砂の器

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砂の器』(すなのうつわ)は、松本清張の長編推理小説1960年5月17日から1961年4月20日にかけて『読売新聞』夕刊に連載され(全337回。連載時の挿絵は朝倉摂)、同年12月に光文社カッパ・ノベルス)から刊行された。後に電子書籍版も発売されている。

都会の操車場で起きた或る殺人事件を発端に、刑事の捜査と犯罪者の動静を描く長編小説であり、清張作品の中でも特に著名な一つ。ハンセン氏病を物語の背景としたことでも知られ、大きな話題を呼んだ。ミステリーとしては、方言周圏論に基く(東北訛りと「カメダ」という言葉が事件の手がかりとなる)設定が重要な鍵を握る、などの試みがなされている。

1974年に松竹で映画化、またTBS系列で2回、フジテレビ系列で1回、テレビ朝日系列で2回の5度テレビドラマ化され、その都度評判となった。 テンプレート:Portal 文学

あらすじ

5月12日の早朝、国電蒲田操車場内にて、男の殺害死体が発見された。前日の深夜、蒲田駅近くのトリスバーで、被害者と連れの客が話しこんでいたことが判明するが、被害者のほうは東北訛りのズーズー弁で話し、また二人はしきりと「カメダ」の名前を話題にしていたという。当初「カメダ」の手がかりは掴めなかったが、ベテラン刑事の今西栄太郎は、秋田県に「羽後亀田」の駅名があることに気づく。付近に不審な男がうろついていたとの情報も得て、今西は若手刑事の吉村と共に周辺の調査に赴く。調査の結果は芳しいものではなかったが、帰途につこうとする二人は、近年話題の若手文化人集団「ヌーボー・グループ」のメンバーが、駅で人々に囲まれているのを目にする。「ヌーボー・グループ」はあらゆる既成の権威を否定し、マスコミの寵児となっていたが、メンバーの中心的存在の評論家・関川重雄の私生活には暗い影が射していた。他方、ミュジーク・コンクレート等の前衛音楽を手がける音楽家・和賀英良は、アメリカで認められ名声を高めることを構想していた。

殺人事件の捜査は行き詰まっていたが、養子の申し出から、被害者の氏名が「三木謙一」であることが判明する。養子の三木彰吉は岡山県在住であり、三木謙一が東北弁を使うはずがないと述べたため、今西は困惑するが、専門家の示唆を受け、出雲の一部分に東北地方と似た方言を使用する地域が存在することを知り、島根県の地図から「亀嵩」の駅名を発見する。今西は亀嵩近辺に足を運び、被害者の過去から犯人像を掴もうとするが、被害者が好人物であったことを知るばかりで、有力な手がかりは得られないように思われた。

続いて第二・第三の殺人が発生し、事件の謎は深まっていくが、今西は吉村の協力を得つつ苦心の捜査を続ける。他方「ヌーボー・グループ」の人間関係にも微妙な変化が進んでいた。長い探索の末に、今西は犯人の過去を知る。

捜査はやがて本浦秀夫という一人の男にたどり着く。秀夫は、石川県の寒村に生まれた。父・千代吉がハンセン氏病に罹患したため母が去り、やがて村を追われ、やむなく父と巡礼(お遍路)姿で放浪の旅を続けていた。秀夫が7歳のときに父子は、島根県の亀嵩に到達し、駐在の善良な巡査・三木謙一に保護された。三木は千代吉を療養所に入れ、秀夫はとりあえず手元に置き、のちに篤志家の元へ養子縁組させる心づもりであった。しかし、秀夫はすぐに三木の元を逃げ出し姿を消した。

大阪まで逃れた秀夫は、おそらく誰かのもとで育てられた、あるいは奉公していたものと思われる。その後、大阪市浪速区付近が空襲に遭い、住民の戸籍が原本・副本ともに焼失した。当時18歳の秀夫は戸籍の焼失に乗じて、和賀英蔵・キミ子夫妻の長男・和賀英良として年齢も詐称し、新たな戸籍を作成していた。

主な登場人物

原作における設定を中心に記述。

今西栄太郎
警視庁捜査一課の巡査部長[1]。俳句を詠むことが趣味。45歳。
吉村弘
品川警察署[2]の若手刑事。東北行きでは今西に同行。
和賀英良(えいりょう)
「ヌーボー・グループ」の一人で、音楽家。28歳。
関川重雄
「ヌーボー・グループ」の一人で、評論家。27歳。(映画には登場しない)
田所佐知子
新進彫刻家で、和賀の婚約者。元大臣の娘。
三浦恵美子
関川の愛人。銀座のバー「クラブ・ボヌール」の女給。(映画では設定変更)
宮田邦郎
青山の劇団に所属する俳優。30歳。(映画には登場しない)
成瀬リエ子
劇団の事務員。25歳。(映画には登場しない)
三木謙一
蒲田操車場殺人事件の被害者で、元島根県警の亀嵩駐在所巡査部長。
三木彰吉
岡山県江見町の雑貨商。三木謙一の養子。
桐原小十郎
亀嵩算盤の老舗を営む。三木謙一と親しかった。

エピソード

  • 雑誌『』1955年4月号に掲載されたエッセイ「ひとり旅」で、著者は以下のように記している。「備後落合というところに泊った(中略)。朝の一番で木次線で行くという五十歳ばかりの夫婦が寝もやらずに話し合っている。出雲の言葉は東北弁を聞いているようだった。その話声に聞き入っては眠りまた話し声に眼が醒めた。笑い声一つ交えず、めんめんと朝まで語りつづけている」。この経験が、のちに本作の着想に生かされたと推定されている[3]
  • 映画化を契機に、舞台となった亀嵩は注目を集めた。それを受けて記念碑が建立され、亀嵩観光文化協会と砂の器記念碑建設実行委員会は1983年10月23日に除幕式を行った。この記念碑は、亀嵩駅の東約3キロ、湯野神社の鳥居脇にある。裏側には、小説の冒頭部が刻まれている(詳細は外部リンク参照)。1992年に原作者が死去した際には、亀嵩で慰霊祭が行われた[4]
  • 小説中の登場人物の出雲地方の方言の記述に関しては、正確を期すため、読売新聞松江支局の依頼を通じて、亀嵩地域の方言の話者による校正が行われた。その際、亀嵩算盤合名会社の代表社員・若槻健吉も協力したが、この縁から、著者と若槻家の交流が始まった。上述の記念碑の、清張による文字の揮毫は、若槻家の客間で行われ、健吉の息子・慎治が上京した際には著者が贔屓の店を案内するなど、付き合いが続いた[5]
  • 手がかりが「東北訛りのカメダ」という手法は、後に映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』にて、本作のオマージュとして使用された[6]
  • 本作を担当した読売新聞の編集者・山村亀二郎の回想によれば、本作はズーズー弁超音波・犯人および刑事の心理を3本の柱として連載が始められた[7]。このうち超音波発生器の設定に関しては、映画では採用されず、以降の映像化作品でも省略されている。
  • 小説中の「ヌーボー・グループ」のモデルに関して、音楽評論家の小沼純一は、1951年に結成された実験工房(作曲家の武満徹などが参加)と推定している[8]。また、文芸評論家の郷原宏は、1958年頃から運動の始まった若い日本の会(作曲家の黛敏郎などが参加。正式な創立集会は1960年5月)がモデルと推定している[9]
  • 小説ラストの羽田空港の場面に関しては、場所の設定のため、編集者の山村と挿絵の朝倉摂が、3日にわたって空港を訪れ、取材を行った[10]

関連項目

翻訳

映画

テンプレート:Infobox Film テンプレート:ウィキポータルリンク 1974年製作。松竹株式会社橋本プロダクション第1回提携作品。松本清張原作の映画の中でも、特に傑作として高く評価されてきた作品[13]。第29回毎日映画コンクール大賞(日本映画)・脚本賞(橋本忍・山田洋次)・監督賞(野村芳太郎)および音楽賞(芥川也寸志・菅野光亮)、キネマ旬報賞脚本賞(橋本忍・山田洋次)、1974年度ゴールデンアロー賞作品賞、ゴールデングロス賞特別賞、モスクワ国際映画祭審査員特別賞および作曲家同盟賞をそれぞれ受賞。英語題名『Castle of Sand』。現在ではDVD化・Blu-ray化されている。

スタッフ

キャスト

天才ピアニスト兼作曲家。
クラブ「ボヌール」のホステス(和賀の愛人)。
秀夫の父。
  • 本浦 秀夫(少年期):春田和秀
  • 三木 謙一:緒形拳
亀嵩駐在所巡査。蒲田操車場で何者かに撲殺された。
謙一の息子。
前大蔵大臣・田所重喜の令嬢。和賀と婚約予定。
捜査一課警部。今西刑事の上司。
本浦親子を村から追い出す巡査。
  • 毎朝新聞記者・松崎:穂積隆信
  • 国立国語研究所・桑原技官:信欣三
  • 理恵子の勤めるクラブ「ボヌール」の同僚ホステス・明子:夏純子
  • 理恵子の勤めるクラブ「ボヌール」のママ:村松英子(ノンクレジット)
  • 理恵子の住むアパート「若葉荘」住人:野村昭子
  • 伊勢の旅館「扇屋」主人:瀬良明
  • 伊勢の旅館「扇屋」女中:春川ますみ
  • 伊勢の映画館「ひかり座」事務員:田辺和佳子(ノンクレジット)
  • バー・ロンのホステス:猪俣光世、高瀬ゆり
  • バー・ロンのバーテン:別所立木
  • 西蒲田署刑事・筒井:後藤陽吉
  • 西蒲田署署長:西島悌二郎
  • 世田谷の医者:櫻片達雄
  • 世田谷署の巡査:久保晶
  • 警視庁科学検査所技師:藤田朝也(クレジット上ではひらがな名義)
  • 大阪・浪花区役所係員:松田明
  • 大阪・浪花区役所女係員:吉田純子
  • 三木 謙一の妻:今井和子
  • 山下 妙:菅井きん
千代吉を知る縁者(義理の姉)。
西蒲田警察署刑事課巡査。今西を尊敬する若い刑事。持ち前の体力で犯人の遺留品を発見する。
  • 伊勢の映画館「ひかり座」支配人:渥美清(友情出演)*クレジット上では友情出演記載なし
  • 田所 重喜:佐分利信(特別出演)*クレジット上では特別出演記載なし
前大蔵大臣。
警視庁捜査一課警部補。特別なひらめきがあるわけではないが、粘り強い捜査が身上。

映画版の特徴

映画版では、和賀英良は原作どおりの前衛作曲家兼電子音響楽器(現在でいうシンセサイザー)研究家ではなく、天才ピアニスト兼、ロマン派の作風を持つ作曲家に設定変更された。劇中での和賀は、過去に背負った暗くあまりに悲しい運命を音楽で乗り越えるべく、ピアノ協奏曲「宿命」を作曲・初演する。物語のクライマックスとなる、捜査会議(事件の犯人を和賀と断定し、逮捕状を請求する)のシーン、和賀の指揮によるコンサート会場での演奏シーン、和賀の脳裏をよぎる過去の回想シーンにほぼ全曲が使われ、劇的高揚とカタルシスをもたらしている。原作者の松本清張も「小説では絶対に表現できない」とこの構成を高く評価した[14]

原作と違う点がいくつかあり、今西・吉村が利用した列車が時代にあわせて変化しているほか(亀嵩へ向かう際、原作では東京発の夜行列車で1日かけてもたどり着かなかったが、映画版では当時の主流であった新幹線と特急を乗り継いで向かっている)、和賀英良の戸籍偽造までの経緯も異なっている[15]。また、中央線の車窓からばら撒かれた白い物(犯行時に血痕が着いたシャツの切れ端)は原作では今西と吉村の二人で拾い集めたことになっているが、映画版では今西が被害者の生前の経歴を調べる為に出張している間に吉村が一人で発見し、独断で鑑識課へ持って行ったという流れになっている。その他にも、原作ではハンセン(氏)病への言及は簡潔な説明に止められているが(言及箇所は第六章・第十七章中の2箇所)、映画版では主に橋本忍のアイデアにより、相当の時間が同病の父子の姿の描写にあてられている。なお、今西がハンセン(氏)病の療養所を訪問するシーンは原作にはなく、映画版で加えられた場面である。

「宿命」は音楽監督の芥川也寸志の協力を得ながら、菅野光亮によって作曲された。なお、サウンドトラックとは別に、クライマックスの部分を中心に二部構成の曲となるように再構成したものが、『ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」』としてリリースされた。

エピソード

  • 本映画は松竹で製作される予定であったが、当時の松竹社長・城戸四郎の反対により、いったん製作延期となった(予算の超過に加えて、「大船調」を確立させた城戸が刑事映画を好まなかったことなどが反対の理由といわれる)。しかし、野村芳太郎が「どうしてもこれを撮りたい」と希望したことで、当時東宝の製作の担当重役であった藤本真澄が橋本忍と話し合い、東宝での『砂の器』製作を内定、野村芳太郎も「松竹を離れてもやる」としていた。しかしその後、翻意した橋本が城戸と交渉し、城戸が折れた結果、松竹での製作が決定した[16]。製作費に関しては、1973年に設立された橋本プロダクションと折半することで決着がつけられた[17]
  • 本映画の脚本を橋本と担当した山田洋次は、シナリオの着想に関して、以下のように回想している。「最初にあの膨大な原作を橋本さんから「これ、ちょっと研究してみろよ」と渡されて、ぼくはとっても無理だと思ったんです。それで橋本さんに「ぼく、とてもこれは映画になると思いません」と言ったんですよ。そうしたら「そうなんだよ。難しいんだよね。ただね、ここのところが何とかなんないかな」と言って、付箋の貼ってあるページを開けて、赤鉛筆で線が引いてあるんです。「この部分なんだ」と言うんです。「ここのところ、小説に書かれてない、親子にしかわからない場面がイメージをそそらないか」と橋本さんは言うんですよ。「親子の浮浪者が日本中をあちこち遍路する。そこをポイントに出来ないか。無理なエピソードは省いていいんだよ」ということで、それから構成を練って、書き出したのかな」[18]。さらに、構成に関して、以下のように振り返っている。「三分の一くらい書いたときに、橋本さんがある日、妙に生き生きとしているんですよ「ちょっといいこと考えた」「(前略)その日は和賀英良がコンサートで自分が作曲した音楽を指揮する日なんだよ。指揮棒が振られる、音楽が始まる。そこで刑事は、和賀英良がなぜ犯行に至ったかという物語を語り始めるんだ」「音楽があり、語りがある、それに画が重なっていくんだ」(以上橋本)、ということで、それからは早かったですね」[19]。他方橋本は、そのような構成を取る構想は最初からあったかという(白井佳夫の)質問に対して、「昔から人形浄瑠璃をよく見てた。だから右手に義太夫語りがいて、これは警視庁の捜査会議でしゃべっている刑事。普通はその横に三味線弾きがいるけど、逆に三味線弾きは数を多くして全部左にいる。真ん中の舞台は書き割りだけど親子の旅。お客は刑事を見たければ刑事のほうを見ればいい。音楽聞きたければ三味線弾きを見ればいい。舞台の親子の旅を見たければ舞台を見ればいい。そういう映画をつくるのが頭からあったわけ」と答えている[20]
  • 映画の撮影は、1973年の冬から1974年の初秋までの、約10カ月間にわたって行われた[21]。ロケ地は、原作に登場する蒲田や出雲地方に止まらず、阿寒湖竜飛崎北茨城など、日本各地で行われている。なお、亀嵩駅は本映画のロケでは使用されず(駅の看板のみ使用)、出雲八代駅八川駅がロケ地となっているが、これは、撮影の直前に亀嵩駅の駅舎が手打ちそば屋に衣替えされ、これが撮影に不向きと判断されたことが理由とされている[22]
  • この映画において、ハンセン氏病の元患者である本浦千代吉と息子の秀夫(和賀英良)が放浪するシーンや、ハンセン氏病の父親の存在を隠蔽するために殺人を犯すという場面について、全国ハンセン氏病患者協議会(のち「全国ハンセン病療養所入所者協議会」)は、ハンセン氏病差別を助長する他、映画の上映によって“ハンセン氏病患者は現在でも放浪生活を送らざるをえない惨めな存在”と世間に誤解されるとの懸念から、映画の計画段階で製作中止を要請した。しかし製作側は「映画を上映することで偏見を打破する役割をさせてほしい」と説明し、最終的には話し合いによって「ハンセン氏病は、医学の進歩により特効薬もあり、現在では完全に回復し、社会復帰が続いている。それを拒むものは、まだ根強く残っている非科学的な偏見と差別のみであり、本浦千代吉のような患者はもうどこにもいない」という字幕を映画のラストに流すことを条件に、製作が続行された。協議会の要望を受けて、今西がハンセン氏病の患者と面会するシーンは、シナリオの段階では予防服着用とされていたが、ハンセン氏病の実際に関して誤解を招くことから、上映作品では、背広姿へと変更されている[23]

テンプレート:松本清張原作の映画作品 テンプレート:野村芳太郎監督作品 テンプレート:毎日映画コンクール日本映画大賞

テレビドラマ

これまで各局で5回ドラマ化されている。

1962年版

テンプレート:基礎情報 テレビ番組 TBS系列で、1962年2月23日3月2日に「近鉄金曜劇場」枠(20:00-21:00)で放送されたテレビドラマ(全2回)。

キャスト

  • 今西栄太郎:高松英郎
  • 吉村弘:月田昌也
  • 関川重雄:天知茂
  • :美杉てい子
  • :千秋みつる
  • :香月京子
  • :藤沢宏
  • 飯沼慧
  • 和賀英良:夏目俊二

スタッフ

テンプレート:前後番組

1977年版

テンプレート:基礎情報 テレビ番組 フジテレビ系列で、1977年10月1日 - 11月5日に「ゴールデンドラマシリーズ」枠(22:00-22:54)で放送されたテレビドラマ(全6回)。事件発生を1974年に設定している。1985年2月22日に「金曜女のドラマスペシャル」枠(21:02-23:22)で再編集版が放送された。また、1992年に松本清張が逝去した時にも追悼番組として放映された。DVD化されている。本浦千代吉の疾病については「ハンセン氏病」から「精神疾患」[24]へと変更されている。

キャスト

スタッフ

前後番組

テンプレート:前後番組

1991年版

テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テレビ朝日系列で、1991年10月1日(20:02-22:24)に、「松本清張作家活動40年記念各局競作シリーズ」として製作(各局2作品の清張作品を創った)、放送されたテレビドラマ(全1回)。第9回ATP賞ベスト21番組選出作品。

キャスト

スタッフ

2004年版

テンプレート:基礎情報 テレビ番組 TBS系列で、2004年1月18日から2004年3月28日まで「日曜劇場」枠で放送されたテレビドラマ(全11回)。ただし、初回と最終回はそれぞれ15分拡大で21:00 - 22:09、第10話は5分拡大で21:00 - 21:59。平均視聴率19.6%、最高視聴率26.3%(初回)を記録した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。DVD化・Blu-ray化されている。

キャスト

天才人気ピアニスト。31歳。
劇団「響」の舞台役者。30歳。原作には登場しないオリジナルキャラクター。
様々な分野で活躍中のジャーナリスト。30歳。
蒲田西署巡査。27歳。
元農林水産省大臣・田所重喜の娘で和賀の恋人。27歳。
劇団「響」の主宰者・麻生譲の演出助手。30歳。
劇団「響」の衣裳係。27歳。
東京都内の高級クラブで働くホステスで関川の恋人。
劇団「響」の主宰者。55歳。
蒲田操車場殺人事件の被害者。60歳。
元農林水産省大臣。60歳。
本浦秀夫の父親。現在も病気で床に伏せている。63歳。
警視庁捜査一課警部補。45歳。

※以下、カッコ内は出演話数

スタッフ

サブタイトル

各話 放送日 サブタイトル 演出 視聴率 備考
第1話 2004年1月18日 宿命が、痛み出す 福澤克雄 テンプレート:Color 69分
第2話 2004年1月25日 目撃者 20.3%
第3話 2004年2月1日 もう戻れない悲しみ 金子文紀 19.4%
第4話 2004年2月8日 亀嵩の謎 16.7%
第5話 2004年2月15日 崩れ始めた嘘の人生 福澤克雄 19.1%
第6話 2004年2月22日 迫り近づく刑事の影 山室大輔 18.8%
第7話 2004年2月29日 絶対に隠したい秘密 福澤克雄 18.6%
第8話 2004年3月7日 聞こえてきた父の声 金子文紀 18.6%
第9話 2004年3月14日 逃亡 山室大輔 テンプレート:Color
第10話 2004年3月21日 宿命・最終楽章前編 福澤克雄 18.2% 59分
最終話 2004年3月28日 完結編・宿命の再会 21.5% 69分
平均視聴率 19.6%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)

日曜劇場版の特徴

スタッフロールで「潤色:橋本忍・山田洋次」と表示されるなど、映画版での「潤色」と同様の設定がされ、ピアノ協奏曲『宿命』(演奏会では和賀自らがピアノを演奏する)が印象的に用いられた。『宿命』の作曲は千住明による書き下ろしで、ピアノ演奏は羽田健太郎がつとめた。

親子の放浪の理由が和賀英良(本浦秀夫)の父・本浦千代吉が、集落の中で唯一ダム工事の住民投票に賛成票を投じたといういわれなき理由で村八分にされた結果、妻が誰にも助けてもらえないまま病死するに至ったことに憤怒し、村中の家に放火、30人を殺害したため、という設定にされている。村中に放火するという設定は、原作者が津山事件について記したドキュメント「闇に駆ける猟銃」から引用されたものである。

この変更については、時代の変化という理由もさることながら、川辺川ダムをめぐる一連の騒動や、放送前年の2003年11月に黒川温泉熊本県)のホテルで起きたハンセン病元患者宿泊拒否事件も大きく影響している。

また、舞台を2004年としており、時代の整合性の問題から、和賀の戸籍偽造について、秀夫が長崎で孤児院にいた際、小学校の同級生で1982年長崎大水害で一家全員が亡くなった和賀英良の自宅近くにいるところを偶然救助隊に発見され、その機会に乗じて和賀英良の名を名乗ったと変更されている。

楽曲

主題歌
挿入曲

テンプレート:前後番組

テンプレート:TBS系日曜劇場

2011年版

テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テレビ朝日系列で、2011年9月10日・11日に2夜連続で放送(当初は2011年3月12日・13日放送予定だったが、東日本大震災発生を受け、ANN報道特別番組を放送したため、半年間延期)。テレビ朝日では2回目のドラマ化となる。本ドラマは刑事・吉村の視点で物語が描かれていく構想となっている。脚本を手がける竹山洋はテレビ朝日版1回目(1991年版)ドラマでも脚本を書いている。視聴率は第一夜16.6%、第二夜13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。DVD化・Blu-ray化されている。

この延期から放送に至るまでは、視聴者からの要望が大きかったことと、3月放送予定の時の14社中9社のアドバタイザーに引き続き提供した。

本ドラマでは、原作の時代設定に沿った形で映像化されているが、上記のように、物語が吉村の視点で描かれている他、一部オリジナルキャストの登場や、2004年版同様、親子の放浪理由が変更されており、本浦千代吉が殺人容疑で逮捕され、証拠不十分で釈放されたものの、村人達からの疑惑の目に耐え切れず息子・秀夫を連れ放浪の旅に出たとされている。

2012年10月に発表された東京ドラマアウォードで、作品賞優秀賞(単発ドラマ)を受賞した。[25]

キャスト

  • 吉村 弘:玉木宏(西蒲田署刑事 / 幼少期:澤畠流星
  • 山下 洋子:中谷美紀(毎朝新聞記者 / オリジナルキャラクター)
  • 田所 佐知子:加藤あい(彫刻家 / 和賀の婚約者)
  • 関川 重雄:長谷川博己(評論家 / ヌーボーグループ)
  • 宮田 邦郎:山口馬木也(劇団「波」俳優 / リエ子の遺体第一発見者)
  • 三浦 恵美子:紺野まひる(銀座clubアムールホステス / 失血死)
  • 三木 彰吉:原田龍二(三木謙一の息子 / 雑貨商)
  • 川野 英造:森本レオ(大学教授 / 第一夜のみ)
  • 桑原教授:かとうかず子(国立国語研究所言語学者 / 第一夜のみ)
  • 支配人:六平直政(伊勢あさひ映画館 / 第二夜のみ)
  • 山田:今井雅之(冒頭で登場した拳銃強盗殺人犯 / 第一夜のみ)
  • 澄子:烏丸せつこ(伊勢二見旅館女将 / 第二夜のみ)
  • 中山:合田雅吏(警視庁捜査一課刑事)
  • 刑事:橋本一郎(警視庁捜査一課)
  • 長崎:近童弐吉(西成城署刑事)
  • BARボヌールバーテンダー:デビット伊東(第一夜のみ)
  • 成瀬 リエ子:吉田羊(銀幕スター杉浦秋子付き人兼劇団「波」女優 / 自殺)
  • 吉田:河西健司(警視庁鑑識課科学検査所技官 / 第一夜のみ)
  • 上杉:小林隆(上杉医院内科医 / 第二夜のみ)
  • 社長:立川三貴(伊勢あさひ映画館 / 田所重喜と同郷の親友 / 第二夜のみ)
  • 住職:山田明郷(第二夜のみ)
  • 田中:木下ほうか(大阪浪速東区役所市民課戸籍係係長 / 第二夜のみ)
  • 三木 謙一:橋爪功(岡山県の雑貨商 /元島根県亀嵩駐在所巡査)
  • 田所 重喜:小林稔侍(民友党代議士のちに農林大臣 / 佐知子の父親)※特別出演
  • 本浦 千代吉:山本學(秀夫の父 / お遍路の途中で病に倒れる / 第二夜のみ)
  • 辰井:榎木孝明(警視庁捜査一課課長)
  • 桐原 小十郎:米倉斉加年(お茶の先生 / 三木謙一の旧友)
  • 秋田県亀田北警察署長:平泉成(第一夜のみ)
  • 山下 妙:江波杏子(本浦千代吉の義姉 / 第二夜のみ)
  • 黒崎:大杉漣(警視庁捜査一課係長)
  • 田島警部:西村雅彦(警視庁捜査一課刑事)
  • 和賀 英良:佐々木蔵之介(作曲家 / ヌーボーグループ)
  • 今西 栄太郎:小林薫(警視庁捜査一課刑事)
その他
  • 名曲喫茶エデンマスター:蟷螂襲(第一夜のみ)
  • すみこ:松島紫代(BARボヌール給仕)
  • 駅員:松永吉訓(蒲田操車場の遺体第一発見者 / 第一夜のみ)
  • 鑑識:窪田弘和(第一夜のみ)
  • 監察医:藤沢徹衛(第一夜のみ)
  • 秋田県亀田北警察署員:澤田誠(第一夜のみ)
  • 旅館女将:まつむら眞弓(第一夜のみ)
  • 酒蔵の店主:福本清三(第一夜のみ)
  • 吉村 妙子:杉山優奈(吉村弘の妹 / 空襲で死亡)
  • 律子:藤井ゆきよ(銀座clubアムールホステス)
  • 刑事:井上肇(西成城署 / 第二夜のみ)
  • 婦人警官:中山京子(警視庁 / 第二夜のみ)
  • 家政婦:前川恵美子(関川重雄邸 / 第二夜のみ)
  • 引越し業者:谷口高史(第二夜のみ)
  • 看護婦:高橋知代(上杉医院 / 第二夜のみ)
  • 医師:北川肇(里原市民病院 / 第二夜のみ)
  • 課長:細川純一(大阪浪速東区役所市民課 / 第二夜のみ)
  • 三木謙一の妻:鈴川法子(第二夜のみ)
  • 本浦 秀夫:青木淳耶(三木謙一の世話になるが後に失踪 / 第二夜のみ)

スタッフ

テンプレート:松本清張原作のテレビドラマ

脚注・出典

テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:松本清張
  1. 第十三章1節を参照。
  2. 「捜査本部は所轄の品川署の一室が当てられていた」(第一章4節)、「吉村は、事件の起こった地元の所轄署の刑事である」(第二章4節)をそれぞれ参照。
  3. 『週刊 松本清張』第2号(2009年、デアゴスティーニ・ジャパン)26-27頁参照。
  4. 『週刊 松本清張』第2号 20-21頁参照。
  5. 『週刊 松本清張』第2号 11、20-21頁参照。
  6. 『週刊 松本清張』第2号 19頁参照。
  7. 山村亀二郎「”砂の器”のころの清張さん」(『松本清張全集 第5巻』(1971年、文藝春秋)付属の月報に掲載)参照。同文によれば、超音波の設定は東京工業大学で取材したもの。
  8. 小沼純一『武満徹 その音楽地図』(2005年、PHP新書)中、第六章「併行する時代」参照。
  9. 『週刊 松本清張』第2号 7頁参照。
  10. 山村「”砂の器”のころの清張さん」に加えて、『週刊 松本清張』第2号 11頁参照。
  11. 小説第六章の桑原文部技官のモデルを、当時同研究所に勤務していた言語学者の柴田武に比定する推測もあるが、本作の速記を担当していた福岡隆によれば、本作内の方言論の記述は柴田に取材したものではないとされている。福岡隆『人間松本清張 専属速記者九年間の記録』(1968年、大光社)84頁参照。その後、本作内の方言論の記述の由来について、研究者による資料考察が行われている。小西いずみ「松本清張『砂の器』における「方言」と「方言学」」(『都大論究』第42号掲載)では、小説第六章に記述されている「中国地方の方言のことを書いた本」『出雲国奥地における方言の研究』などに関して、著者が実在の研究文献の記述を再構成し記述していることを論証している。
  12. なお、第十三章では、山中温泉まで北陸鉄道山中線を利用する描写があるが、同線はすでに廃止され、状況が変化している。
  13. 都筑道夫は『サタデイナイト・ムービー』(奇想天外社集英社文庫)で「B級映画はB級映画らしく、推理映画は推理映画らしくなければならない。推理小説を原作にしてもお涙頂戴の映画をつくっていたりすると、腹が立ってくるのである」というような批判もある。
  14. 白井佳夫と橋本忍による対談「橋本忍が語る清張映画の魅力」(『松本清張研究』第1号(1996年、砂書房)収録)など参照。
  15. 原作では架空の人物となっていた和賀夫妻が実在していて、その夫妻の店で奉公していたなど。
  16. 「橋本忍が語る清張映画の魅力」に加えて、山田洋次と川本三郎による対談「清張映画の現場」(『松本清張研究』第13号(2012年、北九州市立松本清張記念館)収録)も併せて参照。
  17. 『松本清張傑作映画ベスト10 第1巻 砂の器』(2009年、小学館)参照。
  18. 「清張映画の現場」参照。
  19. 「清張映画の現場」参照。
  20. 「橋本忍が語る清張映画の魅力」参照。
  21. 『松本清張傑作映画ベスト10 第1巻 砂の器』参照。
  22. 『松本清張傑作映画ベスト10 第1巻 砂の器』参照。
  23. 『松本清張傑作映画ベスト10 第1巻 砂の器』参照。
  24. 日中戦争(劇中では「支那事変」と表現されていた)で軍に徴用され、戦場での負傷と恐怖体験により精神を病んで除隊したという設定。
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