくざ者だと自嘲する歌詞に変更された。
後のアニメ『男はつらいよ〜寅次郎忘れな草〜』でも主題歌として使われた。
第49作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』では、八代亜紀が主題歌を歌っていた。沢知恵がアルバム『いいうたいろいろ2』の中でカバーしている。
テレビ版
テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テンプレート:Sidebar with collapsible lists 1968年10月3日から1969年3月27日まで毎週木曜日22時00分 - 22時45分にフジテレビ系列で放送されていたテレビドラマ。脚本は山田洋次・稲垣俊・森崎東が手掛けた。全26回だが、映像は第1回と最終回しか残されていない(後述)。
経緯
1966年にフジテレビで放送されていた、渥美清主演の連続テレビドラマ『おもろい夫婦』が大ヒットしており、これをきっかけに昭和40年代の同局では、渥美の連続ドラマが毎年のように放送されていた。本作は第3作にあたる。
制作は、フジテレビと当時の渥美の所属事務所の高島事務所。テレビ版は松竹の制作ではない。企画と演出はフジテレビ制作部のディレクター兼プロデューサー(当時)の小林俊一。同局の編成部では白川文造が係わった。
企画段階でのタイトルは『愚兄賢妹』という番組名だったが、フジテレビの営業から「愚兄賢妹では堅苦しくて番組として売り難い」と言われたため、タイトルを変更することになる。そして、北島三郎が唄っていた『意地のすじがね』の中にあった「つらいもんだぜ男とは」という歌詞をヒントに、小林俊一が『男はつらいよ』と命名した。
他にも、同時期にTBS系列で放映されていた渥美清主演のテレビ映画『泣いてたまるか』の、最終回のタイトルが「男はつらい」であり、この回の脚本を山田洋次が書いていたことも決め手となった。他にも渥美清が良く口ずさむ歌が北島三郎であり、その作詞者が星野哲郎であることも主題歌の作詞を依頼する決め手になった。 音楽の山本直純に関しては小林俊一がドラマを企画する際に好んで依頼していたのが山本であり、一連の渥美ドラマでも同様に山本直純に依頼した。
放送とその後
船山馨原作のベストセラー小説をドラマ化した『石狩平野』が不調で、1年の放送期間が半年に短縮された。これにより、秋の番組編成に穴が空いてしまったため、本作の放送時間が木曜22時となる。今でこそ木曜22時は「木曜劇場」で定着しているが、当時のこの時間帯は他局が圧倒しており、大苦戦が続いたフジは同局の渥美ドラマの人気で打破したい思惑もあった。
放送開始当初こそ視聴率は苦戦を続けたが、回数を重ねる毎に少しずつ上昇していき、番組終了までに最高で20%台を達するまでになった。視聴率としては高いとは言えないが、当時の状況を思えば大健闘の数字である。 一部の資料では「3ヵ月間13回を放送を延長して26回になった」という記述があるが実際は最初から半年間26回の予定であり、13回説は小林俊一が山田洋次を説得する際に出した打開案に過ぎない。
最終回で寅次郎は、ハブ狩りで一儲けしようと奄美大島に出かけるが、そのハブに噛まれて死んでしまう。寅次郎を死なせたことで、視聴者からはテレビ局に抗議の電話が殺到、これが映画化に繋がった。しかし、当時はまだテレビ番組の地位が、映画から見てかなり低く見られていた時代であった。松竹は、テレビ番組の映画化に難色を示していたが、山田洋次と松竹プロデューサー上村力の説得に折れる形で映画化された。
映像の現存状況
テレビ版の映像は、フジテレビのライブラリーには第1回と最終回だけしか現存していない。その理由としては、以下の事柄も関係している。
- 当時のVTRの規格が2インチで、機器・テープ共に高価だった。
- 当時は著作権法などの絡みで、番組の資料保存が制約されていた。
- 番組保存の概念が希薄だったことや、白黒番組が二次使用で商売になることは想定しなかった。
そのため当時、ビデオテープは放送後に使い回されるのが普通であった。
現存する第1回と最終回については渥美清の没後、同局の情報番組『ビッグトゥデイ』で、追悼企画としてノーカットで再放送されたほか、1997年2月にフジテレビよりVHSで、2008年8月に松竹よりDVDでソフト化された。これらの映像ソフトでは、欠落した回も写真で紹介するほか、スタッフによる企画の誕生などのエピソードが収録されている。横浜市にある放送ライブラリーでは、第1回を閲覧することができる。
スタッフ
出演者
- 車寅次郎:渥美清
- さくら(櫻):長山藍子
- 車竜造(おいちゃん):森川信
- 車つね(おばちゃん):杉山とく子
- 雄二郎(※自称・寅の実弟。タネ違いの弟):佐藤蛾次郎
- 諏訪博士(※医師。寅の担当医。):井川比佐志
- 坪内散歩(※英語の先生、寅の恩師):東野英治郎
- 坪内冬子(※マドンナ。寅とさくらの幼馴染):佐藤オリエ
- 鎌倉ミチオ(※さくらの恋人):横内正
- 藤村(※バイオリニスト。冬子の恋人):加藤剛
- 川又登(※寅の舎弟でとらやの従業員):津坂匡章
- 寅の母親:武智豊子
- 寅の幼馴染の青年:田中邦衛
- アイコ(※寅の幼馴染の恋人):市原悦子
- :佐山俊二
- :二見忠男
アニメ版
渥美清没後2年の命日を記念して、1998年8月7日19時に、高井研一郎作画のコミック版を元に、映画シリーズ第11作の『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』をベースにした『アニメ 男はつらいよ〜寅次郎忘れな草〜』が、TBS『金曜テレビの星!』で放映された。
キャスト
- 寅さん:山寺宏一
- リリー:冬馬由美
- さくら:岡本茉利
- 博:大塚芳忠
- 竜造:矢田稔
- つね:東美江
- タコ社長:峰恵研
- 御前様:槐柳二
- 源公:龍田直樹
- 満男:増田ゆき
- 備後屋:田原アルノ
- 栗原・夫:岡部政明
- 栗原・妻:種田文子
- あや子:荒木香恵
- 進一:津村まこと
- 水原:志賀克也
- めぐみ:菊地祥子
- 良吉:塩屋浩三
- 母親:有馬瑞香
- 司会者:星野充昭
- 社員A:小野塚貴志
- 社員B:鈴木正和
- マサル:喜田あゆみ
- 少年A:黒田やよい
- 隣人:坂東尚樹
スタッフ
- 原作:山田洋次
- 製作総指揮:村田英憲
- 製作協力:荒井雅樹(大船撮影所)、林律雄、高井研一郎
- プロデューサー:小野辰雄、山村俊史(TBS)
- アニメーションプロデューサー:出崎哲
- 音楽:山本直純
- キャラクターデザイン・総作画監督:小林ゆかり
- 音響監督:加藤敏
- 美術監督:阿部幸次
- 色彩設定:西川裕子
- 撮影監督:岡崎英夫
- 演出:棚橋一徳
- 文芸:小出一巳
- 絵コンテ・総監督:四分一節子
- 原著作・協力:松竹
- 制作協力:マジックバス
- テレビ版アニメ製作:エイケン、TBS
小説版
『けっこう毛だらけ-小説・寅さんの少年時代』(けっこうけだらけ しょうせつ とらさんのしょうねんじだい)は、山田洋次による日本の小説。『男はつらいよ 寅さんDVDマガジン』1巻1号より連載される。
映画シリーズの監督や脚本を務めた山田により、執筆される[23]。映画版のストーリーを単純にそのままノベライズ化したものではなく、主人公の車寅次郎の少年時代を描いた完全なオリジナルストーリーとなる。映画でも断片的に語られたことはあったが寅次郎の出生時の逸話が描かれるなど[23]、小説版によって始めて明かされる設定なども少なくない。寅次郎の少年時代を中心にストーリーが展開するため、時代設定は映画版よりかなり前となっている[23]。なお、山田が小説を執筆するのは、本作が初めてとなる[23]。なお、本作は主人公が一人称で語る形式を採るため、山田は他の一人称の作品を参考に研究を重ね、工夫を凝らした[23]。
ラジオ
2011年4月より文化放送で、山田洋次監督50周年プロジェクトと文化放送開局60周年の企画として『みんなの寅さん』を月曜日から金曜日の帯番組として放送していた。月曜から水曜は歴代マドンナやファンを招いてのトーク、木曜と金曜は倍賞千恵子による『けっこう毛だらけ』の朗読を放送していた。2013年4月より『続・みんなの寅さん』と改題、週一回(日曜)の27分番組に。2014年4月から『新・みんなの寅さん』へとタイトルを改めた。
パチンコ
関連作品
- BSスペシャル 渥美清の寅さん勤続25年(NHK-BS2、1995年1月15日)
- クローズアップ現代 寅さんの60日(NHK総合、1995年12月11日)
- おーい 寅さん・男はつらいよをつくるシリーズ26年目の素顔(1996年3月21日ビデオ発売)
- おーい 寅さん Part2 最後の撮影現場日記(1997年7月21日ビデオ発売)
本作をもとにしたキャラクターが登場する作品
- フーセンのドラ太郎 - 『男はつらいよ』のアニメ版ということで、同作品のキャラクターを猫と鼠が演じた1981年放映のアニメーション。
- ゲゲゲの鬼太郎 - ねずみ男が、寅さんと同様の格好をして放浪する回がある。その際、寅さんのおなじみのセリフを話す。
- ガンバの冒険(11話 ペテン師トラゴローを追え) - 寅さんをモチーフにした「トラゴロー」というキャラクターが登場している。
- きらりん☆レボリューション - 寅さんに似た格好をしている「ふーさん」が登場している。
- 地獄先生ぬ〜べ〜 - 原作のエピソードで、マウスが増殖し誰も手がつけられなくなるという話で、そのマウスを売る男が寅次郎をモチーフにしている。ただ、諸悪の根源という意味合いから、寅さんというよりも悪魔じみた感じで描かれている。
- まじめにふまじめ かいけつゾロリ (89話 えっ! ゾロリのいもうと?)- 寅さん、さくら、おいちゃん、おばちゃん、たこ社長を意識したキャラクターが登場している。
- 魔弾戦記リュウケンドー - 随所に本作へのオマージュがちりばめられており、特に登場人物の一人「ガジロー」は、佐藤蛾次郎が演じた源公そのままのキャラクターで、佐藤の実子・佐藤亮太が演じている。
- サラリーマンNEO(NHK) - キャラシリーズに「渥美トラ次郎」という渥美と寅次郎をかけた虎模様の猫が登場する。
- 超力戦隊オーレンジャー-第43話に登場したマシン獣「バラペテン」は、人間体として寅さんに似た「フーテンの熊」に化けることができる。
- 炎神戦隊ゴーオンジャー - 第21話に登場した「フーセンバンキ」は、公式ホームページによるとフーテンとフーセンをかけており、寅さんに似た言動や帽子、カバンを持っている。その声も、寅さんの物まね芸人である原一平が担当している。
- ぜんまいざむらい - 寅さんの名前を意識した「どろぼう猫の虎次郎」という猫が登場した(虎も猫科の動物で猫に虎とつける話は本作の映画にもある)。
- 天才てれびくんMAX- 天てれドラマ「ダーリンは11さい?!」の最終話に寅次郎を意識したキャラクターが登場する。
- 大!天才てれびくん-ドラまちがいの『熊次郎 おとこ旅 〜人情編〜』は本作を意識したタイトル、ストーリーである。
- サントリー『オランジーナ』のテレビCM「ムッシュはつらいよ」(2012年) - 舞台をフランスに移し、車寅次郎をモチーフにした「TORA」(演:リチャード・ギア)、源公をモチーフにした「GEN」少年が登場する[24]。
脚注
関連項目
外部リンク
公式サイト
関連サイト
- 柴又帝釈天門前 とらやごく初期の頃、撮影に使った和菓子店(撮影当時の屋号は“柴又屋”)
- 高木屋のホームページ映画撮影に積極的に協力していただんご屋
- 葛飾柴又寅さん記念館
- 渥美清こもろ寅さん会館 (長野県小諸市 インターネットアーカイブのキャッシュ)
- 文化放送みんなの寅さんブログ
研究サイト
テンプレート:男はつらいよ- ↑ これについて、寅さんは貴種流離譚でプレテクスト(既存のテクスト)は『坊つちやん』で、「マドンナ」と呼ばせているのも『坊つちやん』が深々と影響しているとも評論されている 『漱石を語る 1』(石原千秋・小森陽一、翰林書房、1998年12月5日) P10。
- ↑ 『寅次郎夢枕』の千代や、いわゆる「リリー三部作」(『寅次郎忘れな草』、『寅次郎相合い傘』、『寅次郎ハイビスカスの花』)のリリー、『寅次郎あじさいの恋』のかがり、『口笛を吹く寅次郎』の朋子、『寅次郎の告白』の聖子など
- ↑ 『寅次郎の告白』
- ↑ 第一作、第二作では共栄印刷
- ↑ 5.0 5.1 第六作のみ堤梅太郎
- ↑ FRIDAY(講談社)2013年11月22日号「伝説の名プロデューサーの『ドラマ馬鹿』人生」(72ページ)より。
- ↑ 2007年1月8日放送芸能人雑学王決定戦より
- ↑ 小諸の「寅さん会館」閉館の危機 信濃毎日新聞2013年3月20日の記事のインターネットアーカイブのキャッシュ
- ↑ 公式サイトの記述による。第35作でも葛飾商業同窓会からの葉書に対し、「卒業してねぇのに何で会費払わなくちゃなんねぇんだ」と言っている。第26作で中学2年のときに「芸者の子供だから教育がなっていない」と校長に言われたことに腹を立てて、体育祭の日に酒を飲んだあげく校長を殴り退学になったと、定時制高校の学生に話している。また、同作で定時制高校に編入したいと願書を書いているが、中学校中退だからと断られている。戦前の実業学校で中等学校の一種であった商業学校を中退したというのが自然な設定であろう
- ↑ 第30作にて寅次郎が話す。
- ↑ 第30作では竜造(俳優は下條正巳)とは見合いで「会ったらカマキリみたいな男だった」と発言している。
- ↑ 柴又帝釈天のこと。
- ↑ 「柴又帝釈天付属ルンビニー幼稚園」として実在する。東京都葛飾区柴又7丁目10−30
- ↑ HDリマスター版DVD音声ガイドで役名が「源吉」とされている。
- ↑ 第27作で本人が寅次郎に話している。
- ↑ 松竹公式サイトより
- ↑ 寅次郎の年齢に値する年齢のため
- ↑ 渥美清没後10年の命日を記念して掲載された2006年8月4日の北日本新聞のコラム「天地人」より
- ↑ 2008年12月5日放送のテレビ東京『日本のビックリ新発見!頭が良くなるヘンな地図』より
- ↑ 2007年1月6日NHK放送「寅さんレビュー」
- ↑ 男はつらいよ 全巻BOX 特典DVD「寅さんが遺してくれたもの」
- ↑ 作詞家・星野哲郎氏が語る「男はつらいよ」(インターネット・アーカイブのミラー)
- ↑ 23.0 23.1 23.2 23.3 23.4 「監督、『寅次郎少年』を小説に」『毎日新聞』48509号、統12版、毎日新聞東京本社、2011年1月9日、10面。
- ↑ 「オランジーナ」新TV-CM「ムッシュ」編、「カフェ」編 オンエア開始 サントリーニュースリリース 2012年3月23日閲覧。