整備新幹線
整備新幹線(せいびしんかんせん)とは、新幹線の中で、全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)第7条に基づいて日本政府が1973年11月13日に整備計画を決定した以下の5線の新幹線のことである。
- 北海道新幹線:青森市 - 札幌市 360km
- 東北新幹線:盛岡市 - 青森市 179km・開業済み
- 北陸新幹線:東京都 - 大阪市(長野市・富山市付近経由) 600km
- 九州新幹線
- 鹿児島ルート:福岡市 - 鹿児島市 257km・開業済み
- 長崎ルート(西九州ルート):福岡市 - 長崎市 118km
このうち、北陸新幹線の高崎駅 - 長野駅間117km(長野新幹線)と、東北新幹線の盛岡駅 - 新青森駅間179km、九州新幹線・鹿児島ルート博多駅 - 鹿児島中央駅間257kmが開業している。
また、北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間は2014年度、北海道新幹線の新青森駅 - 新函館北斗駅間は2015年度に開業予定である。
整備新幹線以前に既に計画されていた新幹線である東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線の東京駅 - 盛岡駅間、上越新幹線、成田新幹線(計画失効)は整備新幹線には含まれない。また、計画中の中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法第7条に基づく新幹線ではあるが、整備計画の決定が2011年5月であったため、整備新幹線には含まれない。
呼称について
テンプレート:未検証 整備新幹線という言葉が上記5線の総称として用いられるようになったのは、1972年ごろからといわれている。当時は、他に「整備計画線」「整備5線」「整備5新幹線」などとも呼ばれていた。
この当時の状況を見ると、東海道新幹線と山陽新幹線の2線が日本国有鉄道の手によりすでに開業しており(ただし、山陽新幹線は、1972年3月15日の時点で新大阪駅 - 岡山駅間のみ開業、岡山駅 - 博多駅間は工事中)、東北新幹線(東京都 - 盛岡市)、上越新幹線、成田新幹線の3線も、全国新幹線鉄道整備法に基づき国が基本計画決定→整備計画決定→工事実施計画認可の手続きを終え、着工または着工準備の段階に入っていた。さらに、3線に続いて着工する予定の新幹線として、北海道新幹線(青森市 - 札幌市)、東北新幹線(盛岡市 - 青森市)、北陸新幹線、九州新幹線(福岡市 - 鹿児島市)、九州新幹線(福岡市 - 長崎市)の5線の基本計画が定められ、翌1973年には5線の整備計画が決定されている。
すなわち、1972年の時点では「営業中の2線」(東海道・山陽新幹線)、「工事中の3線」(東北・上越・成田新幹線)、「整備計画を決定しようとしていた5線」(北海道・東北・北陸新幹線、および九州新幹線鹿児島・長崎ルート)という区分が発生していたことから、「整備計画を決定しようとしていた5線」は、「営業中の2線」、「工事中の3線」と区別する意味で、整備新幹線などと呼ばれるようになったものと思われる。また、この5線は、1973年の整備計画決定直後にオイルショックの影響で着工が見合わせられ、1989年の北陸新幹線高崎駅 - 軽井沢駅間の着工まで「整備計画決定のまま計画が中断した状態」が長く続いたことも、整備新幹線の名称を定着させた要因となっている。
なお整備新幹線と呼ばれる5線も、5線に先行して着工した3線も、前述の通り全国新幹線鉄道整備法に基づき国が計画した新幹線であり、3線が整備新幹線と呼ばれていない理由として「国鉄が独自に整備計画を定めたため」とするのは誤りである。一方、全国新幹線鉄道整備法が制定される前に開業または着工した東海道新幹線と山陽新幹線の2線は、東海道本線と山陽本線の輸送力増強を図るため、国鉄が別線線増方式で計画・建設したものであり、「国鉄が独自に計画を定めた新幹線」といえる(ただし、全国新幹線鉄道整備法の附則では、2線とも同法に基づく新幹線鉄道と見なしている)。
また全国新幹線鉄道整備法は、1991年の改正で「暫定整備計画」という新たな建設スキームを規定し、整備計画が決定している新幹線鉄道の建設線について、一部またはすべての区間を新幹線鉄道直通線(いわゆる「ミニ新幹線」)、または新幹線鉄道規格新線(いわゆる「スーパー特急」)として暫定的に整備するための手続きを追加した。ただし、ミニ新幹線として整備された山形新幹線と秋田新幹線は、鉄道事業法に基づき軌間変更の手続きが行われたため、整備新幹線の区分には入らない。
路線建設の計画および着工の推移
以下は整備計画決定から現在までの、路線の計画および着工の推移を時系列で列記する。
注記
政権与党による着工区間の決定は、着工に向けた条件の1つにすぎず、着工が確約されたことを必ずしも示すものではない。国の所管官庁、整備新幹線および並行在来線の沿線都道府県、沿線市町村、さらにJRとの間で諸調整や意見の対立が見られることがある。
例を挙げると、九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)に関しては、「並行在来線沿線自治体すべての同意」の条件を満たせなかったため、建設工事には着手できなかった。その後、佐賀県・長崎県・JR九州による、いわゆる「三者合意」により「並行在来線沿線自治体すべての同意」が必要ではなくなったため着工が認可された。
運輸省案と3線5区間の着工
1988年、運輸省(当時)が、東北・北陸・九州(鹿児島ルート)の3線について、建設費を削減しつつスピードアップを図るため、ミニ新幹線やスーパー特急方式を組み合わせた、いわゆる「運輸省案」を発表。
着工区間の沿線自治体や政治家からは、この案を「ウナギ(フル規格)を注文したらアナゴやドジョウ(ミニ新幹線やスーパー特急方式)が出てきた」と揶揄されるほど不評であったが、この機会を逃すと次回の着工がいつになるか不透明であったことから、やむなくこれを受け入れ、同年、政府・与党申し合わせにより着工順位が決定された。
- 1.北陸新幹線:高崎 - 長野間(高崎 - 軽井沢間フル規格、軽井沢 - 長野間はミニ新幹線。ただし、長野オリンピックの開催が決定した場合、フル規格への変更も考慮)→1997年フル規格で開業。
- 1.北陸新幹線:高岡 - 金沢間(スーパー特急方式)→1992年8月、石動 - 金沢間着工。
- 2.東北新幹線:盛岡 - 青森間(沼宮内(現・いわて沼宮内) - 八戸間フル規格、前後の区間はミニ新幹線)→盛岡 - 八戸間は2002年、八戸 - 青森間は2010年にフル規格で開業。
- 3.九州新幹線(鹿児島ルート):八代 - 西鹿児島(現・鹿児島中央)間(スーパー特急方式)→起点を新八代に変更の上、2004年フル規格で開業。
- 4.北陸新幹線:糸魚川 - 魚津間(スーパー特急方式)→1993年10月、糸魚川 - 新黒部(仮称)間着工。新黒部(仮称) - 魚津間は在来線への取り付け線のため着工に至らず。
しかし新幹線の建設財源が限られていたことから、優先順位1位でフル規格区間であった高崎 - 軽井沢間のみ翌1989年に着工。その他の区間は、既存新幹線譲渡収入(旧スキームの項を参照)が新幹線建設の特定財源となる1991年以降の着工となった。
1991年、長野オリンピックの開催が決定したことから、軽井沢 - 長野間がフル規格に変更された。一方、同順位だった高岡 - 金沢間は、富山県内の沿線自治体が並行在来線となる北陸本線石動 - 高岡間の経営分離に反対したことから、新高岡 - 金沢間の基本ルートを変更、着工区間は石動 - 金沢間に短縮された。
1994年、5年毎に行うとされた計画見直しで新規着工の機運が高まるが、財源が壁となり、ミニ新幹線で建設するとしていた東北新幹線の盛岡 - 沼宮内間をフル規格に変更する(その代わり八戸 - 青森間は取り下げ)にとどまった。
新スキームによる3線3区間の着工
1996年、新規着工の財源にJR本州3社の固定資産税軽減特例(1/2)(新スキームの項参照)を活用する方針が示され、新規着工区間の選定が活発化する。
同年12月25日、政府与党合意により、候補となる3線3区間を選定。政府・与党整備新幹線検討委員会による採算性の検討などを行い、1998年1月21日、着工および着工区間の優先順位が決定した。これらの区間は同年3月に着工している。
- 1.東北新幹線:八戸 - 新青森間(フル規格)→2010年開業
- 1.九州新幹線(鹿児島ルート):船小屋(九州新幹線全通に合わせて筑後船小屋に改称) - 新八代間(スーパー特急方式。同時に着工済みの八代 - 西鹿児島間の起点を新八代に変更)→2011年フル規格で開業
- 2.北陸新幹線:長野 - 上越(仮称)間(フル規格)
自自公連立政権成立と2線3区間の新規着工
1999年、自自連立、自自公連立による計画見直し案で、既着工区間のフル規格化と新規着工の方針が出され、2000年には、運輸省(当時)が翌2001年度予算の概算要求で、北陸・上越 - 糸魚川間と九州・博多 - 船小屋間の新規着工を要求した。
同年の政府・与党申し合わせで、新黒部(仮称) - 富山間を加えた2線3区間の新規着工が正式に決定した。
- 北陸新幹線:上越(仮称) - 糸魚川間および新黒部(仮称) - 富山間(フル規格。同時に着工済みの糸魚川 - 新黒部(仮称)間もフル規格に変更)
- 九州新幹線(鹿児島ルート):博多 - 船小屋間(フル規格。同時に着工済みの船小屋 - 西鹿児島間もフル規格に変更)→2011年開業
九州新幹線部分開業と3区間の新規着工
2004年3月13日、九州新幹線・新八代 - 鹿児島中央間が部分開業。開業に前後して新規着工に向けた見直し作業が行われ、2004年6月10日、与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームの合意により3区間(福井駅周辺区間の整備を含めると4区間)の新規着工区間が決定した。
- 北海道新幹線:新青森 - 新函館(仮称)間(フル規格)→2015年度末の完成を目指す。
- 北陸新幹線:富山 - 石動間および金沢 - 白山総合車両基地(仮称)間(フル規格。同時に着工済みの石動 - 金沢間もフル規格に変更)→2014年度末の完成を目指す。
- 北陸新幹線:福井駅 →2005年6月4日着工、2009年2月19日完成(新幹線開業までは暫定的にえちぜん鉄道が使用することになっていたが、2011年3月現在えちぜん鉄道乗り入れ工事は行われていない)。
- 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート):武雄温泉 - 諫早間(スーパー特急方式)
2005年、北海道新幹線と北陸新幹線の新規区間が着工された。長崎(西九州)ルートについては、並行在来線となる長崎本線・肥前山口 - 諫早間の沿線自治体(佐賀県江北町・鹿島市)が経営分離に反対していたため、2005年以降国の公共事業費として毎年10億円が計上されていたが着工できず、予算は消化できないという状況が続いていた。その後、2007年12月に推進派3者(佐賀県・長崎県・JR九州)による、いわゆる「三者合意」による「上下分離方式」により、JR九州が並行在来線区間を新幹線開業後20年間運行するという形で決着が図られ、2008年3月に着工認可が下り、翌4月に着工された。
政権交代後初の新規着工
北海道・北陸・九州(長崎ルート)の未着工区間 2009年9月の民主党への政権交代に伴い、大幅な公共事業の見直しが行われ、北海道・北陸・九州(長崎ルート)の未着工区間の建設は一時凍結されることになった。これらの区間については、莫大な建設費や並行在来線の分離に対する沿線自治体の合意などの面でも大きな問題を抱えていた。しかし、JRが支払う線路使用料を建設費に充てることで財源の目途が立ったことや沿線自治体との協議が進んだこと、また、東日本大震災以降、軸となるインフラの整備を集中的に行っていく方向に進んでいたこともあり、2011年末に、沿線自治体との合意という条件付きで以下の3区間の新規着工の方針が国土交通省によって示された[1]。
そして、2012年6月29日に正式に着工が認可された[2]。北海道は2035年度、北陸は2025年度、九州(長崎ルート)は着工済の武雄温泉 - 諫早間を含めて2022年度の完成を目指して建設が進められることになった。
未着工区間
2012年6月現在の未着工区間は以下の通りである。
北陸新幹線についてはフリーゲージトレインによる暫定的な乗り入れが検討されている(この場合、小浜ルートではなく湖西ルートもしくは米原ルートの形をとることになる)。また、九州新幹線長崎ルートは武雄温泉以西が標準軌による整備に変更されたことで、当該区間のみが狭軌という形で取り残される形となった。この場合、フリーゲージトレインの軌間変更が2回必要な形になることから、所要時間の増加につながる。このため、当該区間の扱いについて注目されている。
これまでの動き
2007年5月末、政府与党の整備新幹線プロジェクトチームの初会合が開かれ、沿線知事・副知事に対するヒアリングが行われた。未着工区間に対しては以下のような要望があった。
2008年12月、政府・与党のワーキンググループで以下の区間について2009年12月までに着工を認可することで合意した。
- 北海道新幹線:札幌 - 長万部間
- 整備方式は要検討(フル規格またはスーパー特急方式)
- 北陸新幹線:白山総合車両基地(仮称) - 福井間、敦賀駅部
- 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート):長崎駅部
財源問題
東北・上越新幹線は、国鉄の自己資金や財政投融資等の借入金によって建設され、結果的に国鉄債務増大の一因となったことへの反省から、整備新幹線は原則として、返済の必要がない無償資金による公共事業方式で建設され、営業を担当するJRからは、開業後の受益に応じた線路貸付料を受け取る形とした。
公共事業方式で建設することになったものの、公共事業費の増額には財務省(旧・大蔵省)の抵抗が大きく、新規着工には新たな財源探しが付き物となる。
旧スキーム
1989年、北陸新幹線・高崎 - 軽井沢間着工の際に決められた。
- JR:50%
- 整備新幹線の線路貸付料
- 既設新幹線(東海道・山陽・東北・上越)のリース料から新幹線保有機構の旧国鉄債務を返済した余剰分
- 国(公共事業費等):35%
- 第一種工事(線路その他の主体等の鉄道施設に係る工事) - 40%
- 第二種工事(駅その他の地域の便益に密接に関連する鉄道施設に係る工事) - 25%
- 地方:15%
- 第一種工事 - 10%
- 第二種工事 - 25%
地方負担分は原則として都道府県の負担となるが、90%は地方債の起債が可能。また10%は沿線市町村に負担させることができる(新スキームでも同様)。
1990年、既存新幹線のJR3社への売却を翌年に控え、譲渡収入のうち資産再評価に伴う上乗せ額1.1兆円が整備新幹線の特定財源とされ、毎年724億円が国およびJR(既存新幹線リース料余剰分に代わるもの)の財源となった。
なお北陸新幹線(高崎 - 長野)については、開業を長野オリンピック開幕に間に合わせるため、例外として有償資金である財政投融資(2775億円)が投入された。現在、開業済み3区間の線路貸付料で返済中である。
新スキーム
1996年、3線3区間の新規着工に伴い、国・地方・JRの負担割合の見直しを行った。
- JR:受益の範囲を限度とした貸付料など
- 国:JR負担分を除く2/3
- 公共事業費
- 既存新幹線譲渡収入(旧スキームでJRの負担とされていたものも含む)
- 地方:JR負担分を除く1/3
- うち90%は地方債の起債が認められ、償還の際には元利償還金の標準財政規模に占める割合に応じて元利合計の50%から70%に対して地方交付税措置を行う(JR本州3社の固定資産税軽減特例(1/2)終了に伴う地方交付税減額分を配分)。したがって地方の実質負担は約12%から18%となる。
2004年末の政府・与党申し合わせで、既存新幹線の譲渡収入の中から2013年度以降の分を前倒しする形で活用することが決まった。
また、着工予定区間である北陸新幹線(富山 - 金沢)や北海道新幹線(新青森 - 新函館)の収支改善効果試算の過程で、他社区間に乗り入れることになるJR東日本の収益増加額(いわゆる「根元受益」)が巨額(北陸390億円/年、北海道220億円/年)となることが明らかになり、この分についても負担を求める方針も盛り込まれたが、当のJR東日本は難色を示している。
整備新幹線建設費の推移
1989年 | 63 |
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1990年 | 211 |
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1991年 | 373 |
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1992年 | 1296 |
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1993年 | 1922 |
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1994年 | 1942 |
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1995年 | 2548 |
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1996年 | 1725 |
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1997年 | 1482 |
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1998年 | 1899 |
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1999年 | 2379 |
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2000年 | 2753 |
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2001年 | 2916 |
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2002年 | 2380 |
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2003年 | 2072 |
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2004年 | 2207 |
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2005年 | 2253 |
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2006年 | 2509 |
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2007年 | 2687 |
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2008年 | 3178 |
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2009年 | 3666 |
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2010年 | 2510 |
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並行在来線問題
整備新幹線の並行在来線は、原則的にJRから経営分離され、第三セクター鉄道に転換または廃止されている(JRの経営のまま残った区間もある)。これは、高額な新幹線の施設と地方閑散線区に転落した並行在来線を両方所有運営することによる、JRの負担を軽減する措置である。1996年12月25日の「整備新幹線の取扱いについて 政府与党合意」[4]で「建設着工する区間の並行在来線については、従来どおり、開業時にJRの経営から分離することとする」としており、今後開業する整備新幹線の並行在来線についても、同様の措置とする予定である。並行在来線では、沿線の利用者や貨物列車および並行在来線の枝線の扱い、新事業者の経営をどのように支えるかが課題となる。新幹線開業により廃線となった路線は、信越本線の横川駅 - 軽井沢駅間のみである。なお、既存路線(整備新幹線以外の新幹線路線)の並行在来線は、経営分離される予定はない。[5]
並行する新幹線 | 新幹線開業前 | 区間 | 営業キロ | 移管(廃止)日 | 新幹線開業後 |
---|---|---|---|---|---|
北海道新幹線 | JR北海道 函館本線 |
函館 - 小樽 | 252.5 | 2035年度 | 第三セクター会社へ移管(予定) |
大沼 - 森 | 35.3 | ||||
JR北海道 江差線 |
木古内 - 五稜郭 | 37.8 | 2015年度 | 北海道道南地域並行在来線準備へ移管(予定) | |
東北新幹線 | JR東日本 東北本線 |
盛岡 - 目時 | 82.0 | 2002年12月1日 | IGRいわて銀河鉄道へ移管 |
目時 - 八戸 | 25.9 | 青い森鉄道へ移管 | |||
八戸 - 青森 | 96.0 | 2010年12月4日 | |||
北陸新幹線 | JR東日本 信越本線 |
高崎 - 横川 | 29.7 | JRのまま存続 | |
横川 - 軽井沢 | 11.2 | 1997年10月1日 | 廃止(JRバス碓氷線へ転換) | ||
軽井沢 - 篠ノ井 | 65.1 | しなの鉄道へ移管 | |||
篠ノ井 - 長野 | 9.3 | JRのまま存続 | |||
長野 - 妙高高原 | 37.3 | 2015年3月 | しなの鉄道へ移管(予定) | ||
妙高高原 - 直江津 | 37.7 | えちごトキめき鉄道へ移管(予定) | |||
JR西日本 北陸本線 |
直江津 - 市振 | 59.3 | |||
市振 - 倶利伽羅 | 100.1 | あいの風とやま鉄道へ移管(予定) | |||
倶利伽羅 - 金沢 | 17.8 | IRいしかわ鉄道へ移管(予定) | |||
金沢 - (未定) | (未定) | 2025年度 | |||
(未定) - 敦賀 | (未定) | 第三セクター会社へ移管(予定) | |||
九州新幹線 (鹿児島ルート) |
JR九州 鹿児島本線 |
博多 - 八代 | 154.1 | JRのまま存続 | |
八代 - 川内 | 116.9 | 2004年3月13日 | 肥薩おれんじ鉄道へ移管 | ||
川内 - 鹿児島中央 | 46.1 | JRのまま存続 |
- 以下の並行在来線は省略している。
- 九州新幹線(長崎ルート)の並行在来線
- 未着工の新幹線路線の並行在来線
北陸新幹線
テンプレート:Main 1997年10月1日の北陸新幹線(長野新幹線)開業に伴い、並行在来線となる信越本線のうち、高崎駅 - 横川駅間が東日本旅客鉄道(JR東日本)の路線として存続、 横川駅 - 軽井沢駅間が廃止、軽井沢駅 - 篠ノ井駅間が第三セクターのしなの鉄道に経営移管され、並行在来線経営分離の最初の例となった。
信越本線長野駅 - 直江津駅間と北陸本線直江津駅 - 金沢駅間については2014年度に北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間が開業した時点で、北陸本線金沢駅 - 敦賀駅間については2025年度頃に北陸新幹線の金沢駅 - 敦賀駅間が開業した時点でJRから第三セクター鉄道会社に経営移管される予定である。新潟県内区間についてはえちごトキめき鉄道が、富山県内区間についてはあいの風とやま鉄道が、石川県内区間についてはIRいしかわ鉄道が設立されている。長野県内区間については、しなの鉄道が引き受ける予定である。
東北新幹線
2002年12月1日に延長開業した東北新幹線の盛岡駅 - 八戸駅間、および2010年12月4日に延長開業した八戸駅 - 新青森駅間についても、並行在来線となる東北本線の盛岡駅 - 八戸駅間および八戸駅 - 青森駅間が第三セクターのIGRいわて銀河鉄道(第1種鉄道事業事業者)と青森県(第3種鉄道事業者)・青い森鉄道(第2種鉄道事業者)に経営移管された。同区間は関東地方 - 北海道を結ぶ物流の大動脈であり、同区間を第2種鉄道事業者として営業を行う日本貨物鉄道(JR貨物)に対して、線路使用料の引き上げを求めた。
JR貨物がJR旅客会社に対して支払っている線路使用料は、アボイダブルコストに基づき算出されている。経営移管に際して第三セクター側はJR貨物に対し、自身の経営規模では非電化や単線で済むものを貨物運行のために過剰な電化施設や複線を維持しているとして、保守経費のみを対象としているアボイダブルコスト方式をやめて、過剰な施設負担分を含めた線路使用料を支払うように要求した。
これに対して、JR貨物は自社は何の恩恵も受けないにも拘らず一方的な線路使用料の値上げには応じない方針を示し、東北新幹線を三線軌条に改造する、機関車及びそれに牽引される貨車をフリーゲージトレイン化し東北新幹線上を走行可能にする、羽越本線・奥羽本線経由(寝台特急「あけぼの」と同一)のルートに迂回する、などの方策が検討されてきたが、いずれも不可能という結論になった。
関係者の間で協議が行われた結果、当該区間の整備新幹線を建設した特殊法人日本鉄道建設公団(後の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)がJR東日本から受けとる新幹線に対する線路使用料を原資として、JR貨物の支払う線路使用料を補填することになった。この制度は後の整備新幹線開業でも適用され、期限はJR貨物の完全民営化時とされている。
新幹線開業後も、上野駅 - 札幌駅間を運行する寝台特急「北斗星」・「カシオペア」がJRからの乗り入れ列車として運行を継続している。また、同区間は日本国有鉄道時代から、秋田や郡山にある工場への入場車両の回送ルートとなっていたが、路線の分断により首都圏を経由するなど大迂回を強いられることとなった。さらに2010年12月4日に在来線八戸駅 - 青森駅間が青い森鉄道に移管されたことにより、大湊線と八戸線が自社在来線と直接に接続せず孤立することになったが、そこで使用される車両については、転換後も乗り入れ列車の設定により融通されている。
九州新幹線(鹿児島ルート)
テンプレート:See also 2004年3月13日に部分開業した九州新幹線新八代駅 - 鹿児島中央駅間において、並行在来線(鹿児島本線)のうち八代駅 - 川内駅間が第三セクター肥薩おれんじ鉄道に経営移管された。この区間はJR貨物が第2種鉄道事業を行っていたため、熊本、鹿児島県境の閑散区間であったにもかかわらず、路線が維持されたもので、JR貨物が株主として出資し、引き続き第2種鉄道事業を行っている。貨物列車の運転用に電化設備が存置されているが、旅客列車は運行経費削減のため軽快気動車による運転となった。この区間で運行されていた夜行列車は同鉄道区間への乗り入れが行われず、博多駅からの特急「ドリームつばめ」が熊本駅までの「有明」に変更、新大阪駅からの「なは」(2008年3月15日廃止)も熊本駅までに運行区間が短縮されていた。これ以外の路線区間は都市圏輸送体系上、分離されずにJR九州が継続して経営を行っている[6]。
北海道新幹線
テンプレート:Main 北海道新幹線新青森駅 - 新函館北斗駅間の開業時点では、江差線のうち五稜郭駅 - 木古内駅間の経営分離が予定されており、2014年8月に北海道道南地域並行在来線準備株式会社が設立された。正式な社名は2015年夏に公募で決定する予定[7]。非電化区間である木古内駅 - 江差駅間は並行在来線にはあたらないが、JR北海道管内で乗降客が最も少ない区間の一つであったため、2014年5月12日をもって廃止された[8]。津軽線については、青森県は「津軽線の経営はJR東日本で北海道新幹線の経営はJR北海道が行うため並行在来線ではない」という見解を出しており、JR東日本も2004年(平成16年)に経営分離しないことを明らかにしている。
札幌までの延伸着工は、国土交通省が示した新幹線着工条件の一つであったため、沿線自治体が函館本線函館駅 - 小樽駅間の経営分離に合意しているが[9]、小樽駅 - 札幌駅間は具体的な方針が決まっていない。しかし函館 - 新函館北斗間は厳密には北海道新幹線と並行していないことから、地元財界を中心に経営分離反対の動きもみられる。
九州新幹線(長崎(西九州)ルート)
テンプレート:Main 長崎本線肥前山口駅 - 長崎駅間が並行在来線にあたるが、具体的なことについては現在調整中の段階にある。新幹線開業後もしばらくはJR九州がこの区間を運行するため、沿線自治体が新幹線の着工条件の一つとして経営分離に同意することは不要とされている[10]。
地方格差助長問題
新幹線の建設を促進する理由として、地方格差の是正と地域振興が主張されるが、地方の衰退を促進する効果が大きいと指摘する専門家もいる。テンプレート:誰
その理由として、以下のようなことを挙げている。
- 北陸新幹線(長野新幹線)の開業で発展した長野県佐久市に対して、新幹線ルートから外れた小諸市は衰退している[11]。
- ストロー効果により、地方格差の是正どころか都心部への一極集中の促進効果が強い。但し、これについては反論も存在する[11]。
- 並行在来線の分離問題により、収益の低い路線を地方に押し付け財政悪化につながる事[11]や、地方交通ネットワークが破壊される。
設計・運行速度
建設費用の問題や、速達性の需要程度の関係により、整備新幹線区間は、最高速度が260km/hとして設計・整備されている[12]。また、長野新幹線の30‰、九州新幹線の35‰(筑紫トンネルほか)勾配や線形など、新規路線にもかかわらず、従来よりもきつい制限が掛かることもある。
脚注
関連項目
- 全国新幹線鉄道整備法
- 建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画
- 新幹線鉄道規格新線
- 新幹線
- 中央新幹線(超電導リニア方式)
外部リンク
テンプレート:日本の鉄道史- ↑ 整備新幹線3区間の着工方針決定 北海道・北陸・九州 - 朝日新聞
- ↑ 3区間着工を正式認可=整備新幹線、民主政権で初―羽田国交相 - 時事通信
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ 整備新幹線の取扱いについて 政府与党合意
- ↑ 一時期、西日本旅客鉄道(JR西日本)は、北陸新幹線の開業時に、その並行在来線である北陸本線のみならず、北陸本線に接続するこれら支線系統までも経営分離する方針を打ち出していたテンプレート:要出典。
- ↑ 連載特集・整備新幹線 九州新幹線:明日の九州を支える新幹線整備 - 建設グラフ(自治タイムス)2002年8月号
- ↑ 14年5月にも三セク準備会社設立へ-江差線五稜郭-木古内間 - 北海道建設新聞、2013年8月27日。
- ↑ テンプレート:PDFlink - 北海道旅客鉄道株式会社、2013年4月26日。
- ↑ 「函館-小樽253km沿線15市町村と協議開始予定」 2012年2月15日北海道新聞16版 2面
- ↑ 平成19年12月17日知事臨時記者会見(佐賀県公式サイト)での記者との質疑応答より
- ↑ 11.0 11.1 11.2 テンプレート:PDFlink、6.新幹線整備の影響(正の効果と負の効果)参照、長岡大学
- ↑ テンプレート:Cite book