バスターミナル
テンプレート:Redirect バスターミナル(bus terminal)とはバス停留所の内、複数のバス路線の発着点(バス停)として設置されている施設である。
概要
中・長距離において比較的バス交通が中心の国や地域(ブラジル、スペイン、韓国など)では、都市にある中・長距離バス路線の発着場所として設けられるケースがあり、それは交通の拠点であり、鉄道中心の国(日本、ドイツ、フランス、中国、北朝鮮など)における鉄道ターミナル駅と同じく、都市の玄関口としての性格が強い。それぞれ国や都市あるいはバス会社により、近距離・市内バスと中・長距離バス(高速バス)が同じバスターミナルに乗り入れるケースと別々に設けられているケースがある。鉄道中心の国では、近距離路線を結節させるため鉄道駅にバスターミナルが設置されるケースがある。バスターミナルの性格や形状は、一つの国内でも都市・地域により違いが大きいことが多い。
施設の名称
バスターミナルの名称の由来については、英語のTERMINAL という言葉が、終着点という意味があるためバスの終着点・結節点という意味でこう呼ばれる。旧日本国有鉄道自動車路線(国鉄バス)の場合には、路線バス専用線ないしはそれに類する道路上にあるバスターミナルには自動車駅と称し、連絡運輸との兼ね合いで鉄道の駅と同等に扱う場合もある。そのため、一部には「○○バスターミナル駅」と称した場合もある。また、現在でも「駅」と称しているバスターミナルの沿革を見ると、かつて鉄道の駅ないしは駅の予定地であったものも散見される。
なお、日本のバスターミナルは「○○バスセンター」と名乗る施設が数多く存在するが、「バスセンター」という言葉はほぼ造語・和製英語であり、英語圏では通用しない。英語ではbus terminal、bus station、bus depotという表現が用いられる。
米国の公営バス事業者は、地域バスの発着場にtransit centerという名称を与えることが多い。地域によってはterminalという語が人生の終点を連想させるとして(ターミナルケアなど)、bus terminalという表現をしないところもある。
スペインでは「バスの駅」を意味するスペイン語「estación de autobuses(エスタシオン・デ・アウトブーセス)」と呼ぶ。ブラジルではポルトガル語で、「Rodoviária(ホドビアリア)」と呼ぶ。インドではbus standと呼ばれることもある。
日本
日本にあるバスターミナルは、違いが非常に大きく、その設備に関しては一概では言えない。鉄道の駅や、空港・港・バスの車庫を起点にして路線バス網を形成している場合が多いため、これらの近くに設ける場合が近・中距離路線に多い。また、都市計画等により一地域で分散しているバス停を一箇所に整理した事例の他、バス会社が中心街や観光地に設置している事例もある。
基本的には鉄道中心の国ではあるが、高速道路網の発達と、精力的にバス事業を拡大・発展させてきたバス会社が幾つも存在することから、鉄道(鉄道駅)に取って代わるほどの利用客があったり都市玄関口としての性格が強い中・長距離バスターミナルが存在する都市(熊本、福岡、広島、札幌、北海道の諸都市など)もある。また、本州でもバスが鉄道並みに交通の中心的な役割を果たす都市では概ね近・中距離バスが発達しているが、中・長距離利用にあわせて鉄道(駅)と結節させることが多いため、鉄道駅に設置され、独立した施設を持たない事例も少なくない(宇都宮、水戸、仙台など)。
例外的ではあるが、高速路線バスのバス停について、他の路線バスが発着し、且つ高速バスと路線バスが連携している場合、この停留所自体をこう呼ぶ場合がある。また、利便性を高めるために路線バス会社や地方公共団体などがこの近くに営業所や案内所を設けている場合が多い。
沖縄本島は第二次世界大戦後、長らくバスのみの地域であり、本州・九州などとは事情が異なる。那覇にはバスターミナルが設置され、那覇バスターミナルは島内諸都市からの玄関口として、本州における鉄道駅のように機能してきた。那覇には現在沖縄都市モノレールが存在するが、市内の一部を通るのみなので市外方面に関して基本的に変わっていない。
バスターミナルの形状としては、それ自体が建物になっているもの(福岡の西鉄天神バスセンター、広島の広島バスセンター、名古屋の名鉄バスセンター、北海道中央バス札幌ターミナル)や、単に広場状で旅客部分にのみ屋根がついているもの(鉄道駅バスターミナルに多い)など様々である。また大規模なバスターミナルの場合、バース間の移動通路を兼ねた地下街を持つ場合も少なくない。
なお、日本の自動車ターミナル法では、「旅客の乗降のためバス事業用の自動車を同時に2両以上停留させることを目的とした施設であって、乗合バス事業者が自ら使用することを目的として設置したバスターミナルを専用バスターミナルといい、それ以外のものを一般バスターミナルという」と規定されている[1]。専用バスターミナルは175箇所、一般バスターミナルは25箇所あり[2]、そのうち11以上のバースを持つ規模の大きいものは専用で9箇所、一般で10箇所である[3]。
日本に於ける沿革
日本のバスターミナルは、少なくとも1949年12月、岡山県岡山市に開業した「セントラルバスステーション」(現在の「天満屋バスステーション」)まで遡ることができ、次いで1951年2月、新潟県新潟市に開業した「新潟交通バスステーションビル」(後に移転。現在の万代シテイバスセンター)、1957年7月29日、広島県広島市に開業した「広島バスセンター」などが登場することとなる。
「バスの駅」構想
バスの駅(バスのえき)は、鉄道駅に代わる地域の交通の結節点として、高速バスを中心とした交通ネットワークの結節点としての役目を果たすべく、建設省が1999年に整備の方針を打ち出し、国土交通省が整備を進めているバスターミナル施設である。
高速バスのバス停を中心として商業施設や公共施設を周辺に統合することにより、地域の新しい中心にするというもので、パークアンドライドの機能を持たせた上で市街地から外れた場所に施設を設置することによって、市街地への自家用車の流入を減少させ、市街地道路の混雑緩和を図る目的も含まれている。
設備の概要としては、概ねバス3台分以上の乗降スペースを設置し、駐車場・駐輪場・公衆便所・案内標識などを国土交通省が整備し、待合室・公共施設・商業施設を地方自治体や民間が整備するものである。日本全国で50箇所程度が想定されており、2003年には徳島県で徳島とくとくターミナルが、2006年には熊本県で山鹿バスの駅が整備された。
日本のバスターミナル
以下、代表的なバスターミナルを記載する。自動車ターミナル法で規定する一般バスターミナル(25箇所)については、☆印を付している。
- 原則として、鉄道駅構内、鉄道駅交通広場のバスターミナルは割愛する。ただし施設又は管理が独立しているもの、またはウィキペディア日本語版において特筆性のある代表的なバスターミナルとしての独立記事が存在する場合を除く。
北海道地方
- 札幌駅バスターミナル☆
- 大谷地バスターミナル☆
- 新札幌バスターミナル☆
- 白石バスターミナル
- 福住バスターミナル☆
- 宮の沢バスターミナル☆
- 麻生バスターミナル☆
- 札幌ターミナル(北海道中央バス)
- 小樽ターミナル(北海道中央バス)
- 岩内バスターミナル
- 千歳駅前ターミナル
- 室蘭東町ターミナル(道南バス)
- 函館駅前バスターミナル
- 岩見沢ターミナル(北海道中央バス)
- 夕鉄本社バスターミナル(夕張鉄道)
- 滝川ターミナル(北海道中央バス)
- 旭川ターミナル(北海道中央バス)
- 留萌ターミナル(北海道中央バス)
- 紋別バスターミナル
- 北見バスターミナル(北海道北見バス)
- 網走バスターミナル(網走バス)
- 増毛ターミナル(沿岸バス)
- 羽幌ターミナル(沿岸バス)
- 稚内駅前バスターミナル(宗谷バス)
- 帯広駅バスターミナル
- 釧路駅前バスターミナル
- 斜里バスターミナル(斜里バス)
- ウトロターミナル(斜里バス)
東北地方
- 弘前バスターミナル(弘南バス)
- 五所川原ターミナル(弘南バス)
- 十和田湖駅(JRバス東北)
- 十和田湖バスターミナル☆
- むつバスターミナル(下北交通)
- 八戸ラピアバスターミナル(南部バス)
- 八戸中心街ターミナル(八戸市営バス、南部バス、十鉄バス、県北バス、国際興業バス)
- 盛岡駅バスターミナル(盛岡駅東口・西口)
- 盛岡バスセンター☆
- 長崎屋バスターミナル(秋田市、秋田中央交通)
- 西部サービスセンターバスターミナル(秋田市、秋田中央交通・秋田中央トランスポート)
- 秋北バスターミナル(大館市、秋北バス)
- 大曲バスターミナル(大仙市、羽後交通)
- 横手バスターミナル(羽後交通)
- 山交ビルバスターミナル(山形市、山交バス)
- 庄交バスターミナル(酒田市、旧ダイエー酒田店内、庄内交通)
- 庄交モールバスセンター(エスモール内、庄内交通)
関東地方
- 東京シティエアターミナル(T-CAT)☆
- 東京駅バスのりば
- 渋谷マークシティ
- 新宿駅バスのりば
- 新宿高速バスターミナル☆
- サンシャインシティ☆
- 品川バスターミナル
- 浜松町バスターミナル☆(世界貿易センタービル別館1F)
- 町田バスセンター・町田ターミナル
- 浮島バスターミナル
- 横浜シティ・エア・ターミナル(YCAT)☆
- 戸塚バスセンター
- 厚木バスセンター
中部地方
- 万代シテイバスセンター
- 蒲原鉄道村松駅バスターミナル(蒲原鉄道)
- 名鉄バスセンター☆(日本初の多層型バスターミナルビル)
- 栄オアシス21内バスターミナル☆
- 名鉄一宮駅バスターミナル
- 国府宮駅バスターミナル
- 名鉄岐阜のりば(名鉄岐阜駅西、国道157号沿い)
- 岐阜バスターミナル(名鉄岐阜駅隣接)
- JR岐阜駅バスターミナル(岐阜駅北口)
- 県庁バスターミナル(岐阜県庁前)
- 北方バスターミナル
- みずほターミナル(岐阜県瑞穂市)
- 高山濃飛バスセンター
- 平湯バスターミナル(平湯温泉)
- 城下町プラザ
近畿地方
- 阪急高速バス新大阪ターミナル
- 大阪シティエアターミナル(OCAT)☆
- なんば高速バスターミナル
- 大阪駅・梅田駅周辺バスのりば
- 阪急三番街高速バスターミナル(阪急バス)
- ハービスOSAKAバスターミナル(阪神電気鉄道)
- 天王寺駅・大阪阿部野橋駅バスのりば
- 白浜バスセンター
中国地方
- 道の駅クロスロードみつぎ
- 庄原バスセンター(備北交通)
- 三次バスセンター(備北交通)
- 高田インターバスセンター
- 広島バスセンター☆
- 広島駅のバスのりば
- 千代田インターバスセンター
- 大朝駅(バス駅)
- 戸河内インターバスセンター
四国地方
九州地方
- 西鉄天神バスセンター (西日本鉄道)
- 博多バスターミナル☆
- 藤崎バス乗継ターミナル☆
- 小倉駅バスセンター(西日本鉄道)
- 西鉄黒崎バスセンター(西日本鉄道)
- 飯塚バスセンター(西鉄バス筑豊)
- 直方バスセンター(西鉄バス筑豊)
- 後藤寺バスセンター(西鉄バス筑豊)
- 西鉄久留米バスセンター(西鉄バス久留米)
- 長崎駅前交通会館(長崎県営バス)
- 長崎新地ターミナル(長崎バス)
- ココウォーク茂里町(長崎バス)
- 佐世保バスセンター(西肥バス)
- 大村ターミナル(長崎県営バス)
- 島鉄バスターミナル(島原鉄道)
- 川棚バスセンター(西肥バス)
- 延岡駅前バスセンター(宮崎交通)
- 宮交シティバスセンター(宮崎交通)
- 小林バスセンター(宮崎交通)
沖縄地方
韓国
韓国は、鉄道網が発達している一方で、長距離のバス網も発達しており、ソウルなど大都市には、長距離バス(高速バス)の拠点となるバスターミナルが幾つも設置されている。
- ソウル
- ソウル高速バスターミナル - 京釜線(釜山方面)、江原道方面
- セントラルシティーターミナル - 湖南線(全羅道方面)
- 東ソウルターミナル
- 南部ターミナル(ソウル南部市外バスターミナル)
- 上鳳ターミナル
- 釜山
- 釜山総合高速バスターミナル - 釜山東部慶南市外バスターミナルと同じであり、券売所が独立している。
- 釜山東部慶南市外バスターミナル
- 釜山西部バスターミナル
- その他
台湾
韓国同様、高速バス網が発達しており、同業者間、さらには鉄道との競争が激しい。近年では、高速鉄道開通により、競争が激化している。
- 台北
- その他
台北以外では、各バス会社が独自にバスターミナルを設置している。
タイ
タイでは鉄道網よりもバス網が広く発達している。
- バンコク
ベトナム
ベトナムでは鉄道網よりもバス網が広く発達している。ベトナム語でバスターミナルのことはBến Xe(ベン・セー)と言う。
ホーチミン市
- ベンタインバスターミナル(Bến Xe Bến Thành) - ベンタイン市場前。市内ローカルバスの中心ターミナル。カンボジア国境ゆきの便もある。
- チョロンバスターミナル(Bến Xe Chợ Lớn) - 中華街であるチョロン地区にある市内南西のターミナル。
- ミエンタイバスターミナル(Bến Xe Miền Tây) - ベトナム南部(メコンデルタ)方面への長距離バスを扱う。
- ミエンドンバスターミナル(Bến Xe Miền Đông) - ベトナム中部・北部方面への長距離バスを扱う。
ハノイ
- ザップバットバスターミナル(Bến Xe Giáp Bát) - ベトナム中部・南部方面への長距離バスを扱う。
- ザーラムバスターミナル(Bến Xe Gia Lâm) - ベトナム北部のうち西方面への長距離バスを扱う。
- ミーディンバスターミナル(Bến xe Mỹ Đình) - ベトナム北部のうち北・東方面への長距離バスを扱う。
- ルオンイエンバスターミナル(Bến xe Lương Yên) - ベトナム北部のうち西方面への長距離バスを扱う。
スペイン
スペインのバスターミナル
マドリード州
マドリード市
- ラ・ベロス社バス停(ラ・ベロス専用) - コンデ・デ・カサール
- ノルテバスターミナル (マドリード市)
- スールバスターミナル (マドリード市)
- アベニーダ・デ・アメリカ・ターミナル
- モンクロアバスターミナル
カタルーニャ州
バルセロナ市
エストレマドゥーラ州
- カセレスバスターミナル
アンダルシア州
ナバラ州
- パンプローナバスターミナル
脚注
- ↑ 自動車ターミナル法に基づくバスターミナル
- ↑ 一般バスターミナル一覧
- ↑ 交通新聞社刊「交通年鑑2008」より。統計は2006年4月末現在のもの。
関連項目
参考文献
- 鈴木文彦『路線バスの現在・未来』(2001年・グランプリ出版)ISBN 4876872171