温暖湿潤気候
温暖湿潤気候(おんだんしつじゅんきこう)とはケッペンの気候区分における気候区のひとつで温帯に属する。温帯湿潤気候と呼ぶこともある。記号はCfaでCは温帯、fは湿潤(feucht)、aは(温帯の中で)夏の気温が高いことを示す。
特徴
- 気温の年較差が大きく大体は夏に高温・多雨となる。冬は比較的寒く、乾燥する。
- 最多雨月が冬季にあり、冬の平均気温が0℃近くの場合は場合は世界有数の豪雪地帯の場合がある。(青森市など)
- 四季の変化が特に明瞭。
- 夏季の高温・多雨により稲の生育に適することからアジアでは稲作が盛ん。
- 人口密度が高い。
条件
- 最寒月平均気温が-3℃以上18℃未満。
- 最暖月平均気温が22℃以上。
- 年平均降水量が乾燥限界以上かつ下記の条件を満たす。
- 最多雨月が夏にある場合は、最多雨月降水量≦10×最少雨月降水量。
- 最多雨月が冬にある場合は、最多雨月降水量≦3×最少雨月降水量 または 最少雨月降水量が30mm以上。
分布
分布地域
中緯度の大陸東岸に主に分布。
- 東アジア、(韓国沿岸部、華中 - 華南の北部)
- アメリカ合衆国の東部・南部(ニューイングランド地方、五大湖沿岸、フロリダ半島最南部を除く)
- 黒海沿岸
- カスピ海西部沿岸
- イタリア北東部
- 南アメリカの湿潤パンパ
- オーストラリア東部
- 南アフリカ東部
日本での分布地域
温暖湿潤気候に属する観測地点が存在するのは以下の市町村である。(かっこ書きはアメダスの設置点):
- 鹿児島県の全域
- 宮崎県の全域
- 大分県の全域
- 佐賀県の全域
- 長崎県の全域
- 福岡県の全域
- 山口県の全域
- 広島県の全域
- 岡山県の全域
- 島根県の全域
- 愛媛県の全域
- 高知県の全域
- 香川県の全域
- 兵庫県の全域
- 京都府の全域
- 大阪府の全域
- 奈良県の全域
- 和歌山県の全域
- 三重県の全域
- 福井県の全域
- 石川県の全域
- 新潟県の全域
- 愛知県の全域
- 神奈川県の全域
- 埼玉県の全域
- 千葉県の全域
- 茨城県の全域
- 沖縄県の
- 東京都の
- 熊本県の
- 徳島県の
- 鳥取県の
- 滋賀県の
- 岐阜県の
- 長野県の
- 静岡県、山梨県の
- 富山県の
- 群馬県の
- 栃木県の
- 福島県の
- 宮城県の
- 山形県の
- 秋田県の
- 青森県の
北海道:
典型的な都市
- 仙台(日本)
- 東京(日本)
- 横浜(日本)
- 名古屋(日本)
- 京都(日本)
- 大阪(日本)
- 神戸(日本)
- 広島(日本)
- 福岡(日本)
- 釜山(韓国)
- 上海(中国)
- 杭州(中国)
- トビリシ(グルジア)
- ソチ(ロシア)
- オデッサ(ウクライナ)
- ブカレスト(ルーマニア)
- ヴェネツィア(イタリア)
- ニューヨーク(アメリカ)
- アトランタ(アメリカ)
- ニューオーリンズ(アメリカ)
- ポルト・アレグレ(ブラジル)
- ブエノスアイレス(アルゼンチン)
- シドニー(オーストラリア)
- ブリスベン(オーストラリア)
- ダーバン(南アフリカ)
また以下の都市も温暖湿潤気候に分類されるが、年較差が小さく四季の変化は上記の都市ほど明瞭ではない。ケッペンの気候区分にはないが、亜熱帯気候とすることがある。
雨温図
テンプレート:Climate chart テンプレート:Clear
気候の特徴
モンスーン(季節風)の影響により四季の変化が大きい。特にアジアで顕著である。
夏は低緯度地帯の海洋側から高緯度地帯の大陸側に向かって暖かく湿ったモンスーンが吹くため通過する地域である大陸東岸は暑く、湿った気候となる。
冬は夏とは逆に大陸側から海洋側に向かって冷たく乾いたモンスーンがその地域を吹き抜けるため冷たく乾燥した気候となる。日本の日本海側地域が冬に湿潤となるのは、日本が大陸東岸の沖合に位置することによる(日本海側気候)。大陸からの乾燥した季節風が日本海を通過することで多量の水蒸気を含むためで、典型的な温暖湿潤気候とはやや異なった傾向になることとなる。
また、夏 - 秋にしばしばタイフーン(台風)など熱帯低気圧の影響を受けることも夏の降水量が多い原因のひとつである。
黒海・地中海沿岸の地域は冷たく乾燥した大陸性気団の影響を受けるため、降水量はやや少ない。また沖縄やアメリカ南部などは緯度が低いため、年間を通して降水量が比較的多く気温の年較差も少ない。
土壌と植生
- 温帯混合林 - 常緑・落葉広葉樹林と針葉樹林が混在。比較的肥沃な褐色森林土が分布している。
- 温帯草原 - 湿潤パンパ(アルゼンチン)・プレーリー(アメリカ)・プスタ(ハンガリー)などがみられる。プレーリー土、パンパ土が分布している。
産業・産物
年平均降水量は1,000mmを超えることが多いため稲の生育に適する。この事からアジアではこの気候を利用して集約的米作が行われる。アジア以外では、混合農業や放牧が多い。また、多くの地域で小麦の栽培(北アメリカでは企業的農業が中心)も行われている。ある程度の降水量と適度な気温のおかげで、栽培可能な農作物の種類は他の気候区と比べても多い。
また日本犬(柴犬・紀州犬・甲斐犬・四国犬など)はこの気候に強く、古くから猟犬として使われた。