本四備讃線
本四備讃線(ほんしびさんせん)は、岡山県倉敷市の茶屋町駅から瀬戸大橋を渡り、香川県綾歌郡宇多津町の宇多津駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)・四国旅客鉄道(JR四国)の鉄道路線(幹線)である。
概要
1988年に開通した6つの橋梁からなる瀬戸大橋を渡り本州と四国を結ぶ。瀬戸大橋は道路(瀬戸中央自動車道)との併用橋となっており、本四備讃線は道路の下部を通る。アプローチ区間は本州側が高架とトンネル、四国側が高架線となっている。
宇野線・予讃線の一部を合わせた岡山駅 - 高松駅間に「瀬戸大橋線」の愛称がつけられている[1]。交通新聞社発行の『JR時刻表』をはじめとする旅客向けの案内においても「瀬戸大橋線」と記されることが多く、「本四備讃線」という表現はほとんど使用されていない。
瀬戸大橋橋上の鉄道施設は日本高速道路保有・債務返済機構が所有しているが、鉄道事業法第59条の規定で同機構は第三種鉄道事業者として認定されておらず、JR四国が第一種鉄道事業者となる。
JR西日本が保有する区間は岡山支社の直轄である。なお、同支社管内で独自に設定されているラインカラーは、宇野線と共通の青(テンプレート:Color)である。JR四国が保有する区間はラインカラーを設定しておらず、路線図[2]などでは当該区間も含めた本四備讃線全線をJR西日本のコーポレートカラーで表現しているものや、予讃線と同一の表現も存在する[3]。
茶屋町駅 - 児島駅間はIC乗車カード「ICOCA」の岡山・広島エリアのうち、岡山・福山地区に含まれている[4]。また児島駅 - 宇多津駅間には、1996年1月10日から加算運賃100円が設定され、道路との共用部の維持費として支払われる「本四利用料」や軌道の維持費などの一部に充当されている[5]。
路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):全長31.0km
- 軌間:1067mm
- 駅数:6(起終点駅含む)
- JR西日本:5
- JR四国:1(児島駅除く)
- 本四備讃線所属駅に限定した場合、宇野線所属の茶屋町駅と予讃線所属の宇多津駅[6]が除外され、4駅となる(これらはすべてJR西日本所属。JR四国としての本四備讃線所属駅はない)。
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 最高速度:
- 茶屋町駅 - 児島駅間 130km/h
- 児島駅 - 宇多津駅間 120km/h
- 運転指令所:
- 茶屋町駅 - 児島駅間 岡山輸送指令所
- 児島駅 - 宇多津駅間 高松指令所
沿線概況
|} 宇野線との分岐駅である茶屋町駅は本四備讃線専用のホームがなく、茶屋町駅を発車するとしばらく宇野線と同じ線路上を走行し、宇野線が右に分かれていく。左にカーブしてもなお宇野線は本四備讃線の高架下を走行し、右にカーブすると左手には引き続き直進していく宇野線が見える。その先で植松駅を過ぎると、すぐに蟻峰山トンネル・福南山トンネル・児島トンネルと立て続けに通過し、トンネル間に木見駅・上の町駅が設けられている。児島トンネルを出ると瀬戸内海が見え、繊維(アパレル)産業で栄えている児島駅に到着し、JR西日本の区間が終わる。
児島駅を出ると、JR四国の区間に入り、鷲羽山の山麓を進み、瀬戸中央自動車道の交点付近で神道山トンネル・鷲羽山トンネルを通過し、瀬戸大橋を渡り始める。新道山トンネルでは複線でトンネルに入るが、トンネルの途中から鷲羽山トンネルに接続して上下線で分かれて、鷲羽山トンネルおよび瀬戸大橋では上り線が四国横断新幹線用の下り線を、下り線が在来線用の上り線を使用している。そのため、瀬戸大橋は在来線と新幹線を合わせて4線敷設できるように考慮されているが、現在は中央の2線しか線路が敷設されていない。櫃石島 - 与島間は人家に近いことから、これらの区間を通過する際は騒音を抑えるよう速度を落として運転している。
JR四国では、一部区間をのぞき風速が30m/s以上になると列車の運転を見合わせるとしているが、海上を走行することから、瀬戸大橋上での風速規制値は25m/s以上と厳しくしている。瀬戸大橋に設置されている風速計は信号機と連動しており、風速規制値を超えると自動的に停止信号を現示し、風が弱まるまで列車を一時安全な場所に停車させる。また、閉塞信号機の配置によって、橋上に3列車以上(同じ橋の同じ線路に列車があること)運転しないようになっている。
吊り橋の荷重制限から一列車の重量は最大1400tまで、1橋には同時に2列車までという運転上の制限があることから、閉塞信号機はすべて陸地にあたる高架橋部に設置されている。また、列車火災に備えて櫃石島と与島の高架橋部には消火設備と避難通路が備えられている。
四国に入ると工業地帯を通過し、瀬戸中央自動車道と分かれて右にカーブし、快速「マリンライナー」など坂出駅へと向かう連絡線が左へ分岐するが、特急「しおかぜ」や普通などは直進し、宇多津駅に到着する。
全線を通してほとんどが橋梁・高架およびトンネルで地平を走行する区間はなく、踏切は1か所も設けられていない。
- Seto-Ohashi Line 001.JPG
瀬戸大橋の鉄道部
- Great Seto Bridge-Rikujyo01.jpg
四国側の鉄道と道路の合流点付近
運行形態
2009年3月現在、本四備讃線のみを走る列車は1本もなく、ほぼすべての列車が岡山駅から直通している。
旅客列車
本四連絡列車として以下の列車が運行されている(定期列車のみ掲げる)。
- 特急「しおかぜ」:岡山駅 - 伊予西条駅・松山駅・宇和島駅間
- 特急「南風」:岡山駅 - 高知駅・中村駅・宿毛駅間
- 特急「うずしお」:岡山駅 - 徳島駅間
- 寝台特急「サンライズ瀬戸」:東京駅 - 高松駅間
- 快速「マリンライナー」:岡山駅 - 高松駅間
- 普通:岡山駅 - 観音寺駅・琴平駅間
本四備讃線の終点は宇多津駅だが、高松方面と直通する快速「マリンライナー」や寝台特急「サンライズ瀬戸」は、宇多津駅構内にある短絡線(通過線)を通って坂出駅方面と行き来するため宇多津駅のホームは経由しない。ただし、特急「うずしお」は岡山駅 - 宇多津駅間で特急「南風」と併結運転するため、宇多津駅に停車する。運賃はいずれの場合も宇多津経由で計算される。
このほか、岡山駅 - 児島駅間の普通も運転されている。
- JR Shikoku 5000 Marine-liner.jpg
快速「マリンライナー」
- 285 seto.jpg
本四備讃線を走行する「サンライズ瀬戸」(2009年5月3日 茶屋町駅)
貨物列車
歴史
テンプレート:Main2 児島駅前で瀬戸大橋開通に先立ち、1988年3月20日 - 8月31日に開催された「瀬戸大橋架橋記念博覧会」(瀬戸大橋博'88・岡山)の観客輸送のため、同駅以北を先行開業している。
- 1988年(昭和63年)3月20日:茶屋町駅 - 児島駅間暫定開業(西日本旅客鉄道・第一種鉄道事業)。
- 1988年(昭和63年)4月10日:児島駅 - 宇多津駅間と坂出駅への短絡線が開業(四国旅客鉄道・第一種鉄道事業)。日本貨物鉄道が全線の第二種鉄道事業者となる。与島にて瀬戸大橋開通式を開催。
- 2007年(平成19年)9月1日:茶屋町駅 - 児島駅間が「ICOCA」の利用エリアになる[7][8]。
駅一覧
会社 | 駅名 | 駅間営業キロ | 累計営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
西日本 旅客鉄道 |
茶屋町駅 | - | 0.0 | 西日本旅客鉄道:宇野線 | 岡山県 | 倉敷市 |
植松駅 | 2.9 | 2.9 | 岡山市南区 | |||
木見駅 | 2.7 | 5.6 | 倉敷市 | |||
上の町駅 | 4.1 | 9.7 | ||||
児島駅 | 3.2 | 12.9 | ||||
四国 旅客鉄道 | ||||||
(この間で瀬戸大橋を通過する) | ||||||
宇多津駅 | 18.1 | 31.0 | 四国旅客鉄道:予讃線 | 香川県綾歌郡 宇多津町 |
茶屋町駅と児島駅はJR西日本の直営駅、宇多津駅はJR四国の直営駅である。植松駅・木見駅・上の町駅の3駅は無人駅となっている。茶屋町駅・植松駅・木見駅・上の町駅の4駅は児島駅が管理している。
脚注
関連項目
テンプレート:西日本旅客鉄道岡山支社 テンプレート:四国旅客鉄道
テンプレート:瀬戸大橋- ↑ 鉄道事業ダイジェスト - 西日本旅客鉄道
- ↑ テンプレート:PDFlink - 四国旅客鉄道(2011年3月4日閲覧)
- ↑ [JR四国]ダイヤ改正 - 四国旅客鉄道
- ↑ ご利用可能エリア 岡山・広島エリア|ICOCA|ICOCA:JRおでかけネット - 西日本旅客鉄道
- ↑ 瀬戸大橋線における加算運賃の状況について - 四国旅客鉄道(2011年9月24日閲覧)
- ↑ 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』JTB、1998年。ISBN 978-4-533-02980-6。
- ↑ 岡山・広島エリアに「ICOCA」デビュー!(インターネット・アーカイブ)- 西日本旅客鉄道プレスリリース 2007年8月8日
- ↑ 岡山・広島エリアへICカード乗車券「ICOCA」を導入します(インターネット・アーカイブ) - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2006年5月24日