エアバスA330
テンプレート:Infobox 航空機 エアバスA330(Airbus A330)は、エアバス社が製造する中・長距離商業大型ジェット旅客機である。エアバスA300の後継機として開発された。A340とほぼ同時期に開発が始められた双発エンジンのワイドボディ機で、エンジン数を除いては基本的な構造はA340とほぼ同じ。A340が洋上飛行の制約を受けない、航続距離13,000km以上の4発長距離機であるのに対し、A330は航続距離13,000km以下の中・長距離機となっている。
目次
開発
1980年代前半、エアバスは自社のA300やA310の後継となり、かつダグラス DC-10やロッキード L-1011 トライスター、ボーイング767などと競争できる長距離旅客機の開発をはじめた。基本コンセプトはA300と同一の胴体断面を持ち、エンジンが双発のもの(開発名称:TA9)と4発のもの(開発名称:TA11)の2種を同時に開発することにあった。
1987年3月にエールアンテールなどの航空会社から発注を得られたことで開発が本格化し、双発型はA330、4発型はA340と命名された。初飛行は1992年11月2日であり、1993年10月に型式証明を取得した。1994年1月より就航している。
2013年7月19日に、通算1000機目のA330がキャセイパシフィック航空へ引き渡された[1]。(A330-300、機体番号:B-LBB)
2014年7月14日、ロールスロイス製の新しいエンジン「トレント7000」を搭載する「A330neo」の開発が発表された[2](後述)。
操縦装置およびフライトデッキ
A330の操縦装置は、基本的にA340と同じくA320で確立されたフライ・バイ・ワイヤ (FBW) 方式を採用し、エアバス社の相互乗員資格 (CCQ) の対象となっている。これにより、操縦装置に互換性を持つ機種のパイロットは数日程度の訓練期間でA330の操縦資格を得ることができる。
計器はギアブレーキ系統の油圧計を除いてCRTモニターを用いたグラスコックピットで、後にモニタには液晶ディスプレイが使われるようになった。機長席・副操縦士席正面に、水平儀や速度、高度を表示するPFDを外側に、航法情報を表示するNDを内側に並列におき、両席中央にエンジンやシステム全体の状態を示すECAMを縦に二つ配置するなど、配置は基本的にA320と同一である。またFBWの導入と同時にエアバスの「顔」にもなったサイドスティックやスピードブレーキ、フラップ、ノーズギアの操舵ハンドルなどの配置や細かなデザインも同様である。また機体制御のシステム全体も共通性を持たせる設計になっている。
機体特徴
各型式
A330には最初に開発された航続距離5,600海里の標準的な-300型と、胴体を短縮して座席数を減らす代わりに運航自重を削減して燃料搭載量を増し、航続距離を6,650海里とした-200型がある。
ちなみにA330-300の胴体長は同時開発されたA340-300と同じであるが、A330-200の胴体長はA340-200より主翼より前で2フレーム短縮されている。エアバス社が示す基本的な座席数は3クラス構成で、-200型が253席、-300型が295席。実際の受注数は後から開発された-200型の方が多くなっている。また近年は重量増加タイプも登場している[3]。
エンジン
エンジンは、プラット・アンド・ホイットニーのPW4000、ゼネラル・エレクトリックのCF6-80E1、ロールスロイス社のトレント700を選択することができる。
推力は68,000ポンドから72,000ポンドである。ほぼ同じ設計のA340が4発機であるのに対し、A330は双発であるため、やや強力なエンジンを搭載している。
翼
主翼はA340-200/300と同じものである。翼端には翼端渦を減らして空気抵抗を減らし、揚力を効率的に生み出すためのウィングレットが装着されている。
派生型
標準型のA330-300は全長63.6 m(208フィート)、航続距離10,500 km(5,650海里)。短胴型のA330-200は全長59.0 m(193フィート)、航続距離 12,500 km(6,750海里)。
A330-300
A300の代替を目的として開発された。胴体はA300-600Rを基本に延長したものであり、主翼、安定装置が更新されているほか、A320で確立されたフライ・バイ・ワイヤのソフトウエアも更新されている。航続距離10,500 km (5,650マイル) 以上の3クラス制客室設計で、乗客295名を輸送する。2014年1月までに503機が引き渡されている。
ボーイング社製の同級の航空機である777-200に比べると貨物室の搭載容量が大きく、一部の航空会社では夜間に乗客を乗せずに貨物専用便として運航している。
A330-300はキャセイパシフィック航空、香港ドラゴン航空、香港航空、マレーシア航空、シンガポール航空、エアアジア X、タイ国際航空、ガルーダ・インドネシア航空、大韓航空、アシアナ航空、フィリピン航空、チャイナエアライン、エバー航空、中国東方航空、カンタス航空、スカンジナビア航空、フィンランド航空、ブリュッセル航空、ルフトハンザドイツ航空、スイスインターナショナルエアラインズ、アエロフロート・ロシア航空、およびデルタ航空(ノースウエスト航空)、USエアウェイズ、エア・カナダなどで運航されている。日本では、スカイマークが2014年6月14日より運航を開始した。
一方で、マレーシア航空など初期に導入した機材は、2012年から順次退役も出始めている。
A330-200
A300-600Rを代替するもので767-300ERと競合する機種として開発された。この型は-300型の短胴型であり、胴体部分で5.3m短縮されている。短胴化に対応して、垂直安定板が1m延長され、方向舵面積も増積されるなど、安定性が改良された。1995年から開発を開始し、1997年8月13日に初飛行した。これまでに527機が引き渡されている。
3クラス構成の旅客数253名で航続距離は12,500 km (6,750マイル)。エンジンは-300型と同一である。最初の顧客であるILFC/Canada 3000(英語版)へ引き渡されたのは1998年4月であった。ボーイング社製の同級の航空機は787-8および767-400ERになる。
A330-200は中国国際航空、中国東方航空、エバー航空、香港航空、エア・トランザット、エミレーツ航空、カタール航空、エティハド航空、ガルフ・エア、エールフランス、エア・ベルリン、TAM航空、ハワイアン航空、カンタス航空、ジェットスター航空などで運航されている。
A330-200Lite
ボーイング787-9と競合するよう企画された型である。機体重量を軽減し、より経済的なエンジンを搭載する。この計画は拡張されA350へと発展した。シンガポール航空 (SIA) などはこの計画に興味を示していた。
A330-500
A300やA310の代替需要を狙って、-200型の胴体をさらに短縮するという構想で企画された型。日本エアシステムにもA300の代替として提案されたが、航空会社の関心を得ることができず、計画のみで終了した。 テンプレート:-
A330-200F
-200型の貨物機型。MD-11FやDC-10F、A300-600Fの代替を狙っている。実際にイントレピット・アビテーション・グループを初めとして、2007年までに68機の受注を得ている。しかしMD-11などはA330より重いものを輸送可能であるため、未だにMD-11FやDC-10Fなどの代替として発注されたことはない。貨物搭載量は60tクラス。2007年開発開始、2009年11月5日に初飛行した[4]。ノースギアに膨らみがあるのが特徴。
ローンチカスタマーはエティハド航空で、2010年8月に受領。現在は、エティハド航空以外に香港航空・トルコ航空・MASkargo(マレーシア航空の貨物専門会社)・MNGエアラインズ・アビアンカ・カーゴなどへ引き渡されている。
また、2012年からは既存のA330-200/300を貨物機に改修するP2Fプログラムが、シンガポールのSTエアロスペース社によって開始されている。 テンプレート:-
A330リージョナル
2013年9月に行われた第15回北京国際航空展覧会で発表された型。A330-300がベースとなるが、機体重量の軽減やエンジン推力の減少を行い、従来の長距離向け仕様機に比べて運航コストを最大15%削減するというコンセプトは、前出のA330-200Liteと一部共通。人口増加が進む中国やインド・中近東の国内線・地域路線に向けて提案された[5]。
A330neo
neoはNew Engine Optionの略で、同じく改良型の開発が進められているA320にならった名称である。
主翼はA350と同じ複合材ウィングレットが装着され、主翼幅は60.3メートルから64メートルに延長。現行型より1席あたり燃費消費量を14%削減した。また航続距離を400海里延長し、旅客・貨物の搭載量を増加させる。現行型同様2種類設定され、標準座席数はA330-800neoが252席、A330-900neoが310席。現行型とは95%の互換性を持ち、運用面やメンテナンスコストは5%削減される。最新の機内エンターテイメントシステムやLEDムード照明も導入される。
エアバス社が2014年6月に行った航空記者向け説明会では、エンジン換装に伴う手間に加え、単通路機よりも市場規模が小さいため、採算が取れないという理由でこのモデルの開発に否定的な見方を示していた[6]。しかし、同年7月14日のファンボロー・エアショーにてローンチを発表。翌7月15日に、エアアジア XからA330-900neo・50機のコミットメントを獲得した[7]。2017年第4四半期に初号機が航空会社に納入予定[8][9]。
現行型については、これもA320同様にA330ceo(Current Engine Option)と呼ばれるようになった[10]。
A330-200 MRTT
テンプレート:Main A330-200をベースに製造された多目的空中給油機および輸送機 (Multi Role Tanker Transport) である。2004年1月にはイギリス国防省が当機をイギリス空軍向けの次期戦略空中給油機計画における空中給油機として採用することを発表した。
後にオーストラリア空軍がKC-30と命名し導入となった。2008年2月にはアメリカ空軍がKC-135後継の次期空中給油機選定計画 (KC-X) で当機を選定、KC-45と命名された。しかし、この選定作業はボーイングからの異議申し立ての後再審査となり、結局KC-45は不採用となった。
仕様
A330-200 | A330-200F | A330-300 | ||
---|---|---|---|---|
運航乗員 | 2人 | |||
基本座席数 | 253 (3-class) 293 (2-class) 380 (最大) |
n/a | 295 (3-class) 335 (2-class) 440 (最大) | |
全長 | 58.82 m | 63.69 m | ||
全幅 | 60.3 m | |||
主翼面積 | 361.6 m2 | |||
アスペクト比 | 10.06 | |||
翼後退角 | 30° | |||
全高 | 17.39 m | 16.90 m | 16.83 m | |
キャビン幅 | 5.28 m | |||
胴体幅 | 5.64 m | |||
貨物室容量 | 136.0m³ | 475.0m³ 70 t / 最大12 コンテナ[11] |
162.8m³ | |
基本運用自重 | テンプレート:Convert | テンプレート:Convert | テンプレート:Convert | |
最大離陸重量 (最大離陸重量時) |
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最大着陸重量 | 180,000 kg (396,900 lb) | 185,000 kg (407,925 lb) | ||
巡航速度 | マッハ 0.82 (871 km/h) (巡航高度 11000 mの時) | |||
最大運用速度 | マッハ 0.86 (913 km/h) (巡航高度 11000 mの時) | |||
航続距離(旅客満載時) | 13,430 km (7,250 nmi) | 7,400 km (4,000 nmi) | 10,830 km (5,850 nmi) | |
離陸滑走距離 (最大離陸重量時) |
2,220 m | n/a | 2,500 m | |
最大燃料容量 | 139,090 リットル | 97,530 リットル | ||
実用上昇限度 | 12,527 m | |||
最大実用上昇限度 | 13,000 m | |||
エンジン (×2) | ゼネラル・エレクトリック CF6-80E1 プラット・アンド・ホイットニーPW4000 ロールス・ロイス トレント700 |
プラット・アンド・ホイットニーPW4000 ロールス・ロイス トレント700 |
ゼネラル・エレクトリック CF6-80E1 プラット・アンド・ホイットニーPW4000 ロールス・ロイス トレント700 | |
推力 (×2) | PW: 311 kN RR: 316 kN GE: 320 kN |
PW: 311 kN RR: 316 kN |
PW: 311 kN RR: 316 kN GE: 320 kN |
エンジンの仕様
ソース: EASA Type Certificate Data Sheet EASA.A.004[12]
機種 | 認定日 | エンジン |
---|---|---|
A330-201 | 2002年10月31日 | General Electric CF6-80E1A2 |
A330-202 | 1998年3月31日 | General Electric CF6-80E1A4 |
A330-203 | 2001年11月20日 | General Electric CF6-80E1A3 |
A330-223 | 1998年7月13日 | Pratt & Whitney PW4168A/4170 |
A330-223F | 2010年4月9日 | Pratt & Whitney PW4170 (Freighter) |
A330-243 | 1999年1月11日 | Rolls-Royce Trent 772B-60/772C-60 |
A330-243F | 2010年4月9日 | Rolls-Royce Trent 772B-60 (Freighter) |
A330-301 | 1993月10月21日 | General Electric CF6-80E1A2 |
A330-302 | 2004年5月17日 | General Electric CF6-80E1A4 |
A330-303 | 2004年5月17日 | General Electric CF6-80E1A3 |
A330-321 | 1994年6月2日 | Pratt & Whitney PW4164 |
A330-322 | 1994年6月2日 | Pratt & Whitney PW4168 |
A330-323 | 1999年4月22日 | Pratt & Whitney PW4168A/4170 |
A330-341 | 1994年12月22日 | Rolls-Royce Trent 768-60 |
A330-342 | 1994年12月22日 | Rolls-Royce Trent 772-60 |
A330-343 | 1999年9月13日 | Rolls-Royce Trent 772B-60/772C-60 |
事故概略
(2010年5月12日現在)
- 機体損失事故:3回、総計338人死亡。
- 他の原因:1回、総計0人死亡。
- ハイジャック:2回、総計1人死亡。
直近の事故は2009年6月に大西洋上で発生したエールフランス447便墜落事故と、2010年5月にリビアのトリポリ国際空港で発生したアフリキヤ航空771便墜落事故である。インシデントの件数は多数報告されており、特に警報装置関連のトラブルが報告されている。重大インシデントで有名なのが大西洋上空で双発の両エンジンが停止し滑空着陸したエアトランサット236便滑空事故である。
脚注
外部リンク
テンプレート:Airbus aircraft テンプレート:Airbus A3xx timeline
テンプレート:Link GA
- ↑ エアバス、キャセイパシフィック航空に1000機目のA330を納入 2013年7月21日(日) 13時00分 レスポンス
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ エアバスの新型貨物専用機A330-200Fが初飛行
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 青木謙知『“エミレーツの判断”が会場の話題をさらった「2014年エアバス社イノベーション・デイズ」』 - 『航空ファン』(文林堂発行)2014年9月号78ページ。
- ↑ テンプレート:Cite web
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