人生劇場

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人生劇場』は、愛知県吉良町(現・西尾市)出身の作家尾崎士郎の自伝的大河小説。吉良から上京し、早稲田大学に入学した青成瓢吉の青春とその後を描いた長編シリーズ。「青春篇」、「愛慾篇」、「残侠篇」、「風雲篇」、「離愁篇」、「夢幻篇」、「望郷篇」からなり、「残侠篇」は完全な創作で、他は自伝要素を混じえ創作されたという。晩年の昭和35年~37年に、新潮社で「蕩子篇」、集英社で「新人生劇場 星河篇」、「狂瀾編」の3巻が出版された。

当初は都新聞に新聞小説として連載され、中川一政が挿絵を担当し、1935年(昭和10年)に竹村書房で最初の単行本が出版された。

その後、尾崎の生前に「望郷篇」までが新潮文庫で全11巻で出版されていた。2008年に角川文庫で「青春篇」のみ、弘兼憲史のイラストによる表紙で新版が刊行。なお角川でも約半数が文庫化され、映画公開に合わせ新版を再刊していた。

この作品を手本としたものに、同じ早稲田大学の後輩である五木寛之の自伝的な大河小説『青春の門』がある。

映画化作品

「人生劇場」は14回映画化されている。戦後の作品では1968年版と1972年版が有名。

舞台化作品

劇作家の宮本研の脚色により「残侠篇」が『今ひとたびの修羅』の題で舞台化されている。

歌謡曲「人生劇場」

テンプレート:Infobox Single 「続々― 残侠篇」が刊行された翌年の1938年(昭和13年)には本作品を題材とした、佐藤惣之助作詞、古賀政男作曲の歌謡曲「人生劇場」が楠木繁夫の歌として発表され、広く知られている。特に早稲田大学出身者や学生に愛唱され、「第二の早稲田大学校歌」とも云われている。後年には中島孝村田英雄によっても歌われた。特に村田版は名唱として知られており、今では村田英雄が本楽曲のオリジナル歌手だと認識されることも多い。

モデルとの相関関係

登場人物の一人である飛車角は、「ぶったぐりの彦」もしくは「ぼったくりの彦」と呼ばれた戦前ヤクザ石黒彦市がモデルとされる。しかし、石黒は昭和17年(1942年)9月2日に右翼団体大化会村岡建次(後の暴力団北星会会長・岡村吾一)の舎弟・水原新太郎(本名は菊池貞雄)に、東京市麹町区(現在の東京都千代田区)の政友会本部近くで銃撃され、翌日死亡している。石黒彦市が自分の恋人を売り飛ばした女衒を殺したのは事実だが、小説映画の勇ましい侠客ぶりとは異なり、戦後になっても、映画監督の石井輝男安藤昇から「飛車角ってのは本当は悪いやつでね」と教えられたとしている[1]

その他、南喜一茂木久平宇野千代などが登場人物のモデルとして著名。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. 飯干晃一狼どもの仁義』(角川書店)、猪野健治実録・人生劇場』(双葉社

関連項目

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