星雲賞
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星雲賞(せいうんしょう)は、前年度中に発表もしくは完結したSF作品を対象として、部門ごとに一番に選ばれた作品に贈られる文学賞。
目次
概要
毎年行われる日本SF大会の参加者の投票によって選ばれるのが特徴である。ワールドコン(世界SF大会)のヒューゴー賞を範に創設された。「星雲賞」という名前は、1954年に刊行された日本最初のSF雑誌と言われる『星雲』に由来する。ネビュラ賞の日本語訳ともかけている。
賞には「日本長編部門」「日本短編部門」「海外長編部門」「海外短編部門」「メディア部門」(第10回までは「映画演劇部門」)「コミック部門」「アート部門」「ノンフィクション部門」及び「自由部門」(平成14年の改訂で追加)があり、集計・授賞などは日本SFファングループ連合会議によって行われる。
最初は小説と映画演劇に対する賞のみだったが、その後メディアやコミック、アート、ノンフィクションなどの部門が追加された。
なお、「特別賞」は第13回の「宇宙塵」を除き、すべてSFファンダムに多大な功績のあった人物が死去した際に追贈されている。
副賞の選定は当該年度の日本SF大会実行委員会が実施する。毎回、趣向を凝らした副賞が贈られる。たとえばDAICON4の時には、開催地の大阪にちなんで、特大の瓦煎餅であった。
選考方法
星雲賞の選考は以下の手順で実施されている。
- 日本SFファングループ連合会議事務局において各ファングループから提出のあった候補作および各種情報から参考候補作を選定する。
- 参考候補作について当該年度の日本SF大会実行委員会より、日本SF大会の参加者に対し、投票用葉書とともに周知される。第36回2005年については、ネットでの投票も可能となった。
- 日本SFファングループ連合会議事務局で投票の集計を行う。
- 日本SF大会内で行われる日本SFファングループ連合会議定期総会席上で、集計結果の報告と授賞作品の確認が行われ、代議員から受賞資格等で異議がない場合、得票数1位が受賞作となる。
なお、日本SFファングループ連合会議で実施するのは投票の助けとするための参考候補作の選定であり、ノミネートではない。よって、参考候補作以外でも規約上受賞資格のある作品であれば投票可能であり、実際に受賞した例もある。
主な受賞作品
日本部門
海外部門
映画演劇部門・メディア部門
- | 年度 | 作品名 | 製作者・監督 |
---|---|---|---|
第1回 | 1970年 | プリズナーNo.6(TV) | デヴィッド・トンブリン制作 |
まごころを君に(映画演劇部門) | ラルフ・ネルソン監督 | ||
第2回 | 1971年 | 謎の円盤UFO(TV) | ジェリー・アンダーソン制作 |
第3回 | 1972年 | アンドロメダ… | ロバート・ワイズ監督 |
第4回 | 1973年 | 時計仕掛けのオレンジ | スタンリー・キューブリック監督 |
第5回 | 1974年 | ソイレント・グリーン | リチャード・フライシャー監督 |
第6回 | 1975年 | 宇宙戦艦ヤマト(TV) | 松本零士総監督 |
第7回 | 1976年 | スタア | (福田恆存・荒川哲生演出) |
第8回 | 1977年 | 該当作なし | - |
第9回 | 1978年 | 惑星ソラリス | アンドレイ・タルコフスキー監督 |
第10回 | 1979年 | スター・ウォーズ | ジョージ・ルーカス監督 |
第11回 | 1980年 | エイリアン | リドリー・スコット監督 - 「メディア部門」に変更 |
第12回 | 1981年 | スター・ウォーズ/帝国の逆襲 | ジョージ・ルーカス製作総指揮 |
第13回 | 1982年 | 該当作なし | - |
第14回 | 1983年 | ブレードランナー | リドリー・スコット監督 |
第15回 | 1984年 | ダーク・クリスタル | ジム・ヘンソン&フランク・オズ監督 |
第16回 | 1985年 | 風の谷のナウシカ | 宮崎駿監督 |
第17回 | 1986年 | バック・トゥ・ザ・フューチャー | ロバート・ゼメキス監督 |
第18回 | 1987年 | 未来世紀ブラジル | テリー・ギリアム監督 |
第19回 | 1988年 | 王立宇宙軍 オネアミスの翼 | 山賀博之監督 |
第20回 | 1989年 | となりのトトロ | 宮崎駿監督 |
第21回 | 1990年 | トップをねらえ!(OVA) | 庵野秀明監督 |
第22回 | 1991年 | 銀河宇宙オデッセイ(TV) | NHK製作 |
第23回 | 1992年 | ターミネーター2 | ジェームズ・キャメロン監督 |
第24回 | 1993年 | ママは小学4年生(TV) | 井内秀治総監督 |
第25回 | 1994年 | ジュラシック・パーク | スティーヴン・スピルバーグ監督 |
第26回 | 1995年 | ゼイラム2 | 雨宮慶太監督 |
第27回 | 1996年 | ガメラ 大怪獣空中決戦 | 金子修介監督 |
第28回 | 1997年 | ガメラ2 レギオン襲来 | 金子修介監督 |
第29回 | 1998年 | ウルトラマンティガ(TV) | 円谷プロダクション制作 |
第30回 | 1999年 | 機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness- | 佐藤竜雄監督 |
第31回 | 2000年 | カウボーイビバップ(TV) | 渡辺信一郎監督 |
第32回 | 2001年 | 高機動幻想ガンパレード・マーチ(ゲーム) | SCEI・アルファシステム |
第33回 | 2002年 | 仮面ライダークウガ(TV) | 東映・テレビ朝日 |
第34回 | 2003年 | ほしのこえ | 新海誠 |
第35回 | 2004年 | ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 | ピーター・ジャクソン監督 |
第36回 | 2005年 | プラネテス | 谷口悟朗監督 |
第37回 | 2006年 | 特捜戦隊デカレンジャー(TV) | 東映 |
第38回 | 2007年 | 時をかける少女 | 細田守監督 |
第39回 | 2008年 | 電脳コイル | 磯光雄監督・電脳コイル製作委員会 |
第40回 | 2009年 | マクロスF | 河森正治総監督・菊地康仁監督 |
第41回 | 2010年 | サマーウォーズ | 細田守監督 |
第42回 | 2011年 | 第9地区 | ニール・ブロムカンプ監督 |
第43回 | 2012年 | 魔法少女まどか☆マギカ | 新房昭之監督 |
第44回 | 2013年 | モーレツ宇宙海賊 | 佐藤竜雄監督 |
第45回 | 2014年 | パシフィック・リム | ギレルモ・デル・トロ監督 |
コミック部門
※第9回から創設
- | 年度 | 作品名 | 作者 |
---|---|---|---|
第9回 | 1978年 | 地球(テラ)へ… | 竹宮惠子 |
第10回 | 1979年 | 不条理日記 | 吾妻ひでお |
第11回 | 1980年 | スター・レッド | 萩尾望都 |
第12回 | 1981年 | 伝説 | 水樹和佳 |
第13回 | 1982年 | 気分はもう戦争 | 大友克洋 |
第14回 | 1983年 | 銀の三角 | 萩尾望都 |
第15回 | 1984年 | 童夢 | 大友克洋 |
第16回 | 1985年 | X+Y | 萩尾望都 |
第17回 | 1986年 | アップルシード | 士郎正宗 |
第18回 | 1987年 | うる星やつら | 高橋留美子 |
第19回 | 1988年 | 究極超人あ〜る | ゆうきまさみ |
第20回 | 1989年 | 人魚の森 | 高橋留美子 |
第21回 | 1990年 | So What? | わかつきめぐみ |
第22回 | 1991年 | 宇宙大雑貨 | 横山えいじ |
第23回 | 1992年 | ヤマタイカ | 星野之宣 |
第24回 | 1993年 | OZ | 樹なつみ |
第25回 | 1994年 | DAI-HONYA | とり・みき |
グラン・ローヴァ物語 | 紫堂恭子 | ||
第26回 | 1995年 | 風の谷のナウシカ | 宮崎駿 |
第27回 | 1996年 | 寄生獣 | 岩明均 |
第28回 | 1997年 | うしおととら | 藤田和日郎 |
第29回 | 1998年 | SF大将 | とり・みき |
第30回 | 1999年 | ルンナ姫放浪記 | 横山えいじ |
第31回 | 2000年 | イティハーサ | 水樹和佳子 |
第32回 | 2001年 | カードキャプターさくら | CLAMP |
第33回 | 2002年 | プラネテス | 幸村誠 |
第34回 | 2003年 | クロノアイズ | 長谷川裕一 |
第35回 | 2004年 | 彼方から | ひかわきょうこ |
第36回 | 2005年 | ブレーメンII | 川原泉 |
第37回 | 2006年 | 陰陽師 | 夢枕獏・岡野玲子 |
第38回 | 2007年 | ヨコハマ買い出し紀行 | 芦奈野ひとし |
第39回 | 2008年 | 20世紀少年、21世紀少年 | 浦沢直樹・長崎尚志 |
第40回 | 2009年 | トライガン・マキシマム | 内藤泰弘 |
第41回 | 2010年 | PLUTO | 浦沢直樹・手塚治虫 |
第42回 | 2011年 | 鋼の錬金術師 | 荒川弘 |
第43回 | 2012年 | 機動戦士ガンダム THE ORIGIN | 安彦良和 |
第44回 | 2013年 | 星を継ぐもの | ジェイムズ・P・ホーガン・星野之宣 |
第45回 | 2014年 | 成恵の世界 | 丸川トモヒロ |
アート部門
- 第10回(1979年) - 加藤直之
- 第11回(1980年) - 生頼範義
- 第12回(1981年) - 安彦良和
- 第13回(1982年) - 長岡秀星
- 第14回(1983年)〜第17回(1986年) - 天野喜孝
- 第18回(1987年) - 佐藤道明
- 第19回(1988年) - 末弥純
- 第20回(1989年) - 加藤洋之 & 後藤啓介
- 第21回(1990年) - 道原かつみ
- 第22回(1991年) - 横山えいじ
- 第23回(1992年) - 士郎正宗
- 第24回(1993年) - 水玉螢之丞
- 第25回(1994年) - 米田仁士
- 第26回(1995年) - 水玉螢之丞
- 第27回(1996年) - 山田章博
- 第28回(1997年) - 開田裕治
- 第29回(1998年) - 水木しげる
- 第30回(1999年) - 赤井孝美
- 第31回(2000年)・第32回(2001年)- 鶴田謙二
- 第33回(2002年) - 寺田克也
- 第34回(2003年) - 新海誠
- 第35回(2004年) - 西島大介
- 第36回(2005年) - 新海誠
- 第37回(2006年) - 村田蓮爾
- 第38回(2007年) - 天野喜孝
- 第39回(2008年) - 加藤直之
- 第40回(2009年) - 加藤直之
- 第41回(2010年) - 加藤直之
- 第42回(2011年) - 加藤直之
- 第43回(2012年) - 鷲尾直広
- 第44回(2013年) - 鶴田謙二
- 第45回(2014年) - 加藤直之
ノンフィクション部門
- 第16回(1985年) - 『光世紀の世界』石原藤夫
- 第17回(1986年) - 『特撮ヒーロー列伝』池田憲章
- 第18回(1987年) - 『石原博士のSF研究室』石原藤夫
- 第19回(1988年) - 『ウィザードリィ日記』矢野徹
- 第20回(1989年) - 『スペースオペラの書き方』野田昌宏
- 第21回(1990年) - 『SFはどこまで実現するか』ロバート・L・フォワード、久志本克己・訳
- 第22回(1991年) - 『SFハンドブック』早川書房編集部・編
- 第23回(1992年) - TV番組『電子立国日本の自叙伝』NHK(制作)
- 第24回(1993年) - 『24人のビリー・ミリガン』ダニエル・キイス、堀内静子・訳
- 第25回(1994年) - 『やさしい宇宙開発入門』野田昌宏(PHP研究所)
- 第26回(1995年) - 『愛しのワンダーランド』野田昌宏
- 第27回(1996年) - 『トンデモ本の世界』と学会・編(洋泉社)
- 第28回(1997年) - 『トンデモ本の逆襲』と学会・編(洋泉社)
- 第29回(1998年) - 自立歩行人間型ロボットP2(本田技研工業)
- 第30回(1999年) - 『宇宙を空想してきた人々』野田昌宏(日本放送出版協会)
- 第31回(2000年) - ロボット・AIBO (ソニー)
- 第32回(2001年) - 『もっとすごい科学で守ります!』長谷川裕一
- 第33回(2002年) - 『NHK少年ドラマシリーズのすべて』増山久明 (アスキー)
- 第34回(2003年) - 『宇宙へのパスポート』笹本祐一 (朝日ソノラマ)
- テンプレート:Jコミ(外部リンク)
- 第35回(2004年) - 『宇宙へのパスポート2 : M-V & H-IIAロケット取材日記』笹本祐一 (朝日ソノラマ)
- 第36回(2005年) - 『前田建設ファンタジー営業部』前田建設ファンタジー営業部ご一同 (幻冬舎)
- 第37回(2006年) - 『失踪日記』吾妻ひでお (イースト・プレス)
- 第38回(2007年) - 『宇宙へのパスポート3 宇宙開発現場取材 』笹本祐一 (朝日ソノラマ)
- 第39回(2008年) - 『星新一 一〇〇一話をつくった人』最相葉月 (新潮社)
- 第40回(2009年) - 『世界のSFがやって来た!! ニッポンコン・ファイル2007』日本SFクラブ 監修:小松左京 (角川春樹事務所)
- 第41回(2010年) - 『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』長山靖生(河出書房新社)
- 第42回(2011年) - 『サはサイエンスのサ』鹿野司(早川書房)
- 第43回(2012年) - 『吾妻ひでお〈総特集〉---美少女・SF・不条理ギャグ、そして失踪』KAWADE夢ムック(河出書房新社)
- 第44回(2013年) - 『情報処理2012年05月号別刷「《特集》CGMの現在と未来: 初音ミク,ニコニコ動画,ピアプロの切り拓いた世界」』ゲストエディタ:後藤真孝(情報処理学会)
- 第45回(2014年) - 『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団』あさりよしとお(学研教育出版)
自由部門
- 第33回(2002年) - H-IIAロケット試験機1号機(宇宙開発事業団)
- 第34回(2003年) - 出渕裕デザインの人間型ロボット HRP-2 最終成果機(Promet) 出渕裕・川田工業株式会社
- 第35回(2004年) - 王立科学博物館シリーズ1 岡田斗司夫(製作・販売タカラ・海洋堂)
- 第36回(2005年) - ヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館展示 国際交流基金・森川嘉一郎・参加作家一同
- 第37回(2006年) - 第20号科学衛星MUSES-C「はやぶさ」サンプルリターンミッションにおけるイトカワ着陸(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)
- 第38回(2007年) - M-Vロケット (独立行政法人宇宙航空研究開発機構)
- 第39回(2008年) - 初音ミク(クリプトン・フューチャー・メディア)
- 第40回(2009年) - 該当なし
- 第41回(2010年) - ガンダム30周年プロジェクト Real G 実物大ガンダム立像(制作:乃村工藝社)
- 第42回(2011年) - 第20号科学衛星MUSES-C「はやぶさ」の地球帰還(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)
- 第43回(2012年) - 該当なし
- 第44回(2013年) - iPS細胞(京都大学iPS細胞研究所)
- 第44回(2013年) - 『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻刊行 大森望・河出書房新社
特別賞
- 第13回(1982年) - 宇宙塵
- 第20回(1989年) - 手塚治虫
- 第36回(2005年) - 矢野徹
- 第38回(2007年) - 米澤嘉博
- 第39回(2008年) - 野田宏一郎
- 第41回(2010年) - 柴野拓美
- 第42回(2011年) - 小松左京
関連項目
外部リンク
- 星雲賞リスト(SFファングループ連合会議による公式の物)
- 年次日本SF大会におけるSF賞選定に関する規定(星雲賞の規定)