PLUTO
テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Sidebar with collapsible lists 『PLUTO』(プルートウ)は、手塚治虫の『鉄腕アトム』に含まれる「地上最大のロボット」の回を原作としている浦沢直樹の漫画。監修・手塚眞、プロデューサー・長崎尚志、協力手塚プロダクション。『ビッグコミックオリジナル』にて2003年から2009年まで連載。単行本全8巻。
第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第41回星雲賞コミック部門受賞。宝島社の「このマンガがすごい!」2006年版オトコ編の1位、フリースタイルの「このマンガを読め!2005」の1位作品。単行本は850万部以上を売り上げている[1][2][3][4]。
2010年、映画の制作を発表されている(後述)。
目次
作品背景
作者の浦沢直樹が生まれて初めて漫画で感動した作品が、手塚治虫の『鉄腕アトム』のエピソードのひとつである「地上最大のロボット」であった。熱烈な手塚ファンである浦沢はこのリメイクを切望。2002年冬、手塚治虫の息子である手塚眞にその許諾を求める。手塚は一度はこれを断るものの、その後の浦沢の熱心なラブコールに心を動かされ、2003年3月28日に「地上最大のロボット」のリメイクを了承。同年9月より『ビッグコミックオリジナル』にて連載がスタートした。
リメイクを了承した席で手塚は浦沢に、単なるオマージュ作品ではなく浦沢作品として本作を描くことを要望した。このため、アトムをはじめとするキャラクターデザインやストーリー設定の一部には浦沢流のアレンジが加えられている。
手塚治虫の原作では少年ロボット「アトム」が主人公ではあるが、浦沢直樹版では原作で脇役として登場したドイツの刑事ロボット「ゲジヒト」の視点から物語が描かれている。また、原作『鉄腕アトム』の他の回で登場したキャラクターや、鉄腕アトム以外の手塚作品で登場したキャラクターと同一と思わせるキャラクターが登場したり、ゲジヒトとアトムが立ち寄った喫茶店の名前が「TOKIWA」となっているなど、手塚ファンの為のサービスらしき場面が随所にある。
作中の設定は連載開始当時ニュースをにぎわせていたイラク戦争を反映したものとなっている。これは浦沢が「地上最大のロボット」でのプルートゥの黒幕サルタンが「国を追われた中東(と思われる)某国の王」という設定であることをヒントに、現代の中東情勢を下敷きとしたものである。
ストーリー
人間とロボットが共生するようになった時代。スイス最強のロボット、モンブランが殺された。同じ頃、ドイツのロボット法擁護団体の幹部が殺害された。
二人の遺体の頭部には“角”の様な物がほどこされていることからユーロポールが誇る高性能刑事ロボット、ゲジヒトは同一人物による犯行と考え捜査を進める。ゲジヒトは犯人の標的が自分を含めた7体の、大量破壊兵器になりうるロボットたちだと考えるが、その裏に隠された陰謀に巻き込まれていく。
- 8年前
- ブラウ1589が(ロボットとしては初めて)人間を殺害する。
- 4年前
- 第39次中央アジア紛争が勃発する。モンブラン、ブランド、ヘラクレス、アトムは平和維持軍として参加。ノース2号はブリテン軍の総司令官、アンドリュー・ダグラス将軍の執事として従軍。ゲジヒトは治安警察部隊として派遣される。
- ペルシア王国の陥落により、終結。
- 第39次中央アジア紛争が勃発する。モンブラン、ブランド、ヘラクレス、アトムは平和維持軍として参加。ノース2号はブリテン軍の総司令官、アンドリュー・ダグラス将軍の執事として従軍。ゲジヒトは治安警察部隊として派遣される。
- 3年前
- エプシロン、第4次中東戦争の戦後処理を命じられる。
- ゲジヒト、廃棄場から子供ロボットを持ち帰る。
- アドルフの兄が子供ロボット連続殺人の犯人として射殺される。
- 2年前
- ゲジヒト、記憶を妻ヘレンと共に改竄された。
- 現代
- スイスのルシツェルン管区にてスイスのモンブランが殺害される。一連の事件が始まる。
- モンブラン殺害とほぼ同じ頃、デュッセルドルフにてベルナルド・ランケが殺害される。ゲジヒト、捜査を開始。
- ゲジヒト、ブラウ1589を訪問
- モンブラン殺害の数日後、ダンカン邸の上空でイギリスのノース2号が殺害される。
- ゲジヒト、トルコのブランドを訪問
- ゲジヒト、日本のアトムを訪問
- 同じ頃法学者の田崎純一郎が殺害される。
- ゲジヒト、ギリシャのヘラクレスを訪問
- その直後ブランドが「敵」と戦うが死亡する。
- ゲジヒト、ブラウ1589を再訪問。
- ブランドの「腕」が発見される。
- お茶の水博士がゴジに命を狙われるがアトムが助ける。
- ウランが「敵」らしき者と出会う
- アトムが竜巻に襲われたお茶の水博士の孫を助けに向かうが、「敵」と相対し、死亡が確認される。
- ゲジヒト、アドルフ・ハースの護衛を命じられる。
- エプシロンを作ったロナウド・ニュートン・ハワードが殺される。
- ゲジヒト、アドルフ・ハースのオフィスでダリウス14世の画像をみる。
- 同じころホフマン博士が命を狙われる。
- アドルフ・ハースが誘導高熱弾で命を狙われる。
- KR団の団長がアドルフ・ハースを殺せと命じる。
- スイスのルシツェルン管区にてスイスのモンブランが殺害される。一連の事件が始まる。
登場人物
7体の世界最高水準のロボット
このロボット達は、大量破壊兵器になるとみなされ、アレキサンダー大統領とDr. ルーズベルトに目をつけられることになる。
ゲジヒト
世界最高水準のロボットの一人で、第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加、治安警察部隊として市街地に潜伏しているテロリストの殲滅にあたった。現在はユーロ連邦・ドイツのデュッセルドルフで数々の難事件を解決するユーロポール特別捜査官ロボットとして活躍。現在の階級は警部。正体不明の殺人犯を追いかける。
2年前に記憶を改竄されており、それが原因となって度々悪夢にうなされたり、フラッシュバックを起こす。殺人犯を追う過程でダリウス14世やアブラー博士に接触し犯人の正体に辿り着くが、捕らえられたホフマン博士の身柄を保障するために見逃す。その後、ペルシャで遭遇したはずの花売りのロボット、モハメド・アリとオランダで再び遭遇。突如、このロボットの放った凶弾の前に倒れた。
形態は人間型。相貌は30代後半と思われるヨーロッパ系の男性で、頭髪はやや薄毛。左手は睡眠ガスを噴射できる銃器、右手はSAAW特殊火器“ゼロニウム弾”の射撃が可能。ボディは特殊合金“ゼロニウム”で出来ていて、電磁波、熱線を無効化する。その他にも、毒物が混入されていないか成分をスキャンする機能や、乱れた画質を安定させる「画像安定装置」、相手の発言の中に嘘があるかを判別する認識システムなどが搭載され、ルーズベルト曰く『今迄で一番強力な大量破壊兵器』。頭部の骨格が手塚版の顔を思わせるデザインになっている。
- 「地上最大のロボット」版
- プルートゥを逮捕しようとするロボット刑事。ロボット連続破壊事件の裏で糸を引く黒幕の存在を見抜いており、アトムに事件における裁判での証言を依頼した。電磁波、熱線を無効化する特殊合金(ゼロニウム)で出来ており(アトムのママ(リン)が黄金製と勘違いした)胸部に16門のビーム砲を内蔵。素早い動きと、プルートゥの必殺の電磁波攻撃を受け付けず善戦するものの、角からの熱線は効かないと豪語した瞬間あっさり怪力で真っ二つにされてしまい、原作での出番はわずか数ページに終わる。『アストロボーイ・鉄腕アトム』ではタワシ警部の部下のARRS隊隊長「デルタ」としてリメイクされ、準レギュラーとなっている。「地上最大のロボット」の回では原作でのゲジヒトと同様ヘラクレスの前に襲われた(『アストロボーイ』版プルートゥの標的はアトムを除いて4人)[5]。
ゲジヒト(Gesicht)とは、ドイツ語で「表情」の意味。
アトム
世界最高水準のロボットの一人で、第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加。本人にとっては不本意ながらアイドルのように受け入れられ、“平和の使者”として世界から歓迎を受けた。現在は日本のトーキョーシティーのある家族と一緒に住み、小学校に通っている。
元は天馬博士により交通事故で死亡した息子「トビオ」こと天馬飛雄を模して製造されたが、模範的過ぎたその性格感性が、天馬の意にそぐわなかったため、亡くなった息子の代用品としては務まらず、結果サーカスに売られ玩ばれたという過去を持つ。世界最高水準のロボットの中でも、トップクラスの人工知能を持つ。そのため人間の行動を模倣していく内に、しばしば人間の感情を理解するようになる。
ウランを追っていって敵と戦い、死亡が確認された(原作のゲジヒトに代わる4番目の犠牲者)。他の3体と違い体が破壊されていない。手放した後もアトムに屈折した愛情を抱き続けた、生みの親・天馬博士が停止したアトムを解析したが、機能上とは別の理由で再起動しないと言及している。その後、天馬博士から、彼曰く混沌を解決するためのシンプルな手段として「偏った感情」(ヘレナから託されたゲジヒトの記憶チップ)を挿入される。そして、遠く北欧の地で起きたエプシロンの絶命に触発され、昏睡状態から復活する。覚醒後、一時的に制御不能に陥るものの怒りの感情を自分で制御した。
その後はゲジヒトの記憶チップにあった捜査に関する情報を照合し、一連のロボット殺害事件の全容を把握。日本の警視庁でそれらを述べ、散っていったロボット6体の眠る地を巡り終えた後、自ら、決戦の地へと飛び立つ。 エデン国立公園でプルートウと激突、ゲジヒトの憎悪をもってプルートウを追い詰めるが、止めを刺す直前、ゲジヒトの最期の記憶「憎悪からは何も生まれない」という言葉を思い出し、プルートウを赦免する。 そして地球の滅亡を停めるため地下に潜入し、プルートウと協力して反陽子爆弾を持つボラーと対決する。最終的にはプルートウによって彼だけが脱出させられた。
お茶の水博士とともにサハドが地球を救う現場を目撃、一部始終を見届けたアトムは、世界から憎しみが消える日を願いながら、7人の冥福を祈るのであった。
形態は人間型。相貌は日本系の男の子。頭も頭髪で、オリジナルの様なツノではない(ただし微妙なクセがついており、ツノすなわちトビオの髪型の由来となった手塚治虫のクセ毛に似る)。原作同様の飛行といった戦闘力を持ち合わせている(「七つの威力」が備わっているかは不明)。原作のブーツのようなものは履いていない。
- 「地上最大のロボット」版
- プルートゥとたびたび接触するも対決には至らず。他のロボットたちが破壊される中彼我のスペック差を痛感し、お茶の水博士に強化改造を願い出るが反対される。そんな彼の前に天馬博士が現れる。
モンブラン
世界最高水準のロボットの一人で、第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加。前線でブランドとヘラクレスと共にペルシア軍のロボットを駆逐。その後、スイス林野庁に所属しルツェルン管区森林保護担当官の傍らアルプスの山岳ガイドや遭難者の救助も務める。中央アジア紛争の功績と詩や歌を愛す温厚な性格から誰からも愛されるロボットだったが、一連の事件による最初の被害者となる。7体のロボットの内唯一、見た目は原作のそれとあまり変わらない上、一番出番の少なかったロボット。
- 「地上最大のロボット」版
- スイスの山案内ロボット。本人曰く13万5千馬力を誇る。やはり真っ先にプルートゥの標的となり、不意をつかれ電磁波攻撃で大破。『アストロボーイ・鉄腕アトム』には未登場だが、プルートゥを倒して視聴率を稼ごうとするハムエッグがけしかけた3体の刺客ロボットの中に形状が似ているものがいた。しかし、この3体は10秒で全員文字通り「秒殺」されてしまう。
ノース2号
ブリテン軍の総司令官アンドリュー・ダグラス将軍について、世界最高水準のロボットの一人として第39次中央アジア紛争に参加。その後ユーロ連邦・スコットランドで隠居生活をする音楽家ポール・ダンカンの執事となる。気難しい主人と心を通わせるうち、ピアノを弾きたいという感情が芽生えるが、「敵」との戦闘により死亡。ダンカンの曲を口ずさみながら空中で四散した。
形態はマスクを被ったような顔面で、口元だけは人間風。7体中唯一の明確な軍事・戦闘用ロボットであり、全身に様々な兵器を装備している(オリジナルの様に複数の腕を持っており、二本を除くそれぞれの先が武器となっている)。そのため、普段は手として使っている二本以外をケープに隠し、全身を覆っている。両脚は無く、足部のジェットエンジンによるホバーで移動する。飛行も可能。
- 「地上最大のロボット」版
- スコットランドの古城に住むが、こちらは彼を作った博士の研究所。通常形態の腕6本(普段はボディに収納されている)と、先端がドリルやペンチになったやはり6本の腕を持つ。その形態から、本来は作業・工作用のロボットであることは間違い無く、元々は博士が研究の助手として作ったロボットだったと思われる。博士に命令されてプルートゥを捕らえようとするが歯が立たなかった。ちなみに『アストロボーイ・鉄腕アトム』には未登場だが、やはり彼そっくりな刺客ロボットが登場する。
ブランド
世界最高水準のロボットの一人で、第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加。前線でヘラクレスとモンブランと共にペルシア軍のロボットを駆逐。その後はユーロ連邦・トルコのイスタンブルで格闘技ロボットとして民衆を魅了、パンクラチオンスーツでの試合で不敗神話を築きESKKKRトーナメントチャンピオンになる。ロボットでありながら、試合に勝つには「運」が必要と語り、「ラッキーマン」を自称する。同じくロボットの妻と5人の子供を持ち、一家団欒で平穏な生活を送る。しかし、「敵」の挑戦に応じて敗れ、黒海沿岸で砕かれ死亡。最後の力を振り絞り、アトムたちに「敵」の情報を送ろうとしたが、家族との思い出が、走馬灯の如く電子頭脳にリピートされ、悲しみの中力尽きる。彼の葬儀は大々的に行われ、メディアでも大きく報道された。
形態は一般生活用の人型ボディ、ESKKKRトーナメント専用のパンクラチオンスーツ、かつて使っていた軍事用のコンバットスーツと、複数のボディがある。人型ボディの相貌は30代から40代風のヨーロッパ系の男性。体格は少しぽっちゃり。戦闘時は、電子頭脳(頭部)と動力炉(心臓部)のみをパンチクラチオンスーツ(もしくはコンバットスーツ)へ移し、行動する。スーツ装備時が、比較的オリジナルに似た姿となっている。
- 「地上最大のロボット」版
- トルコのロボット力士(ヤールギュレシかどうかは不明)。球体となって突進する。友人モンブランのあだ討ちのためプルートゥに挑む。水中戦の末敗れるものの、アトムを除く世界最高水準のロボットの中で唯一、プルートゥに深手を負わせている。この戦いの余波は原作の悲劇的なラストに続く。また、モンブランと友人だったという設定は原作でもかたられている。彼も『アストロボーイ・鉄腕アトム』には未登場だが、やはりよく似た刺客ロボットが登場。
ヘラクレス
世界最高水準のロボットの一人で、平和維持軍として第39次中央アジア紛争に参加。前線でモンブラン、ブランドと共にペルシア軍のロボットを駆逐。ブランドと同じくパンクラチオンスーツでの試合で負け知らずのユーロ連邦・ギリシアの世界王者。また、親友のブランドはライバル的な存在[6]であり、過去4度の対戦では無効試合と実力が拮抗し合っている。レスリング界では闘神の名で親しまれ、パルテノン神殿の近くには、彼が勝利した際にとる闘神のポーズを模したモニュメントが設置されており、ギリシャの国民的英雄でもある。
自らを「機械」「殺人マシン」と言い切るストイックな性格で、「人間の真似事」[7]はしない主義。中央アジア紛争時も他の世界最高水準のロボットのように戦争に疑問や拒否感をあらわすこともなかったが、戦後は試合で相手に止めをさせなくなったことを自覚しており、「憎しみ」や「いたわり」を理解するようになっていた。「敵」との戦いに敗れ黒海上空で四散した親友ブランドの残骸を回収し、同時に「敵」の痕跡を探るべく、私財を投げ打って、その探索作業に当たらせた。そしてブランドの仇を討つため軍事用スーツまで借り出して「敵」との戦闘に望み、死闘の末「敵」の正体に迫るも隙を突かれ、頭を角で刺され死亡した。
形態はブランドと同様、複数のボディがある。ただし、ブランドと違い、移すのは電子頭脳のみ。人型ボディの相貌は30代から40代のヨーロッパ系の男性。体型は筋肉質のアスリートタイプ。ブランド同様スーツのデザインはオリジナルを思わせるが、原作とは違い素手で戦う。
- 「地上最大のロボット」版
- 強力な破壊力の槍と竜巻を発生させる盾を持ち、飛行可能な戦闘馬車を駆る戦士ロボット。デザインは古代ギリシア兵風。自身を「史上最強のロボット」と自負し、プライドからプルートゥとの一騎打ちにこだわってエプシロンとの共闘を拒み、激烈な死闘の末破れる。ちなみに『アストロボーイ・鉄腕アトム』でもロボット格闘技のチャンピオンという設定だが、やはりプルートゥの挑戦を受けて敗れている[5]。
エプシロン
世界最高水準のロボットの一人。原作同様、太陽の光を利用した光子エネルギーを動力源にしている。第39次中央アジア紛争への参加を「この戦いに義は無い」と言う理由から拒否し、世論から非難を浴びてしまう。その後、拒否した事に対しての見せしめとしてペルシア王国へ戦後処理の名目で派遣される。そこで戦後の悲惨な光景を目にし、この地で出逢った戦災孤児達を引き取り、オーストラリアで一緒に暮らしている。「ロボット風情が養父を気取っている」と世間から更に厳しい批判を受けたが、子供達や施設の職員からは慕われている。戦災地においては、人工知能を抜き取られた大量のロボットの残骸を、光子エネルギーの破壊力で「処理」した。この体験と、ペルシャから引き取った子供の1人ワシリーが口にする「ボラー」、歌詞にボラーの登場する不吉な歌などから、この戦争の裏にある不穏な何かを察知している。たびたびゲジヒトらの前に現れては、「人間とロボットは近づきつつある。近づきすぎると良くない事が起こる。」等の謎めいた警告を与えている。非戦闘型ロボットながら、今作中で最高の戦闘力を持ったロボットである。
オーストラリアの上空に飛来した「敵」の存在を察知し交戦。地上に、その残骸を残すほどのダメージを与えるも、「敵」の左腕を破損したに過ぎなかった。アブラーに囚われたワシリーを救い出すべく、ガードロボットのホーガンと共闘し、「敵」の潜むノルウェーのアジト、ビーゲラン城に突入。またも「敵」と遭遇し、雪の降る悪天候の中、光子エネルギーを満足に発揮できない状況下で再戦を繰り広げる。「敵」の正体やボラーに関する謎を解明し、戦闘でも優位に立つものの、「敵」を説得しようと試みた時突然状況が悪化し、首から上を噛み切られ破壊された。破壊される直前、バリアーを張ることのできる両方の手のみを彼の体から切り離し、「敵」との戦いで生じる衝撃波からワシリーとホーガンを庇い、守り抜いた。そして残留思念で「地球を守ってほしい」と言い残し消滅した。
形態は人間型。相貌は20代のヨーロッパ系の男性。長髪で中性的な印象の美男子で、黒のセーター(らしき服)と、同じく黒のスラックスおよびブーツを着用している。
- 「地上最大のロボット」版
- 特撮ヒーローのようなマントと全身タイツ風のデザイン。オーストラリアの孤児院で働いており、心優しい性格で大勢の子供達から慕われている。一度計略でプルートゥを海底の泥濘に沈めようとしたが、卑怯な手段を使ったという引け目と、敵であろうと見捨てられない優しさゆえに、結局助けてしまい、皮肉にもこれが仇となって弱点を知られる事になる。光子力で動くロボットで、光さえあれば無限に発揮できるパワーはプルートゥにとっても脅威であったが、エネルギー補充ができない悪天候の日に戦いを挑まれた上に、逃げ遅れた子供を庇い、破壊されるという悲劇的な最期を遂げてしまう。アニメ第1作および『アストロボーイ・鉄腕アトム』ではプルートゥに対してアトムと共闘している[8]。なお、『アストロボーイ・鉄腕アトム』では原作版の中性的な雰囲気からか、女性型の環境保護ロボットになっている。こちらはプルートゥに自然環境の専門家ならではの「地の利」を生かした水中戦で挑むも、プルートゥが海底火山を盾にし、撃てば噴火と大自然破壊をもたらすのを恐れて敗れた[5]。
警察関係者
- 田鷲警部
- 日本の警視庁に勤める警部。保守的な考えの持ち主。ロボットに対して高圧的な態度を取り、嫌悪に近い差別感情を露わにする。田崎純一郎氏殺害事件の現場検証などを行ったことから、一連の元ボラー調査団員殺しの捜査を開始していく。重要参考人として、来日したアブラー博士を取り調べる。最終的に、捜査協力の要請に応じ参加したアトム(ゲジヒトのメモリーを含め)の証言により事件の全貌を把握することとなる。
- 中村課長
- 田鷲警部と共に、一連の事件を追う日本の警察。お茶の水博士やアトム、ウランとも面識がある。大らかな好人物ではあるが、緊急時の対応には些か融通に欠け、お役所仕事な一面がうかがえる。
- ワラス警部
- ベルナルド・ランケ氏殺害事件の現場検証を行ったデュッセルドルフ市警の警部。
- フェルゼン刑事
- 現場に「角」を残す一連の殺人事件の一つを捜査をしていたが、ゲジヒトに助言を仰ぎ、彼の客観的な考察から、それが模倣犯による犯行であることを指摘される。ビール好きで、ゲジヒトとは以前にも同様に事件の捜査をしている間柄。
- シュリング局長
- ユーロポール・ドイツ支局局長。ゲジヒトの改竄された記憶について知る人物。ホフマン博士からゲジヒトの記憶に何らかの隠蔽工作があったのではないかとの問いかけに対し、ゲジヒトの製造に莫大な金がかかったこと、「大量破壊兵器になりうるロボット」である彼の存在が世界の勢力均衡を保つのに欠かせないなど説くが、質問の回答は避け言葉を濁しその場を去った。ホフマン博士が誘拐されかけた際、アブラーと取引をしたゲジヒトを叱咤し休職願いを却下した。
- ベッカー部長
- ユーロポール・ドイツ支局に勤める警察。シュリング局長の部下の一人。局長同様、ゲジヒトとアドルフの兄が関わる「事件」のことを知る数少ない人物。ホフマン博士が刺客ロボットに誘拐された際、これですべてが終わるとし、平然と博士諸共、ロボットを銃撃、破壊するよう部下に命じた。事件を知り回線にアクセスしてきたゲジヒトに対しても、冷徹な態度を通し、口論の際、ゲジヒトの過去に関し部下のいる前で言及しかけた。
- ホーガン
- ガードロボット。頭部はプロテクターで覆われている。屈強なボディーで、非常時には、腕部や脚部が伸び、更に巨大化する。エプシロンの護衛任務を与えられるが、エプシロンの方がはるかに強力なロボットなだけにむしろ恐縮していた。事務的に、護衛の任務を遂行する一方で、施設の子供たちに対する心配りも見せている。ハンターヴァレー上空で、「敵」とエプシロンが交戦した際、その衝撃波から施設の子供たちを守った。ワシリーを救出すべく罠に自分から飛び込むエプシロンに強引に同行し、エプシロンとプルートゥの対決の立会人となる。
「敵」と事件関係者
- サハド / プルートウ
- 元はアブラー博士により作られた人間型ロボット。中東系の青年の姿をしている。エプシロンが、ヘラクレスと「敵」が死闘を繰り広げている際にキャッチした「敵」からの映像に、花畑の中でスカーフを巻き微笑んでる姿で写っていた謎の男の正体。
- 砂漠で覆われた祖国の緑化(花畑を作る)を夢見て植物学を学んでおり、砂漠に覆われた過酷な祖国の地にも耐えうる植物の栽培技術を学ぶため、アムステルダム大学に留学。温厚で真面目な性格であり、大学では研究に没頭していたため、周囲からの覚えもよかった。栽培していたチューリップにそれぞれ名前をつけて可愛がるという、ロボットらしからぬ一面を持つ。他の花を全て枯らして生き延びた「プルートウ」という名のチューリップに対して、特別な感情を持っていた。オランダ・ザアンダムにあるペルシャ王国国営の栽培実験場[9]において花の研究をしていたが、中央アジア紛争が勃発した際、「父が死んだ」と周囲に言い残し、戦地となった祖国へ帰国する。また、その際自分が「プルートウ」のようになってしまうのでは、という意味深な懸念を周囲に残している。砂漠に花畑を作りたかったという過去と、ウランと遭遇した「プルートウ」と思しきロボットの漏らした発言とが合致するため、「敵」と同一、「敵」の前身である。
- ペルシャの戦局が悪化した際、作り主のアブラーに呼び出され、完成された「体」と対面している。その体は、環境開発ロボット(ボラーに先行する型と思われる)だったものを軍事兵器として改造したもので、作り主のアブラー博士曰く「魂の彷徨」と呼ばれる、電磁波による電子頭脳の遠隔操作システムが導入されている。これにより、電子頭脳の挿入されていないロボットに憑依し、その体を操ることが可能。また、竜巻を起こしたり雨を降らすなど自然の天候をも操る能力がある。この「体」になってからは、アブラー博士によりプログラミングされたであろう「怒り」を核とした残忍な人格が頭脳を支配しており、獣のような獰猛な唸り声をあげるなど、温厚な「サハド」の人格は鳴りを潜めてしまった。しかし、アブラーの命令に抗う場面も見られ、花畑の絵を描き、草花に生命力を与える他、標的と遭遇した際「悲しみ」などの情緒を示すなど、時折「サハド」の片鱗を見せることがある。また、「ボラー」という言葉と、恐らくそれを指すであろう砂漠の中に立つ巨大な影のイメージを異常なほど恐れている。ロボット殺害の件も、アブラーに強制されて行っていたことが判明。対戦相手であるエプシロンの前で、胸の内を明かし救いを求めつつも、結局は憎悪に支配され、エプシロンを破壊した。
- その後はエデン国立公園に現れアトムと対決。憎悪に支配されたアトムによって両方の角と片腕を失うが、それを制御したアトムによって赦免され、慟哭。彼もまた自らの憎悪を制御し、地球を救うため、地下に侵入。「花畑を作ることが自分の仕事だった」と言い残し、ボラーと相打ちに。最後の力でカルデラから噴出したマグマを凍らせ、地球を救った。
- ホフマン博士
- ゼロニウムを発明し、ゲジヒトを管理整備する科学者。ユーロポールドイツ支局に属する。ゲジヒト(人工知能)が見る夢について個人的な興味を持っている。傍目的に良い人であるが、科学者の見地から物を語ってしまいがちな人物で、しばしばそれはゲジヒトを苦笑させる。しかしゲジヒトのことは彼のストレスを心配したり、彼にある措置が極秘裏に施されたことを疑い上司を直接問い詰めるなど、技術者として以上に大切に思っている。何者かに襲撃されるが、エプシロンに助け出された。だが、その後、デュッセルドルフにて出席した欧州科学フォーラムの会場を後にする際、接触したアブラー博士に再び命を狙われる。敵の放った刺客のロボット(ゴジの人工知能が埋め込まれて操作されたロボット)に捕らわれ絶体絶命の状態に陥った上、ユーロポール上層部にも見捨てられる中、ゲジヒトがこの指示を断固無視し、敵との取引に応じたことで事なきを得る。我が子であり親友のゲジヒトの「死」を彼の墓標の前で悔やんでいた時、訪れた天馬博士とキンバリーでの会談以来の再会を果たす。
- アトムの復活を喜ぶ彼に対し、天馬博士は「科学者はどの領域まで踏み込むことが許されるのか」と言い残して去っていく。
- ブラウ1589
- ロボット史上、初めて人間を殺害したロボット。人工知能は完璧で欠陥はなく、人間に近かった。ユーロ連邦・ベルギーのブリュッセルにある人工知能矯正キャンプの地下に、身動きが取れない状態で隔離・幽閉されている。配線が辛うじて繋がっている状態にまで破壊され、壁に寄りかかり、複数の武器で動けない様にされている。ボロボロに朽ち果てており、フレーム[10]などがむき出しの状態であるが、意識はある。プロテクターをつけなければ異常をきたすほどの強力な電磁波を放ち、今までに面会に来た4体のロボットを壊している[11]。標的が世界最高性能のロボット7人であること、トラキア合衆国大統領のバックにいるDr. ルーズベルトの存在を示唆するなど、ロボット連続破壊事件の解決の手がかりを度々ゲジヒトに与え、遺体に施された角を「死の神(=プルートゥ)」の暗示であると推測した。彼は、自身の殺人行為を「処刑」と表現していたという。過去にアトムと接点があり、旧知の間柄のようだ。
- モデルは『鉄腕アトム』「青騎士の巻」に登場する人を殺せるロボット、青騎士ブルー・ボン[12]。また、「青騎士」のブルー・ボンが槍を刺されるシーンを意識し、ブラウ1589のボディーにも同様に槍が突き刺さっている。これを抜かれるとブラウは死亡する。
- ストーリーのラストで、アトムからある頼みごと[13]を受ける。プルートウによって地球が救われたのち、脱獄してアレクサンダーとルーズベルトのもとへ行き、自ら引き抜いた槍で2人を処刑しようとするが、アレクサンダーの中にある心を見つけ、彼だけは解放した。
- お茶の水博士
- アトムを管理整備している博士。温厚な思考を持ち、「ロボットも同じ命を持つもの」という考えの元、ロボットに深いいたわりを与える優しい性格の持ち主。日本の科学省長官を務める。アトムをわが子のように可愛がり、孫からも慕われる良き「おじいちゃん」でもある。妻とは死別しており、トーキョーの下町で一人暮らしをしている。ボラー調査団の元メンバー。そのため、何者かに命を狙われるが…。
- なお、彼のフルネームについて、劇中に登場する彼の名刺では、「お茶の水(=姓)博士(=名)」とも解釈できる表記になっている(博士号などの肩書きは苗字の前につけることが多い)。[14]
- 「地上最大のロボット」版
- ロボット同士が争うことを嫌悪している。幾度となくプルートゥと対決しそうになるアトムを必死に止め、アトムからの強化改造案も否定する。だが、サルタンにプルートゥとアトムを戦わせるため人質にとられてしまい…。
- ウラン
- アトムの妹としてお茶の水博士が製作。少々強気で生意気かつ、繊細な性格。高性能なセンサーを所持する故、ある日それに導かれ公園で正体不明のロボットと出会ったことを機に、事件に巻き込まれていく。兄であるアトムが意識不明の状態に陥り、自身も人間同様の深い「悲しみ」に暮れる。その後、天馬博士の計らいでアトムと再会するが…。
- 形態は人間型。短めのツインテールをした、おしゃまそうな女児の姿をしている。戦闘能力は無いが、動物や植物から発せられるSOSや、「悲しみ」や「憎しみ」と言った人間の激しい感情の変化をキャッチすることが可能で、多すぎるほどの他者の「悲しみ」を察知してしまう。そのため、人助けに余念がなく忙しない一面もあるが、感情の起伏を客観的かつ的確に分析する能力は人間以上で、プルートウと思しき先述のロボットや、アトムに対して複雑な感情を持つ天馬博士とも、持ち前の感受性と感情の分析能力を活かし心を通わせるなど、非常に重要な役回りを演じている。
- 「地上最大のロボット」版
- アトムに変装しプルートゥに挑むも逆に人質にされる。その後、ただ命令を遂行するプルートゥの閉ざされた心(電子頭脳)に「優しさ」と「思いやり」そして「友情」という、ぬくもりを教える。その事は、プルートゥにとって大きな転機となり、強い葛藤を与えた。そしてそれは彼の最期の瞬間まで続くこととなった。同時にそれは、戦ってきたアトムたちに深い悲しみと教訓を落とす結果となった。『アストロボーイ・鉄腕アトム』では動物の心を感知できる能力を持つ。
- ベルナルド・ランケ
- デュッセルドルフのロボット法擁護団体の指導者。ボラー調査団の元メンバー。何者か(ゴジ)に殺害される。ホフマン博士曰く「人を上から見下ろしたような物言いをする」「敵を自分で作ってしまう人物」らしい。
- 田崎 純一郎
- 国際ロボット法を発案した日本人法学者。ボラー調査団の元メンバー。何者か(ゴジ)に殺害される。
- スコット准将
- 国連軍准将。かつてボラー調査団に同行していた。「敵」と交戦しながら取り逃がしたエプシロンをかなり高圧的に尋問するが、そこにボラー調査団関係者の抹殺をも狙う「敵」の再襲来を受けて、ゲストハウスごと消滅させられる。
- ロナルド・ニュートン・ハワード
- 光子エネルギーを発明したオーストラリア人科学者で、エプシロンの生みの親。何者か(ゴジ)に殺害される。かつて「世界全体を救うロボット」の開発を目指し、ホフマンや天馬両博士と会談したことがある。
- Dr. ルーズベルト
- トラキア合衆国大統領アレクサンダーのブレーン。ゲジヒトなどのロボットの人工知能の数千倍の容量を持つコンピューター。大統領とはぬいぐるみ型の端末を通じて会話する。ブラウ1589やダリウス14世の発言中にも、その名や存在が言及されているので、大統領を陰で操る存在ながらも、決して隠された存在ではない。
- その目的は、ロボットの時代を作り上げることであり、アレキサンダー大統領ですらも手駒としか考えていない。本性は「自分以外はすべて敗者で愚者で死者」「人間はロボットの下僕」という考えを持つ極めて傲慢なロボット。7人の高性能のロボット暗殺の手引きをアレキサンダーと共にひそかに行い、成功する。その後、ボラーによってすべての生物が滅ぼされると言う情報を聞いてもまったくといっていいほど動じず、「ロボットは生き残る」とむしろそれを望んでいた。プルートウによって地球が救われた後、意気消沈するアレキサンダーの前で、新しくロボットの時代が始まると宣言する。が、その直後に来襲したブラウ1589の槍によって破壊された。
- アレクサンダー大統領
- トラキア合衆国大統領。大量破壊ロボット製造禁止条約の締結と第39次中央アジア紛争への多国籍軍派遣を主導。ダリウス14世を"立役者"などと呼んでいることから、先の紛争が仕組まれたものであった可能性が高い。
- 彼の目的は、トラキアを最強の国家に仕上げること。まず、ペルシアのロボット兵団が脅威と見た彼は、大量破壊兵器が出来ていることを口実にペルシア戦争を実行。兵団を壊滅させる。次に獄中のダリウスとひそかに連絡を取り、大量破壊兵器になると思しき7人のロボットを暗殺するためのアドバイスをした。
- 7人がすべて殺された後(しかしアトムは復活)、トラキアは永久に繁栄すると思い上がるが、直後にゴジによってエデン国立公園下のマグマ溜まりを利用され、トラキアどころか地球そのものを滅ぼされそうになった。自分の傲慢さが悲劇を招いたと感づいた彼は心身ともに気落ちするが、そこで脱獄したブラウ1589と遭遇。首を締め上げられるが、解放される。
- ダリウス14世
- 元ペルシア王国国王。自らが同国の王位継承者であると宣言し、ロボット兵器による急激な軍備拡張を展開。第39次中央アジア紛争を引き起こすも、トラキア合衆国を中心とした列強国の軍事介入により失脚。彼の住む宮殿は陥落し、自らも自決を覚悟するまで追い込まれたが、トラキア合衆国管轄のカラ・テパ刑務所に身柄を拘束された。拘束前は、恰幅の良い体格だったが、再登場時は完全にやつれ見る影もない姿となっており、その落差が長期の収監生活を物語っている。身柄拘束後は、戦犯として裁判を受けているが、獄中や法廷で一連の事件と関連すると思しき、殺害あるいは未遂に終わった被害者の名や、「進化の過程」「神に愛されたロボット」「お花畑」などの数々の発言や奇行を繰り返す。ゲジヒトとの面会の際に舌を噛み切り自殺を試みるも一命は取り留めた。その後も、拘束具とボイスモジュレーターが施された姿で収監中。
- アレクサンダー大統領に通信で呼び出された際、彼に対し「復讐の炎に焼きつくされるであろう」と吐き捨てている。また、軍事法廷の廷中激しい地震に見舞われた際、「アブラーの仕組んだ復讐からは誰も逃れられないだろう」とも発言している。
- 悪の独裁者というイメージがあったが、実際は「自分に忠実な国民には」優しい男で、砂漠のペルシアを緑の大地にするのが夢であり、実はボラーもそのための環境改造ロボットとして製造する予定だった。
- 王宮陥落直前、完成したプルートゥに対し、7体の高性能ロボット暗殺を命じ、アブラー(=ゴジ)に対しては、ボラー調査団の暗殺とトラキアの制裁を命じている。アレクサンダー大統領と接点があったことを考えると、どうやら獄中でもアブラーと連絡を取っていたようだ。
- 名前の由来はアケメネス朝ペルシアのダレイオス(ダリウス)3世。また、その容貌は実在の独裁者をモデルにしている。
- 「地上最大のロボット」版 (サルタン)
- プルートゥをアブラー博士に命じて作り上げた男。元々はある国のチョチ・チョチ・アババという名の王だったが贅沢三昧な暮らしをしていたため、国を追われた。とある孤城で暮らしていたが、いつか自分がまた王位に着く事を夢見ており、それが叶わないなら自分のロボットを世界一にしようと考えてプルートゥを作らせた。金持ちらしいわがままな部分が目立つ人物として描かれている。
- アブラー博士
- ペルシア王国出身の科学者「中央アジア最高の頭脳」と呼ばれる。アトムいわく「人間かロボットか、わからない人」。本人によるとペルシア戦争により体の大部分を機械化しているため、スキャンを通した分類が「ロボット」になる。戦災で家族(ロボットの子供を含む)を失った場面が描かれており、その悲しみと世界への憎しみで満ち溢れている。
- 国際会議出席のため来日するが、その真の目的は失踪した自作のロボット「プルートウ」の捜索。「プルートウ」の捜索では大量の偵察用ゴキブリメカを吐き出すロボットを使用する。再登場時にはペルシア共和国科学省長官に就任している。サマルカンドにてゲジヒトと対面した際、自身がダリウス14世と懇意であったことを告白。後のゲジヒトの調査で、サハドの生みの親であることが判明する。ゲジヒトの死後は、ワシリーを人質にとり、誘き寄せたエプシロンとプルートウを戦わせている。戦災で妻と子供を失い、戦争の悲劇による怒りや憎しみのみが彼を突き動かしている。サハドから彼の「体」を奪いプルートウの「体」を与え、「親」であるアブラーを裏切れないサハドの心情を利用し、「体」を返還するための交換条件として、今回の事件の標的である大量兵器になりうるロボットたちの殺害を命じている。
- しかしその正体はアブラーではなく、自らをアブラーと思い込んでいるゴジであった。「戦争で殆どの体を吹き飛ばされた」というのも、自らの人工知能を欺くことを覚えたゴジが暗示した偽の記憶であった。「本物のアブラー」は、ティムール地区への空爆の際、既に死亡していた。そして、「本物のアブラー」はその死の直前に自らの世界への憎しみをチップにコピーし、天馬博士に手渡していた。天馬博士がその憎しみを眠っていたゴジに注入したことでバランスが壊れ、最高の人工知能が覚醒したのである。
- そしてアブラーは天馬博士を拉致し、自分の脳をボラーに移植するよう強要した時にすべてを知り、アイデンティティーの混乱で顔が次々に変化し、自らの本来の姿であるゴジに戻っていった。
- 「地上最大のロボット」版
- ゴジ博士の変装。
- ゴジ博士
- ペルシア王国に高性能なロボットの兵団を作り、中央アジア制覇に寄与したと言われる天才科学者。「ゴジ」という名前はあくまで通称であり、本名や顔、その他の個人情報は明らかになっていない不明な人物。お茶の水博士を襲撃した謎のロボットは自らをゴジであると名乗っている。
- その正体は、環境開発用ロボットであったボラーを完成させるための、超高性能助手ロボットであり、天馬博士の言う「完璧な頭脳をもつ、完全なロボット」であった。地球上の全人類の数に匹敵する感情のデータを基にした「60億の人格」をプログラミングされており、その人工知能の複雑さや情報量の多さは、それまでのロボットの比ではなかった。そのため、超高性能ゆえの複雑さに処理能力が追い付くことができず、無限のシミュレーション状態に陥り目覚めることができなかった。しかし、アブラー博士の憎しみの感情の篭ったチップを注入することで覚醒し、ゴジとしての人格とアブラーとしての姿と性格を持つ二重人格のロボットとなる(ただし、本人は自分をアブラーと思っていた)。これは、ありとあらゆる人格や性格をプログラミングされたため、ロボットでありながら、複数の人格を演じ分けることができるようになった結果であり、また、一定以上の高度な知能は、嘘をつくことを覚えるとされ、人工知能そのものをも欺き二重人格に陥るという、ねじれた精神状態を作り上げた。
- 「アブラーとしての彼」は、憎しみの赴くままプルートウを作り上げ、7体の高性能ロボットを暗殺するよう仕向け、「ゴジとしての彼」は、目的どおりボラーを作り上げた。その一方、人工知能の抜けたさまざまなロボットに自らの人工知能を埋め込んで操作し、ボラー調査団を次々と暗殺していった。そして「アブラーとしての彼」は、ボラーを完成後、天馬博士を拉致し、自分の頭脳を移植するよう強要するが、自分が天馬博士によって作り上げられたロボット・ゴジだと言うことを知らされる。そのショックのあまり錯乱状態になり、機能を停止[15]したが、その頭脳は無数のゴキブリによって抜き去られた。
- その後、その人工知能は望みどおりボラーに組み入れられ、大火山活動を誘発することで核の冬を起こして地球を滅ぼすため、エデン国立公園下のカルデラを突き進む。そして自らを止めようとするアトムとプルートウに遭遇。自分はアブラーだと叫び続けながら、プルートウの特攻を受け、破壊された。
- なお、「ゴジ」とは古代ウズベクの伝説に出てくる「砂の賢者」に由来するという。この賢者は、砂より生まれ、王にこの世の真理を説いた後に、再び元の砂塵に戻っていったという[16]。
- 「地上最大のロボット」版
- サルタンの前に突如現れ、自分のロボット「ボラー」こそが最強であり、プルートゥかアトムの生き残ったほうと戦わせると宣言した謎の男。
- その正体はサルタンの召使ロボット。最強のロボットを欲しがっていたサルタンの希望に答えるために、「アブラー博士」と名乗りプルートウを作り上げるが、サルタンがそれを利用して他のロボットを破壊し始めたので、そのプルートウを倒すために「ゴジ博士」としてボラーを製作したのだった。全てが終わった後に、戦いの空しさをサルタンに諭す。
- 天馬博士
- アトムの生みの親で電子頭脳の権威。原作同様、ロボットに対して屈折した考えを持っている[17]。元日本科学省長官で、お茶の水博士の前任者に当たる人物。ホフマン博士曰く「完璧な頭脳」の持ち主。交通事故で死亡した息子、天馬飛雄(トビオ)の姿を模してアトムを製作するも、自分の思い通りに育たない苛立ちから、アトムをサーカス団へ売りとばした。また、アトムを「失敗作」と語る。科学省を去った後は、表舞台に一切姿を現さず闇社会に消えていたという。しかしキンバリーにて、ホフマン博士、ニュートン=ハワード博士らが会談を行った際には、彼らの前に姿を現し、両博士の研究内容を網羅しその場を去り、再び行方をくらました。
- テンマ型チップと呼ばれる人工知能の作動に重要な影響を及ぼすパーツの発明者でもある。また、彼曰く「ある人」の依頼により、高額にして高度ながら、彼をして「完璧」と自負する唯一無二のロボット(ゴジ)を製作した。しかしながら、全人類60億の人格をプログラミングされたそのロボットは、その人工知能の複雑さゆえに、ついに目覚める事はなく、現在でも眠り続けているという。(実際はアブラーの偏った感情を注入され、アブラーの姿で覚醒していた。)
- 「敵」との闘いにより「死亡」が確認されたアトムを修理するために、元の職場である科学省に姿を現し、驚異的な腕前を発揮しアトムの修理を成し遂げる。ゲジヒトの死後、来日した彼の妻ヘレナと接触してゲジヒトのメモリーを託され、それをアトムに与える。憎しみの感情を注入されることで、アトムが制御不能な怪物になる恐れがあることも承知の上で、陰で「アトムを蘇らせるためには悪魔にもなる」と言い放ち、アトムを「再起動」させた。その後アブラーに拉致され、さらなる展開を促す。
- その後、お茶の水博士のもとに現れ、ゴジが憎しみそのものの存在になったこと、地球は滅びることを宣言する
- 「地上最大のロボット」版
- サルタンにお茶の水博士が拉致された後どこからともなく登場。アトムの力を100万馬力に強化改造するが、アトムは力を抑えきれず海底に沈んでしまう。そこにプルートゥが現れる。
- ワシリー
- エプシロンに引き取られたペルシア人少年。身寄りのない戦災孤児で、オーストラリアの児童養護施設で他の孤児たちと暮らす。壊滅した村落の唯一の生き残りであり、重度のペルシア戦争症候群を患っていた。「ボラー」を間近で目撃した数少ない人間。引き取られた当初は、心を閉ざし「ボラー」以外の言葉を発することがなく心配されたが、徐々にエプシロンや他の子供たちと心を通わせ、歌を唄えるまで回復した。しかし、エプシロンが不在の際に、「ヨハンセン」と名乗る慈善家の男に引き取られて(拉致されて)しまう。これが「敵」が自分を誘き寄せるために仕組んだ罠であると判断したエプシロンはホーガンと共に、彼の救出に向かう。「敵」との死闘の末、エプシロンは大破するも、ワシリーの命は守られた。
その他
- ヘレナ
- ゲジヒトの妻のロボット。忙しい夫を心配している。デザイナーの仕事をしている。自身にその記憶がないのだが、夫と共に日本への渡航を試み、直前にキャンセルしたという記録が残っている。夫ゲジヒトの死後、天馬博士に夫の記憶チップを渡すために来日。その後、ゲジヒトのチップが挿入されたアトムと出会い、親しみを示している。
- ポール・ダンカン
- ノース2号を雇ったボヘミア出身の老作曲家。少年時代の病気により死にかけたが、モグリの日本人の医者の手術により一命を取り留める(その結果、視力を落としていき、失明している)。かつて母に捨てられた(と思い込んでいた)ためか偏屈な性格で、ノース2号のことも兵器呼ばわりしていたが、彼のつらい過去や母の真の愛情(モグリの日本人の医者の手術には大量の報酬が必要だった為に母が身売りしていた事)を知り心を開く。しかし、開いた時に「敵」が現われ、そこには寂しさと虚しさが残ってしまった。
- アドルフ・ハース
- 表向きはデュッセルドルフで貿易関係の仕事を営み、妻・イルザと一人の子供・ハンスと暮らすごく普通の男性。しかし、裏ではKR団に所属している熱烈な反ロボット主義者。
- 父は工業員で、工場における労働力としてのロボットの導入に伴い、リストラという憂き目に会ってしまう。その後、家庭は貧しく荒みきり、父は酒びたりの日々を続けた末、飛び降り自殺した。ある事をきっかけに自身の兄がロボットに殺されたことを知る。そして、その兄を殺したのはゲジヒトではないかと疑い彼への復讐を企む。後にその事実を、ゲジヒト本人に打ち明ける。しかし、その一方でゲジヒトを反ロボット主義のプロパガンダとして利用しようとしているKR団と袂を分かってしまい、団体から命を狙われることになる。それと同時に、戦争終結直後、戦後復興ビジネスに参画するためペルシャへの入国をしており、その仕事の関係で入手した、カラ・テパ刑務所におけるダリウス14世の意味深な映像のせいで更なる敵を増やしてしまう。
- 名前の由来は、第二次大戦中を舞台に愛国心や人種差別をテーマに描いた『アドルフに告ぐ』。ハース(Haß)とはドイツ語で憎しみの意味。また、息子の名前「ハンス」は『ビッグX』のハンス・エンゲルスに由来。
- アドルフの兄
- 過去のトラウマにより弟以上の反ロボット感情の持ち主。ビーコムアイ-3と呼ばれる監視カメラシステムの修理業者として働いていた。かつて独学で勉強していたアドルフのために学習機器を盗んだ際、警備のロボットを破壊したことで「ロボットは人間を殺せないが逆に人間はロボットを殺せる」と考えるようになり、その後連続幼児型ロボット誘拐殺人事件を引き起こす。ロボット夫婦のみならず子供のいない人間夫婦にも必要とされている子供ロボットを惨殺した彼の事件は、KR団幹部ですら「吐き気がする行為」と蔑んでいる。表向き警官により射殺されたとされているが、実際は自分の息子を殺され逆上したゲジヒトによって、ゼロニウム弾で殺害されていた。死体が人間用の銃器ではありえないほど損壊していたのは、そのためである。
- アーノルド
- エプシロンと懇意だったトラキア合衆国の気象予報ロボット。人間型ではなく、オーソドックスなタイプのロボット。おしゃべり好きな性格。首都ニュー・ワシントンにある気象予報センタービル所属。衛星写真を解析し砂煙と共に、ペルシャの砂漠地帯を移動する「ボラー」と思しき巨大な影を確認するも、その確証は得られなかった。また、気象予想センタービルの壁に入る不自然なクラック、急速な火山の活動異常、過去に発生した大地震の周期を基にしたデータなどから、トラキア合衆国を基点に未曾有の天変地異が起きることを予測し、アレクサンダー大統領を含めた政府高官らに報告した。また、地球環境の異常とは別に、今回の災害を意図的に誘発させる、人為的な要因が加わっている可能性も指摘している。
- 伴校長先生
- ウランの通う学校の校長。通称ヒゲオヤジ。「ロボットも人間と同じように悲しむもの」という考えを持ち、世間上アトムを失ったウランの心を救おうとしている人格者。
- キャラクターのモデルは、手塚作品常連の「ヒゲオヤジ」こと伴俊作[18]。
- モハメド・アリ
- ゲジヒトがペルシャのサマルカンドで出会った花売りのロボット。ゲジヒトにサハドの名前と留学先を教えた。体が半壊しているが、サハドに憧れ、将来は学者になりたいと思っている。その後、ゴジにより操られアムステルダムにいたゲジヒトの前に姿を現し、彼を銃で撃ち、殺害する。ゲジヒトを射殺した際、自らも半壊ロボットだった上、高反動のクラスター弾の衝撃によって機能停止した。
- ロビタ
- ゲジヒトとへレナの養子のロボット。
- 人間の親子の愛情に興味を持ったゲジヒトが、スクラップ場で500ゼウスで買い取って養子とした。少しずつ成長していくロビタを見て、二人は親子の情を理解するようになる。しかし二年前、家族との日本旅行を考えていた矢先、アドルフの兄によって誘拐され、最後は破壊されてしまう。それを見て逆上したゲジヒトによってアドルフの兄も殺害された。
- 子供を失った二人の悲しみは深く、任務にも支障をきたすほどだったので、警察上層部は二人のロビタに関する記憶をすべて消去。それによってできた空白は、「研修の傍らさまざまな所に旅行していた」という偽の記憶で埋め合わせた。ところが、ゲジヒトにだけは記憶の断片がなぜか残り、チップを交換したブラウ1589とアトムもそのすべてを知るようになる。そしてアドルフとの接触・触れ合いによって、ゲジヒトはロビタに関する記憶をすべて取り戻し、その中から『憎悪からは何も生まれない』ということを見出していく。
- 名前の手塚治虫の『火の鳥』に登場する人間の心をもったロボットの名前から。
用語
- ロボット
- この時代のロボットは、人と同様、一定の人権を有しており、市民権も得ている。非常に人に近い容姿をもつものから、旧来のロボットの容姿をもつものまで様々。また、作業などの用途によって自身のボディを変える(複数のボディを持つ)タイプも存在する。
- 第39次中央アジア紛争
- 中央アジア地域に位置する独裁国家ペルシア王国で、大量破壊ロボットを巡って起きた戦争。国王ダリウス14世が、ロボット兵団などの軍事力で近隣諸国を侵略し、中央アジアを制圧しようとしていたことがその発端。その後、それを食い止めるためトラキア合衆国のアレクサンダー大統領が国連に働きかけ、「大量破壊ロボット製造禁止条約」を承認させる。そして、ペルシア王国は大量破壊ロボットを保有しているというトラキア大統領の主張を元に、国連はボラー調査団をペルシア王国に派遣。
- その後、ボラー調査団はモスクの地下に大量のロボットの残骸を発見。国連は条約違反であるとしてペルシア王国に世界最高水準ロボット7人など平和維持軍を派遣。アトムをはじめとする世界最高水準ロボット達の活躍によりペルシア王国が陥落し戦争は終結。しかし、悲惨な戦場での体験は7人のロボットたちの心に大きな影響を与えた。モデルはイラク戦争。
- ペルシア王国
- ペルシア王朝の正統な後継者と称する国王・ダリウス14世による独裁主義国家。絶対君主制が敷かれ、民衆やロボットは圧政に苦しんでいた。ロボット軍事力を強大化し中央アジア全域の統治を目論むもトラキア合衆国や国連との衝突によって戦争を引き起こす。しかし、アトムやゲジヒトなどの世界最高水準ロボットの働きにより、戦争終結と共に崩壊。戦争終結後は国連やトラキア合衆国が占領し、その後はペルシア共和国として経済の復興と民主主義の定着の道筋を歩み始める。
- 「ペルシア」はイランの別名だが、この国は明らかにフセイン政権下のイラクをモデルにしている。また作中の描写から位置はウズベキスタン周辺と推測され、地理的にも実際のペルシアとは異なっている。
- トラキア合衆国
- 「世界のリーダー」を自負する大国。アレクサンダー大統領が国を治め、第39次中央アジア紛争を主導的な立場で終結させる。その「功績」から同大統領は国民に支持され再選。また、世界最先端の科学技術を有する技術立国でもあるがロボット産業は未発達で、大量破壊兵器になる可能性のロボットは所持していない。首都はニューワシントン。「エデン国立公園」という広大な保護区域があり、アメリカ先住民を思わせるナナブー族が居住している。
- 「トラキア」はバルカン半島の地名だが、明らかにアメリカ合衆国をモデルにしている(地理的にどこに位置するのかは不明だが、ダリウスが先進国を「欧米」と呼んでいることなどからアメリカ大陸の可能性が高い)。
- エデン国立公園
- 広大な保護区域。いくつもの休火山に囲まれている。この区域の地下には巨大なマグマ溜まりがあり、火山全体が噴火した場合、太陽光線がすべて遮られて火山の冬となり、殆どの生物は死に絶える(破局噴火)。これを利用したゴジはボラーを使い、カルデラに侵入してトラキアにいくつもの天変地異を起こさせた後、ボラーの反陽子爆弾を爆発させてカルデラ全体を噴火させ、地球を滅ぼそうとするが、アトムとプルートウの活躍で阻まれた。
- ナナブー族
- エデン国立公園に住む先住民。この部族のシャーマンは「この地を中心に、この世が滅びるだろう」と予言している。
- 移住した白人によって追放、絶滅に追い込まれた黒人およびネイティブアメリカンをモデルにしている。
- ユーロ連邦
- 『PLUTO』の世界で現在のEUがさらにまとまったと思われる架空の連邦国家。その事から範囲はヨーロッパほぼ全域にあたり、かなりの超大国であると類推される。
- 現在EUに加盟していないトルコもこの国の一員である。
- アセアン
- 『PLUTO』の世界の日本やオーストラリアはこの地域区分に含まれている模様。現在のASEANとは異なり、東アジアやオセアニアを含む西太平洋沿岸地域を指すと考えられる。
- 大量破壊ロボット製造禁止条約
- ペルシア王国のロボット軍事力が強化し、中央アジアには軍事的緊張が高まっていた当時、それを懸念したトラキア合衆国のアレクサンダー大統領が国連に大量破壊目的のロボットの生産を禁じる条約を提唱し国連で承認される。それ以前に製造されたゲジヒト、アトムら7人は条約に抵触する(大量破壊兵器にもなりうる)性能を持つ。戦争の引き金ともなった条約。また、その科学技術においてロボット研究開発の分野が遅れをとっていたトラキア合衆国が優れた技術力・生産力を持つ他国を「牽制」する意味合いもある。
- ボラー調査団
- 大量破壊ロボットの製造の疑惑をかけられたペルシア王国に、実態把握のために国連から派遣された調査団。結局、大量破壊ロボットの発見には至らなかったが、調査に立ち入った古いモスクの地下において大量のロボットの残骸を発見した。ロボット工学の分野からはお茶の水博士、ホフマン博士、ハワード博士らが参加。その他、それぞれ殺害されたロボット法擁護団体のベルナルド・ランケ、法学者の田崎純一郎もボラー調査団の元メンバーであったため、後に現場に「角」を残す奇怪な殺人事件のターゲットになる。また、調査団のメンバーではないが、同じくロボットの残骸を目撃していた国連軍のスコット准将も部下共々殺害された。
- 国際ロボット法
- 日本の法学者、田崎純一郎が発案。ロボットに守らせなければならないルールや、ロボットが保障されるべき権利などが定められた法律。アシモフのロボット工学三原則に基づいた「人に危害を加えたり、殺害してはならない」などの条約が定められている。原作の『鉄腕アトム』のロボット法と同じだと思われる。
- ペルシア戦争症候群
- 戦争の衝撃が精神に深い傷を与え、心を侵される病(PTSD)。エプシロンが引き取った戦争孤児たちのなかにも、この症状に侵された子供たちが何人もいる。
- ボラー
- “調査団”の名前にも使われた謎の単語。エプシロンが引き取った戦災孤児のワシリーをはじめ、これと同じ単語を口にするペルシア戦争症候群の子供がいる。ペルシア戦争の砂埃がまっている写真を解析したところ大きな影が見られた、ボラーではないかと推測される。また、プルートウ(=サハド)自身も、この「ボラー」という言葉にひどく怯えており、オスロの古城に潜んでいたプルートウを目撃したワシリーが、この言葉を叫ぶと、アブラー博士も感情を露にし、彼を制止した。その上、ワシリーが「ボラー」の目撃者であるとも言及している。エプシロンとの戦いで雲の中に「ボラー」らしき巨大な影が現れた。
- 実はペルシア王国を緑化するための超大型地球改造ロボットの名称。アブラーによって開発されるが、試作品を作っては失敗の繰り返しで開発は難航。地下に捨てられたその残骸はボラー調査団によって目撃され、ペルシア戦争の遠因となった。アブラーは優秀な助手ロボットが必要と考え、天馬博士と共に最高の人工知能を備えたロボットを製作した。それがゴジである。
- そしてゴジはボラーを作り上げるが、それはプルートウを上回るエネルギーと反陽子爆弾を搭載した、惑星改造ロボットとして完成した。ゴジはアブラーの憎しみを持ってボラーを作り上げたため、ボラーは憎しみそのもののロボットと化し、赤ん坊のような泣き声と咆哮しか出来ない。
- アトムとプルートウの戦いのさなか、地球を滅亡させるためにエデン国立公園下のマグマを突き進むが、それを食い止めようとするアトム・プルートウと激突。プルートウの体当たりを受け、相打ちとなった。
- なお、元々ボラーとはペルシアの童歌にある、『地球を食べる巨人』の名前である。
- 「地上最大のロボット」版
- ゴジ博士が作ったゴーレム風のロボット。プルートゥを凌駕するパワーを持つが戦うことしかできない。
- KR団
- 反ロボット主義たちからなる、ロボット人権法廃止を唱える極右団体。その活動思想の根拠は「ロボットに魂はない」。メンバーには知識人や財界人、権力者も含まれているらしく、メディアを利用した情報戦を展開する一方で、かなり過激な活動も行っている。ドイツ司法局のロボット判事、ノイマン氏の殺害にも関与していると見られている。
- モティーフはKKKで、集会の内容や団体の衣装からもKKKを意識している事がうかがえる。
- ロボット法擁護団体
- ロボット法の擁護、ロボットの人権の擁護を目的とした団体。そのため、反ロボット主義の者達から反感を抱かれている。
- ロボットが見る夢
- 彼らが見る夢は人のそれとは違い、電子頭脳に記録された過去のリピート。人とは違い、記憶を電子頭脳から削除する以外、忘れるということが出来ない彼ら特有の(一種の)症状とも言える。時にそれは(過去の体験により)苦しみや恐怖を伴う悪夢となる場合がある。
- ゼロニウム
- ホフマン博士が発明した、SAAW特殊重火器にも使われる特殊な合金。電磁波を遮断する特性を持ち、火器として使用した場合は、装甲車を一発で破壊するほどの威力をもつ(その威力から、対人使用は禁止されている)。ユーロポールにおいて、この合金を使用した警官ロボットが一台製作された。
- テンマ型チップ
- 天馬博士が開発したデータチップ。
- 反陽子爆弾
- 地球を滅ぼすと言われている爆弾。
- 極めて難解な技術と数式が必要であり、ロボットでも一定以上の高度な知能がないと設計のための数式が出せない。
- 一定以上の高度な知能を持ったロボットが、すさまじい憎悪を注入されたときにその数式をはじき出せる。
- ゲジヒトの憎悪を注入されたアトムがその数式を完成させたが、それより前にアブラーの憎しみを入れられたゴジが、反陽子爆弾をボラーに搭載していた。これを使ってエデン国立公園のカルデラ全体を噴火させ、すべての生物を滅ぼそうとたくらむが、プルートゥによって阻まれた。
「地上最大のロボット」との違い
数え上げるときりがないが、ここでは一部を紹介する。
- アトムではなく、ゲジヒト中心で物語が回る(7巻以降は天馬博士やエプシロン、アトムなどの視点で展開される)
- ロボットのキャラクターデザイン(最初の案では手塚治虫のデザインをほぼ踏襲していたが、手塚眞の提案により独自のデザインになったとの事)
- オリジナルキャラクターの存在(ブラウ1589、サハド、ワシリー等)
- ロボット法におけるロボットの人権の有無(原作には人権が無い[19])
- ロボットだけではなくボラー調査団(人間)も殺されること、その頭部に角が突き立てられること
- 殺され方、殺される順番(ゲジヒトがヘラクレスの後に殺されること)
- アトムが一度殺されること(原作では接触はするが戦いはしない)
単行本
各巻に通常版と豪華版の2種類が発行される。豪華版は通常版よりも10日程先行して発売。B5判で雑誌掲載時のカラーページも再現し、各巻に必ず付録が付く(ちなみに第1巻の付録はオリジナルの鉄腕アトム「地上最大のロボット」の原作コミック)。また、所謂「限定版」ではないため、通常版と同じく重版も発行されている。
- PLUTO (1) 通常版:ISBN 978-4-09-187431-3、豪華版:ISBN 978-4-09-187756-7
- PLUTO (2) 通常版:ISBN 978-4-09-187432-0、豪華版:ISBN 978-4-09-187757-4
- PLUTO (3) 通常版:ISBN 978-4-09-180237-8、豪華版:ISBN 978-4-09-180309-2
- PLUTO (4) 通常版:ISBN 978-4-09-181006-9、豪華版:ISBN 978-4-09-181028-1
- PLUTO (5) 通常版:ISBN 978-4-09-181556-9、豪華版:ISBN 978-4-09-181595-8
- PLUTO (6) 通常版:ISBN 978-4-09-182127-0、豪華版:ISBN 978-4-09-182185-0
- PLUTO (7) 通常版:ISBN 978-4-09-182386-1、豪華版:ISBN 978-4-09-182460-8
- PLUTO (8) 通常版:ISBN 978-4-09-182524-7、豪華版:ISBN 978-4-09-182668-8
ハリウッド実写CG映画
テンプレート:節スタブ アメリカの映画プロダクションイルミネーション・エンターテインメントは、手塚プロダクションと共同で本作を基にした実写映画を企画・製作中であると発表した[20]。
脚注
外部リンク
テンプレート:手塚治虫文化賞マンガ大賞 テンプレート:このマンガがすごい!オトコ編1位 テンプレート:星雲賞コミック部門 テンプレート:オリコン週間コミックチャート第1位 2008年 テンプレート:オリコン週間コミックチャート第1位 2009年
テンプレート:Asbox- ↑ 人気マンガ「PLUTO」がハリウッドで実写化(芸能) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース(ウェブ魚拓)
- ↑ 浦沢直樹×手塚治虫「PLUTO」がハリウッドで実写CG映画化決定! - シネマトゥデイ(ウェブ魚拓)
- ↑ 浦沢直樹「PLUTO」を米イルミネーションが実写化:映画ニュース - 映画.com(ウェブ魚拓)
- ↑ 手塚治虫×浦沢直樹、SFサスペンス漫画「PLUTO」がハリウッドで実写化! - MovieWalker(ウェブ魚拓)
- ↑ 5.0 5.1 5.2 『アストロボーイ』版プルートゥが優秀なロボットを襲っていた目的はアトムと戦うためのレベルアップであって、破壊ではなく単に倒されただけであるため以降のエピソードにも登場。
- ↑ 実際のギリシャとトルコは、オスマン帝国以来国家レベルで虐殺したされた関係で、ライバルというより仇敵同士。
- ↑ 擬似的な食事、娯楽、休息といった行動。ロボット同士の結婚や育児といった生活スタイルは作中のロボットにとってはポピュラーなもの。
- ↑ アニメ版での「地上最大のロボット」は第2作のみ原作ストーリーに忠実。
- ↑ この地下において、「敵」が収容されており、潜入したゲジヒトと対峙する事になる。
- ↑ 蛇腹状の骨格など、「青騎士の巻」本編の青騎士のものに酷似している。
- ↑ ゲジヒトは電磁波を遮断する“特殊な合金”でできているため、プロテクターなしで会っている。
- ↑ ブラウ=青、1589はブルボン朝成立年に相当。
- ↑ その内容は具体的には明かされていない。
- ↑ 豪華版第七巻の付録『PLUTO設定画集』で、外見上のモデルは手塚治虫であると言及されている。
- ↑ 機能停止した後のゴジの顔立ちは、原作版のゴジ博士(召使ロボット)の素顔に似ている。
- ↑ ペルシアを訪れたゲジヒトに砂の賢者・ゴジの逸話を教えた物売りの商品の中に、手塚治虫のマスコットであるヒョウタンツギが混じっている。
- ↑ 原作の天馬博士同様、外見上のモデルはレナード・バーンスタインとのこと。
- ↑ 浦沢直樹の作品『MONSTER』の登場人物Dr.ライヒワインと酷似した姿形をしている。そもそも、ライヒワインのモデルがヒゲオヤジであったため、今作への出演は自作品へのオマージュであると作者本人も言及している。
- ↑ 原作では、「地上最大のロボット」以降の作品で、たびたびロボットの人権が題材に上げられ、後々、ロボットが人権を勝ち取っていくこととなる。
- ↑ テンプレート:Cite news