名鉄1600系電車
1600系電車(1600けいでんしゃ)は、かつて名古屋鉄道で運転されていた特急形車両である。1000系と同様に「パノラマsuper」の車両愛称を持っていたが、その車体構造は1000系とは大きく異なっていた。
2008年に3両編成のうち2両は改造され、2200系一般車と同型の2330系を組み合わせて、一部特別車固定編成として1700 - 2330系の6両組成とされ、同年12月26日より営業運転を開始した。 テンプレート:Main2
概要
特急指定席車の一部に使用されていた7000系白帯車の置き換えを目的として1999年(平成11年)に登場した。塗装は白をベースに赤いラインが入ったものであった。先頭車の前面下部には1000系・1200系と同様に「パノラマSuper」の愛称ロゴが表記されている。灯具類は1000系と同様の3連式だが形状が異なり、さらに横長のLED標識灯(尾灯)がスカートの付け根付近に備わった。
先頭部は貫通式となっており、自動幌連結装置を設置したことで2本の編成を連結して6両編成で運転する場合でも車両間の自由な行き来が可能とする予定であったが、運行開始当初は先頭車前位のオーバーハングが大きく、国府駅構内の分岐器を通過する際に破損する欠陥が試運転で発覚したためしばらく使用されていなかった。その後2005年夏の臨時ダイヤ(空港線輸送力増強)を控えて自動幌連結装置の改良が施され、営業運転でも使用されるようになった。名鉄の電車としては、先頭部が貫通式となるのは200系以来5年ぶりとなる。また1000系の先頭車の一部を貫通式に改造しての運行も計画されていたがこちらも中止となった。
車体傾斜システム装備を前提として車体幅を2,700mmに抑え、さらに側構の内傾角度と裾の絞りを大きくした。裾の台枠部分のみは垂直としている。1000系と同じく先頭車の全長は20m級であるが、台車中心間を短くオーバーハングを長く取ったことから吉良吉田駅にも入線可能であった。
屋根の高さは3100系以降の限界拡張に基づいて1000系より65mm高くなっている。この車体断面形状は2000系・2200系などにも受け継がれた[1]。また、連続型の側窓が本系列から復活したことや、特別車として両開き扉を初採用した[2]ことも、特徴として挙げられる。側窓の天地寸法は850mm、窓框高さは715mm、床面高さは1140mmである。冷房装置は集約分散式で能力は1000系と同じ15,000kcal/h×2(型式 RPU-6015)のロスナイ併用だが、室外機カバーは連続形となった。SIVは3両分を賄うため本系列固有の100kVAのものをモ1700に搭載する。
電動車を3両編成中1両のみとする[3]ため、3500系・3700系・3100系よりもモーター出力を向上させたが[4]、雨天時などに車輪が空転しやすいという問題も浮き彫りにした。
本系列の開発の段階では、中部国際空港への旅客輸送と当時有料特急の昼間の輸送力の適正化も考慮され、従来の1000系より1両少ない3両編成となった。4本(計12両)が1製造年次で投入された。自動放送については当初、英語放送の声優が男性であったが、2004年から2000・2200系と同様の英語放送(声優が女性のもの)に変更された。なお、本系列により有料特急に7000系が不要となったことによって有料の列車がすべて専用の設備を持つ車両になり、同年のダイヤ改正をもって「指定席車」は「特別車」に改称されたため、本系列は最初から「特別車」として運行されている。
後の車両へ反映すべく、空気ばねを伸縮させる車体傾斜システムを1601Fに導入して試験を行った。その成果が反映されたのが2000系である。
名鉄の車両で初めてユニバーサルデザイン対応の洋式トイレを設置した。
前面種別・行先表示器の種別色は、当初1200系や1000系の英字併記字幕などと異なり白だったが、空港線開業に伴い特急が赤、快速特急が白に変更された。臨時に急行や準急、普通に使用される際は種別のみ表示され、行先は表示されない。また前面前面種別・行先表示器自体も30コマしか設定されていないため、特急または快速特急でも表示できない行先を設定すると前面は種別のみの表示となる[5]。
2008年12月27日に実施されたダイヤ改正での列車種別の見直しに先立ち、余剰となるク1600形の4編成4本は廃車の方針が取られ、その走行機器と、新製された2200系一般車同様の車体を組合わせて、2330系を新造し、それ以外のモ1700形・サ1650形は、改番されずに1700系に改造され、両者を組み合わせて6両組成となった。
1600系として運用されていた時代の名鉄内での運用上の略号は「M3」で、1700系への改造後は新たに共通運用が組まれることとなった2200系とともに「C2」と称されている。
運用
初期の計画では、本系列も3500系などと編成を組み、一部特別車の急行で用いる予定であったが、後に2200系を使用する一部特別車特急の運行に変更されたため、中部国際空港開港以後空港線への入線は繁忙期やトラブル発生時に限られていた。
2005年は、4月8日に3両で名鉄岐阜 - 中部国際空港間を運行し、大型連休(4月27日 - 5月8日)・旧盆・年末年始には6両で新鵜沼 - 中部国際空港間で快速特急として運用されていた。2006年度以降は2000系が増備されたため、空港特急での使用はなくなった。
2005年以降は主として名鉄名古屋 - 西尾間で運転されていたが、朝夕には津島線を経由して尾西線佐屋まで、また西尾線の終点吉良吉田まで運転されていた。就役から同年1月29日のダイヤ改正までは前記の目的により上記のほかに犬山線・常滑線・河和線・知多新線で乗客の少ない日中時間帯の特急や朝夕に運転された広見線新可児 - 名古屋本線神宮前間の特急や、常滑線常滑駅発着の特急にも用いられ、また同年初めまでは豊川線にも入線し、正月の豊川稲荷発着の臨時特急や新鵜沼(岐阜基地航空祭開催時は三柿野)発の定期特急(平日の上り1本のみ)で運用された。蒲郡線での定期運用はなかった(1日1往復の定期特急は8800系で運転されていた)が、2005年1月の改正直前に8800系の代走として入線したことがある。
2008年2月10日に運転された団体臨時列車「名城大学鉄道研究会35周年記念号」は、1601編成を使用して名鉄岐阜 - 須ヶ口間を各務原線・犬山線経由で運転したため、各務原線では久々に本系列が入線した[6]。
同年6月29日のダイヤ改正で西尾線の特急は1往復を除き快速急行に格下げされた[7]ため、1600系としての定期運用は終了した。
主要諸元
- 起動加速度:2.0km/h/s
- 減速度:3.5km/h/s(常用)/4.2km/h/s(非常)
- 営業最高速度:120km/h(130km/h準備)
- 設計最高速度:145km/h
- 平坦均衡速度:130km/h
- 主電動機:かご形三相誘導電動機、東洋電機TDK6381-A(200kW・1,100V・130A・2,957rpm)
- 歯車比:6.07
- 制御装置:VVVFインバータ制御(IGBT素子)1C1M個別制御×4群
- 定員:152名
編成
<tr><td colspan="3">←豊橋・吉良吉田</td><td></td></td></td></td><td colspan="3" align="right">名鉄岐阜・名鉄名古屋→</td></tr> <tr><td>ク1600 (Tc) </td><td>-</td><td>サ1650 (T) </td><td>-</td><td>モ1700 (Mc) </td></tr> </table>
脚注
テンプレート:名古屋鉄道の車両- ↑ この結果、1700系に改造され2300系と組成するようになっても違和感なくまとまっている。
- ↑ 4年前に登場したJR東海373系電車も両開き扉である。名鉄の場合は1000系のような折り戸をこれ以上採用したくなかったことが背景にある。
- ↑ これも先にJR東海373系で採用された構成である。
- ↑ モーター出力200kWは名鉄歴代において最大であるほか、他事業者の狭軌用電車でも例は多くなく東京メトロ(205kW - 225kW)やJR西日本(200kW - 270kW)程度である。
- ↑ 側面種別・行先表示器の行先は表示される。
- ↑ 以前は航空祭の臨時延長のほかに三柿野発国府行の全車特別車特急として2005年まで各務原線に平日の朝に1本だけ入線していた。途中の犬山駅で新可児発の列車を名古屋寄りに増結して6両になる運用であった。その後は2000系によるミュースカイが運転されている。
- ↑ 特急で存置された1往復も1000 - 1200系使用の一部特別車に変更された。同年12月28日のダイヤ改正以降は快速急行の設定もなくなり、急行として運行。