JR北海道キハ281系気動車
テンプレート:鉄道車両 キハ281系気動車(キハ281けいきどうしゃ)[1]は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が1992年(平成4年)から導入、1994年(平成6年)から営業運転を開始した特急形気動車である。
目次
概要
1991年から着手された函館駅 - 札幌駅間の高速化事業にあわせてJR北海道が開発した特急形振子式気動車である。先行して四国旅客鉄道(JR四国)が1989年から導入していた2000系気動車の仕様を基に設計され、試作車として1992年1月に先頭車2両、同年10月に中間車1両が製造され長期試験に供された。1993年から富士重工業と日本車輌製造で量産に移行し、1994年3月1日のダイヤ改正から特急「スーパー北斗」として営業運転を開始した。
日本国内の在来線気動車において、最高速度130km/hでの営業運転を初めて行った系列である。曲線通過速度は本則 + 30km/hで、函館 - 札幌間の最短所要時間は従来のキハ183系気動車による特急「北斗」の3時間29分から2時間59分へと大幅に短縮された。最速達列車の表定速度は日本の在来線列車で最も高い[2]。
なお、その後のJR北海道における振り子式気動車の増備は、改良型であるキハ283系気動車に移行したため、本系列の製造は27両で終了した。
1994年に通商産業省グッドデザイン商品(現・日本デザイン振興会グッドデザイン賞)選定、1995年に鉄道友の会ローレル賞を受賞した。 テンプレート:-
構造
車体
JR四国2000系気動車の構造を踏襲した軽量ステンレス製で、前頭部のみ普通鋼製である。客用扉は気密性の高いプラグドアとされている。外部配色は前頭部と客用扉周囲をコバルトブルー(噴火湾をイメージしている)、ステンレス地の無塗装部分との境界を萌黄色(ライトグリーン)とし、側窓周囲は窓柱を黒くした連続窓風のデザインである。
前頭部は高運転台構造で、波動輸送対応で増結しやすいよう貫通路付とされた。高運転台は重心位置の点で振子車両には不向きとされるが、見通しの向上と踏切事故時の運転士保護のため採用したもので、JR北海道が本系列以降に開発した特急形車両は、全てこの前頭形状を採用している。先頭車の出入台は前頭部貫通路に接続しており、貫通扉には作業時の前方監視用にワイパー付の扉窓を設けている。かつては貫通路と出入台との間は開放されており、乗客が前面展望を楽しむことも可能であった[3]。運転台には721系電車・785系電車と同様、左手操作式のワンハンドルマスコンとモニタ装置を装備する。
前頭部側面には車両形式名と振子機能をイメージした「FURICO 281」のロゴマークとリサージュ図形が配されている。なお、前頭部側面のロゴマークは、以下の変更を経ている。
- HEAT 281 - Hokkaido Experimental Advanced Train
- 1992年 - 1994年。試作車落成時から営業運転開始まで。
- HEAT 281 - Hokkaido Express Advanced Train
- 1994年 - 2002年。営業運転開始時にロゴデザインと共に変更された。
- FURICO 281
走行機関
テンプレート:Double image stack コマツ製の直列6気筒ディーゼルエンジンN-DMF11HZA形(355ps/2100rpm)を各車に2台装備し、液体変速機は直結3段式のN-DW15形を使用している。
台車
台車はヨーダンパ付ボルスタレス式のN-DT281A形で、制御付自然振子機構を装備し、重心を下げるため車輪径を810mmに小径化している。振子機構は、キハ281形試作車では381系電車や2000系気動車で実績のある「コロ式」を用いたが、耐寒耐雪能力向上のため、後に製作されたキハ280形試作車ではJR四国8000系電車試作車に用いられた「曲線ベアリングガイド式」を採用し、この方式で量産された。振子作用時の車体最大傾斜角は 5度で、曲線通過速度は本則 + 30km/hに向上した。
ブレーキ装置
電気指令式空気ブレーキで、制動距離の短縮のために機関ブレーキ・排気ブレーキを併用している。基礎ブレーキ装置は踏面ブレーキ方式で、制輪子はJR北海道苗穂工場製の特殊鋳鉄制輪子を使用しており、凍結した線路上でも最高速度から600m以内での停止が可能である。 テンプレート:-
接客設備
内装は785系電車の様式を踏襲し、フリーストップ式のリクライニングシートを設置、車内客室出入口上部に3色LED式の車内案内表示装置が設置されている。グリーン車の座席は2+1列の3列シートで、重心のバランスをとるために車体中央で配列が逆転し、点対称になっている。座席の配色は、普通車がモケットは紫色(先頭車両はコバルトブルー)で、肘掛はコバルトブルー。グリーン車がモケットは灰色で、肘掛は薄茶色。グリーン車ではラジオ放送[4]・BGMを標準で装備し、普通車でも市販のFM放送が受信できるラジオで聞くことができた[5]。
トイレは洋式であり、試作車で循環式と真空式の汚物処理装置の比較試験を行い、量産車では真空式とされた。暖房方式は機関排熱利用による温水式、冷房装置は機関直結式のN-AU281形を各車の屋根上に2台搭載している。
グリーン車(キロ280形)の車掌室は、ホテルのようなオープンカウンター式となっているのが特徴である[6]。
その他設備
テンプレート:Sound 自動放送装置をJR北海道の車両では初めて装備し、車内放送のメロディにはJR北海道のオリジナルチャイムを搭載し、自動案内放送・車掌放送・運転抑止などのパターンがある。これは以降のJR北海道特急形車両の多くに採用された。
2006年3月18日からは、自動放送チャイムに「アルプスの牧場」「ハイケンスのセレナーデ」「鉄道唱歌」が追加された。同時に車内案内表示装置で英文による案内を開始している。 テンプレート:-
形式別概説
- キハ281形
- 運転台付の普通車である。客用扉は片側2か所に設置されている。
- 900番台 (901・902)
- 試作車。901 は函館向き、902 は札幌向きの先頭車である。
- 先頭部貫通扉は小型の扉窓を設け、ワイパーは装備しない。一部のドアの色が異なる。新製時の台車は、コロ式の振子機構をもつ N-DT281形である。排障器(スカート)は新製当初ライトグレーであったが、すぐに車体同色に変更された。洋式トイレと男子用トイレがある。定員48名。
- 基本番台 (1 - 6)
- 試作車とほぼ同じ仕様で制作された量産車。1・3・5 は函館向き、2・4・6 は札幌向きの先頭車である。正面貫通扉窓が大型化され、ワイパーが追設された。座席の手摺の形と、男子用トイレの形状に試作車との違いがみられる。台車は振子機構を曲線ベアリングガイド式とした N-DT281A形に変更された。
- キハ280形
- 編成の中間に組成される、運転台のない普通車である。客用扉は片側1か所である。
- 基本番台 (1 - 4)
- 車椅子対応の車両で、札幌側に車椅子対応の座席とトイレがある。男子用トイレ・多目的室・テレホンカード式公衆電話がある[7]。定員51名。台車・駆動系の仕様は100番台と同一である。
- 100番台 (101 - 110)
- 900番台(試作車)とほぼ同じ仕様で製作された量産中間車。定員60名。トイレ・洗面所はない。台車は振子機構を曲線ベアリングガイド式としたN-DT281A形に変更された。
- 900番台 (901)
- 試作車。トイレ・洗面所はない。荷物置き場がある。定員60名。肘掛け部分は黒色で、手すりの形も量産車とは異なる。
- 新製時の台車は、基礎ブレーキ装置を車輪ディスクブレーキとしたN-DT280形である。
- キロ280形 (1 - 4)
- 運転台のないグリーン車。座席数は26席で、配置は横1+2列、中央で配置が逆転する。
- 各座席にはラジオ放送・BGMのオーディオパネルを装備する。車内販売準備室、車掌室、男子用トイレと洋式トイレがある。台車・駆動系の仕様はキハ280形量産車と同一である。かつては、喫煙コーナー[8]、テレホンカード式公衆電話が設置されていたがのちに撤去されている。
- キロ280-1 のみ出入り口付近に車両製造所プレートがあり、グリーン車マーク表記が異なるなどの差異がある。
- JRN DC281 M281-902 20080426 001.jpg
キハ281形 試作車
(2008年4月26日 / 札幌駅) - Kiha281 superhokuto tomakomai.jpg
キハ281形 量産車
(2007年10月3日 / 苫小牧駅) - JRN DC281 M280-901 20080426 001.jpg
キハ280形 試作車
(2008年4月26日 / 札幌駅) - JRN DC281 M280-101 20080426 001.jpg
キハ280形 100番台
(2008年4月26日 / 札幌駅) - JRN DC281 M280-4 20080426 001.jpg
キハ280形 基本番台
(2008年4月26日 / 札幌駅) - JRN DC281 Ms280-1 20080426 001.jpg
キロ280形
(2008年4月26日 / 札幌駅)
改造
- 側窓保護改造
- 酷寒地での高速運転により、車体に付着した氷塊が走行中に落下し、跳ね上げたバラストが側窓を破損する事例が多発した。これを防止するため、2001年から全車の側窓外側にポリカーボネート製の透明保護カバーを追設する改造を行った。
- ラッピング広告
- 2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』放映に合わせ、同番組関連のラッピングが試作車2両を含む一部車両に施工された。同番組の放映終了後にラッピングは撤去されている。
- 重要部品取替工事
- 2005年から全車に実施された。主な変更点は車内案内表示装置の改造、側面行先表示器・正面愛称表示器の汚れ落し、再塗装などで、普通車の座席モケットが従来の紫から青に変更された車両もある。先頭車は前照灯のうち下部2灯をHID灯に交換した。試作車ではトイレ設備の更新も行っている。
- 同工事では走行機器についても整備交換がなされ、機関は排気ガス対策を施したN-DMF11HZD(355ps/2100rpm)に換装された。試作車特有の装備は、先頭車のコロ式振子付台車・中間車のディスクブレーキ式台車について、量産車のものに小改良を施したN-DT281B形台車に交換するなど、量産車との仕様統一がなされている。
- グレードアップ指定席
- 2008年7月から、キハ183系と共に普通車指定席の座席改装が開始された[9]。これは、2006年12月17日からキハ283系が行っているものと同様、座席幅の拡大・背もたれ枕の設置・快速「エアポート」などに設定されている「uシート」と同様なチケットホルダーなどの設備を導入し、居住性の向上を図るものである[10]。
- キハ281形(2 - 6)
- キハ280形(1 - 4・103 - 110)
運用
27両全てが函館運輸所に所属し、7両編成を基本とした3本が組成されて運用されている。試作車のうち、キハ281形900番台の2両は、2010年時点では増結車両として使用されることが多い[12]。
キハ283系と1両単位での連結が可能で、多客時の増結や本系列の検査時などでしばしば実施されている。混結時における振子作用時の車体最大傾斜角は、本系列に合わせた5度となる。なお、基本編成がキハ283系である場合、増結車に本系列が使用されることはない。
- 過去の運用実績
脚注
参考文献
- 交友社 『鉄道ファン』 1992年4月号 No.372 P12 - 15
- 交友社 『鉄道ファン』 1993年1月号 No.381 P67 - 69
- イカロス出版 イカロスMOOK 名列車列伝シリーズ 5 『特急おおぞら&北海道の特急列車』 1998年
- 鉄道ジャーナル社 『鉄道ジャーナル』 2004年12月号 No.458 特集:JR北海道の幹線輸送
- 電気車研究会 『鉄道車両年鑑』 2005年版 鉄道ピクトリアル臨時増刊 No.767 2005年
関連項目
外部リンク
テンプレート:JR北海道の車両リスト- ↑ JR北海道ではWebサイトなど外部文書において「281系気動車」と表記しているが、慣例的なものや、JR西日本281系電車との混同を防ぐため、一般には「キハ281系」と呼ばれることが多い。
- ↑ 運転開始当初、最速達列車の途中停車駅は上りが東室蘭駅のみ、下りは東室蘭駅と苫小牧駅のみで、それぞれ2時間59分(表定速度106.8km/h)であった。その後は2000年3月のダイヤ改正で新札幌駅が追加されたため、3時間00分(同106.2km/h)が最速。
- ↑ 2010年1月に発生した函館本線踏切事故で当該列車(789系1000番台)の先頭車前頭部が大破したことを受け、現在では一般客の立入は禁止されている。
- ↑ NHKラジオ第1放送、NHK-FM放送、HBCラジオを再送信している。
- ↑ キハ283系気動車も同様。
- ↑ 車内改札などで車掌が不在の際はガラス製のシャッターで仕切られる。この構造はキハ283系でも踏襲された。
- ↑ 2006年3月18日のダイヤ改正後、公衆電話を撤去し業務用スペースとしている。
- ↑ 2006年3月18日のダイヤ改正での全面禁煙化により灰皿・空気清浄機が撤去され携帯電話使用スペースとなった。
- ↑ テンプレート:Cite press release
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