車体傾斜式車両

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JR北海道キハ283系気動車。制御付き自然振り子式を採用しているため、曲線区間にさしかかっていない車両も傾斜している

車体傾斜式車両(しゃたいけいしゃしきしゃりょう、tilting rail car)とは、曲線通過時に車体を傾斜させることで、通過速度の向上と乗り心地の改善を図った鉄道車両である[1]車体傾斜車両とも呼ばれる。

曲線通過時における車体傾斜の方法としては自然振り子式、強制車体傾斜式、空気ばねによる車体傾斜など複数のシステムが存在している[2]

概要

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曲線通過時に車両にかかる遠心力を打ち消すため、曲線部分の線路には内側に向けた傾斜(カント)が設けられている[3]。それでも速度が高すぎると乗客が遠心力を感じるために乗り心地を悪化させたり、さらには車両の転覆につながる。そこで、曲線通過時に車両の水平方向にかかる加速度が規定量[注 1]を超過しないよう、曲率半径とカント量に応じて制限速度が設けられている。

列車の最高速度が低かった時代はあまり問題とされなかった曲線区間の制限速度であるが、電車気動車となり最高速度が向上すると、スピードアップのための障害となった。より高速で曲線を走行しようとする場合、増加する遠心力への対策が必要になる。転倒の危険については、カントの傾斜角を増やすことにより遠心力を車両の垂直方向に振り向け、水平方向にかかる加速度を減らす事で低減できる。同時に車両の内装や屋根上を軽くするなどして車重を減らし、重心を下げることでも転倒の危険は低減される。しかし、列車が曲線で停止した時に車体が傾きすぎないようカント量には限度が設けられている。特に曲率半径が小さい場合 カント不足となりやすい。

従って、車両(十分に重心が低い車両)によっては「転倒の危険なく通過できる」が「乗り心地の問題」によって曲線通過速度が制限されると言う事態が想定されうる。この時適当な方法で乗客にかかる横方向の加速度を減じることが出来れば、その分曲線通過速度を向上できる。その答えの一つが車体傾斜機構である。

なお、車体傾斜機構は乗り心地を維持したままスピードを上げるための仕組みであり、軌道や車両にかかる荷重を減らすためのものではない。当然にJR福知山線脱線事故の様な事故を防ぐ事も出来ない[注 2]。そもそも車体にかかる遠心力は、その速度、質量、曲線半径により一意に定まる。遠心力を減ずる事は不可能(車体の水平方向、垂直方向成分の振り分けをカントにより変えられるだけである)である。そのため車体傾斜車両を用いて高速化を行う場合は、曲線区間で増す遠心力による側圧増大対策などのために、軌道強化が必要となる[注 3]。軌道強化が実施されていない区間では速度を高められないためカント不足とはならず、車体を傾斜させる必要がなくなり傾斜機構を停止させて運用されることもある[注 4]。すなわち車体傾斜システムだけでは曲線区間の高速化はできず、車両の低重心化と軌道の強化も行うことで初めて高速化が成される。

平坦な場所を走行する幹線では元々曲率半径は大きめに取られているが、山岳路線ローカル線では敷設条件から半径の小さい曲線が小刻みに連続する。根本的な解決には、長大なトンネルを掘って迂回していた区間を直線化するなど大規模な土木工事により軌道の線形を改良することになるが、これは莫大な工事費を要する。そのため、既設軌道の改良による設備投資を抑制しつつ列車の高速化を廉価に実現するため、曲線区間のカントの不足分を車体自体を傾斜させることで補う「振り子式」をはじめとする車体傾斜車両の実用化が検討された。

分類と機構

自然振子式

自然振子式は、車体傾斜の回転中心を重心より高い位置に設定し、曲線通過時にかかる超過遠心力を利用して受動的に車体傾斜を行わせる。リンク、コロ(=ローラー)、ベアリング等を利用して車体傾斜の仮想的な回転中心を設定し、傾斜動作を円滑に行えるように設計する例が多いが、自然振り子式にこれらの機構部品が必須なわけではない。後述するスペインタルゴ・ペンデュラーのようにこうした機構を一切備えず、空気ばねによる枕ばねを車体の天井付近に置き、車体傾斜の回転中心を天井よりも高い位置に設定することで簡潔に自然振子を実現した例も存在する[4]。また、日本で最初に車体傾斜式車両を試験した小田急電鉄の車両も、左右の高い位置の空気ばねを連通して遠心力で受動的に内傾するものだった[注 5]

自然振子式は比較的シンプルな機構ながら大きな効果が得られ、かつての日本国有鉄道(国鉄)で実用化され、1973年国鉄381系電車で営業運転を開始した[5]。しかし曲線(特に緩和曲線)を通過する際に、「振り遅れ」や「揺り戻し」と呼ばれる振動が発生して乗り心地を悪化させるため、乗客に不快感を与えたり乗り物酔いを起こしたりすることがある。これは傾斜装置の摩擦等の要因により、一定以上の遠心力がかからないと車体が動かず、あるいは遠心力が一定以下にならないと戻らないために生じるものである[6]。また振り子の動作により車体の重心が曲線の外側に移動するため、車体の重心を下げることで高速走行に悪影響が出ないように設計されている。

日本の振子車両では最大傾斜角は5 - 6度となっている[7]

制御付き自然振子式

上述の自然振子式の問題は、曲線の外側に向けて傾斜装置の摩擦を打ち消す程度の力を加えておけば解消される。制御付き自然振子式は、自然振子式の機構に空気圧などによる能動的な傾斜制御を追加したものであり、強制車体傾斜方式と同様に、曲線を検知して車体の傾斜角度を制御する装置が必要となる。従って制御を切れば自然振子式としての動作も可能であるが、その場合は自然振子式の問題もそのまま発生する。

日本国鉄では自然振り子式での「振り子遅れ」「揺り戻し」などの問題の解決を目指し、1981年から1982年にかけてTR906・TR907・TR908と3種の台車が設計され、アクティブ車体振動制御装置や横圧低減対策などと共に、自然振子式を改良した制御付き自然振子式が開発・搭載された。さらに、これらの開発で得られたデータを元に、1985年にはDT51X・TR236Xと本格量産を念頭に置いた改良型台車が設計されたものの国鉄時代には量産には至らず、国鉄分割民営化後、1989年設計の四国旅客鉄道(JR四国)2000系気動車で初めて実用化の機会を得た[8]。同系の成功により、以後この方式は全てのJRが採用している。

実用化された制御付き自然振り子式では、車体の傾斜制御は以下のようにフィードフォワード的に制御される[9]。まず、予め線路上の曲線部ごとのカント等のすべての情報をあらかじめ車上装置へ組み込まれたマイコンに記録しておき、そこで記録された曲線情報を元に、速度発電機と地上にあるATS地上子を使用して得られる絶対位置情報、速度発電機の検出で得られる速度情報を元に、緩和曲線区間での適切な車体傾斜角度を計算する。そこで得られた傾斜角情報に従い、曲線進入前から空気シリンダーを用いたアクチュエーターであらかじめ能動的に車体を徐々に傾斜させていく。曲線区間通過後の緩和曲線区間でも同様の手法で車体傾斜を能動的に復元させる。このような制御により、緩和曲線区間で発生する過渡的な振動を抑制する、というものである。曲線区間への進入・脱出時にアクチュエーターによって半ば強制的に車体の傾きが制御されるが、補助的な傾斜制御であるため、万が一、この制御装置が正しく作動しない場合でも本来の超過遠心力によって車体は傾き、安全性は確保される[10]

日本での制御付き自然振り子式の車体傾斜機構にはコロ式とベアリングガイド式がある[10]。最初に実用化された自然振子式の381系ではコロ式を採用していたが、振子中心を必要に応じて低くできない、装置の小型化が困難、コロを覆う防塵装置が複雑、などの欠点があったため、ベアリングガイド式の開発が進められた[11]。開発されたベアリングガイド式は、振子時の摺動抵抗の低減、振子装置の小型化、防塵装置の簡素化などを達成し、JR四国8000系、JR北海道281系の試作車から採用された[11]

強制車体傾斜式

強制車体傾斜式は曲線通過時にリンクなどで構成された車体傾斜機構を油圧などによって能動的に傾斜させるものである。強制振り子式と呼ばれることもある[12]。曲線通過時に車体に懸かる超過遠心力を車体傾斜に利用するものではないため、必ずしも車体傾斜の回転中心は重心より高くする必要はないが、実用化された強制車体傾斜式車両の多くは、超過遠心力が車体の傾斜に悪影響を与えないよう回転中心を重心と同じか重心より高い位置としている。また強制車体傾斜式の車体傾斜機構を曲線通過時に正しく動作させるためには何らかの方法で曲線進入を検知し、車体傾斜を制御する装置も必要であり、そうした装置の必要がない自然振り子式と比較して構造は複雑になる。

強制車体傾斜式は、主に欧米で普及している[12]。初期の強制車体傾斜式では曲線進入を各車に搭載したジャイロスコープ加速度センサーなどで検知し、車体を傾斜させる車両単位のフィードバック制御が多かった。この方法ではいずれの車両も曲線進入後に車体を傾斜させることになるため、必ず振り遅れが発生するという問題があった。またセンサー類の誤作動によって曲線進入を正しく検知できない場合も多く、実用化の障害となっていた。その後電子工学の発達によって最適な傾斜角度の計算や編成単位で車体の傾斜を制御することが可能になり、曲線進入検知の正確性も向上した。振り遅れについては曲線進入を先頭車に搭載したセンサー類で検知し、先頭車からの指令で後続の車両も順次車体を傾けることで先頭車以外の振り遅れを防ぐ制御方法も開発され、現在では編成単位でのフィードバック制御が主流となっている。なお、一部ではフィードフォワード制御も行われており、車上コンピュータに入力した線形データと既に通過した曲線の情報から車輪回転数で現在走行位置を割り出し、次の曲線の位置を予測しセンサー類が曲線を検知する前から車体を傾斜できるものが実用化されている[13][14]

一般的に最大傾斜角は自然振り子式よりも大きく、イタリアペンドリーノが8 - 10度、スウェーデンX2000が6.5度である[7]

空気ばね車体傾斜方式

特別な車体傾斜機構を用いず、台車上の左右の空気バネの伸縮差によって車体を傾斜させるものである。空気ばねストローク式車体傾斜空気ばね式車体傾斜簡易振り子式、あるいは簡易車体傾斜など、様々な呼び方がある[注 6]。自然振子式、強制振子式の分類では、強制振子式に属する[12]

本格的な振子式車両は、導入に当たって軌道の強化や架線の張り替え工事などの地上設備の改修が必要となる上、車両重量やイニシャルコストの増加という点で不利であった。このため、例えば日本の私鉄での採用例は速達化が至上命題とされる、あるいはJRと乗り入れを行う必要からそれらで採用されているのと準同型の車両を導入する必要がある、といった特殊な事情のある第三セクター鉄道にほぼ限られた。しかし、車体傾斜制御技術そのものはそれ以外の鉄道においても乗り心地を維持しながらの列車の高速化に有用な技術であり、そこで特殊な機構のため保守も含めて高価となる振り子式の代替技術として曲線部での走行時に左右の空気ばねの内圧を制御して適切な角度まで車体を内傾させる、車体傾斜制御装置とよばれるものを装備した強制車体傾斜方式が開発された[15]

空気ばねによる車体傾斜システムは1960年代から構想されていたが、実現化に先鞭をつけたのは西ドイツ(当時)であった。西ドイツ国鉄が1973年に12両を試作した403型と呼ばれる動力分散方式の高速車両においては、ボルスタレス台車に最大傾斜角2度の車体傾斜機構が搭載された。この車体傾斜システムは試験のみに終わり、403型も量産されることはなかったが、本方式の基本的な機構はほぼ確立されており、低コストで車体傾斜車両を実現する手段として注目を集めた。

台車左右の枕ばねに用いられる空気ばねの伸縮差に依存することと、車体傾斜の回転中心が枕ばねと同じ高さであり車体傾斜時に車両限界を支障しやすいため、営業車両での最大傾斜角は2度程度に抑えられており、試験車両では、在来線で傾斜角5.5度(1970年の小田急のフィードバック制御の試験車両)、新幹線では3度 (300X) を実現している[16][17][注 7]。傾斜角は他の方式に比べると小さい。しかし特別な車体傾斜機構を必要とせず、既存の空気ばね台車を若干設計変更してフィードバック制御[注 8]またはフィードフォワード制御[注 9]による制御装置を追加するだけで済むため[注 10]、軽量かつ低コストである上に傾斜角度2度の場合でも基本速度+25km/h程度(261系気動車、R600m以上)の曲線通過速度向上が実現でき、費用に対し充分な効果がある。日本での営業車両としては、コストパフォーマンスを重視する私鉄や各JR旅客会社の在来線用新型特急車両などに採用されているほか、新幹線N700系E5系E6系にも採用されている。床面の左右移動はなく、垂直方向に発生する荷重変化も少ないため、乗り心地に違和感が無い。

ハイブリッド車体傾斜システム

ファイル:HybridTilt.png
傾斜の模式を線で表した図。線はすべて同じ長さである。下が水平状態、中が制御付き自然振り子式による傾斜だけのとき、上が空気ばねによる車体傾斜も用いたとき。

2006年3月に北海道旅客鉄道(JR北海道)が発表した[18]。鉄道総合技術研究所、川崎重工業との共同開発。制御付き自然振り子式と、空気ばねによる車体傾斜とを組み合わせた世界初の技術で、従来の振り子式を上回る8度(制御付き自然振り子式6度+空気ばねによる車体傾斜2度)の傾斜角を実現させるもの。単なる制御付き自然振り子式に比べ、乗り心地の向上も図られると言われるが、これは、振り子式による床面の左右移動量を空気ばねによる車体傾斜によってある程度抑えることができるためである(JR北海道のプレスリリースの図も参照)。

今後、試作台車をキハ283系気動車1両に取り付け、走行試験(札幌、函館近郊を予定)が2009年を目処に行われるが、車両限界の関係から、既存のキハ281系、キハ283系へ搭載しての実用化は難しいという[注 11]。なお、2015年度の北海道新幹線新青森 - 新函館間開業後に、函館 - 札幌間にこのシステムを搭載した車両を投入する予定とされている。実用化されれば、曲線を含む全線での140km/h運転が可能となり、函館 - 札幌間で約20分の短縮が見込まれるという。

実用化への工夫

車体傾斜システムを搭載した車両は、一般的に車体断面積が小さい。これは傾斜時に線路周辺の構造物と干渉しないよう、幅を狭める必要があるためである。他にも下記の通り電車における集電の問題や、気動車における駆動トルク反力の問題やプロペラシャフト継手の伸縮摺動性など、車体傾斜に伴う問題を克服する工夫をしている。

架線から取り込んだ電気によって回転する主電動機から発生した運動エネルギーにより走行する電車方式の振り子式車両は、そのままでは車体の傾斜によって架線に接触するパンタグラフの位置が変化する。これを防ぐためには、当該路線を走る電車がすべて振り子式車両であるとの前提で架線の位置を傾斜した車体でのパンタグラフの位置に最適化して架設するか、あるいは振り子式車両側で車体が傾斜してもパンタグラフの位置は変わらないようにする必要がある。車両側でパンタグラフの位置変化を防ぐためには車体の傾きに関わらずレールに近い台車枠と、パンタグラフとの位置関係を固定する必要があり、そのための機構が開発された。日本で実用化されている方式には、ワイヤー式と台車直結式がある[19]。ワイヤー式では傾斜する車体の外周部を迂回させたワイヤーで台車枠と可動式のパンタグラフ基部とを結び、台車直結式では傾斜する車体内部を貫通された支持枠が台車枠とパンタグラフ基部とを結ぶことで、それぞれ車体の傾斜に関係なく軌道面に対するパンタグラフの位置が固定されるようになっている。海外では台車直結式が多いが、スイスのICNなど一部ではパンタグラフを電動で能動傾斜させる方式も実用化されている[20]

また、ディーゼルエンジンの出力を変速の上で駆動に用いるディーゼル方式の振り子式車両でも、単純にディーゼルエンジンを持つ車両に振り子による車体の傾斜機構を加えただけでは、車体の長軸方向に走る推進軸の回転トルクによって車体の傾きが偏るという問題が生じる。これを避けるために、ディーゼルエンジンを2基備えて、推進軸の回転方向が互いに逆向きになるようにして、その相互の反作用によって偏向をキャンセルするといったことが行われる[21][22]。 また、通常の気動車に比べ遙かに大きな変位を吸収しなくてはならなくなる伝達系ジョイントは極めて大きな問題となる。

採用車両

ヨーロッパでは1940年代から開発が行われ、イタリアのフィアット社(鉄道部門はアルストム社に吸収)やスウェーデンアセア社(鉄道部門はABBアドトランツを経て現在はボンバルディア・トランスポーテーション社に吸収)が油圧シリンダーによる強制車体傾斜式を開発し、欧州各国に普及した。

車体傾斜が動作すると天井付近を回転軸にして床が動く日本の自然振り子とは異なり、床付近を軸に車体上部が振れるため、座っていると頭を持っていかれるような感覚がある。また車体を正面から見ると裾がすぼまっている(極端に言うと上辺が長い台形に見える)のが特徴的。

イタリア

山岳国ゆえ線形の悪い線区が多く、古くから車体傾斜式車両の開発に熱心だった国である[23]。1957年と1967年には車体傾斜式車両の試作車2種類が製作され、さらに1971年には、後のペンドリーノの原型となる試作車Y-0160がフィアット社により完成された[24]。1975年には、初めて営業投入されるETR401が完成した[25]

フィアットの元からの技術に加え、英国鉄道 (BR) が1970年代に開発したAPTの技術も購入して発展した。ペンドリーノの項目も参照。高速新線ディレッティシマ)の走行も考慮されているが、高速新線でない在来線でも、安価に高速化を実現できるため、イタリア以外にも多くの国(高速新線を建設するほどの需要や経済的余裕がない国)に輸出されている。現在はかつてAPTが試験走行した英国西海岸線にも導入されている。

ETR401電車
1975年に完成され、1976年に営業運転に供された、第一世代のペンドリーノ[25]。量産はされず、1編成の試作に留まったが、技術的には成功し、次のETR450の量産に繋がった[25]
ETR450電車
第二世代のペンドリーノで、初めての量産車となった[24]。現在は主力の座を後継車に渡している。直流専用で、最高速度250km/h。
ETR460電車
ETR450の成功を受けて登場した、第三世代のペンドリーノ。直流専用で、最高速度は250km/h。
ETR470電車
ETR460電車をベースに、スイス国鉄ドイツ連邦鉄道への直通を考慮した交直流電車(交流は15kV対応)。チザルピーノ社が保有・運営する。高速新線での走行を考慮していないため、最高速度は200km/h。
ETR480電車
ETR460電車をベースに、フランス国鉄への直通を考慮した交直流電車(交流は25kV対応)。最高速度は250km/h。
ETR600電車
ETR460の後継となる第四世代のペンドリーノ。下記の610とほぼ共通設計となる。中国へ輸出されたCRH5型電車のモデル。
ETR610電車
チザルピーノ社向けに投入予定の車体傾斜式電車"Cisalpino 2"。2008年12月より営業運転に投入された。

スペイン

スペインは当初イタリアに倣った車体傾斜式車両を開発していたが、1980年にタルゴ社が自然振り子式のタルゴ客車を開発して以降は長らく自然振り子式が主流となっていた。現在では強制車体傾斜式も増えている。

タルゴ・ペンデュラー (TALGO Pendular)
自国技術である低床・連接式客車タルゴのうち、開発され空気ばねによる自然振り子機能を備えた客車。軌間可変機能も備える。最高速度200km/h対応の"TALGO Pendular 200"もある。
タルゴ250(レンフェ130系)
最高速度250km/hの自然振り子式タルゴ客車。電気機関車2両と11両のタルゴ客車で一体の編成を組む。軌間可変機能も備える。
タルゴ250ハイブリッド(レンフェ730系)
タルゴ250をベースに、ディーゼル電源車を2両連結してタルゴ客車を9両へと減らし、非電化区間では電気式ディーゼル車として電化区間・非電化区間双方を走行出来るようにしたもの。最高速度は240km/h。
アラリス(Aralis・ETR490型電車)
イタリアのETR460型電車がベースだが、軌間は1668mmの広軌。主にマドリードバレンシアを結ぶ。
TRD(レンフェ594系気動車)
デンマークIC3をベースとする2両編成の気動車だが、2001年に製造された2次車は強制車体傾斜式となっている。この強制車体傾斜システムはCAF社が開発したSIBI[13]と呼ばれるもので、フィードバック制御に加えてフィードフォワード制御も可能としている。
R-598(レンフェ598系気動車)
CAF社が製造した3両編成の強制車体傾斜式気動車。TRDと同じくSIBIを搭載している。

スウェーデン

スウェーデン国内の鉄道は曲線が多いため、1970年代からスウェーデン国鉄とアセア社によって車体傾斜車両が開発されており[26]、国外へも輸出されている。実用化はペンドリーノより遅れ1989年となっている。

X2000(X2)
アセア社が開発したプッシュプル方式の車体傾斜車両[26]。機関車は車体傾斜せず、客車にのみ油圧式の車体傾斜台車を備えている[26]。高速新線を建設することなく、既存の在来線で200km/hを可能にした。最高運転速度は250km/hまで可能となっている[26]。各台車には自己操舵機能も備える[26]アメリカオーストラリア・中国で試用されたこともある。

ドイツ

ドイツは日本同様、車体傾斜式気動車を大量に採用しているが、当初はトラブル続きだった。

403型電車
1973年にインターシティ用として日本の新幹線の影響下で計画・設計された、動力分散による全電動車方式4両編成の高速電車。最高速度は200km/h。設計最大傾斜角4度、実用最大傾斜角2度の車体傾斜制御機構を備えるが、この機構は営業運転では使用されることなく終わったとされる。
ICE-T(411型・415型電車)
ICE3の車体傾斜版だが、最高速度は230km/h。411型は7両編成、415型は5両編成。イタリアのETR450とほぼ同一の車体傾斜台車としている。
ICE-TD(605型気動車)
車体傾斜式の電気式気動車。外見はICE-Tとほぼ同じだが、床下機器は大きく異なり、車体傾斜装置はシーメンスが製造した電気式強制車体傾斜としているほか、台車構造なども大きく異なる。トラブルが頻発し、一時は全編成が運用を離脱した。現在はベルリンハンブルクと、デンマークコペンハーゲンオーフスの間で運用されている。
610型・611型・612型気動車
快速・普通列車用の気動車。610型ニュルンベルク近郊の山岳路線向けに、イタリア本国に先駆けて第三世代ペンドリーノの油圧式車体傾斜台車技術を導入して開発され、1992年に営業運転を始めた。開発の経緯から、イタリア語由来である「ペンドリーノ」の愛称で呼ばれている。ドイツでは車体傾斜式車輌全般をペンドリーノと呼ぶことがあるが、ペンドリーノはフィアット社の登録商標である。一方、アドトランツ社が開発した611型と612型はアセア社の技術を元に電動式とした車体傾斜台車を備え、フィアット社とは無関係なため、この二車種をペンドリーノと呼ぶことは適切ではない。612型はレギオスウィンガーの愛称を持つ。612型の一部は、トラブルで運用を離脱したICE-TDに代わり、ニュルンベルク-ドレスデン間のインターシティにも運用された。

イギリス

APT (Advanced Passengers Train)
イギリス国鉄が、ウェスト・コースト本線の高速化を目指して投入した車体傾斜車両。ガスタービン動車のAPT-Eが1972年に試作された後、量産試作としてAPT-Pが1978年に製作された[27]。主に強制車体傾斜制御と流体ブレーキを中心にトラブルが頻発[注 12]し、1986年に廃車となった[27]
スーパーボイジャー(Super Voyagers・221型気動車)
ヴァージントレイン社が運営する、車体傾斜式電気式気動車。最高速度200km/h。
ペンドリーノ・ブリタニコ(Pendolino Britannico・クラス390電車
ヴァージントレイン社が運営する、車体傾斜式電車。最高速度225km/h。ペンドリーノの台車はイギリスの車両限界に収まらないため、スイスのICNをベースにした車体傾斜式台車を備える。

オーストラリア

東海岸のクイーンズランド鉄道 (QR) が1998年からノース・コースト線で、日本の技術を基にした振り子式車両を運行している。

Tilt Train(電車)
1998年11月から、ブリスベン-ロックハンプトン間で運行を開始。JR四国の8000系をベースにしている。コロ式5度振り子、営業最高速度160km/h。メーカーはEDI-Walkers、日立製作所と技術提携して製作。車体はステンレス製。電気品、一部台車部品、傾斜制御装置は日立製作所が供給した。パンタグラフ移動装置はWalkers独自開発のリンク式を採用している。
QR線上直線路において試験走行で210km/hの狭軌振り子電車速度記録を有する。
Tilt Train(機関車牽引)
2003年から、ブリスベン - ケアンズ間で運行を開始。週2回の運転で、1681kmを24時間55分かけて走る。上記振り子電車の台車を客車に履かせ編成両端のディーゼル電気機関車でけん引する。メーカーはEDI-Walkers。

アメリカ

UAC ターボトレイン
両端に電気式ガスタービン機関車を配し、その間に1軸連接台車を備える客車を連ねた高速列車。屋根近くからつり下げるようにして支持された車体を、特殊なリンク機構の作用により傾斜させる機構を備えていた。アメリカでは1968年より1976年まで、これとは別にカナダでも同型車が1968年から1982年まで、それぞれ営業運転に供された。最高速度160km/h。
アセラ・エクスプレス
アムトラックが運営する高速列車で、ボストン - ニューヨーク - フィラデルフィア - ワシントンD.C.を結ぶ。プッシュプル方式で、機関車部分はフランスのTGVの技術を導入し、客車部分はカナダのLRCをベースにボンバルディア・トランスポーテーション社が開発した。
カスケイズ (Cascades)
西海岸のユージン - シアトル - バンクーバーカナダ)を結ぶ列車。アムトラックが運営する。スペインのタルゴ客車を輸入し、運用している。

スイス

山岳国ではあるが、イタリアやスペインに比べて投入が遅れており、営業運転開始は最近になってからのことである。

ICNRABDe500型電車
"Intercity Neigezug"の愛称を持つ。イタリアのETR500のデザインで有名なピニンファリーナのデザイン。SIG社(鉄道部門はアルストム社に吸収)の開発したコンパクトな電動式強制車体傾斜の台車を備える。
TWINDEXX Swiss Express
2013年秋から営業予定の全車2階建電車。ボンバルディア社が開発したFLEXX Tronic WAKO[28]と呼ばれる最大傾斜角度2°の車体傾斜システムを搭載している。スイスには同社の開発拠点があり、FLEXX Tronic WAKOをベースに最大傾斜角度8°としたFLEXX Tronic WAKO 8も開発中である。

フランス

フランスは国土が比較的平坦であることと、高速化を高速新線 (TGV) の建設で対応してきたことから、試作にとどまっている。

TGV-Pendulare
車体傾斜式TGVの試作車。テスト終了後は車体傾斜機構を撤去し、従来の運用に復帰した。

日本

ファイル:CentralJapanRailwayCompanyType381-2.jpg
381系は日本最初の営業用の車体傾斜車両。自然振り子式。

日本での車体傾斜は、前述のとおり1961年の小田急電鉄と住友金属工業との共同研究による、空気バネ式自然振り子システムのFS30X型試験用連接台車の開発にはじまる[29]

その後1960年代、小田急電鉄と三菱電機が共同で台車左右の空気ばねの圧力差を利用した上記の空気ばねストローク式に相当する車体傾斜装置の実用化試験を行うが、当時は制御技術そのものが未熟で期待した性能が得られず、実用化は見送られた。これと同等のシステムは、小田急での実験から四半世紀以上が経過した1996年に製作されたJR北海道キハ201系気動車でようやく実用化された。

当時の国鉄も1968年にTリンク式自然振り子システムのTR96形台車を装着したトキ15000形貨車により試験を行うが、リンク部の摩擦抵抗による動作遅れや動作不良が確認された[29]。その後は1969年に、リンク式より確実に動作するコロ軸支持式の自然振り子式を採用した591系試験電車が試作され、そこで得られたデータを基に特急形車両381系電車が量産され、中央西線紀勢本線伯備線の順でそれぞれの電化とともに投入された。

民営化後は、JR四国が鉄道総合技術研究所とともに世界初の制御付き自然振り子式気動車を実用化し、普及に弾みをつけた。

速度向上は、半径600m(本則90km/h)の曲線を基準とした場合、制御付き自然振り子式で本則+25km/h - 35km/h、初期の自然振り子式及び車体傾斜式で本則+20km/h - +25km/h、低重心化のみの場合、本則+10km/h - +25km/h程度となっている。速度向上は曲率半径によって異なり、カント量や走行する線路の規格などの条件によっても変わる。また設計時の目標値以下で落ち着いた車両も存在する。

自然振子式

  • 国鉄
    591系試験電車
    1970年。前後非対称[注 13]アルミ製車体・最高速度130km/h・最大傾斜角6度で、国鉄電車としては珍しい複巻整流子電動機とサイリスタチョッパ制御器による発電ブレーキ機能・架線追従式パンタグラフ(2基のうち1基のみ)を搭載し、両端台車に移動心皿機構を、連接台車にリンクによる自己操舵装置をそれぞれ搭載した3車体4台車構成の連接車として誕生した。ところが、テスト中に連接台車の自己操舵装置を使用すると曲線通過時に両端台車の側圧が過大になるという問題がある事が判明し、1971年にメリットが薄くなった3車体連接車から自己操舵機構なしの20m級ボギー車2両編成へと改造された。東北本線への投入を前提として交流20,000V 50Hz/60Hz区間に対応する交直流電車としていたが、東北新幹線の建設が決まり、1971年から1973年にかけて電化と量産車(後の381系)の投入が決定された中央本線・信越本線篠ノ井線などでデータ収集のため試験を実施した。以後、電気式ガスタービン動車への改造などが検討されたが実現には至らず、岡谷駅構内など長野鉄道管理局管内を転々とした後、1980年3月26日付で除籍、その後長野工場で解体された。解体後、DT96形台車(元・連接台車)1台が大阪の交通科学博物館で保存展示されている。
    キハ391系気動車
    1972年。3両4台車の連接構造を持つガスタービンエンジン試験車。ガスタービンエンジンを搭載する中間車は車体傾斜機構を持たない通常の2軸ボギー車で、これに自然振り子機構付きの両端車体が特殊な連結器を介して乗りかかる、という特殊な構造を備える。投入予定のあった伯備線山陰線田沢湖線などを中心に試験が実施されたが、主にガスタービンエンジンの技術的な問題とオイルショックの影響による燃料費高騰などから量産化されず、最後に試験が実施された山陰地区の米子機関区(現 : 後藤総合車両所運用検修センター)構内で1987年2月10日まで長期休車とされた末に除籍された。現在はJR東日本大宮総合車両センターで非公開保存。
    381系電車
    1973年。国鉄時代から運用され続けている自然振り子式直流特急形電車。曲率半径400m以上で本則(曲線での通常の列車の制限速度)+20km/hでの運転が可能。ベースとなった591系と同じアルミ車体であるが、同系列での試験結果を反映し、また投入線区の線形[注 14]や車両製作コスト、それに変電所負担[注 15]を考慮して最高速度120km/h・最大傾斜角5度・自己操舵装置なしとなっている。
    591系の試験結果から、架線追従式パンタグラフは特に必要ないと判断され、パンタグラフを屋根に直接固定している。このため、集電舟の偏寄がやや大きく、振り子使用区間では架線の張り方を変えて対処した[注 16]
    JR東海では定期運用が消滅したが、JR西日本では「やくも」・「くろしお」・「こうのとり」・「きのさき」で使用されている。

制御付き自然振子式

  • JR四国
    2000系気動車
    ファイル:JR Shikoku 2000(N2000) Series ”Uzushio”Ltd Exp..JPG
    130km/h運転対応の改良型2000系(N2000系)。高松にて
    1989年に製作された3両編成の試作車「TSE」を皮切りに、1990年以降、量産が開始された。JR四国はもちろん、世界初の制御付き振り子式気動車であると同時に、その後の日本国内における制御付き振り子式気動車の基本構成を確立した。なお、量産車には同一スペックで土佐くろしお鉄道が所有する車両も存在する。
    傾斜機構はコロ式を採用し、最大傾斜角は5度。島内各ディーゼル特急で使用。試作車「TSE」及び量産車の最高速度は120km/hだが、一部区間では130km/h運転が可能な改良型(N2000系)も投入されている。なお、宇野線本四備讃線では振り子装置を使用しない。
    JR四国の主力車両で、予讃線の「しおかぜ」「いしづち」「宇和海」、土讃線の「南風」「しまんと」「あしずり」、高徳線の「うずしお」で使用。
    8000系電車
    1992年。予讃線電化に伴い特急「しおかぜ」「いしづち」の大半に充当されている。最大傾斜角は2000系気動車と同じ5度だが、最高速度は130km/hに引き上げられ、試作車は在来線で160km/hからのレールブレーキの性能試験にも使われた。傾斜機構は試作車がベアリングガイド方式を、量産車がコロ式を採用している。車体傾斜時には、パンタグラフと台車を直結するワイヤにより、パンタグラフの位置調整を行う[19]。2000系気動車と同様、宇野線・本四備讃線では振り子装置を使用しない。
  • JR北海道
    キハ281系気動車
    1992年。1994年から特急「スーパー北斗」として使用されている。着雪と低温対策を盛り込み、傾斜機構にベアリングガイド方式を量産車として初採用した[注 17]。最高速度130km/h、最大傾斜角5度。鉄道総合技術研究所とともに開発。運転全区間にわたって振り子効果を発揮し、表定速度は最高で106.2km/hとなっている[注 18]
    キハ283系気動車
    1995年。ベースとなったキハ281系気動車からエンジンの出力を増大し、5段変速機や自己操舵台車を装備し、最大傾斜角も6度まで拡大した。これによって曲率半径600mで本則+30km/hの営業運転を行っているが、設計上は本則+40km/hも可能とされている。当初は特急「スーパーおおぞら」に投入され、1998年からは「スーパー北斗」、2000年には「スーパーとかち」にも使用されるようになった。
  • JR東日本
    E351系電車
    1993年。特急「スーパーあずさ」として使用。制御付き振り子列車最長の12両編成で運転される。パンタグラフは台車直結の支持台に載せる方式が考案され、後に883系885系でも採用された[19]。最初に製作された2編成は1996年に量産化改造が施され、1000番台を名乗っている。
  • 智頭急行
    HOT7000系気動車
    1994年。JR四国の2000系気動車をベースに設計された。京阪神鳥取を短絡する特急「スーパーはくと」に使われ、従来より大幅なスピードアップを果たした。
  • JR東海
    383系電車
    1994年。381系電車の後継として開発。曲率半径600mで本則+35km/hの125km/hの運転を可能としたほか、381系で長期試験が実施されていた自己操舵台車が本格採用され、軌道保守負担の大幅な軽減に貢献した。特急「ワイドビューしなの」に使用されている。
  • JR九州
    883系電車
    1994年。同社初(営業用交流電車としては日本初)の制御付き振り子車両で、本則+30km/hの運転が可能。インテリア・エクステリアともに独特のデザインが特徴。パンタグラフを台車直結の支持台に載せている。特急「ソニック」に使用。
    885系電車
    1999年。当初は特急「かもめ」に投入され、2001年からは特急「ソニック」にも運用されている。運用される列車は「白い○○」と呼称される。
  • JR西日本
    283系電車
    1996年。紀勢本線(きのくに線)特急「くろしお」系統の更なる速達化のため、JR西日本が自社では最初に開発。本則+30km/hの運転が可能。同時期に誕生したJR東海の383系電車などとは異なり、自己操舵台車は装備しない。
    キハ187系気動車
    2001年。山陰地区内のローカル特急用に開発。JR四国の2000系を基礎とする一連の制御付き振り子式気動車の1つであるが、制御系の設計は電車と気動車で共通化されたJR西日本標準のものに変更されている。特急「スーパーおき」・「スーパーくにびき→スーパーまつかぜ[注 19]に投入され、2003年からは岡山と鳥取を短絡する特急「スーパーいなば」にも使われている。なお、山口線内では振り子装置を使用しない。

強制車体傾斜式

  • JR東日本
    E991系電車
    1995年。在来線の速度向上試験車両「TRY-Z」として開発された。3両編成で前後非対称の交直流電車。最高速度160km/h(設計最高速度は200km/h)、曲線で本則+45km/hを目指して1995年から中央線・常磐線でテストされていた。試験終了後の1999年3月27日に廃車。強制傾斜式を採用することで振子中心位置を自然振子式よりも低くして、輪重変動を抑制することを主な目的としていた[30]

空気ばねによる車体傾斜

下記のほか、開発中のフリーゲージトレインへの搭載が検討されている。搭載するシステムの種類などは不明。

  • JR北海道
    キハ201系気動車
    1996年。札幌近郊の快速普通列車で使用されている。JR北海道では初の空気ばねによる車体傾斜車両。下記の261系気動車のパイロットモデルとしての役割も兼ね、大馬力機関を2基搭載し、同社731系電車との協調運転機能を持つ。最大傾斜角は2度。
    キハ261系気動車
    1999年。ベースとなったキハ201系と同様、車体傾斜制御装置により空気バネの伸縮を制御する強制車体傾斜式として設計された。「スーパー宗谷」と「スーパーとかち」で使用。常用最大傾斜角2度、設計最大傾斜角3度。当初の計画にあった特急電車との協調運転は行わないこととなった。また、宗谷本線名寄駅 - 稚内駅間では車体傾斜装置を使用しない。
  • JR東日本
    E353系電車
    2015年夏以降に量産先行車が落成予定。導入から20年経過し老朽化したE351系を置き換える。「空気ばね高さ制御」車体傾斜方式(最大傾斜角は未公表)と「アルミニウム合金製」車体を採用し、「コロ式制御付振り子」方式で「鋼製」のE351系と同等の走行性能を実現するとしている[31]
  • JR四国
    8600系電車
    ファイル:JR-Shikoku 8600 Series Test Run.JPG
    坂出~多度津間で試運転中の8600系(マツE11編成)。2014年5月24日 坂出にて
    2014年6月23日に営業運転開始。予讃線で混在する電車特急(8000系電車)と気動車特急(2000系気動車)の老朽化と電車特急統一を兼ねて、老朽化した2000系を置き換える。この2つの車両ではコロ式制御付振り子式を採用していたが、8600系では省メンテナンス化と到達時分確保を両立するために空気バネ車体傾斜方式を採用し、従来通り130km/h運転を可能にする[32]。最大傾斜角2度。
  • 名古屋鉄道
    1600系電車
    1999年。主に西尾線系統の特急として運用され、第1編成のみ車体傾斜装置を搭載したが、営業運転では車体傾斜装置は使用せず、試験目的での使用にとどまった。2008年に1700系に改造された際に装置は撤去されたが、試験の成果は下記の2000系電車に生かされた。
    2000系電車
    2004年中部国際空港連絡特急用。「ミュースカイ」の愛称を持つ。最大傾斜角2度。
  • 小田急電鉄
    50000形電車
    2005年に製造。小田急特急ロマンスカー。「VSE」の愛称が与えられている。国内の連接車両では初採用。各台車の枕ばねに用いられている空気ばねの自動高さ調整弁 (LV : Leveling Valve) に車高制御装置を付加することで空気ばねによる車体傾斜を実現している。最大傾斜角は枕ばね位置を高く設計された連接台車が2度で編成両端のボギー台車が1.8度。車体傾斜によって速度向上は行わず、専ら乗り心地の向上に役立てている。
  • 新幹線
    N700系電車(Z・N編成)
    955形 (300X) での試験結果を基に、JR東海・JR西日本が新幹線初の車体傾斜機構搭載車両として開発。東海道新幹線の255km/h制限があるカーブを減速せずに270km/hで通過できる。2005年3月に試作車が登場し、2007年7月1日から営業運転を開始した。最大傾斜角1度。
    E5系電車
    JR東日本が、東北新幹線の320km/hでの営業運転用に開発した車両。E954形(FASTECH 360 : 最大傾斜角2度)での試験結果を反映して設計され、2011年から営業運転を開始した。最大傾斜角1.5度。
    E6系電車
    JR東日本がミニ新幹線列車の320km/hでの営業運転用に開発した車両。E5系と同様、E955形(FASTECH 360 Z : 最大傾斜角2度)での試験結果を基に設計され、ミニ新幹線では初めて車体傾斜機構を搭載する。2013年から営業運転を開始した。最大傾斜角1.5度。

その他

  • ポルトガル
    アルファ・ペンドゥラール (Alfa Pendular)
    イタリアのETR460型電車がベースだが、軌間は1668mmの広軌で、交流専用 (25kV)。リスボンポルトを結ぶ。
  • スロベニア
    ICS(Intercity Slovenija・310型電車)
    イタリアのETR460がベース。
  • チェコ
    Integral(680型電車)
    イタリアのETR460がベース。SC (SuperCity) として運用される。
  • フィンランド
    S220(VRSm3電車)
    イタリアのETR460がベースだが、軌間が1524mmの広軌を採用している。車体傾斜機構は使われていない。
  • ノルウェー
    シグナチュール(BM73型電車)
    オスロと、ノルウェー国内の主要都市を結ぶ。日本のかつての電車特急(ボンネット形)にも類似したデザイン。スウェーデンのX2000をベースとしている。
  • クロアチア
    ICN (InterCity Nagibni)
    ドイツの612型気動車 (RegioSwinger) と同一仕様で、ザグレブスプリトを結ぶ。
  • カナダ
    LRC (Light Rapid Comfortable)
    1970年代に製造された強制車体傾斜式列車。現在は客車のみが一般の機関車に牽引される形で運用されており、車体傾斜式車両としての運用は終了している模様。アメリカでも運用されたことがある。
  • 台湾
    TEMU1000形太魯閣号
    2007年5月東部幹線に投入した。JR九州885系をベースにした日立製作所製。
    TEMU2000形普悠瑪号
    2013年2月東部幹線に投入した。N700系などで実績のある車体傾斜装置を採用。日本車輛製造製。
  • 韓国
    TTX (Tilting Train eXpress)
    KTXの恩恵が及ばない地域との時間短縮を行うべく、メーカーと研究所が共同開発を行っている車両。電車方式で、最高速度200km/hを目指し、車体は軽量化のため、航空機で採用されているような複合材料(コンポジット材料)を採用している。既に試作車"Hanbit 200"が登場し、各種試験を実施している。傾斜角度は約8度。
  • 中国
    新時速(シンシースー)
    スウェーデンのX2000を輸入している。

脚注

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注釈

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出典

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参考文献

関連項目

  • テンプレート:Cite book
  • 『鉄道のテクノロジー』Vol.4、p.27
  • 『世界の高速鉄道』、p.287
  • 風戸2011、p.15
  • 風戸2011、p.3
  • 『電車基礎講座』、p.150
  • 7.0 7.1 『新世代鉄道の技術』、p.137
  • 風戸2011、p.16
  • 『鉄道車両のダイナミクス』、p.60
  • 10.0 10.1 『新世代鉄道の技術』、p.138
  • 11.0 11.1 テンプレート:Cite journal ja-jp
  • 12.0 12.1 12.2 風戸2011、p.19
  • 13.0 13.1 SIBI ACTIVE TILT SYSTEM』、CAF
  • テンプレート:PDFlink』、Alstom
  • 『プロが教える電車のメカニズム』、p.143
  • 『鉄道のテクノロジー』Vol.4、p.37
  • 『鉄道のテクノロジー』Vol.4、p.40
  • テンプレート:Cite press release
  • 19.0 19.1 19.2 『電車基礎講座』、p.156
  • 『電車基礎講座』、p.157
  • 『新世代鉄道の技術』、pp.140-141
  • 『鉄道ジャーナル』 No.328、pp.50-51
  • 『電車基礎講座』、p.152
  • 24.0 24.1 『世界の高速鉄道』、p.291
  • 25.0 25.1 25.2 『世界の高速鉄道』、p.292
  • 26.0 26.1 26.2 26.3 26.4 『世界の高速鉄道』、p.297
  • 27.0 27.1 『世界の高速鉄道』、p.294
  • FLEXX Tronic WAKO』、BOMBARIDIER
  • 29.0 29.1 『鉄道のテクノロジー』Vol.4、pp.28-29
  • 風戸2011、p.20
  • テンプレート:PDFlink、JR東日本
  • 特急形直流電車の新製について、JR四国 2013年11月25日

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