北陸新幹線
北陸新幹線(ほくりくしんかんせん)は、上信越・北陸地方を経由して東京都と大阪市とを結ぶ計画の整備新幹線である。1997年(平成9年)に東京駅から長野駅まで部分開業しており、同区間は便宜的に「長野新幹線」と呼ばれている(開業区間の詳細は同項目を参照)。2015年(平成27年)春には長野駅 - 金沢駅間が開業する予定で、長野新幹線として営業中の区間の呼称も「北陸新幹線」に統一[1]される。
概要
長野駅 - 上越妙高駅 - 富山駅 - 金沢駅 - 白山総合車両所間がフル規格で建設中であり[2]、2014年度末(2015年春)の開業が予定されている。開業すれば、首都圏 - 北陸間の所要時間短縮が見込まれる。
開業後の予想所要時間は従来、東京駅 - 上越妙高駅間が約1時間50分、東京駅 - 富山駅間が約2時間10分、東京駅 - 金沢駅間が約2時間30分(2010年9月現在東京駅 - 金沢駅間は在来線越後湯沢経由で3時間47分[3])とされていたが[4][5][3]、国土交通省は2010年4月22日、東京駅 - 金沢駅間が速達型列車で2時間25分程度になるとの見解を示した[6]。
2014年時点では、北陸新幹線(長野新幹線)は長野駅までしか開業しておらず、首都圏と北陸地方を結ぶ主たる交通手段とはなっていない。なお、JR各社は当該地域間の輸送について新幹線と在来線による乗り継ぎルートを構成しており、上越新幹線の越後湯沢駅で接続する特急「はくたか」や、東海道新幹線の米原駅・名古屋駅で接続する特急「しらさぎ」を高頻度で運行している。
整備新幹線としての北陸新幹線の起点は東京都だが、JR線路名称公告、『鉄道要覧』、国土交通省のいずれにおいても、北陸新幹線は高崎駅 - 長野駅間の117.4kmとなっており、高崎駅を起点としている(東京駅 - 大宮駅間は東北新幹線、大宮駅 - 高崎駅間は上越新幹線)。一般に「長野新幹線」と呼ばれているものは、正式には「北陸新幹線」の一部である。JR線路名称公告においてほかの多くの新幹線は、並行する在来線の増設線として扱われ、独立した路線とはみなされていないのに対して、北陸新幹線は独立した路線として扱われている。これは、長野駅まで開業した際、並行在来線である信越本線の横川駅 - 軽井沢駅間が廃止され、軽井沢駅 - 篠ノ井駅間はJRからしなの鉄道に移管・経営分離されたためである。同様の例として九州新幹線新八代駅 - 川内駅間(並行在来線は肥薩おれんじ鉄道に移管)がある。JR線路名称公告に記載されている新幹線はこの2つだけであり、ほかの新幹線は記載されていない[7]。
JR東日本では並行在来線同様に地方支社が新幹線も管理する体制を取っているため、既設区間のうち、高崎駅 - 安中榛名駅間は高崎支社、軽井沢駅 - 長野駅間は長野支社の管轄である。
路線データ
- 営業主体:
- 建設主体:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
- 軌間:1435mm
- 電化方式:AC25,000V (50/60Hz) (周波数は軽井沢駅 - 佐久平駅間、上越妙高駅 - 糸魚川駅間、糸魚川駅 - 黒部宇奈月温泉駅間で切り換え)[8]
- 列車運行管理システム:新幹線総合システム (COSMOS)
- 最高速度:260km/h(予定)
- 構造種別延長割合[9]
- 高崎駅 - 長野駅間:路盤 15%、橋梁 9%、高架橋 25%、トンネル 51%
- 長野駅 - 金沢駅間:路盤 2%、橋梁 10%、高架橋 44%、トンネル 44%
- 架線吊架方式
- 高崎駅 - 長野駅:CSシンプルカテナリ式(耐荷速度300km/h)
- 長野駅 - 金沢駅:PHCシンプルカテナリ式(耐荷速度350km/h)
主要構造物
各構造物の距離は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(日本鉄道建設公団)が国土交通省に提出し認可された「整備新幹線の工事実施計画」、各県が公表している資料、市役所や町役場で情報公開(住民以外には非開示の自治体や住民以外は情報公開請求自体ができない自治体もある。)している「ルート平面図」・「中心線測量図」・「環境影響評価報告書環境図」など、情報源によって数値がまちまちであるが、以下は鉄道建設・運輸施設整備支援機構の工事実施計画によった。着工後、構造物の距離は変更される場合がある。また未開業区間の名称は仮称である。
トンネル
- 高崎駅 - 長野新幹線車両センター間
- 長野県内
- 五里ヶ峯トンネル 長さ:15,175m
- 長野県内
- 長野新幹線車両センター - 白山総合車両所間
- 長野県内
- 高丘トンネル 長さ:6.9km
- 高杜山トンネル 長さ:4.2km
- 飯山トンネル 長さ:22.2km
- 新潟県内
- 飯山トンネル 長さ:22.2km
- 高田トンネル 長さ:2.7km
- 松ノ木トンネル 長さ:6.7km
- 桑取トンネル 長さ:1.8km
- 峰山トンネル 長さ:7.0km
- 新木浦トンネル 長さ:2.6km
- 高峰トンネル 長さ:3.9km
- 中浜トンネル 長さ:1.4km
- 青海トンネル 長さ:4.3km
- 歌トンネル 長さ:1.7km
- 新親不知トンネル 長さ:7.3km
- 富山県内
- 朝日トンネル 長さ:7.5km
- 第2黒部トンネル 長さ:1.2km
- 第2魚津トンネル 長さ:3.0km
- 新倶利伽羅トンネル 長さ:6.9km
- 2010年公表の富山県の資料では6.6km
- 石川県内
- 新倶利伽羅トンネル 長さ:6.9km
- 明神トンネル2.8km
- 長野県内
- 白山総合車両所 - 敦賀間
橋梁
- 長野新幹線車両センター - 白山総合車両所間
- 白山総合車両所 - 敦賀間
沿革
1965年(昭和40年)9月26日、金沢市の石川県体育館で『1日内閣』が開催された。これは後年に言うタウンミーティングのようなもので、現職閣僚が地方へ出向いて実情を聞く公聴会であった。当時内閣総理大臣を務めていた佐藤栄作も出席したこの公聴会において、富山県代表の公述人である岩川毅(中越パルプ工業創業者・当時の砺波商工会議所会頭)は、政府に対して東京を起点とし松本、立山連峰を貫通し富山、金沢を経由して大阪に至る「北陸新幹線」の建設を求めた。東海道新幹線の開業からわずか1年足らずの時点で、北陸新幹線の構想が発表されたのである。この提案に、鉄道官僚出身の佐藤も興味を示した。
『1日内閣』での新幹線構想の発表により、北陸地方では新幹線誘致の機運が高まっていった。1967年(昭和42年)7月には、北陸三県商工会議所会頭会議において、北陸新幹線の実現を目指すことが決議された。その後、同年12月8日に「北回り新幹線建設促進同盟会(1972年に北陸新幹線建設促進同盟会と改称)」が発足した[10]。これは、北陸地方の活性化と将来逼迫する東海道新幹線の代替交通機関を目的としていた[11]。
1970年(昭和45年)には全国新幹線鉄道整備法が制定され、1972年(昭和47年)6月29日、東京都 - 大阪市間を高崎・長野・富山・金沢経由で結ぶ「北陸新幹線」として基本計画が決定。翌年の1973年(昭和48年)には整備計画決定及び建設の指示がなされた。長野 - 富山間については途中の経由地が明示されず、日本国有鉄道(国鉄)は1975年(昭和50年)頃に北アルプス(飛騨山脈)の直下をトンネルで貫通する短距離ルートの建設も検討したが、火山地域のため高熱となる岩盤[12]や最大2000mに達する「土被り」(地表からトンネルまでの距離)で生じる大量の湧水や「山はね」(岩盤破壊)に耐えながら全長約70kmに及ぶ超長大トンネル[13]を建設するのは困難として、信越本線や北陸本線に沿って上越市などを経由する従来のルートでの建設が決定された[14][15]。
北陸新幹線の整備計画が発表される前に既に建設が決まっていた東北新幹線(東京駅 - 盛岡駅間)、上越新幹線(大宮駅 - 新潟駅間)、成田新幹線(その後建設中止)は工事が開始されたが、北陸新幹線他4本の整備新幹線は計画は継続されていたものの、巨額の赤字を計上した国鉄の緊縮財政やオイルショックによる建設費高騰の影響で建設は凍結され、計画は遅々として進まなかった。1987年(昭和62年)、国鉄分割民営化により特殊法人の新幹線鉄道保有機構[16]が新幹線設備を所有し、既存開業線のリース代を財源とした整備新幹線の建設が可能となると、同年に整備新幹線建設の凍結解除が閣議決定され、北陸新幹線の建設に道が開かれた。1985年(昭和60年)の工事実施計画認可申請および前述の閣議決定においては、高崎 - 小松間をフル規格で先行建設し、その後小松 - 大阪間を建設する計画であったが、1988年(昭和63年)に運輸省から建設費の削減を目的として発表された、いわゆる「運輸省案」では長野以南の建設を優先し、高崎 - 軽井沢間のみフル規格、軽井沢 - 長野間はミニ新幹線とする計画に変更となった。また、糸魚川 - 魚津間、高岡 - 金沢間については構造物を新幹線と同じ規格で建設し、線路を在来線と同じ軌間にするスーパー特急方式とする計画となった。
1989年(平成元年)にまず高崎駅 - 軽井沢駅間が着工されたが、1991年(平成3年)に長野市が1998年のオリンピック・パラリンピック開催地に決定したことから、軽井沢駅 - 長野駅間も当初の計画通りフル規格で着工されることになり、1997年(平成9年)10月1日に高崎駅 - 長野駅間が長野行新幹線(後に「長野新幹線」と短縮)の名で開業した。
また、スーパー特急方式で着工するとされた高岡 - 金沢間は、富山県内の沿線自治体が並行在来線となる北陸本線石動駅 - 高岡駅間の経営分離に反対したため、新高岡 - 金沢間の基本ルートを変更した上で、着工区間が石動 - 金沢間に変更された。その際、既に難工事区間として先行着工された加越トンネルはルート変更により不要となり、既に投入された建設費は富山県が負担することになった。
1998年(平成10年)3月には長野 - 上越間の工事実施計画が認可され、着工された。
2000年(平成12年)末の政府・与党申合せで富山までのフル規格での建設が決まり、当時の首相で自由民主党整備新幹線建設促進議員連盟会長でもあった森喜朗(石川県出身)は石動までの着工(既着工区間の石動 - 金沢間を合わせれば金沢まで直通可能)を主張していたが、道路族を代表する橋本派の有力者であった野中広務(自民党幹事長、当時)に「我田引鉄」と非難され、着工区間は富山までに短縮された。富山駅以西については、東北新幹線(盛岡駅 - 八戸駅間)、九州新幹線(新八代駅 - 鹿児島中央駅間)の開業後に金沢までのフル規格での整備を検討することとなった。
2004年(平成16年)末の政府・与党申合せに基づき、2005年(平成17年)4月27日には富山駅から石川県白山市の白山総合車両所間まで(ただし、旅客営業は途中の金沢駅まで)のフル規格での整備が認可され、同年6月4日に起工式が行われた。
2011年(平成23年)12月26日には、白山総合車両所 - 敦賀間の建設を認める方針が決定した[17]。
2012年(平成24年)6月29日、政府・国土交通省は、金沢 - 敦賀間 (113km) の認可着工を決めた[18]。また、同年9月4日にはJR東日本とJR西日本から共同開発車両の概要について発表された(後述)。
2013年(平成25年)6月7日、JR東日本とJR西日本は長野駅 - 金沢駅の駅名を発表。仮称となっていた上越駅は「上越妙高駅」、新黒部駅は「黒部宇奈月温泉駅」、新高岡駅はそのまま「新高岡駅」に決定した[19][20]。
2013年6月16日、北陸新幹線における乗務員交代は長野駅で行ない、JR西日本の乗務員がJR東日本の営業区間を含む長野 - 金沢間を担当することにJR東日本とJR西日本の両社が合意したことが明らかとなった[21]。
2013年10月2日、全線とも北陸新幹線の名称で統一し[1]、JR東日本の区間では、「長野経由」と表示することを明らかにした[22]。同日、金沢開業後の運行形態も発表され、10月10日には列車愛称も発表された(詳細後述)。
開業以来16年が経過して、自動列車制御装置 (ATC) の老朽化が進行していたことと、金沢への延伸区間が当初からデジタルATCで2014年度末に開業することから、2013年11月9日夜から10日早朝にかけての切り替え工事により、高崎から長野新幹線運転所までの区間が従来のアナログATCからデジタルATCに切り替えられた。これにより、JR東日本の新幹線の全区間がデジタルATC化された[23]。このATC更新により、2014年3月15日のダイヤ改正から東京 - 長野間で平均して下りで2分、上りで4分所要時間が短縮された[23][24]。
駅と接続路線
開業区間
会社 | 架線周波数 | 駅名 | 営業キロ | 実キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
東京駅から高崎駅まで東北・上越新幹線と線路を共用 | |||||||
東日本旅客鉄道 | 50 Hz |
高崎駅 | 0.0 | 0.0 | 東日本旅客鉄道:上越新幹線・高崎線・上越線・信越本線 上信電鉄:上信線 |
群馬県 | 高崎市 |
安中榛名駅 | 18.5 | 18.5 | 安中市 | ||||
軽井沢駅 | 41.8 | 41.8 | しなの鉄道:しなの鉄道線 | 長野県 | 北佐久郡軽井沢町 | ||
60 Hz |
佐久平駅 | 59.4 | 59.4 | 東日本旅客鉄道:小海線 | 佐久市 | ||
上田駅 | 84.2 | 84.2 | しなの鉄道:しなの鉄道線 上田電鉄:別所線 |
上田市 | |||
長野駅 | 117.4 | 117.4 | 東日本旅客鉄道:信越本線 長野電鉄:長野線 |
長野市 |
未開業区間
- 敦賀駅以西はルート未決定。後述「敦賀以西のルート」の節を参照。
- 2025年度開業予定の金沢駅 - 敦賀駅間のうち、金沢駅 - 白山総合車両所間は長野駅 - 金沢駅間開業と同時に非営業線として供用開始予定、福井駅部も既に完成している。
- ※:北陸新幹線の延伸開業後、経営分離が予定されている並行在来線。事業者名・路線名は経営分離前時点のもの。
- 実キロは高崎駅起点[25][26][27]。
進捗状況 | 会社 | 架線周波数 | 駅名 | 実キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2014年度開業予定 | 東日本旅客鉄道 | 60 Hz |
長野駅 | 117.4 | 東日本旅客鉄道:信越本線 長野電鉄:長野線 |
長野県 | 長野市 |
飯山駅 | 147.3 | 東日本旅客鉄道:飯山線(既存駅から300m移設) | 飯山市 | ||||
上越妙高駅 | 176.9 | 東日本旅客鉄道:※信越本線(新駅設置予定・現在の脇野田駅付近) | 新潟県 | 上越市 | |||
西日本旅客鉄道 | |||||||
50 Hz [* 1] |
糸魚川駅 | 213.9 | 西日本旅客鉄道:大糸線・※北陸本線 | 糸魚川市 | |||
60 Hz |
黒部宇奈月温泉駅 | 253.1 | 富山地方鉄道:本線(新黒部駅(建設中)) | 富山県 | 黒部市 | ||
富山駅 | 286.9 | 西日本旅客鉄道:高山本線・北陸本線 富山地方鉄道:本線(電鉄富山駅)・市内軌道線(富山駅前駅・富山駅中央駅(建設中)) 富山ライトレール:富山港線(富山駅北駅) |
富山市 | ||||
新高岡駅 | 305.8 | 西日本旅客鉄道:城端線(新駅設置予定) | 高岡市 | ||||
金沢駅 | 345.4 | 西日本旅客鉄道:※北陸本線 北陸鉄道:浅野川線(北鉄金沢駅) |
石川県 | 金沢市 | |||
2025年度開業予定 | |||||||
小松駅 | 372.6 | 西日本旅客鉄道:※北陸本線 | 小松市 | ||||
加賀温泉駅 | 387.2 | 西日本旅客鉄道:※北陸本線 | 加賀市 | ||||
芦原温泉駅 | 403.4 | 西日本旅客鉄道:※北陸本線 | 福井県 | あわら市 | |||
福井駅 | 421.4 | 西日本旅客鉄道:※北陸本線 えちぜん鉄道:勝山永平寺線 福井鉄道:福武線(福井駅前駅) |
福井市 | ||||
南越駅(仮称) | 440.4 | (接続路線なし、予定地は北陸自動車道武生インターチェンジ付近) | 越前市 | ||||
敦賀駅 | 470.6 | 西日本旅客鉄道:北陸本線・小浜線 | 敦賀市 |
テンプレート:Reflist このほか、白山市内に駅を設置する構想がある。候補地は加賀笠間駅周辺が最も有力で、当初検討されていた白山総合車両所に「白山駅」(仮称)を設置する案の代替案となっている[28]。
今後の見通し
長野 - 金沢間
長野(長野新幹線車両センター) - 金沢間は、金沢駅から福井方面へ約10kmに位置する白山総合車両所までの回送線とあわせて2014年度(平成26年度)末に一括開業する予定である。白山総合車両所までの回送線は、金沢駅以西の開業時には営業線として供用される。
2012年度時点で高架橋、橋梁、トンネルなどは長野駅から金沢駅まで切れ目なく完成しており、残すところはレールや架線などの運行系統および駅舎や車両基地の工事が主なものとなっている。区間最長である飯山トンネル(全長22,225m)は地質がもろく2003年(平成15年)に発生した土砂流出事故の影響などもあり、予定からは遅れたが2007年(平成19年)に貫通した。
国土交通省の試算では、富山駅 - 金沢駅の開業30年後の収支改善効果は約80億円と、北陸・北海道(新青森駅 - 新函館駅間)・長崎(武雄温泉駅 - 諫早駅間)の新規着工3区間の中でトップで、経済効果は開業50年後には北海道に次ぐ約6500億円(富山駅 - 金沢駅間のみ)となっている。
この区間全体の収支改善効果は、JR西日本が営業主体となる上越妙高駅 - 金沢駅間では年間325億円、JR東日本が営業主体となる長野駅 - 上越妙高駅間は同80億円と試算されているが、他社区間である上越妙高駅 - 金沢駅間に乗り入れることによるJR東日本の収益増加(いわゆる「根元受益」)が年間390億円にも達することから、当時の政府・与党(自民・公明)ではこの分についても負担を求めるとしていたが、JR東日本は難色を示していた。
なお、整備新幹線としての北陸新幹線の起点は東京駅であるが、東京駅 - 大宮駅間は東北新幹線、大宮駅 - 高崎駅間は上越新幹線と共用している。
新潟県の費用負担問題
2009年(平成21年)2月12日、新潟県知事泉田裕彦は、国土交通省から資材価格高騰などを理由に220億円の建設費追加負担を求められたことに対して、「突然増額を求められても対応は難しい」として、算出根拠について納得できる説明があるまでは増額分の負担に応じない姿勢を表明した。
同年12月25日、泉田は国土交通大臣の前原誠司と話し合い、「県と国の信頼関係が再構築された」として2009年度分負担金残額計104億円を支払うと表明した[29][30][31]。また新潟県が2009年(平成21年)11月6日国地方係争処理委員会に計画の認可に審査を要求し、委員会は同年12月25日却下[32]。新潟県は却下に対して規定の30日内の2010年(平成22年)1月27日までに東京高裁に提訴せず、国との協議は続行されることとなった[33][34]。
しかし、新潟県は協議が進展しないことを理由に2011年度当初予算案に建設負担金を盛り込まなかった[35]。
2010年9月13日、JRが国側へ支払う貸付料には、並行在来線の赤字解消分が含まれるとして新潟県が行った北陸新幹線貸付料に関する情報開示請求に対して一部開示の決定がなされた。これを受けて同県は、同県区間の並行在来線の赤字解消相当額は、30年で780億円を超えるとの試算を発表した[36]。
なお、新潟県および泉田の対応には、大阪府知事の橋下徹(当時)は北陸新幹線自体には賛成ではあるが、直轄事業負担金の観点からこの対応に強い支持を表明している[37]一方、新幹線未開業の富山・石川両県を人質にとるような手法であることから石川県知事の谷本正憲からは強い不快感が表明された[38]。
しかし2012年2月17日、新潟県知事の泉田は国土交通大臣前田武志と会談し、新幹線開業に伴う在来平行線の第三セクター運営において、国内有数の豪雪地域である信越及び越中・越後国境での鉄道運営に関する赤字相当額として県が試算していた「30年間で780億円」という金額を国が追加支援をする事等を条件に、これまで県として支払いを拒否していた地方負担分を支出することに合意した。これにより、北陸新幹線の建設は予定通り2014年度末までの開業計画に遅れることがなくなる見込みとなった[39]。
金沢 - 敦賀間
2011年(平成23年)12月26日に政府・民主党は、金沢(白山総合車両所) - 敦賀間の建設を認める方針を決定し[17] [40]、翌2012年(平成24年)6月29日に、政府・国土交通省は金沢 - 敦賀間113kmの着工認可を発表した。当区間は2025年度中の開業を目指している。
当区間の着工認可については、紆余曲折を経ている。2007年(平成19年)5月に政府・与党プロジェクトチームによる整備新幹線計画の見直しが始まり、北陸3県の正・副知事はヒアリングでこの区間の着工認可を求める発言をしている。同年7月参院選前には内閣総理大臣(当時)の安倍晋三が遊説で北陸新幹線の敦賀までの延伸について議論していくと力説、これに勢い付いた敦賀市とJR西日本は、30億円で予定していた(北陸新幹線通過・停車を想定していない)敦賀駅全面建替え計画を部分改修に規模縮小変更し対応準備。2008年11月13日には沿線各市長らが上京して自民党や諸官庁に改めて一括認可と早期整備を要望した。
2008年(平成20年)12月9日に、自民党の鉄道調査会と整備新幹線建設促進議員連盟により2009年(平成21年)度の認可、着工が決議された。しかし政府は、敦賀以西の「あり方」が決着していないことを理由として、金沢(白山総合車両所) - 敦賀間の認可を先送りしていたが[41] [42]、2012年6月29日に認可された[18]。
敦賀市においては米原駅経由で東京まで現在は約3時間であるところ、北陸新幹線経由でも3時間前後になるとの見通しであり、並行在来線問題もあって市民の一部からは「新幹線は要らない」という声も存在する[43]。
民主党政権に交代後、高速増殖原型炉もんじゅ(敦賀市)の運転再開をめぐり、福井県知事の西川一誠と政府の間で交渉が行われ、政府が北陸新幹線延伸を示唆したことで、2010年4月26日知事は再開を了承する方針を伝えた[44]。
なお、福井駅については新幹線規格で路盤のみ整備して、2008年度末に完成した。これは2005年(平成17年)春に北陸本線福井駅周辺の高架化が完了し、まだ地上に残されているえちぜん鉄道を高架化するため暫定的に新幹線ホームに乗り入れる形にしたからである(以前の計画ではえちぜん鉄道が2階、新幹線が3階の二重高架となる予定であった)。また、新幹線が福井まで延長された際には、えちぜん鉄道は現北陸本線上りホームの北半分を使用する予定である。県は九頭竜川に架かる県道と一体型の橋の先行整備を進めていて、周辺の区画整備で新幹線用の土地も確保してある。
敦賀市内のルートについて、予定ルート上にラムサール条約登録の湿地である中池見湿地が存在していることが明らかとなった。環境アセスメントの結果によって、民家を避けるようルート設定が行われたためであるとされ、専門家からは、中池見湿地に生息する多数のヘイケボタルへの影響をはじめとして、環境への悪影響が懸念されている[45]。
敦賀以西のルート
敦賀から大阪市(新大阪駅)へのルートについては、整備5線の中でこの区間のみ公表されていない。
国土交通省は金沢 - 敦賀間開業時点で、新幹線と在来線を直通運転できるフリーゲージトレインの導入を取り入れる方針を固めており、これにより在来線で大阪駅、および北陸本線・東海道本線経由で米原・名古屋方面への直通も可能になる[46]。しかし、フリーゲージトレインは開発途上で技術的な課題があるとともに在来線の特急列車と同じ速度でしか運転できないといった懸念も残されているほか[47]、フリーゲージトレインは通常の新幹線より重くなることにより線路の保守費用が膨らみ、車両の製造費が高くなるが[48]、JR西日本もフリーゲージトレインの導入に前向きな姿勢を見せている[46]。なおフリーゲージトレインの導入は、新幹線と在来線の乗り換えを解消する暫定措置としている[49]。
整備計画決定前には、琵琶湖東岸を通り米原駅で東海道新幹線に接続するルートが有力視されていたが[50]、1973年(昭和48年)11月13日に決定された整備計画では、主要経由地に小浜市付近が加えられた[51]。琵琶湖東岸を通るルートは北陸・中京新幹線として同年11月15日に基本計画が公示された。
しかし、整備計画通りのルートでは建設費が約1兆円と非常に高額であり、また、森喜朗が「角さん(田中角栄)が鉛筆をなめて地図に描いたルート」と評するように、必ずしも旅客流動に合ったルートとはいえないことから、政府・与党では整備計画通りのルート(若狭ルート)に加えて、米原ルート、湖西ルートの3ルートが検討されている。
輸送人員(百人/日) | 比率 (%) | |
---|---|---|
山陽新幹線から新大阪・京都で乗換 | 26.1 | 9.9 |
大阪から直通列車利用 | 97.7 | 37.2 |
京都から直通列車利用 | 51.4 | 19.6 |
新幹線(西側)から米原乗換 | 0.8 | 0.3 |
米原周辺地域から直通列車 | 6.9 | 2.6 |
新幹線(東側)から米原乗換 | 38.5 | 14.7 |
名古屋から直通列車利用 | 41.0 | 15.6 |
2009年8月に福井新聞社が福井県民に実施した世論調査[53]によると、嶺南では若狭ルート、嶺北では米原ルート支持が多かったものの、3ルートとも2割強で大差ないという結果であった。
ルート | 比率 (%) | 1位となった地域 |
---|---|---|
若狭ルート | 22.5 | 嶺南西部(小浜市など)、越前市、南越前町 |
湖西線利用 | 21.9 | 嶺南東部(敦賀市など)、あわら市、坂井市 |
米原乗り入れ | 20.8 | 福井市、奥越(大野市、勝山市)、鯖江市、旧今立郡 |
敦賀または福井止まり | 13.9 | |
その他 | 15.1 |
従来、「湖西ルート」はフリーゲージトレイン等の直通による湖西線利用のことを指していたが、2009年7月に、同年9月より若狭・米原・湖西の3ルートについて航空写真による測量を開始する予定と報じられて以降[54]、他の2ルート同様、フル規格による整備と解釈されている。
なお、2005年(平成17年)12月に鉄道建設・運輸施設整備支援機構が国土交通省に認可申請した南越 - 敦賀間の工事実施計画では、敦賀駅の新幹線ホームは、在来線ホームから南東に80mずれた地点に設置され、若狭ルートを前提とした配線となっているが、ほかの2ルートに決定した場合でも大きな手戻り工事が発生しないよう配慮されている。
関西広域連合は2013年3月8日に「北陸新幹線ルート提案に向けた検討結果」[55]を発表した。前年に京都府広域交通インフラ検討委員会もルート案別比較を作成したが、第5回委員会では関西広域連合の資料を用いた[56]。資料によると、各ルートの特徴は以下の通りである。
若狭ルート案
- ルート:敦賀駅 - 小浜市 - 亀岡市 - 新大阪駅
- 建設費:約9500億円(車庫線・回送線整備費が不要)
- 建設延長:123km
- 所要時間 敦賀駅 - 新大阪駅:33分(42分短縮、「サンダーバード」比(以下同じ))
- 需要:約26000人/日
- 総便益:約1兆400億円
- メリット
- デメリット
- 利用者総数は3ルート中最小(京都市内を通らないため)。
- 多くのトンネルを掘る必要が生じるので、建設費が最も高額。
- 都心部(新大阪駅付近)での大規模な建設工事が必要。
湖西ルート案
- ルート:敦賀駅 - 高島市 - 大津市 - 京都駅
- 建設費:約7700億円(車庫線・回送線整備費含む)、約6200億円(含まない)
- 建設延長:81km
- 所要時間 敦賀駅 - 新大阪駅:京都駅乗り換えなし 35分(40分短縮)
- 需要:約31000人/日
- 総便益:約1兆1200億円
- メリット
- 現行の京阪 - 北陸のルートに沿い、安定した需要が見込める。
- 湖東(米原ルート)より平野も人口も少なく、用地買収費用を削減出来る可能性がある。
- デメリット
- 東海道新幹線との乗り換え可能性があり、東京 - 大阪間で二重系が確保できる区間が短い。
米原ルート案
- ルート:敦賀駅 - 長浜市 - 米原駅
- 建設費:約5100億円(車庫線・回送線整備費含む)、約3600億円(含まない)
- 建設延長:44km
- 所要時間 敦賀駅 - 新大阪駅:米原駅乗り換えなし 45分(30分短縮)、あり 50分(25分短縮)
- 需要:米原乗り換えなし 約33000人/日、あり 約28000人/日
- 総便益:米原乗り換えなし 約1兆1800億円、あり 約1兆1200億円
- メリット
- 関西圏だけでなく、中京圏へも整備効果の波及が期待できる。
- 建設費がもっとも低廉、既存インフラを最大限に活用できる。
- 利用者総数は3ルート中最大。
- デメリット
- 東海道新幹線との乗り換え可能性があり、東京 - 大阪間で二重系が確保できる区間が短い。ただし、東海道新幹線を運営する東海旅客鉄道(JR東海)は中央新幹線の建設に意欲を示しており、2008年には当時のJR東海社長松本正之が中央新幹線の開業により東海道新幹線に余裕ができれば同線への乗り入れはあり得ると発言している[57]。資料では、建設費のうち車庫線・回送線整備費が不要になるとしている。
- 新大阪へは3ルート中最長であり、米原での接続によっては時間短縮効果がほとんどなく、整備効果が見出だせなくなる可能性もある。
- 区間の大半が基本計画線の北陸・中京新幹線と重複するため、基本計画線と整備新幹線双方の整合性を図る必要が生じる可能性がある。
- 平野部で人口も多く、巨額の用地買収費用が発生する可能性がある。
近年の動き
沿線の福井県では、従来、小浜駅を通る若狭ルートが望ましいが、建設費が巨額なため、まず認可申請済みの南越までの着工認可を優先し、敦賀以西のルート決定はそれ以降の問題としていた。しかし、大阪までのルートが確定していないことが福井県内への延長の障害となっているとの指摘も出てきたことから、2005年(平成17年)になって、ようやくルート決定に向けて関係する滋賀・京都・大阪の各府県と協議を開始することになった。
2002年(平成14年)以降、森喜朗や自民党整備新幹線等鉄道基本問題調査会顧問の野沢太三(国鉄OB。2004年に国会議員は引退)、町村信孝など、政治家レベルで米原ルートが望ましいとする発言が相次いでいる。
北國新聞が森喜朗に行ったインタビュー[58]の中で、森は、北陸新幹線を米原で東海道新幹線に接続させ、場合によっては東海道新幹線とは別の線路を敷いたうえで大阪駅もしくは新大阪駅を経由し、関西国際空港へ直結させるという考えを語っている。米原ルートによる建設費の圧縮に加え、京都や滋賀からの関西国際空港へのアクセスが飛躍的に向上することが期待できるとしている。
沿線自治体でも、2006年(平成18年)には長浜市長選挙で米原ルート推進を公約に掲げた川島信也が当選、2007年(平成19年)には、敦賀市長が米原ルート支持を明確にした。2008年(平成20年)には、福滋県境交流促進協議会に属する9つの滋賀県の自治体が同総会の席上米原ルート支持を鮮明にし、若狭ルート沿線の小浜市長もこれに同調した[59]。2010年1月には滋賀県選出の民主党国会議員の奥村展三、徳永久志が北陸新幹線の滋賀県内への延伸受け入れを求める、あるいは検討課題とするよう滋賀県知事の嘉田由紀子に求めている[60]。
2010年11月、嘉田は滋賀県にメリットがないのに地元負担はできないとして、現状の地元負担(建設費の1/3。実際には交付税措置(整備新幹線#新スキームの項目参照)があるため、滋賀県の実質的負担額は2割弱)のままでは県内の延長に否定的な見解を示す一方、当時、大阪府知事であった橋下徹は、建設費が安く名古屋方面への利便性をも考慮すると米原ルートが現実的であるとし、受益者となる大阪として費用を負担する用意があると発言している[61]。
運営主体となるJR西日本は、1999年(平成11年)には南谷昌二郎社長(当時)、2004年(平成16年)には垣内剛社長(当時)が、米原ルートを支持する発言を行っている[62][63]が、2005年には、久間章生政府与党プロジェクトチーム座長(当時)が、「米原につなぐとJR東海の収益になってしまい、JR西日本が難色を示すなど課題は多いようだ」と発言している[64]。
2012年2月、国土交通省は、2025年に予定される敦賀延伸開業後の敦賀 - 大阪間について、財源面の問題から新幹線建設の目途が立たないことから、フリーゲージトレインによる在来線(湖西線・東海道本線)乗り入れによることを提案し[65]、2013年6月からフリーゲージトレインのプロジェクトチームを拡大して開発を本格化することになった[66]。2025年の敦賀延伸後、北陸新幹線が大阪まで延伸する暫定的措置として、大阪 - 敦賀間は在来線、敦賀 - 富山間は新幹線の線路を使って直通する「サンダーバード」を運行する予定となっている。その一方で、福井県の市民団体がフリーゲージトレインの導入を見送るように県に申し出ている[67]。
一方、2012年11月5日には京都、福井、兵庫3府県の日本海側5市長でつくる「若狭・丹後・但馬 中日本海交流会議」は若狭を通る「小浜ルート」を整備するよう求める共同アピールを採択した[68]。
2013年3月、関西広域連合は北陸新幹線敦賀以西のルートを費用対効果で、湖西ルートと小浜ルートに比べ米原ルート(延長44キロメートル)が建設費5100億円で最も安く工期も最短とする試算を出した。同年3月28日、関西広域連合は北陸新幹線敦賀以西ルートを米原ルートを政府に提案する方針を決め、4月末をめどに政府に提案、早期整備を働きかける[69]。
並行在来線の経営分離
2012年(平成24年)時点で新幹線が事業化された区間の並行在来線については、以下のような措置(予定事項を含む)がそれぞれ執られている。なお、着工認可されていない敦賀駅以西については、並行在来線の区間は確定しておらず決定事項も無い。
高崎駅 - 長野駅間
高崎駅 - 横川駅間と篠ノ井駅 - 長野駅間は新幹線開業後も信越本線としてJR東日本が運行している。横川駅 - 軽井沢駅間は鉄道路線としては廃止され、JRバス関東によるバス路線碓氷線として運行されている。軽井沢駅 - 篠ノ井駅間は第三セクター鉄道会社として設立されたしなの鉄道がしなの鉄道線として運行している。
長野駅 - 金沢駅間
長野駅 - 金沢駅間に関しては並行する在来線(信越本線の長野駅 - 直江津駅間、北陸本線の直江津駅 - 金沢駅間)をJRより経営分離することが決定している。運営については、県域ごとに既存または新設する第三セクター鉄道会社によって運営する予定である。
長野県内
信越本線の長野駅 - 直江津駅間に関しては、2007年(平成19年)1月4日に長野県知事(当時)の村井仁が、(軽井沢駅 - 篠ノ井駅間と同じく)しなの鉄道が一貫して経営を担わなくてはいけなくなるだろう、との認識を示している[70]。この場合、長野駅 - 篠ノ井駅間がJR東日本に残り、中抜き状態となる。これに関して、長野県は2009年(平成21年)6月4日に収支予測を試算した結果によれば、「しなの鉄道の負担するコストは、一体運営に切り替えるよりも現状の中抜き状態のままのほうが低廉である。」とのと見解を示した。これは、同区間の営業収入は多いものの、運営経費も多くかかるということや同区間へのJR東海による名古屋方面からの特急「しなの」などの広域乗り入れに対する、しなの鉄道の運行管理能力を問題視したためである。
2011年(平成23年)2月17日、長野県の長野以北並行在来線基本スキーム検討委員会は、長野駅 - 妙高高原駅(長野・新潟県境から0.4km新潟県寄り)間をしなの鉄道が現行区間と一体で運営することで新潟県と協議する方針を示した[71]。2012年(平成24年)4月17日には、しなの鉄道が臨時株主総会で長野駅 - 妙高高原駅間の運営を引き受けることを決議した[72]。
一方、飯山線の豊野駅 - 飯山駅間も北陸新幹線と並行するが、この区間は並行在来線とされなかったためJR東日本による経営が継続される。信越本線長野駅以南と飯山線を乗り継ぐ客は、逆に長野駅 - 豊野駅間がしなの鉄道による中抜き状態となる。
新潟県内
2001年(平成13年)12月25日、新潟県および沿線市町村(市町村合併後は上越市・糸魚川市・妙高市)により新潟県並行在来線対策協議会を設立、2008年(平成20年)8月27日には同会を解散し、新たに新潟県並行在来線開業準備協議会を設立した。
2010年(平成22年)11月25日に発表された「並行在来線経営計画(案)」[73]では、新潟県内の信越本線・北陸本線の両方を1社で、上下分離はせず一体で運営することで検討を進めることが盛り込まれた。車両は輸送量の小さい北陸本線(2007年の輸送密度は信越本線3250人/日に対して、北陸本線は1470人/日)について気動車の導入も検討するとしている。
これに先立ち、2010年(平成22年)11月22日には運営を担当する新潟県並行在来線株式会社を設立したのち、2012年(平成24年)7月1日に社名をえちごトキめき鉄道株式会社に改称した[74]。
富山県内
2005年(平成17年)7月11日、富山県並行在来線対策協議会を設立した。
2011年(平成23年)2月23日に開かれた同会の平成22年度第2回幹事会で示された「並行在来線の経営の基本方針(素案)」[75]では、普通列車の利用客の83%が県内利用であること、輸送量などが各県で大幅に異なり(2014年の輸送密度予測で石川県内13100人/日、富山県内7112人/日、新潟県内1420人/日)、一体的に運営することは難しいことが説明された。
2012年(平成24年)7月24日、富山県が中心となって富山県並行在来線準備株式会社を設立した。富山県と沿線自治体のほか、非沿線自治体や民間企業も出資している[76]。2013年(平成25年)5月29日の取締役会[77]、および6月28日の株主総会[78]を経て、7月1日から「あいの風とやま鉄道株式会社」と変更した。
北陸線で使用されている車両は老朽化が激しいことから、2両編成の新型車両を導入し、他県への乗り入れについては、石川県側は金沢駅、新潟県側は糸魚川駅までを基本とする予定である[79]。
石川県内
2005年(平成17年)6月30日、石川県並行在来線対策協議会を設立した。
2011年(平成23年)2月23日、石川県知事の谷本正憲は記者会見で、石川県内区間単独で運営企業を設立する方針を表明した[80]。
2012年(平成24年)8月28日、石川県が中心となって石川県並行在来線株式会社(現IRいしかわ鉄道株式会社)を設立した。石川県と沿線市町、民間企業、および財団法人が出資している[81]。
2013年(平成25年)6月27日、暫定であった社名を「IRいしかわ鉄道株式会社」へ改称する決定をした。
2013年(平成25年)11月26日、IRいしかわ鉄道利用促進協議会を設立した。
支線区
長野駅 - 金沢駅間には、大糸線(南小谷駅 - 糸魚川駅間)・高山本線(猪谷駅 - 富山駅間)・城端線・氷見線・七尾線などの枝線が存在する。2010年(平成22年)12月1日にはJR西日本社長の佐々木隆之が大糸線・城端線・氷見線の3線について、今後バス転換や列車本数の削減など地元自治体と話し合うと記者会見で発言していたが[82]、2011年(平成23年)7月1日、JR西日本金沢支社次長が富山県議会新幹線・総合交通対策特別委員会で枝線の分離は行わないと発言している。ただ、利用客が減少していることから対処方針について地元自治体と話し合いたいとしている[83]。
広域輸送
日本海縦貫線の一路線である北陸本線には寝台列車を含む多数の特急列車や貨物列車が運行されているが、JR西日本は北陸新幹線の開業後、原則として金沢駅 - 直江津駅間では寝台特急をのぞく特急列車は運行しない方針としている。このため、大阪駅 - 富山駅・魚津駅間の特急「サンダーバード」、名古屋駅 - 富山駅間の特急「しらさぎ」については金沢駅以東を廃止し、福井駅・金沢駅 - 越後湯沢駅間の特急「はくたか」、金沢駅 - 新潟駅間の特急「北越」については福井駅・金沢駅 - 直江津駅間を廃止とする意向だが、「はくたか」については全区間で廃止されるだろうとしている[84]。七尾線に乗り入れる特急については存続が決定した[85]。
なお、同区間を走る定期夜行列車は2015年春の北陸新幹線金沢開業を待たずして、寝台特急「北陸」と急行「能登」が2010年(平成22年)3月に、寝台特急「日本海」と急行「きたぐに」が2012年(平成24年)3月に定期運行を終了しており、通常期は週に上り下り各4本の臨時寝台特急「トワイライトエクスプレス」が運行されるのみである。その「トワイライトエクスプレス」も廃止が取りざたされていたが[86]、2014年(平成26年)5月28日にJR西日本が2015年(平成27年)春を最後に運行を終了すると発表した[87][88]。
金沢駅 - 敦賀駅間
北陸新幹線白山総合車両所- 敦賀駅間の着工認可に向けて、認可条件の一つである並行在来線の経営分離に同意する地元手続きが沿線自治体によって進められた[89]。2012年(平成24年)に着工が認可されたことを受け、引き続き並行在来線や、枝線となる越美北線の扱いを協議していくことになる。
同区間のうち石川県内については金沢駅以東と同様、IRいしかわ鉄道が運営していく検討がなされている。
2013年(平成25年)3月29日、福井県並行在来線対策協議会を設立した。
車両・列車
車両
北陸新幹線に投入される車両については、2011年12月13日の毎日新聞がJR東日本が北陸新幹線の金沢駅延伸に合わせてE2系ベースの新型車両「E7系」を導入する方針であると報じ[90]、翌14日には北陸地方のいくつかのメディアが一斉に本件について報道した。翌2012年1月には、JR西日本区間を所管する予定である同社金沢支社の支社長が定例会見の席でJR東日本との共同開発の方針に言及[91]、雪害対策を立てる必要もあるため、開業1年前(2013年)の冬シーズンの実車試験を予定しているとの趣旨を述べた。
2012年9月4日、JR東日本とJR西日本の共同リリースの形で新型車両の概要が発表された[92]。JR東日本とJR西日本で共同開発される新幹線車両で、前者の所有分については1994年に登場したE1系以降の同社の新幹線車両の系列名付与方法に準じ「E7系」の系列名が与えられ、後者の分についてもこれに準じる形で新たに「W7系」の系列名が与えられる[93]。
このE7系・W7系は長野新幹線に充当されてきたE2系をベースにした車両で[94]、E2系の8両編成(6M2T)に対して12両編成(10M2T)を基本とする。最高速度はE2系と同じ260km/h[92]。E5系に引き続いてグリーン車より上級の高級座席「グランクラス」が導入され[94]、東京方より普通車10両+グリーン車1両+グランクラス1両により編成される[92]。編成定員はグランクラス18名・グリーン車63名・普通車853名の合計934名[92]となる。車両デザインは奥山清行の監修となる[95]。
車両製造は川崎重工業・日立製作所・総合車両製作所(E7系のみ)・近畿車輛(W7系のみ)が担当する[96]。2013年10月、E7系の第一編成が川崎重工業兵庫工場で船積みされ[97]、仙台港を経由して宮城県利府町のJR東日本新幹線総合車両センターに運び込まれ、2013年11月28日、新幹線総合車両センターにてE7系が報道公開された[98]。また、W7系も第一編成が2014年4月7日に川崎重工業兵庫工場で公開され[99]、金沢港を経由して石川県白山市のJR西日本白山総合車両所に運び込まれることになっている。
2013年12月20日、E7系は北陸新幹線延伸開業に先立つ2014年3月15日より東京駅 - 長野駅間に3編成が営業用に投入されることが発表された[100]。最終的にE7系が17編成(金沢延伸前まで、上越新幹線老朽車取替分は未定)、W7系が10編成の計27編成が新製される予定である[101]。
2013年12月より一部区間で行われている試運転にはE926形(East i)やE2系J編成が使われているが、開業後もこれらの形式が用いられるかについては現時点で未定となっている。
列車
2013年10月2日、長野駅 - 金沢駅間開業時の運行形態についての発表があった。具体的には東京駅 - 金沢駅間を主要駅のみ停車する「速達タイプ」、東京駅 - 金沢駅間各駅停車の「停車タイプ」、富山駅 - 金沢駅間の「シャトルタイプ」、東京駅 - 長野駅間の「長野新幹線タイプ」の4種類が運行される予定である[22]。
2013年10月10日、JR東日本とJR西日本の両社は一般公募の結果を参考にして北陸新幹線の列車名を決定・発表した[102][103]。列車名の公募については、2013年5月28日にJR東日本とJR西日本が発表した[104][105]。募集は2013年5月31日から6月30日まで特設サイトや郵便はがきで行われ、144,931件の11,672種類から選定された。
このうち「あさま」については現行列車名のまま変更せず、「はくたか」は国鉄時代に東京と北陸地方を上越線・信越本線経由で結び、後に北越急行ほくほく線経由の上越新幹線連絡特急に用いられた愛称として、「つるぎ」はかつて北陸地方と関西地方を結んだ夜行特急に用いられた愛称として、それぞれ親しまれているとして選定された[103]。「かがやき」については「輝く光がスピード感と明るく伸びていく未来をイメージさせるため」との選定理由で選ばれている[103]が、列車愛称としての「かがやき」は、かつて信越本線経由の上越新幹線連絡特急として用いられていた経緯がある[106]。
脚注
参考文献
- 川島令三編著『中部ライン - 全線・全駅・全配線』6 加賀温泉駅 - 富山エリア、講談社、2010年。ISBN 978-4-06-270066-5。
- 川島令三編著『中部ライン - 全線・全駅・全配線』7 富山・糸魚川・黒部エリア、講談社、2010年。ISBN 978-4-06-270067-2。
- 川島令三編著『中部ライン - 全線・全駅・全配線』10 上越・秩父エリア、講談社、2011年。ISBN 978-4-06-270070-2。
関連項目
- 日本の鉄道路線一覧
- 整備新幹線
- 全国新幹線鉄道整備法
- 長野新幹線
- 北陸・中京新幹線
- 建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画
- 加越トンネル
- 2014年問題 - 北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間の延伸開業後に予想される、上越新幹線の枝線化の問題について。
- 上信越自動車道
- 北陸自動車道
外部リンク
新幹線関連
- 北陸新幹線建設促進同盟会
- 鉄道・運輸機構 | 鉄道の建設 | 事業概要 | 整備新幹線の建設 | 北陸新幹線
- 北陸新幹線ニュースレター(長野県)
- 北陸新幹線 長野 - 富山間延伸工事の様子
- 上越市総合政策部新幹線・交通政策課
- 新幹線まちづくり推進上越広域連携会議
- 新幹線駅周辺整備室(飯山市)
- 未来を拓く北陸新幹線(富山県)
- カウントダウン北陸新幹線 金沢開業
- 北陸新幹線|福井県 Fukui Prefectural Government
- 北陸新幹線福井駅工事記録
- 交通政策課/滋賀県
- 北陸新幹線「富山県」開業PR事務局
並行在来線関連
- 長野以北並行在来線について - 長野県および長野以北並行在来線対策協議会
- 長野以北並行在来線基本スキーム検討委員会について - 長野県
- しなの鉄道株式会社
- 長野以北開業準備状況 - しなの鉄道株式会社
- 新潟県:並行在来線 - 新潟県
- 新潟県並行在来線対策協議会 - 新潟県
- 新潟県並行在来線開業準備協議会 - 新潟県
- えちごトキめき鉄道株式会社
- 富山県の並行在来線対策について - 富山県
- 富山県並行在来線対策協議会 - 富山県
- あいの風とやま鉄道株式会社
- 石川県/並行在来線対策について - 石川県
- 石川県並行在来線対策協議会について - 石川県
- IRいしかわ鉄道利用促進協議会について - 石川県
- IRいしかわ鉄道株式会社
- 並行在来線:北陸新幹線 - 福井県
- 福井県並行在来線対策協議会 - 福井県
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- ↑ 同法人は1991年に解散され、同法人の業務は現在では独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が継承している。
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