デルタ航空
デルタ航空(デルタこうくう、英語:Delta Air Lines, Inc.)はアメリカ合衆国ジョージア州アトランタ市に本拠を置く航空会社。旅客運送数および旅客キロ数で、アメリカン航空・ユナイテッド航空に次ぐ世界第3位の大手航空会社である。航空連合のスカイチーム創設メンバーであり、中心的な航空会社。
目次
概要
1929年 にコレット・E・ウールマンらがルイジアナ州モンローで「デルタ・エア・サービス」として旅客サービスを開始し(それまで農薬散布の会社)、1941年にアトランタに移転する。社名は、ミシシッピデルタ[1]にちなんで付けられたものである。現存するアメリカ合衆国の航空会社では最長の歴史を持つ。
第二次世界大戦の際には他の航空会社と同様アメリカ軍への協力を余儀なくされたが、戦後になるとその規模を急速に拡大し始める。 1955年には早くも本拠地のアトランタを中心とする乗り継ぎ形態として「ハブ・アンド・スポーク」システムを構築している。 1960年代になるとDC-8をはじめとするジェット機を導入し、1970年代までにほぼジェット機に機材を統一した。
1987年には、初の太平洋路線としてDC-10型機を使用してポートランド国際空港から東京へと就航するなどしたが、基本的には国内線及び近距離国際線、そして大西洋路線を重視したネットワークを形成していた。
2005年、原油価格の高騰に伴う燃料費の増加によって収益が悪化。加えてハリケーン・カトリーナによって同社の地盤であるアメリカ南部が被害を受けたことなどから経営危機に陥り、同年9月14日、ノースウエスト航空と同時期に連邦倒産法第11章の適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請した。飛行機の運行自体は継続され、2007年5月1日に正式に連邦破産法11章から脱却した。これと同時に機体に新塗装が施され、新しいロゴマークも発表された。それに先立って、ニューヨーク証券取引所への再上場も果たしている。
2008年にはデルタ航空を存続会社とするノースウエスト航空との合併を発表し、2010年1月31日をもって統合を完了した。
現在ではメインハブ空港であるアトランタ国際空港をはじめ、ハブ空港からアメリカ国内および世界各地に向け、1日に4900便を超えるフライトを運航している。 国際線は欧州・アジア・カナダ・ラテンアメリカ・アフリカに就航している。また、2009年7月よりオーストラリアに新規就航を果たし、世界でも6大陸すべてに就航する数少ない航空会社となった[2]。
合併・買収
1953年にシカゴ・アンド・サザン航空と、1972年にノースイースト航空と、1987年にウエスタン航空と合併する。1991年には破産したパンアメリカン航空から大西洋・ヨーロッパ路線を買収する。
2008年4月14日全米5位のノースウエスト航空との合併を発表し[3]、同年10月29日、アメリカ合衆国司法省により承認され、当時、世界最大の航空会社「デルタ航空」が誕生した。
就航都市
就航都市は全世界にわたり、350都市を超える。
日本路線
1987年3月に日本乗入れを開始した。旧社時代は成田国際空港からポートランド、ロサンゼルス、ニューヨーク、アトランタの各路線を運航していたが、2001年の9.11同時多発テロの直後、成田 - アトランタ便を除いたアジア路線から一時撤退した。その後のノースウエスト航空との統合により、2009年から成田でのハブ機能を充実させた。2013年現在でも外国航空会社として同空港で最多の運航便数を誇り、その便数は日本航空、全日本空輸に次いで3番目となっている[5]。
なお現在、旧ノースウエスト航空の路線と合わせ、アトランタ、ニューヨーク、デトロイト、ミネアポリス、シアトル、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ポートランド、ホノルルなどアメリカ9都市から日本の5空港(成田、東京/羽田、大阪/関西、名古屋/中部、福岡)に向けて運航を行っている。
また、既得のノースウエスト航空の以遠権を生かすことで、成田国際空港をハブの一つとし、同空港から香港、台北/桃園、シンガポール、バンコク、マニラ、上海/浦東と中部国際空港からマニラへのネットワークも形成し、グアム、サイパン、パラオへも運航している。かつては名古屋/小牧 - ポートランド線・ロサンゼルス線を運航しており、11ヶ月だけだが福岡 - ポートランド線を運航していたこともある。2011年2月19日から、東京国際空港(羽田空港)の発着枠拡大に伴いロサンゼルス[6]便を開設し、1日1便を通年で運航している。
近年は従前の成田乗り継ぎ便よりもアメリカ本土からアジア各国へ直接乗り入れる便を重視しつつあり、実際太平洋路線の内、日本路線の占める割合は2009年の72%から2013年の49%にまで下落している。日本国内線で共同運航相手を確保できなかった(日本航空はワン・ワールド、全日空はスター・アライアンスに加盟しており、スカイチームには日本の航空会社は加入していない為に国内での地方空港からの旅客を取り込めないでいる)[7]ことや、アメリカ本土とアジア各国を結ぶ路線が増加したことから、日本経由の便を減らす方針であると発表している。その一方、成田空港内にあるハンガーの賃貸借契約に2014年10月1日からの使用開始で合意するなど、同空港をアジア地域の拠点として活用する動きも出ている[1]。
サービス
座席
長距離国際線では、ビジネスエリート(ビジネスクラス)とエコノミーコンフォートおよびエコノミークラスの実質3クラス制をとる。なおエコノミーコンフォートはプレミアムエコノミークラスに分類されることもあるが、シートそのものはエコノミークラスと同じで、前後座席感を広くとり、さらにリクライニング角度を増やしたものである。
その他のアメリカ国内線や近距離国際路線ではファーストクラスとエコノミーコンフォート、エコノミークラスの3クラス制で運航されている(ごく一部のデルタ・コネクション便に限り全席エコノミークラスを採用している)。例外的に、一部の米国内横断路線(ニューヨーク・JFKとサンフランシスコもしくはロサンゼルス間)においては長距離国際線同様にビジネスエリートをファーストクラスに替えて運航する。
近年は中長距離国際線やアメリカ国内線の長距離路線に使用するB747-400、B767(-300ER/-400ER)、B777(-200ER/-200LR)、B757を中心に機内全面リニューアルを進めており、ビジネスエリートにフルフラットベッドシートの装着、エコノミーコンフォートとエコノミークラスでは最新のオンデマンドエンターテイメントシステム搭載を行なっている。
機内サービス
長距離国際線では全席で機内食やアメニティを提供する。ビジネスエリートはコース料理や様々なアルコール類を含めた飲料が無料で提供される。エコノミークラスにおいては飲料は原則としてノンアルコール飲料のみ無料であるが、例外的に日本発着便を中心とした一部路線でビールやワインを無料としている。
短距離国際線およびアメリカ国内線ではユナイテッド航空やアメリカン航空、USエアウェイズなどの競合他社と同様、ファーストクラスでは食事・アルコール類を含めた飲料を無料とし、エコノミークラスではノンアルコール飲料およびスナックが無料で提供される。なお、「EATS」という名称で有料で機内食を販売するサービスもある。
機内インターネット
機内から無線でインターネットに接続するサービスを有料で提供している。国内線の機材を中心に利用でき、2014年度中に国際線へと対象を拡大する。 対象となる航空機は、ボーイング 747-400型機から導入される予定となっている。
機内誌
機内誌は「Sky」(スカイ)を月刊で発行する。
空港ラウンジ
米国内の空港を中心に、「SKY CLUB」(スカイクラブ)の名称で空港ラウンジを提供している。利用対象はビジネスエリート・ファーストクラスの乗客やスカイマイルのメダリオン会員(上級会員)およびスカイチーム加盟航空会社の上級会員の一部を中心とするが、それ以外の乗客でも利用料を支払うことで入場できる。サービス内容はラウンジによってそれぞれ異なるが、飲料・軽食・雑誌・新聞類の提供はほぼ共通してなされる。
コードシェア
スカイチーム以外では下記の航空会社とコードシェア便を運航している。
- アラスカ航空
- アメリカン・イーグル航空
- アビアンカ航空
- ミッドウェスト航空[8]
- Royal Air Maroc
- U.S. Helicopter
- ヴァージン・ブルー (pending gov't approval)[9]
なお、大西洋路線ではエールフランスとKLMオランダ航空と共にジョイント・ベンチャーと呼ばれるコードシェア、並びに共同運航を行っており、どの会社がいずれの会社の運航便を販売しても利益とコストを分割し運営を効率化している。
保有機材
デルタ航空の保有機材は700機を超え、単一の航空会社が保有する機材数では世界第1位である。その種類も、従来のボーイング社製機材(旧マクドネル・ダグラス社製航空機を含む)中心のラインナップに加え、ノースウエスト航空から引き継いだエアバス機やボーイング747-400型機など、多岐にわたっている。そのため、様々な座席数を持つ機材が豊富に揃い、各路線に最適なサイズの機材を投入することが可能となっている。
航空機 | 機数 | 発注 | ビジネス・ファーストクラス | エコノミークラス | 座席数 | 貨物容量 |
DC-9-50型機 | 21機 | 16 | 84-109 | 100-125 | 1.54-1.96 t | |
MD-88型機 | 117機 | 14 | 128 | 142 | 1,253 ft³ (35.8 m³) | |
MD-90型機 | 35機 | 16 | 144 | 160 | 1,300 ft³ (36.8 m³) | |
A319-100型機 | 57機 | 16 | 108 | 124 | 4.09 t (3,710 kg) | |
A320-200型機 | 69機 | 16 | 132 | 148 | 3.76 t (3,411 kg) | |
A330-200型機 | 11機 | 32 | 211 | 243 | 16 t (14,515 kg) | |
A330-300型機 | 21機 | 34 | 264 | 298 | 15 t (13,608 kg) | |
CRJ-100型機 | 30機 | - | 40-50 | 40-50 | 314 ft³ (8.9 m³) | |
CRJ-700型機 | 15機 | - | 70 | 70 | 437.5 ft³ (12.4 m³) | |
CRJ-900型機 | 13機 | - | 76 | 76 | 530 ft³ (25.57 m³) | |
737-700型機 | 10機 | 12 | 112 | 124 | 1,566 ft³ (44.3 m³) | |
737-800型機 | 73機 | 16 | 144 | 160 | 1,566 ft³ (44.3 m³) | |
747-400型機 | 16機 | 65 | 338 | 403 | 13.2 t | |
757-200型機 | 154機 | 15-24 | 144-162 | 160-184 | 1,785 ft³ (50.5 m³) | |
757-300型機 | 16機 | 20 | 200 | 220 | 8.44 t (7,657 kg) | |
767-300型機 | 16機 | 24 | 238 | 262 | 3,070 ft³ (87 m³) | |
767-300ER型機 | 58機 | 29 | 185 | 214 | 3,070 ft³ (87 m³) | |
767-400ER型機 | 21機 | 39 | 206 | 245 | 4,580 ft³ (129.7 m³) | |
777-200ER型機 | 8機 | 50 | 218 | 268 | 5,656 ft³ (160 m³) | |
777-200LR型機 | 10機 | 45 | 233 | 278 | 5,330 ft³ (151 m³) |
なお、デルタ航空が発注したボーイング社製航空機の顧客番号(カスタマーコード)は32で、航空機の型式名は767-332ER、777-232ERなどとなる。但し、ノースウエスト航空から引き継いだ機材は、ノースウエスト時代のカスタマーコード51が与えられている。
航空機の新規発注状況
デルタ航空では、ボーイング737-800型機を発注しているが、世界的な不況による座席数の需要減により、それらのほぼ全てを退役させる予定であるテンプレート:要出典。なお、既に737-200型、737-300型の退役は全機完了した。ただし、ノースウエスト航空が発注していたボーイング787型機の注文の一部取り消し、及び納入延期を依頼している。
大型機の保有状況
ノースウエスト航空と合併後、ボーイング747貨物機を含め20機以上の747シリーズやエアバスA330を保有することになった。 まず、ボーイング747貨物機を中心とした貨物専用機の運用を2010年1月末をもって終了し、退役した。
残るボーイング747-400型機はサービス基準を上げるため機内の大規模改修作業後引き続き運用されていて。同社が保有するボーイング747-400の殆どは日本路線に運用している。これは無制限の以遠権を有していても成田国際空港の発着枠に限りがあり、多頻度の運用が不可能といった事情により需要旺盛な日本とアジア市場への一定の座席供給、輸送力を保つにはボーイング777では力不足かつ、成田空港内の整備工場でB747型機の高度な整備が可能なことも挙げられている。しかし、初期に登場した機材では20年以上もあることから、B767-300ERの代替を含めたワイドボディ50機[10]の導入を検討しており、A330シリーズやA350シリーズ、B777-300ER、B787シリーズなどが候補に挙がっている。
ボーイング777は航続性能を生かしデトロイトからソウル(仁川)、上海(浦東)への直行便など太平洋路線での運用が目立つ。
また、ボーイング767-400ERは同社とコンチネンタル航空(現ユナイテッド航空)しか発注しておらず、数少ないオペレーターとなっており、同社の大西洋路線などを中心に運用されている。
かつて使用していた機材
- ダグラスDC-8
- コンベア880
- マクドネル・ダグラスDC-10
- マクドネル・ダグラスMD-11
- ボーイング727-200
- ボーイング747-100
- ロッキード L-1011 トライスター
- エアバスA310-200
スカイマイル
スカイマイル (SkyMiles) はデルタ航空のマイレージサービスである。 2009年10月にノースウエスト航空のワールドパークスと統合され、提携航空会社が大幅に増えた[11]。 また、2011年1月1日よりマイル有効期限が廃止された[12]。
スカイチーム加盟各社のほか、下記の航空会社と相互提携している。
- アラスカ航空
- アビアンカ航空
- GOL航空
- ハワイアン航空
- ジェットエアウェイズ
- キングフィッシャー航空 (ワンワールド加盟予定)
- マレーシア航空
- オリンピック航空
- V オーストラリア
アジア太平洋地域在住会員のみ、下記の航空会社の特典航空券が得られる[13]。(搭乗した場合の加算はできない。)
なおシンガポール航空はアライアンスが異なるにも関わらずスカイマイルと提携していた時期があり、ワールドパークスとの統合後もマイルの加算・利用ができたが、2010年5月15日にこの提携が解消されている。[15]
関連会社
その他
予約システム
デルタ航空は「deltamatic」と呼ばれる予約システムを使用している。deltamaticはWorldspanの派生タイプである。
脚注
外部リンク
- NYSE: DAL
- デルタ航空(日本語版/英語版ほか)
- Delta Air Transport Heritage Museumテンプレート:En icon
- Deltaskymag.com デルタ航空機内誌テンプレート:En icon
- Delta Sky Web デルタ航空機内誌テンプレート:Ja icon
- デルタバケーション デルタ航空指定パッケージツアーテンプレート:Ja icon
- ↑ 「ミシシッピデルタ」(Mississippi Delta)はミシシッピ州の北西地域で、地形学上この地域はミシシッピ川の沖積平野である。ミシシッピ川河口部の鳥趾状三角州である「ミシシッピ川デルタ」(Mississippi River Delta)とは異なる。
- ↑ その他に6大陸すべてに定期便を運航するのは、ユナイテッド航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、エミレーツ航空、大韓航空、カンタス航空、 カタール航空、シンガポール航空、 南アフリカ航空など少数の航空会社にとどまる。
- ↑ http://news.delta.com/article_display.cfm?article_id=11034
- ↑ 米デルタ航空 、メンフィス空港のハブ使用を9月で終了 ロイター 2013年6月5日
- ↑ 成田空港会社 2013年夏ダイヤ 定期航空会社別スケジュール発着回数(PDF)
- ↑ ロサンゼルス便の他にデトロイト便も1日1便運行していたが、東日本大震災の影響による需要減や燃料価格の高騰に伴い一時運休となったのち、2012年4月27日から運航再開された。しかしながら既存の成田発着便との重複により搭乗率は低く、同年の9月30日をもってデトロイト便は廃止された。このデトロイト便の枠を翌日の10月1日以降、シアトル便に変更したうえで運航される予定であったが、アメリカン航空やユナイテッド航空の反対により仮申請を行うにとどまった。結果として申請は認可され、2013年6月1日にB767-300ER使用での運航が開始された。
- ↑ [2]
- ↑ Delta-Midwest sign codeshare agreement
- ↑ http://news.delta.com/index.php?s=43&item=742 Delta Virgin Blue to sign JV agreement
- ↑ Delta seeks up to 50 widebody aircraft
- ↑ DELTA SKY MAGAZINE September 2009
- ↑ スカイマイルについて
- ↑ 提携航空会社の特典 - デルタ航空
- ↑ 日本在住、かつメダリオン会員または提携クレジットカード会員に限られる。
- ↑ シンガポール航空サイトでの告知