倍賞千恵子
テンプレート:ActorActress 倍賞 千恵子(ばいしょう ちえこ、1941年〈昭和16年〉6月29日 - )は、日本の女優、歌手、声優。愛称は「チコちゃん」。
実妹は女優の倍賞美津子。弟は猪木事務所社長の倍賞鉄夫、日産自動車硬式野球部元監督の倍賞明[1]。夫は作曲家の小六禮次郎。
目次
来歴・人物
生い立ち
西巣鴨生まれ。東京都北区滝野川に育つ。戦時中は茨城県に疎開。北区立滝野川第六小学校、北区立紅葉中学校(現:北区立滝野川紅葉中学校)卒業。父は都電の運転士、母は車掌であった[2]。
倍賞家
珍しい倍賞姓は秋田県鹿角郡(現鹿角市)十和田大湯にルーツを持つ[2]。先祖は佐竹藩に仕えた守衛で、先祖の一人に頭の良い人がいて書記に抜擢され、何かの賞を受けたのがこの姓の由来という[2]。千恵子の父・美悦は当地の出身で、中学のとき東京に出て、数え年15のとき少年車掌の試験を受け合格した[2]。母・青木はなは茨城県真壁郡大和村(現桜川市)出身[2]。母も小学校卒業後、東京で女子車掌となり美悦と知り合い結婚した[2]。
SKD入団
幼少時は「のど自慢」荒らしとして知られ、みすず児童合唱団を経て、1957年、松竹音楽舞踊学校に入学。1960年、同校を首席で卒業し、松竹歌劇団(SKD)13期生として入団する。同期に榊ひろみ(松竹女優)、加藤みどり(声優)らがいる。学校時代の実習出演を経て、同年、グランドレビュー「東京踊り」で初舞台を踏む。この年から、主席入団生にフィナーレの先頭を切って大階段を降りる栄誉が与えられ、バトンガールに扮した倍賞がその初代を勤めた。
映画・歌手デビュー
1961年、松竹映画にスカウトされ松竹歌劇団を退団し、『斑女』(中村登監督)で映画デビュー。1963年、山田洋次監督の映画『下町の太陽』に主演して以降、山田作品に欠かせない庶民派女優となる。『下町の太陽』は映画・歌だけでなく、現在もそのフレーズ自体が倍賞の代名詞になっている。
1963年に『下町の太陽』で歌手としてもデビューし、第4回日本レコード大賞新人賞を受賞。NHK紅白歌合戦にも4年連続出場した(詳細は下記参照)。他のヒット曲に「さよならはダンスの後に」「おはなはん」「忘れな草をあなたに」(菅原洋一らとの競作)などがある。
山田作品の常連に
映画『男はつらいよ』シリーズでは渥美清演じる主人公車寅次郎の妹・さくら役を演じ、人気を不動のものにした。『男はつらいよ』で共演した吉岡秀隆とは現在でも親交が深く、北海道野付郡別海町の倍賞の別荘に遊びに来た際には、(吉岡に)マッサージを頼むほどの仲である。
『家族』をはじめ、『男はつらいよ』シリーズの合間を縫って山田が発表したオリジナル大作にも出演。特に『キネマの天地』までは全て主演かマドンナ役である。『男はつらいよ』シリーズ開始前の初期山田作品のほとんどでも倍賞が主演を務めており、延べ60本以上の作品に渡って、海外にも類を見ないほどの緊密かつ長期の監督・主演女優コンビを維持している。逆に他監督作品への出演は少なく、悪女役への意欲も口にしていたものの映画では実現していない。松竹歌劇団出身ということもあり、ステージでは強いモダニズム志向も発揮する。
『男はつらいよ』シリーズにおける「明るいが優しく淑やかなさくら」のキャラクターに比べると、プライベートでの倍賞はチャキチャキとしている。倍賞の陽性の側面を引き出す企画として、山田の愛弟子高橋正圀はNHKテレビドラマ『ぼくの姉さん』二部作を書き下ろした。
1996年8月13日に開かれた「寅さんとのお別れの会」では、弔辞の後に「さくらのバラード」を献歌した。
『男はつらいよ』以後
2004年には、宮崎駿監督のアニメ映画『ハウルの動く城』ではヒロインであるソフィーの声を担当し、主題歌『世界の約束』を歌っている。
長年、松竹専属の映画女優であったこともあり、テレビドラマへの出演が同世代の女優と比べて少ないが、フジテレビのコント番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演した折には『男はつらいよ』のパロディや志村けんの当たり役「変なおじさん」をモチーフとした「変なおばさん」に扮するなど、大女優らしからぬ気さくな一面を見せた。
現在は女優業と並行して音楽活動に重点的に取り組んでおり、映画『男はつらいよ』シリーズ終了後は、音楽に重点を置いた芸能活動をしている。歌謡曲からポピュラー/スタンダード、童謡・唱歌まで幅広いジャンルを歌いこなすことに加え、日本語の発音の美しさから歌手としての評価も非常に高く(藤山一郎も評価している)、現在でも精力的にコンサートを行っている。
乳癌発覚以後
2001年には、自身の胸のしこりから乳癌が発覚する。紫綬褒章を受章した2005年頃よりピンクリボン活動に参加し、シンポジウムなどにも参加している。その後、同じく乳癌を発症した山田邦子が立ち上げたスター混声合唱団のメンバーとしてもがんの啓発活動を始め、2008年4月に放送されたBS朝日『鳥越俊太郎の遺言 〜ガンと共に生きる〜』では、手術時の心境や夫の力添えについて公に詳述した[3]。
主な受賞歴
- 1970年 - キネマ旬報賞女優賞(『家族』『男はつらいよ 望郷篇』)
- 1970年 - 毎日映画コンクール女優主演賞(『家族』『男はつらいよ 望郷篇』)
- 1975年 - ブルーリボン賞助演女優賞(『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』)
- 1980年 - 日本アカデミー賞最優秀主演女優賞(『遙かなる山の呼び声』『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』)
- 1980年 - 毎日映画コンクール女優演技賞(『遙かなる山の呼び声』)
- 1980年 - 報知映画賞主演女優賞(『遙かなる山の呼び声』)
- 1981年 - キネマ旬報賞主演女優賞(『駅 STATION』)
- 1981年 - 毎日映画コンクール女優演技賞(『駅 STATION』)
- 2005年 - 東京アニメアワード声優賞(『ハウルの動く城』)
- 2005年 - 紫綬褒章
- 2013年 - 旭日小綬章
主な出演作品
映画
- 斑女(1961年)
- 二人で歩いた幾春秋(1962年)
- 私たちの結婚(1962年)
- 泣いて笑った花嫁(1962年)
- 下町の太陽(1963年)
- 霧の旗(1965年)
- さよならはダンスの後に(1965年)
- なつかしい風来坊(1966年)
- 運が良けりゃ(1966年)
- 暖流(1966年) - 石渡ぎん 役
- 愛の讃歌(1967年)
- 九ちゃんのでっかい夢(1967年)
- 喜劇 一発勝負(1967年)
- ハナ肇の一発大冒険(1968年)
- みな殺しの霊歌(1968年)
- 白昼堂々(1968年)
- 喜劇 一発大必勝(1969年)
- 男はつらいよシリーズ全作(1969年 - 1995年)
- 家族(1970年)
- あゝ声なき友(1972年)
- 故郷(1972年)
- 同胞(1975年)
- 幸福の黄色いハンカチ(1977年)
- 遙かなる山の呼び声(1980年)
- 駅 STATION(1981年)
- 刑事物語2 りんごの詩(1983年)
- 植村直己物語(1986年)
- キネマの天地(1986年)
- 離婚しない女(1986年)
- 隠し剣 鬼の爪(2004年)
- 空を飛んだオッチ(2005年)
- この胸いっぱいの愛を(2005年)
- 母べえ(2008年)
- ホノカアボーイ(2009年)
- 座頭市 THE LAST(2010年)
- 東京に来たばかり(2012年)
- すべては君に逢えたから(2013年)
- ハーメルン(2013年)
- 小さいおうち(2014年) - 布宮タキ 役
アニメ映画
- 劇場版 機動戦士ガンダムI(1981年) - カマリア・レイ 役
- ユニコ(1981年) - 西風 役
- ジャングル大帝(1997年) - ライヤ 役
- 蓮如物語 Rennyo(1998年) - 蓮如の母 役
- いのちの地球 ダイオキシンの夏(2001年) - ソニア 役
- ハウルの動く城(2004年) - ソフィー 役
テレビドラマ
- 日産スター劇場「虹のデイト」(1965年、読売テレビ)
- 太陽ともぐら(1969年・1975年、フジテレビ)
- あにいもうと(1972年、TBS)
- お姉ちゃん(1973年、TBS)
- あにき(1977年、TBS)
- 東芝日曜劇場「松本清張おんなシリーズ・馬を売る女」(1978年、TBS) - 星野花江 役
- 土曜ワイド劇場「松本清張の顔」(1978年、テレビ朝日)
- わたしは海(1978年 - 1979年、NHK連続テレビ小説) - ナレーション
- 銀河テレビ小説 (NHK)
- 「姉さんの子守唄」(1979年)
- 「姉さんは腕まくり」(1980年)
- 赤かぶ検事奮戦記(1980年、朝日放送)
- まんさくの花(1981年、NHK連続テレビ小説) - 伊吹絹代役
- 平岩弓枝ドラマシリーズ「春の都会」(1981年、フジテレビ)
- きりぎりす(1981年、関西テレビ)
- 月曜ワイド劇場「ハローオックン!あわや、小学浪人?タレントママの百日戦争」(1983年、テレビ朝日)
- 木曜ゴールデンドラマ「母と子の灯」(1983年、読売テレビ)
- 絆(1984年、RKB毎日放送)
- 男と女のミステリー「ロマンの果て」(1989年、フジテレビ)
- ひらり(1992年、NHK連続テレビ小説) - ナレーション
- すずらん(1999年、NHK連続テレビ小説) - 日高萌 役(老年期)・ナレーション兼任
- 夏の約束(2002年、北海道テレビ)
- 奇跡の動物園〜旭山動物園物語〜(2006年5月13日、フジテレビ) - 桜崎笙子 役
- 華麗なる一族(2007年、TBS) - ナレーション
- 白旗の少女(2009年9月30日、テレビ東京)- おばあさん(ウシ) 役
- 幸福の黄色いハンカチ(2011年10月10日、日本テレビ) - 房江 役
- 二十四の瞳(2013年8月4日、テレビ朝日) - ナレーション
テレビアニメ
- 二十四の瞳(1980年10月10日)
ラジオ
ゲーム
- グランディアIII(2005年8月4日) - 聖獣グリフ 役
CM
舞台・イベント
- 小林幸子特別公演(2008年10月4日 - 10月29日、明治座) - ナレーション
- 第37回日本歌手協会歌謡祭(2010年10月28日、ゆうぽうと) - 司会
- 秋の歌謡フェスティバル(2012年10月12日、ゆうぽうと) - 司会
- 日本歌手協会創立50周年記念 第40回歌謡祭(2013年11月21日、ゆうぽうと)
歌手活動
主な歌
- 下町の太陽(1962年) ※映画『下町の太陽』主題歌
- 牧場のリボン(1963年)
- さあ太陽を呼んでこい(1964年) ※NHK『みんなのうた』放送曲
- さよならはダンスの後に(1965年)
- おはなはん(1966年) ※NHK朝の連続テレビ小説主題歌
- ギララのロック(1967年) ※映画『宇宙大怪獣ギララ』主題歌
- 月と星のバラード(1967年) ※映画『宇宙大怪獣ギララ』副主題歌
- モスクワ郊外の夕べ
- さくら貝の歌
- 私でよかったら
- 忘れな草をあなたに(1971年)
- お姉ちゃん(1972年) ※TBS系テレビドラマ『お姉ちゃん』主題歌
- オホーツクの船唄(1976年) ※「知床旅情」別バージョン
- 世界の約束(2004年) ※映画『ハウルの動く城』主題歌
- さよならの夏(2011年) ※映画『コクリコ坂から』主題歌
- お月様と影ぼうし(2014年) ※NHK『みんなのうた』放送曲
アルバム
NHK紅白歌合戦出場歴
- 第14回 (1963年12月31日、東京宝塚劇場) 『下町の太陽』
- 第15回 (1964年12月31日、東京宝塚劇場) 『瞳とじれば』
- 第16回 (1965年12月31日、東京宝塚劇場) 『さよならはダンスの後に』
- 第17回 (1966年12月31日、東京宝塚劇場) 『おはなはん』
- このうち、第14・16・17回は千恵子の歌唱映像が現存する(第16回はカラー映像)。
- 第16回では、バックダンサーに妹の美津子が出演している。
- 第14・16・17回は『思い出の紅白歌合戦』(NHK-BS2)で再放送されている。
関連項目
脚注
外部リンク
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