千歳線
千歳線(ちとせせん)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)の鉄道路線(幹線)である。北海道苫小牧市の沼ノ端駅から札幌市白石区の白石駅を結ぶ本線と、千歳市の南千歳駅から分岐して同市の新千歳空港駅に至る支線(空港線)からなる。
目次
概要
2014年5月に江差線の木古内駅 - 江差駅間が廃止されるまでは、JR北海道の道内完結路線で唯一全線が電化されている路線であった。札幌から本州・道南・道東へと至る主要幹線であると同時に、新千歳空港へのアクセス路線、札幌近郊の通勤輸送路線としての多彩な性格を併せ持ち、特に南千歳以北の区間は、北海道内でも有数の過密ダイヤ路線である。支線を含む全線が、室蘭本線の沼ノ端駅 - 苫小牧駅間と合わせてIC乗車カード「Kitaca」の利用エリアに含まれている。また、本線区間では日本貨物鉄道(JR貨物)による貨物列車が運転される。
支線である南千歳駅 - 新千歳空港駅間は加算運賃区間のため、キロ数で計算した運賃に140円が加算される。
路線データ
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- 管轄(事業種別)・区間(営業キロ)
- 軌間:1067mm
- 駅数:17(起終点駅含む)
- 電化区間:全線電化(交流20,000V・50Hz)
- 複線区間:沼ノ端駅 - 白石駅間
- 単線区間:南千歳駅 - 新千歳空港駅間
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 最高速度(2013年11月現在)[2][3][4]:
- 130km/h(白石駅 - 南千歳駅間)
- 120km/h(南千歳駅 - 沼ノ端駅間)
- 95km/h(南千歳駅 - 新千歳空港駅間)
全区間、JR北海道本社鉄道事業本部の管轄となっている。
運行形態
広域輸送
函館駅 - 札幌駅間を結ぶ幹線の一部で、特急「スーパー北斗」・「北斗」がほぼ1 - 2時間間隔で運転されており、これらを補完する形で札幌駅 - 室蘭駅間のエル特急「すずらん」が運行されている。夜行列車としては、首都圏や関西圏と北海道を結ぶ寝台特急「北斗星」・「カシオペア」・「トワイライトエクスプレス」、札幌駅 - 青森駅間の急行「はまなす」が運転されている。またJR貨物の運行する貨物列車も多数運転されている。
また、札幌駅 - 南千歳駅間は石勝線を経由して帯広・釧路方面を結ぶルートの一部で、特急「スーパーおおぞら」・「スーパーとかち」が運転される。
函館・釧路方面の列車と新千歳空港方面の列車を乗り継ぐ場合、一部を除き南千歳駅では同一ホームでの乗換となっている。
使用されている車両は以下の通り(※:臨時列車)。
- キハ281系(スーパー北斗)
- キハ283系(スーパーおおぞら)
- キハ261系(1000番台)(スーパーとかち)
- キハ183系(北斗)
- 785系(すずらん)
- 789系1000番台(すずらん)
- 14系客車(はまなす)
- 24系客車(北斗星・トワイライトエクスプレス※・はまなす)
- E26系客車(カシオペア※)
地域輸送
空港連絡輸送として、新千歳空港駅から札幌・小樽・旭川方面への快速「エアポート」が15分間隔で運転されている。旭川方面への列車は、札幌駅 - 旭川駅間でエル特急「スーパーカムイ」となる。
普通列車は札幌方面から千歳駅・苫小牧駅までの運行が基本である。日中は1時間あたり3 - 4本(時間帯によっては2本)運転されており、そのうち1本程度が札幌方面 - 苫小牧駅間、残りは札幌方面 - 千歳駅間の運転である。なお終端駅の沼ノ端駅・白石駅を発着とする系統はなく、それぞれ苫小牧駅・札幌駅まで直通する。
札幌駅からは函館本線経由で手稲・小樽方面へ運転される列車も多い。また2012年10月27日のダイヤ改正で、1日2往復(「エアポート」1往復、普通列車1往復)のみ札沼線(学園都市線)直通の列車も設定された[5]。
大半の普通列車は北広島駅で快速と相互に接続する。列車待避のできる駅・信号場は美々駅・南千歳駅・千歳駅・サッポロビール庭園駅・島松駅・北広島駅・西の里信号場(冬期間除く)・上野幌駅・白石駅(白石駅は札幌方面のみ待避可能)。
朝・夜の時間帯に限り、新千歳空港駅発着の普通列車も設定される。普通列車として新千歳空港駅まで向かい普通列車として折り返す列車のほか、朝には札幌駅→新千歳空港駅間を「エアポート」、折り返しの新千歳空港駅→札幌駅間を普通列車として運行する列車が設定されている。逆に夜間は札幌駅→新千歳空港駅間を普通列車、折り返しの新千歳空港駅→札幌駅間を「エアポート」として運行する列車が設定されている。
千歳駅発着で南千歳駅から石勝線の追分駅・夕張駅まで直通する普通列車がある。この列車は気動車でワンマン運転を実施している。なお、これらの石勝線直通のワンマン列車も千歳線内では全ドアが開閉する。
使用される車両は以下の通り。
- 721系
- 785系(旭川駅直通の快速エアポートのみ)
- 789系1000番台(旭川駅直通の快速エアポートのみ)
- 731系
- 733系
- 735系
- 731系・733系・735系は快速エアポートには充当されない。ただし、新千歳空港駅発着の、折り返し快速エアポートとならない普通列車には充当される場合もある。
- キハ143形(朝・夜の室蘭駅発着列車のみ。)
- キハ40系(石勝線直通列車のみ。石勝線との接続駅は南千歳駅だが、千歳駅まで運転されている。ワンマン運転)
寝台特急以外の臨時列車
千歳線には臨時列車も数本運転されている。過去に運転された列車は以下の通り
- 優駿浪漫(使用される車両は不定で、2007年時点ではニセコエクスプレス車両が使用されている)
- ヘルシーウォーキング号
- 道南さくらエクスレス(2011年のゴールデンウィークにノースレインボーエクスプレス車両で運転)
歴史
大正時代末期に北海道鉄道の「札幌線」として敷設された路線である。
国鉄室蘭本線は、石炭輸送を重視して建設された経緯により、太平洋岸から炭鉱地帯に近い岩見沢へと伸びていたため、苫小牧と札幌との間には短絡ルートが存在しなかった。北海道鉄道はこの区間を直結したもので、戦前から気動車によるフリークエントサービスが行われるなど都市間連絡路線として機能していた。第二次世界大戦中の1943年、国により戦時買収されて国鉄千歳線となった。
戦前、札幌と函館方面を結ぶ路線としては、幹線である函館本線が、小樽・倶知安経由で幹線として機能していたが、急勾配を擁する函館本線の長万部駅 - 小樽駅間、いわゆる「山線」がネックとなっており、これに比べ平坦な室蘭本線長万部駅 - 沼ノ端駅間とこれに接続する千歳線区間、いわゆる「海線」は、戦中・戦後を通じ輸送力増強の見地から改良を加えられてきた。
1950年代から優等列車の設定も行われ、1960年代以降は30km以上遠回りながら[6]、函館山線よりも高速運転に適する条件から、函館 - 札幌間のメインルートの地位を確立する。1961年にはサンロクトオダイヤ改正で特急列車「おおぞら」の運行も開始されるなど、輸送力増強が図られ続けた。なお、当初「おおぞら」は千歳線内は全駅通過、苫小牧と札幌に停車していた。
1973年には新札幌副都心開発計画に合わせて、線形が悪く輸送上のネックであった北広島駅 - 苗穂駅間の線路付け替えが行われ全線複線化、1980年には全線電化と千歳空港駅(現在の南千歳駅)の開設が行われ、札幌都市圏の重要な通勤路線や札幌市内から千歳飛行場(旧千歳空港)へのアクセスルートとして、列車の増発や所要時間短縮などの輸送力増強が進められた。
1981年に石勝線が開業。千歳空港駅で千歳線と接続し、札幌方面と新得・帯広・釧路方面を短絡するルートとなった。従来の根室本線優等列車の多くは札幌から函館本線を北上し、滝川から根室本線を南下して新得に至っていたが、それらほとんどが千歳線経由で石勝線に入って新得に向かうようになり、道東方面への幹線としての性格も併せ持つようになった。
1986年に函館本線長万部・小樽間の山線から定期の優等列車(特急・急行)が全廃されて以降は、札幌方面と函館方面を結ぶ唯一の幹線ルートとして、特急「北斗」や寝台特急・夜行急行・高速貨物列車などが頻繁に運行され、線路の強化や高速化などが実施されている。
1987年の国鉄分割民営化によって当路線はJR北海道へと引き継がれ、1992年には新千歳空港開港に伴い、ターミナルビル地下へ乗り入れる単線の支線(空港線)が建設された。
年表
- 1926年(大正15年)8月21日:北海道鉄道の札幌線(さっぽろせん)として沼ノ端駅 - 苗穂駅間 (62.6km) が開業。同区間に植苗駅・美々駅・千歳駅・恵庭駅・島松駅・北広島駅・上野幌駅(初代)・大谷地駅・月寒駅(つきさっぷ)・東札幌駅が開業。
- 1931年(昭和6年)7月25日:苗穂駅 - 東札幌駅間が電化(定山渓鉄道の片乗り入れ用で直流1500V、同鉄道の札幌駅乗り入れ直前に撤去される)。
- 1934年(昭和9年)10月1日:室蘭本線沼ノ端駅 - 苫小牧駅間に旅客列車乗り入れ開始。
- 1940年(昭和15年)10月26日:函館本線苗穂駅 - 札幌駅間に旅客列車乗り入れ開始。
- 1943年(昭和18年)8月1日:北海道鉄道を買収し沼ノ端駅 - 苗穂駅間を千歳線とする[7]。
- 1958年(昭和33年)7月1日:長都駅が開業。
- 1961年(昭和36年)1月14日:西の里信号場(初代)が新設。
- 1965年(昭和40年)9月22日:千歳駅 - 恵庭駅間が複線化。
- 1966年(昭和41年)9月7日:恵庭駅 - 北広島駅間を複線化。
- 1968年(昭和43年)
- 1969年(昭和44年)9月25日:沼ノ端駅 - 植苗駅間を複線化
- 1973年(昭和48年)
- 1980年(昭和55年)
- 7月10日:千歳市内の4.39kmが高架化されるとともに千歳駅も高架上に移転、同区間の踏切6か所廃止。
- 10月1日:沼ノ端駅 - 苗穂駅間が電化、千歳空港駅が開業。
- 1981年(昭和56年)3月5日:沼ノ端駅 - 白石駅間と室蘭本線の沼ノ端駅 - 室蘭駅間に列車集中制御装置 (CTC) を導入。
- 1982年(昭和57年)3月1日:恵み野駅が開業
- 1986年(昭和61年)11月1日:平和臨時乗降場が開業。
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄民営化により北海道旅客鉄道に承継。経路の表示を白石駅 - 沼ノ端駅間 (56.6km) に変更。平和臨時乗降場が駅に変更
- 1990年(平成2年)7月1日:サッポロビール庭園駅が開業。
- 1992年(平成4年)7月1日:千歳空港駅を南千歳駅に改称、南千歳駅 - 新千歳空港駅間 (2.6km) の開業により、新千歳空港駅が開業。西の里信号場(2代)が開設。
- 2007年(平成19年)10月1日:全区間で駅ナンバリングを実施。
- 2008年(平成20年)10月25日:全区間でIC乗車券のKitacaを導入。
駅一覧
便宜上、末端部で全列車が乗り入れる室蘭本線苫小牧駅 - 沼ノ端駅間、函館本線白石駅 - 札幌駅間も合わせて掲載。また全区間において駅ナンバリングが設定されているが、駅ナンバリング順ではなく、沼ノ端駅から下り方向に記述。駅ナンバリングの詳細については「北海道旅客鉄道の駅ナンバリング」を参照。
路線名 | 電化/非電化 | 駅番号 | 駅名 | 駅間営業キロ | テンプレート:Nowrap | 普通 | 快速エアポ丨ト | 接続路線・備考 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
※ | 交流電化 | H18 | 苫小牧駅 | - | 8.8 | ● | 北海道旅客鉄道:室蘭本線(東室蘭方面)・日高本線 | 苫小牧市 | ||
(貨)苫小牧貨物駅 | 3.4 | 5.4 | | | |||||||
H17 | 沼ノ端駅 | 8.8 | 0.0 | ● | 北海道旅客鉄道:室蘭本線(岩見沢方面) | |||||
千歳線 | ||||||||||
H16 | 植苗駅 | 6.4 | 6.4 | ▲ | ||||||
H15 | 美々駅 | 7.5 | 13.9 | ▲ | 千歳市 | |||||
AP15 | 新千歳空港駅 | テンプレート:Nowrap | - | ○ | ● | (札幌まで46.6km、沼ノ端から21.0km) | ||||
H14 | 南千歳駅 | 美々 から 4.5 |
18.4 | ● | ● | 北海道旅客鉄道:石勝線 | ||||
H13 | 千歳駅 | 3.0 | 21.4 | ● | ● | |||||
H12 | 長都駅 | 3.5 | 24.9 | ● | | | |||||
H11 | サッポロビール庭園駅 | 2.2 | 27.1 | ▲ | | | 恵庭市 | ||||
H10 | 恵庭駅 | 2.3 | 29.4 | ● | ● | |||||
H09 | 恵み野駅 | 2.5 | 31.9 | ● | | | |||||
H08 | 島松駅◇ | 2.2 | 34.1 | ● | | | |||||
H07 | 北広島駅 | 6.5 | 40.6 | ● | ● | 北広島市 | ||||
西の里信号場 | - | 42.1 | | | | | (冬期間は副本線閉鎖) | |||||
H06 | [札] 上野幌駅 | 8.0 | 48.6 | ● | | | 札幌市 | 厚別区 | |||
H05 | [札] 新札幌駅 | 2.9 | 51.5 | ● | ● | 札幌市営地下鉄:■ 東西線 …新さっぽろ駅 | ||||
(貨)札幌貨物ターミナル駅 | 2.1 | 53.6 | | | | | 白石区 | |||||
H04 | [札] 平和駅 | 新札幌 から 2.9 |
54.4 | ● | | | |||||
H03 | [札] 白石駅 | 2.2 | 56.6 | ● | ▲ | 北海道旅客鉄道:函館本線(岩見沢方面) | ||||
函館本線 | ||||||||||
H02 | [札] 苗穂駅◇ | 3.6 | 60.2 | ● | | | 中央区 | ||||
01 | [札] 札幌駅 | 2.2 | 62.4 | ● | ● | 北海道旅客鉄道:函館本線(小樽方面)〈一部直通運転〉・札沼線(学園都市線)〈一部直通運転〉[* 1] 札幌市営地下鉄:■ 南北線・■ 東豊線 …さっぽろ駅 |
北区 |
廃止区間
所在地の名称は廃止時点のもの。
- 苗穂駅 - 東札幌駅間 (3.1km) - 1973年9月10日廃止
- 東札幌駅 - 月寒駅間 (2.7km) - 1973年9月10函館本線(貨物線)に編入後、1976年10月1日廃止
- 月寒駅 - 北広島駅間 (16.1km) - 1973年9月10日廃止
駅名 | 営業キロ | 所在地 |
---|---|---|
苗穂駅 | 0.0 | 札幌市中央区 |
東札幌駅 | 3.1 | 札幌市白石区 |
月寒駅 | 5.8 | |
大谷地駅 | 8.9 | |
上野幌駅(初代) | 12.4 | 札幌市白石区 (現:札幌市厚別区) |
西の里信号場(初代) | 17.6 | 札幌郡広島町 (現:北広島市) |
北広島駅 | 21.9 |
- 北広島駅 - 東札幌駅間の廃線跡は、現在、北海道道1148号札幌恵庭自転車道線(白石サイクリングロード・エルフィンロード)となっている。
過去の接続路線
脚注
関連項目
テンプレート:北海道旅客鉄道本社- ↑ 1.0 1.1 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』JTB 1998年
- ↑ テンプレート:PDFlink - 北海道旅客鉄道、2013年9月4日、2013年9月5日閲覧。
- ↑ テンプレート:PDFlink - 北海道旅客鉄道プレスリリース 2013年8月28日
- ↑ JR北海道:一部特急を減速・減便 11月ダイヤ改正発表 - 毎日新聞 2013年9月20日
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 2013年現在の札幌駅 - 函館駅間の営業距離は、海線経由が318.7km [1] に対し山線経由が286.3kmと、32.4km違う。
- ↑ 「鉄道省告示第204号」『官報』1943年7月26日(国立国会図書館デジタルコレクション)
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