二十四の瞳
テンプレート:Portalテンプレート:Sidebar with collapsible lists 『二十四の瞳』(にじゅうしのひとみ)は、1952年(昭和27年)に壺井栄が発表した日本の小説である。
第二次世界大戦の終結から7年後に発表された小説で、作者の壺井栄は、自身が戦時中を生きた者として、この戦争が一般庶民にもたらした数多くの苦難と悲劇を描いた。
発表の2年後、1954年(昭和29年)に映画化された[1]。これまで、映画化2回、テレビドラマ化6回、テレビアニメ化1回、計9回映像化された。
概要
「瀬戸内海べりの一寒村」を舞台に、女学校を出て赴任した女性教師と、その年、小学校に入学した12人の生徒のふれあいを軸に、日本が第二次世界大戦を突き進んだ歴史のうねりに、否応なく飲み込まれていくこの教師と生徒たちの苦難や悲劇を通し、戦争の悲壮さを描いた作品である。
1928年(昭和3年)から1946年(昭和21年)まで、すなわち、昭和の戦前期、終戦、その翌年まで、18年間が描かれている。
小説の舞台は、壺井栄が、その冒頭で「瀬戸内海べりの一寒村」としている。そして、全ページを通じて、一切、舞台の具体的な地名は出てこない。
しかし、映画・テレビをあわせて9回映像化された際、原作者壺井栄の故郷が香川県小豆島であることから、これら映像作品では、物語の舞台を「小豆島」と設定した。
これにより、「二十四の瞳」と、原作にはない「小豆島」の2つが結びついて広く認識されるようになった。
あらすじ
1928年(昭和3年)、普通選挙が実施される一方で治安維持法の罰則が厳しくなった年に[1]、「女学校の師範科」を卒業したばかりの正教員の大石久子(おなご先生)は、島の岬の分教場に赴任する。そこに入学した一年生12人(男子5人、女子7人)の児童の、それぞれの個性にかがやく二十四の瞳を前に、この瞳をどうしてにごしてよいものかと感慨を持つ。
若く朗らかな大石先生に子供たちはすぐになつき、信望を集めた。しかし颯爽と自転車に乗り洋服姿で登校するおなご先生は「ハイカラ」であることを理由に、保守的な村の大人達から敬遠される。些細な誤解から面罵され、思わず涙する事も。しかしいつでも子供たちはおなご先生の味方であり、支えであった。
そんな折、大石先生は年度途中で子供たちの作った落とし穴に落ちてアキレス腱を断裂。分教場への通勤が不可能になってしまう。大石先生が不在の中、「おなご先生」を一途に慕う子供たちの姿を目の当たりにした村の大人達の態度も軟化する。大石先生が子供たちにとってかけがえのない存在であることを理解したのだった。やがて怪我が完治した大石先生は本校へ転任する事となり、村の皆に見送られ、再会を約束して分教場を去った。
1932年(昭和7年)、5年生になった子供たちは本校に通うようになり、新婚の大石先生と再会する。しかし昭和恐慌や東北飢饉、満州事変・第一次上海事変と続く戦争といった暗い世相は、大石先生を始めつつましく暮らす生徒達のそれぞれの暮らしに、不幸の影を落とし始める。
1934年(昭和9年)春、戦時教育に憂いを持った大石先生は教え子たちの卒業とともに教職を辞する。12人の生徒たちはそれぞれの運命を歩む。彼らの行く末を案じ、戦地へ赴く教え子には「名誉の戦死などするな、必ず生きて帰れ」声を潜めて伝える大石先生だった。
1946年(昭和21年)、船乗りの夫を戦争で、相次いで母親も末娘も亡くした大石先生はふたたび教壇に復帰する。幼い児童たちの中にはかつての12人の児童たちの近親者もいる。点呼を取るだけで涙ぐんでしまう大石先生は、その昔「小石先生」とあだ名をつけられたように「泣きミソ先生」と呼ばれることとなる。教師の道をえらび、母校に勤務しているかつての教え子の呼びかけで、12人(のうち消息のわかるもの)は大石先生と会合をもつ。貧しさから波乱の人生を余儀なくされた者、家が没落し消息を絶った者、誰にも看取られる事なく病死した者、遠い海の向こうで戦死し2度と帰ってこない者、戦場で負傷し失明した者。時代の傷を背負って大人になった彼らは、大石先生を囲んで小学1年生のあの日皆で一緒に撮った写真を見る。
フィルモグラフィ
以下は、同作品を原作もしくは、同作品を参考としたものである。
劇場用映画
テレビドラマ
1964年版
1964年4月17日 - 7月10日に東京12チャンネル(現・テレビ東京)において放送された。 テンプレート:Col-begin テンプレート:Col-2
キャスト
スタッフ
1967年版
キャスト
スタッフ
1974年版
- 1974年11月11日 - 20日にNHKにおいて「少年ドラマシリーズ」枠で放送された。本作を収録したマスターテープは他の番組制作に使い回されたために映像は残っていない。映像が発見される可能性は低く、全話の再放送および完全版のソフト化は絶望的である。
キャスト
スタッフ
1976年版
1976年1月5日 - 14日にNHKにおいて「少年ドラマシリーズ」枠で放送された1974年版の第二部。 テンプレート:Col-begin テンプレート:Col-2
キャスト
- 杉田景子
- 武智豊子
スタッフ
NHK制作 少年ドラマシリーズ | ||
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前番組 | 二十四の瞳シリーズ | 次番組 |
少年カウボーイ (1974.10.14 - 1974.11.6) |
二十四の瞳 (1974.11.11 - 1974.11.20) |
アルプスのスキーボーイ (1974.11.25 - 1974.11.28) |
あおげばとうとし (1976.1.3) |
二十四の瞳 第2部 (1976.1.5 - 1976.1.14) |
幼年時代 (1976.1.19 - 1976.1.29) |
1979年版
1979年7月9日-8月31日にTBSにおいて「花王愛の劇場」枠で放送された。 テンプレート:Col-begin テンプレート:Col-2
キャスト
スタッフ
2005年版
2005年8月2日に日本テレビ系列において終戦60周年特別ドラマとして放送された。 テンプレート:Col-begin テンプレート:Col-3
キャスト
スタッフ
- 監督 - 大原誠
- 脚本 - 寺田敏雄
- 音楽 - 池辺晋一郎
- ロケ協力 - 内海町、小豆島観光協会、岬の分教場保存会、二十四の瞳映画村、滋賀ロケーションオフィス ほか
- プロデュース - 倉田貴也、佐々木淳一
- 製作協力 - 松竹京都映画
- 製作著作 - 松竹
2013年版
2013年8月4日21:00 - 23:10[2] (JST)にテレビ朝日系列『日曜エンタ・ドラマスペシャル二十四の瞳』として放送。1954年の映画を監督した木下惠介の生誕100年記念作品。
キャスト
- 大石久子:松下奈緒
- 大石三郎:玉山鉄二
- 大石ヨネ:吉行和子
- 野川儀助:中村梅雀
- 寺田和成:柄本明
- 徳田吉次:石井凛太朗(1年生)、小笠原弘晃(5・6年生)、御厨響一(大人)
- 森岡正:根本樹(1年生)、松本聖海(5・6年生)、川口高志(大人)
- 山石早苗:野田和佑(1年生)、岡部怜南(5・6年生)、小島藤子(大人)
- 香川マスノ:信太真妃(1年生)、後藤花怜(5・6年生)、真野恵里菜(大人)
- 木下富士子:荒田悠良(1年生)、松田亜美(5・6年生)
- 川本松江:加藤珠希(1年生)、二宮星(5・6年生)、大後寿々花(大人)
- 片桐コトエ:久家心(1年生)、川島鈴遥(5・6年生)、桜庭ななみ(大人)
- 加部小ツル:中西萌(1年生)、小川ひかる(5・6年生)、柊瑠美(大人)
- 岡田磯吉:石田大和(1年生)、中川琥太郎(5・6年生)、濱田岳(大人)
- 竹下竹一:松田優佑(1年生)、有馬礼温(5・6年生)、井藤瞬(大人)
- 相沢仁太:山崎智史(1年生)、下地幸多(5・6年生)、南圭介(大人)
- 西口ミサ子:森くれあ(1年生)、畠山紬(5・6年生)、前田亜季(大人)
- ナレーション:倍賞千恵子
スタッフ
- 脚本:龍居由佳里
- 監督:田村直己
- 音楽:沢田完
- サウンドデザイン:石井和之
- VFX:浅野秀二
- ロケ協力:小豆島映像支援実行委員会、小豆島町、小豆島観光協会、岬の分教場保存会、二十四の瞳映画村、滋賀ロケーションオフィス ほか
- 技術協力:IMAGICA、IMAGICAウェスト
- チーフプロデューサー:五十嵐文郎
- プロデューサー:藤本一彦、西勇哉、佐々木淳一、原克子
- 制作協力:松竹撮影所、松竹映像センター
- 制作:テレビ朝日、松竹
テレビアニメ
- 1980年10月10日にフジテレビ系列において日生ファミリースペシャルとして放送されたテレビアニメ。声の出演は倍賞千恵子、岡本茉利、戸田恵子、白石珠江、高宮淳子、浅野亜子、三ツ木清隆ら(ナレーション:奈良岡朋子)。物語の合間と最終場面に実相寺昭雄演出による実写パートが挿入されていた。
- 最終場面の実写部分は、成長した生徒と大石先生の再会場面で、大石先生(倍賞千恵子)や生徒をアニメ部分の声優が演じている。
関連著作
- 『二十四の瞳からのメッセージ』(澤宮優著 洋泉社刊 2007年) ISBN 4862481965
木下恵介監督の映画「二十四の瞳」を、当時の子役や出演者、スタッフらの証言をもとに検証することで、作品が現代へ何を問いかけているかを探ったノンフィクション。
- 「古地図で歩く香川の歴史 さぬきで息ぬき 高松城下に遊び、二十四の瞳の世界をさまよう」(井上正夫著 同成社2009年刊) ISBN 4886214509
第3部 二十四の瞳の世界では、昭和3年発行と平成19年発行の小豆島の地図を見比べ、大石先生が岬の分教場へ通ったであろう道を辿っている。また、大石先生のモデルについても考察されており、高松市出身の実在の人物にスポットを当てている。
学術的参考文献
- 御園生涼子 「幼児期の呼び声 - 木下惠介『二十四の瞳』における音楽・母性・ナショナリズム」、杉野健太郎編『映画とネイション』(映画学叢書[監修加藤幹郎]、ミネルヴァ書房、2010年)所収。
- 斉藤綾子 「失われたファルスを求めて - 木下惠介「涙の三部作」再考」、長谷正人/中村秀之編『映画の政治学』、青弓社、2003年)所収。
- 尾崎秀樹 「『二十四の瞳』の学校」 論文、掲載誌名「児童心理」 45巻・15号 p1875 - 1879、1991年
- ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 戦後日本のメロドラマ『日本の悲劇』と『二十四の瞳』 (『ホームドラマとメロドラマ 家族の肖像』所収) 森話社 2007年
- 上出恵子 唱歌の力…壺井栄『二十四の瞳』をめぐるエキス、敍説、17、p.52 1998年
脚注
関連項目
外部リンク
- 小豆島町 テンプレート:Ja icon - 壺井栄の生誕地
- 日曜エンタ・ドラマスペシャル「二十四の瞳」公式サイト テンプレート:Ja icon - (テレビ朝日)
- 日本の小説
- 太平洋戦争を題材とした作品
- 昭和時代を舞台とした作品
- 香川県を舞台とした作品
- 小学校を舞台とした小説
- 小豆島
- 教師を主人公とした小説
- 1952年の小説
- 教師を主人公としたテレビドラマ
- 1964年のテレビドラマ
- 1967年のテレビドラマ
- 1974年のテレビドラマ
- 1976年のテレビドラマ
- 1979年のテレビドラマ
- 2005年のテレビドラマ
- 2013年のテレビドラマ
- 松竹製作のテレビ番組
- テレビ東京のテレビドラマ
- 毎日放送のテレビドラマ
- テレビ朝日のテレビドラマ
- 大丸松坂屋百貨店
- 少年ドラマシリーズ
- 愛の劇場
- 日本テレビのスペシャルドラマ
- 文学を原作とするテレビドラマ
- 小学校を舞台としたテレビドラマ
- 宝塚映画のテレビ映画作品
- 日生ファミリースペシャル
- 教師を主人公としたアニメ作品
- 小学校を舞台としたアニメ作品
- 1980年のテレビアニメ
- 日曜エンターテインメント