大森望
大森 望(おおもり のぞみ、本名・英保未来(あぼ みくる)、1961年2月2日 - )は、SFを中心として活動する、書評家、翻訳家、評論家、アンソロジスト。高知県高知市出身。ペンネームは、少女マンガ家・清原なつのの作品『私の保健室へおいで…』の登場人物から。別ペンネームとしては森のぞみ、亀井甲介等。ニックネームはワルモノ。日本推理作家協会会員、本格ミステリ作家クラブ会員。
父は元高知新聞論説委員長の英保怜一郎。弟の英保未紀はマガジン・マガジン社勤務で、女性向けの男性同性愛をテーマとした小説誌『JUNE』の元編集長で、現在はパズル雑誌の編集者。弟の妻は漫画家の石原理。 妻のさいとうよしこ(斉藤芳子)は、元・雑誌『スターログ』編集者で、現・ゲーム/アニカラ等のライター。妻の妹は、漫画家の斉藤友子(斉藤友之)。その夫で、アメリカで日本漫画を出版していたトーレン・スミスとは、義理の兄弟(妻同士が姉妹)で、彼が単なるマニアだった時代は、自宅に居候として居住させていた。
人物・略歴
母も元高知新聞の記者であり、共働き期間は両親の知人だった宮尾登美子に子守をしてもらったことがある。小学生時代から読書少年であり「つけ」で本を買い放題という家庭環境であった。高知市立追手前小学校、土佐中学校・高等学校、京都大学文学部英文科卒業。
高校時代から、SF同人誌を制作。当時の同人誌仲間に、後のデザイナー岩郷重力、後の翻訳家細美遙子がいた。ジュディス・メリルの影響を受け、ニュー・ウェーブSF少年となり、海外から原書を取り寄せ、翻訳を始める。
京大入学後は、消滅していた「京都大学SF研究会」を中西秀彦(のち中西印刷専務、文筆家)、鼎元亨(のち評論家)らと再結成(第三期)。2年後輩に、のちに東京創元社でSFを担当する小浜徹也、ゲームデザイナーとなる佐脇洋平がいた。関西の海外SFマニアのあつまりである「KSFA」(海外SF研究会)にも参加。また、大学4年生の1982年、SFイベント「京都SFフェスティバル」を開催。以後、毎年開かれることになる。
大学卒業後、新潮社に入社。新潮文庫編集部に所属しSF(ルーディ・ラッカーの長編や、伊藤典夫と浅倉久志によるアンソロジー三部作など)の編集に携わる一方、谷山浩子の詩文集『ねこの森には帰れない』や『ムーンライダーズ詩集』なども編集している。日本ファンタジーノベル大賞の創設時の担当編集者でもあった。また、本業と並行して、翻訳、ライター活動も行う。
東京に居を移したことにより「関東KSFA」(関東海外SF研究会)を結成。1989年から、ワープロ印刷後にコピー機を用いて制作された、一般のSFファンにも販売する、月刊SF情報同人誌『ノヴァ・マンスリー』を刊行した。
1991年に新潮社を退社してフリーとなり、現在に至る。
2005年10月に心筋梗塞で入院したが、15日で退院。2013年2月『本の雑誌』にて「大森望SFサクセス伝説」として特集される。
「本の雑誌」では、1990年から(二度の中断をはさみ)長年に渡り、新刊SFレビューを担当。一部のシリーズ物などを除き、その月に出たSFは基本的に全冊とりあげる、という目標でレビューを行っている。
筋金入りのマニアックなSFファンであると同時に、SFに隣接する純文学、新本格ミステリ、ライトノベル、漫画、ゲームなどについても、積極的に評論や紹介を行ったり、作家との交流等を行っている。社交的な性格であり、交友関係は非常に幅広く、SF界のスポークスマン的役割を果たしている。トーク・イベントの司会等を行う機会も多い。
また、多忙の中、読書時間を確保するため、スキー場のリフトの上で本を読んだこともある。
自身のウェブ日記(1995年から始まる、日本最古のウェブ日記の一つ)やコラム等で、実名を出して業界の裏事情にふれることも多く、それが結実してヒット作となったのが、豊崎由美との対談形式で「審査委員たちの文学観から文学賞の傾向を分析」した『文学賞メッタ斬り!』シリーズである。
SF翻訳家としても、ルーディ・ラッカーやバリントン・J・ベイリーを訳す一方でコニー・ウィリスも訳すなど、「幅広く、かつ、深く」という立場を維持している。シオドア・スタージョン「ニュースの時間です」、テッド・チャン「商人と錬金術師の門」「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」の翻訳により、第36回、第40回、第43回星雲賞海外短編部門を受賞。
2008年からは、創元SF文庫で開始された『年刊日本SF傑作選』の編者を日下三蔵とともにつとめ、あわせて新設された創元SF短編賞の選考委員も日下とともに担当する。また、2009年から福音館で刊行開始されたジュニア向けシリーズ『ボクラノSF』の「監修」も担当[1]。さらに、2009年12月から河出文庫で刊行されている、全作書き下ろしの日本SFオリジナル・アンソロジー『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』シリーズの責任編集も担当。2013年に完結した同シリーズが2014年4月日本SF大賞特別賞受賞。2014年7年、第45回星雲賞自由部門受賞。
2014年4月、日本SF大賞の受賞者として日本SF作家クラブへの無推薦入会動議がクラブ総会にかけられたが、有効投票数(総会の出席者および委任状の提出者)の3分の2の賛成という基準に達せず、入会は否決された。
かつてテンプレート:いつは映画評論家としても活動しており、『キネマ旬報』、『映画秘宝』両誌のベスト10に参加していた。
著書
- 『ヤング・インディ・ジョーンズ 密林の聖者』文春文庫 1993年5月(同名TVシリーズのノベライズ)
- 『ホーンテッドマンション』竹書房文庫 2004年4月 (同名映画のノベライズ)
- 『現代SF1500冊 乱闘編 1975~1995』太田出版 2005年6月
- 『現代SF1500冊 回天編 1996~2005』太田出版 2005年10月
- 『特盛! SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話』研究社 2006年3月→『新編 SF翻訳講座』河出文庫 2012年10月
- 『狂乱西葛西日記20世紀remix SF&ミステリ業界ワルモノ交遊録』本の雑誌社 2009年9月
- 『21世紀SF1000』ハヤカワ文庫 2011年12月
共著
- 『パワーアップ英語表現』アルク 1996年11月 井内邦彦と共著
- 『文学賞メッタ斬り!』PARCO出版 2004年3月 豊崎由美と共著
- 『ライトノベル☆めった斬り!』太田出版 2004年12月 三村美衣と共著
- 『読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』ロッキングオン 2005年4月 北上次郎と共著
- 『文学賞メッタ斬り!リターンズ』PARCO出版 2006年8月 豊崎由美と共著
- 『文学賞メッタ斬り!受賞作はありません編』PARCO出版 2007年5月 豊崎由美と共著
- 『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才~激闘編』ロッキングオン 2008年4月 北上次郎と共著
- 『文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編』PARCO出版 2008年5月 豊崎由美と共著
- 『読むのが怖い!Z 日本一わがままなブックガイド』ロッキングオン 2012年7月 北上次郎と共著
- 『文学賞メッタ斬り! ファイナル』PARCO出版 2012年8月 豊崎由美と共著
- 『サンリオSF文庫総解説』牧眞司共同編集 共著 本の雑誌社 2014年9月
部分執筆
- 『世界のSF文学 総解説』自由国民社 1984 (伊藤典夫監修。一部の作品紹介を本名の「英保未来」名義で担当)
- 『TV(知)大事典』日本文芸社 1994年9月(斉藤芳子、椎名大樹、宝泉薫、横森文・編著。執筆協力)
編著
- 『年刊日本SF傑作選』創元SF文庫 2008年12月~ 日下三蔵と共編
- 『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』河出文庫 2009年12月~2013年7月(全10巻)
- 『不思議の扉 時をかける恋』角川文庫 2010年2月
- 『不思議の扉 時間がいっぱい』角川文庫 2010年3月
- 『不思議の扉 ありえない恋』角川文庫 2011年2月
- 『不思議の扉 午後の教室』角川文庫 2011年8月
- 『ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)』ハヤカワ文庫 2010年9月
- 『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成』創元SF文庫 2010年10月
- 『逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成』創元SF文庫 2010年10月
- 『きょうも上天気 SF短編傑作選』浅倉久志訳 角川文庫 2010年11月
- 『原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー』創元SF文庫 2010年12月 日下三蔵,山田正紀と共編
- 『原色の想像力2 創元SF短編賞アンソロジー』創元SF文庫 2012年3月 日下三蔵,堀晃と共編
- 『てのひらの宇宙 星雲賞短編SF傑作選』創元SF文庫 2013年3月
- 『謎の放課後 学校のミステリー』角川文庫 2013年11月
編訳書
- 『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン 河出書房新社 2003年12月 白石朗と共訳→河出文庫 2009年8月
- 『輝く断片』シオドア・スタ-ジョン 河出書房新社 2005年6月→河出文庫 2010年10月
- 『最後のウィネベーゴ』コニー・ウィリス 河出書房新社 2006年12月→河出文庫 2013年2月
- 『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス 早川書房 2008年9月
- 『輝く断片』シオドア・スタージョン 河出書房新社 2010年10月 柳下毅一郎,伊藤典夫と共訳
- 『アジャストメント ディック短篇傑作選1』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 2011年4月 浅倉久志と共訳
- 『トータル・リコール ディック短篇傑作選2』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 2012年7月 浅倉久志、深町真理子他共訳(大森編)
- 『変数人間 ディック短篇傑作選3』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 2013年11月 浅倉久志共訳(大森編)
- 『変種第二号 ディック短篇傑作選4』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 2014年3月 浅倉久志、若島正共訳(大森編)
- 『小さな黒い箱 ディック短篇傑作選5』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 2014年7月 浅倉久志共訳(大森編)
訳書
- 『ドラゴンの目』デイヴ・モーリス 創元推理文庫 1986年9月 - ゲームブック
- 『惑星救出計画』マリオン・ジマー・ブラッドリー 創元推理文庫 1986年10月
- 『オルドーンの剣』マリオン・ジマー・ブラッドリー 創元推理文庫 1987年5月
- 『ラモックス』ロバート・A・ハインライン 創元推理文庫 1987年11月
- 『13日の金曜日』サイモン・ホーク 創元推理文庫 1988年5月
- 『深き霧の底より』スティーヴ・ラスニック・テム 創元ノヴェルズ/創元推理文庫 1989年3月
- 『ザップ・ガン』フィリップ・K・ディック 創元推理文庫 1989年6月
- 『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』ロブ・マグレガー ハヤカワ文庫SF 1989年6月
- 『時間衝突』バリントン・J・ベイリー 創元推理文庫(SF) 1989年12月
- 『星の海のミッキー』ヴォンダ・N・マッキンタイア ハヤカワ文庫SF 1989年12月 森のぞみ名義
- 『タイタンのゲーム・プレーヤー』フィリップ・K・ディック 創元推理文庫 1990年3月
- 『ミュータント・タートルズ』B・B・ヒラー ハヤカワ文庫SF 1990年12月 亀井甲介名義
- 『エンジン・サマー』ジョン・クロウリー 90年12月 福武書店→扶桑社ミステリー
- 『エイリアン・チャイルド』パメラ・サージェント ハヤカワ文庫SF 1991年4月 森のぞみ名義
- 『ヘミングウェイごっこ』ジョー・ホールドマン 福武書店 1991年9月→ハヤカワ文庫SF
- 『フロリクス8から来た友人』フィリップ・K・ディック 創元SF文庫 1992年1月
- 『スター・ウィルス』バリントン・J・ベイリー 創元SF文庫 1992年5月
- 『セックス・スフィア』ルーディ・ラッカー ハヤカワ文庫SF 1992年6月
- 『いたずらの問題』フィリップ・K・ディック 創元SF文庫 1992年10月
- 『図書室のドラゴン』マイクル・カンデル ハヤカワ文庫FT 1992年11月
- 『バーチャライズド・マン』チャールズ・プラット ハヤカワ文庫SF 1992年12月
- 『ロボットの魂』バリントン・J・ベイリー 創元SF文庫 1993年9月
- 『光のロボット』バリントン・J・ベイリー 創元SF文庫 1993年11月
- 『フリーゾーン大混戦』チャールズ・プラット ハヤカワ文庫SF 1994年1月
- 『キャプテン・ジャック・ゾディアック』マイクル・カンデル ハヤカワ文庫SF 1994年2月
- 『山椒魚戦争』カレル・チャペック 小学館 94年10月 小林恭二と共訳
- 『神の熱い眠り』オースン・スコット・カード ハヤカワ文庫SF 1995年5月
- 『サイベリア』ダグラス・ラシュコフ アスキー 1995年5月
- 『キャピトルの物語』オースン・スコット・カード ハヤカワ文庫SF 1995年8月
- 『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス 早川書房 1995年11月 →ハヤカワ文庫SF 2003年03月
- 『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー ハヤカワ文庫SF 1996年9月
- 『インターネット中毒者の告白』J・C・ハーツ 草思社 1996年11月 柳下毅一郎と共訳
- 『殺戮の野獣館』リチャード・レイモン 扶桑社ミステリー 1997年5月
- 『光の都』マイクル・ドーン 早川書房 1998年1月
- 『CIA超心理諜報計画スターゲイト』デイヴィッド・モアハウス 翔泳社 1998年3月
- 『逆襲の野獣館』リチャード・レイモン 扶桑社ミステリー 1998年8月
- 『時空ドーナツ』ルーディ・ラッカー ハヤカワ文庫SF 1998年10月
- 『リメイク』コニー・ウィリス ハヤカワ文庫SF 1999年6月
- 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト完全調書』D・A・スターン アーティストハウス 1999年11月
- 『ダーウィンの使者』上下 グレッグ・ベア ソニー・マガジンズ 2000年4月 →ヴィレッジ・ブックス 2002年12月
- 『スター・ウォーズ ローグ・プラネット』グレッグ・ベア ソニー・マガジンズ 2000年6月
- 『タクラマカン』 ブルース・スターリング、小川隆共訳 ハヤカワ文庫SF 2001年1月
- 『ブレアウィッチ 2』D・A・スターン アーティストハウス 2001年3月
- 『ブレアウィッチ ラスティン・パーの告白』D・A・スターン アーティストハウス 2001年3月
- 『FINAL FANTASY full length』ディーン・ウエスレー・スミス 角川書店/角川文庫 2001年9月
- 『FINAL FANTASY evolution』ディーン・ウエスレー・スミス 角川スニーカー文庫 2001年9月
- 『フリーウェア』ルーディ・ラッカー ハヤカワ文庫SF 2002年3月
- 『航路』上下 コニー・ウィリス ソニー・マガジンズ 2002年10月→ヴィレッジ・ブックス 2004年12月→ハヤカワ文庫SF 2013年8月
- 『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス 早川書房 2004年4月
- 『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス 早川書房 2008年9月
- 『ザ・ストレイン』ギレルモ・デル・トロ&チャック・ホーガン 早川書房 2009年9月→『沈黙のエクリプス』と改題して文庫化 2012年07月
- 『ブラックアウト』コニー・ウィリス 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2012年8月
- 『オール・クリア1』コニー・ウィリス 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2013年4月
- 『オール・クリア2』コニー ウィリス 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2013年7月
- 『混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)』コニー・ウィリス ハヤカワ文庫SF 2014年1月
- 『空襲警報 (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)』コニー・ウィリス ハヤカワ文庫SF 2014年2月
- 『はい、チーズ』カート ヴォネガット 河出書房新社 2014年9月
放送
- NHK BS2「BSアニメ夜話 機動警察パトレイバー(劇場版)」にパネラーとして出演。
- CSミステリチャンネル 「MYSTERYブックナビ」にレギュラー出演中。
- ラジオ・文化放送ワイド番組「大竹まこと ゴールデンラジオ!」の「大竹紳士交遊録」(毎週木曜日15:07~15:20)にレギュラー出演中。
脚注
外部リンク
- Nozomi Ohmori SF Page -大森の日記の他に、KSFA時代に知り会いSF評論の「師匠」と仰ぐ水鏡子が同人誌に過去に発表した文章、「ルーディ・ラッカー・ファンページ」などがある。
- テンプレート:Twitter
- 『文学賞メッタ斬り!』公式サイト
- 『年刊日本SF傑作選 虚構機関』序文-Webミステリーズ!掲載
- 著者インタビュー:大森望先生 -ウェブ・マガジン「Anima Solaris」でのインタビュー
- ITW Ohmori Nozomi VO - フランスのサイト「ActuSf」でのインタビュー
- 山本弘との対談(東京創元社・文庫創刊50周年記念対談。ウェブマガジン掲載の記事)
- 『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成〈S〉』序文-Webミステリーズ!掲載
- 『逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成〈F〉』序文-Webミステリーズ!掲載