滝沢修
テンプレート:出典の明記 テンプレート:ActorActress 滝沢 修(たきざわ おさむ、1906年11月13日 - 2000年6月22日)は、日本の俳優、演出家。宇野重吉とともに劇団民藝を創設した。別表記:瀧澤修、本名:滝沢 脩。
来歴・人物
1906年11月13日、東京府東京市牛込(現在の東京都新宿区)に銀行家の三男として生まれる。開成中学卒業後の1925年、築地小劇場の研究生となり小山内薫の指導を受ける。同年の『ジュリアス・シーザー』の通行人役が初舞台となる。1929年、東京左翼劇場に加わるが激しい国家弾圧を受け、1934年に新協劇団の結成に参加する。その第1回公演『夜明け前』で主役の青山半蔵を演じ、その重厚な演技で注目される。そのほか『火山灰地』の雨宮聡役などで主演し、リアルな演技で劇団の中心となった。1935年に映画デビュー。1940年8月19日に村山知義らとともに治安維持法違反容疑で逮捕され、1年4か月の投獄生活を経験した。1943年に清水将夫らと芸文座を創立。
1945年、久保栄らと東京芸術劇場を創立するが1947年に分裂し、同年7月28日に宇野重吉、清水らと第一次民衆芸術劇場(第一次民藝)を創設した。1950年には劇団民藝を結成し、宇野と共に同劇団代表として活躍した。1951年の『炎の人』で演じたゴッホ役は生涯の当たり役となり、公演は83歳を数えるまで続けられた。そのほか『かもめ』、『あるセールスマンの死』、『ベニスの商人』などの舞台で名演技を披露した。また、『アンネの日記』など自ら演出した作品もいくつかある。
また映画・テレビドラマでも活躍し、映画では『安城家の舞踏会』、『原爆の子』、『野火』、『霧の旗』などで主要な役を演じ、重厚な演技で活躍した。1950年代から1960年代にかけては民藝が日活と提携契約した関係で日活の映画にも多く出演している。テレビドラマではNHK大河ドラマ『赤穂浪士』で吉良上野介を演じるなどしている。
1996年の舞台『俳諧師』が最後の舞台出演となり、1997年の『あっぱれクライトン』の演出を最後に芸能界を引退した。2000年6月22日午前11時51分、肺炎のため東京都三鷹市の病院で死去した。93歳の大往生だった。
毎日新聞社のジャーナリストで、熊本大学教授だった息子の滝沢荘一により『名優・滝沢修と激動昭和』(新風舎文庫 2004年)が出版されており、2005年に日本エッセイストクラブ賞を受賞した。随筆家の滝沢敬一は異母兄。私生活では、自宅を所有することなく終生借家住まいだった。
人物
リアリズムの演技を徹底的に追求した人物の一人で、その役作りと演技で「新劇の神様」と呼ばれた[1]。『炎の人』ではゴッホのやつれた感じを出すために6キロも減量して役に挑んだエピソードがある。
民藝の二本柱の滝沢と宇野は「剛の滝沢、柔の宇野」と称された。気さくで軽妙な性格の宇野に対して、滝沢は完璧主義・気難しい性格といわれたが、演劇に対する真摯な姿勢は山田五十鈴、米倉斉加年ら多くの俳優を育てている。また市村正親ら多くの俳優が滝沢の演技に影響を受け俳優を志した。
少年時代は画家志望で鶴田吾郎にも師事していたため、趣味である油絵の腕前は相当なものだった。『炎の人』に使うひまわりの絵も滝沢が描いたという。また公演パンフレットに使う写真を自分で撮るほどのカメラ好きでもあった。
戦時中は食料を確保するため、自分で畑を耕して野菜を作っていたという。
受賞
- 芸術祭賞(1951年)『炎の人』の演技で
- 毎日演劇賞(1951年)『炎の人』『楊貴妃』の演技で
- 毎日芸術賞(1966年)『セールスマンの死』『オットーと呼ばれる日本人』の演技で
- NHK放送文化賞(1966年)
- ゴールデンアロー賞(1975年)
- 紫綬褒章(1977年)
- 紀伊国屋演劇賞個人賞(1978年)『その妹』の演技・演出で
- 芸術選奨文部大臣賞(1979年)
- 勲三等瑞宝章(1986年)
出演作品
舞台
- 乞食芝居(1932年、東京演劇集団) - 牢番、役者上りの乞食 役
- 三笑(1943年、武者小路実篤作) - 野中英次 役 ※芸文座旗揚げ公演
- 破戒(1948年)
- 山脈(1949年) - 山田 役
- かもめ(1950年・1969年) - ドールン 役
- その妹(1951年) - 西島 役
- 炎の人 (1951年・1969年) - ヴィンセット・ヴァン・ゴッホ 役
- 楊貴妃(1951年) - 高力士 役
- 厳頭の女(1952年) - 大亀三郎 役
- 冒した者(1952年) - 私 役
- 十三階段(1952年) - 津野宣三 役
- 五稜郭血書(1952年) - 榎本武揚 役
- 民衆の敵(1953年) - トマス・ストックマン 役
- 日本の気象(1953年) - 田代義孝 役
- セールスマンの死(1954年・1957年・1966年・1975年) - ウィリィ・ローマン 役
- 幽霊やしき(1954年) - 幽霊 役
- 大和の村(1955年) - 津田仙太郎 役
- ヴィルヘルム・テル(1955年) - ゲスラー 役
- 愛は死をこえて(1955年) - ジュリアス 役
- 遠い凱歌(1956年) - 木越周作 役
- 最後の人びと(1956年) - ヤーコフ 役
- アンネの日記(1956年) - ファン・ダーン 役
- 楡の木蔭の欲望(1957年)
- 法隆寺(1958年) - 聖徳太子 役
- ポーギィとベース(1958年)
- 関漢卿(1959年) - 関漢卿 役
- どん底(1960年) - ルカ 役
- 橋からの眺め(1960年)
- 火山灰地(1961年) - 雨宮聡 役
- オットーと呼ばれる日本人(1962年)
- 狂気と天才(1963年)
- 夜明け前(1964年・1980年) - 青山半蔵 役
- 冬の時代(1964年)
- 悲しみの酒場のバラード(1966年)
- 白い夜の宴(1967年)
- 汚れた手(1967年、1968年)
- ベニスの商人(1968年) - シャイロック 役
- もう一人のヒト(1970年)
- 七月六日(1970年) - レーニン 役
- 審判(1970年) - 米国主席検察官 役
- 神の代理人(1971年)
- るつぼ(1971年) - ダンフォース 役
- 予告の日(1971年)
- 日本改造法案 北一輝の死(1972年) - 北一輝 役
- 三人姉妹(1972年) - ヴェルシーニン 役
- ハバナの審問(1972年)
- 円空遁走曲(1973年)
- 桜の園(1974年) - ロパーピン 役
- 才能とパトロン(1974年)
- その妹(1978年、兼演出)
- こわれがめ(1983年) - ア―ダム 役
- セールスマンの死(1984年、兼演出)
- アンネの日記(1984年・1990年・1996年、演出)
- るつぼ(1986年、演出) - ダンフォース 役
- 夏・南方のローマンス(1987年)
- 息子(1987年、兼演出)
- 雨(1988年)
- 炎の人(1989年、兼演出)
- 巨匠(1991年) - 老人 役
- 吉野の盗賊(1992年、演出)
- 終末の刻(1993年、兼演出) - 井筒屋金次郎 役
- 修善寺物語(1994年) - 面作師夜叉王 役
- 俳諧師(1996年、兼演出) - 俳諧師鬼貫 役
- あっぱれクライトン(1997年、演出)
映画
太字の題名はキネマ旬報ベストテンにランクインした作品
- 都会の怪異七時三分(1935年、P.C.L.) - 質屋の親爺 役
- 噂の娘(1935年、P.C.L.) - 理髪店の客 役
- 巨人傳(1938年、東宝) - 清家老人 役
- 藤十郎の恋(1938年、東宝) - 近松門左衛門 役
- 逢魔の辻 江戸の巻(1938年、東宝) - 三沢半之丞 役
- 綴方教室(1938年、東宝) - 大木先生 役
- 忠臣蔵(1938年、東宝) - 柳沢出羽守 役
- 初恋(1939年、東宝) - 岡松玄信 役
- 多甚古村(1940年、東宝) - 眼界和尚 役
- 奥村五百子(1940年、東宝) - 鯉淵彦五郎 役
- 続蛇姫様(1940年、東宝) - 館林兵庫 役
- 煉瓦女工(1946年、南旺映画) - その父 役
- 安城家の舞踏会(1947年、松竹) - 安城忠彦 役
- 王将(1948年、大映) - 関根名人 役
- 破戒(1948年、松竹) - 猪子蓮太郎 役
- 幸運の椅子(1948年、日映)
- わが生涯のかがやける日(1948年、松竹) - 佐川浩介 役
- 検事と女看守(1949年、大映) - 秩田裁判長 役
- こんな女に誰がした(1949年、東横) - 刑事 役
- 破れ太鼓(1949年、松竹) - 直樹 役
- 四谷怪談(1949年、松竹) - 直助権兵衛 役
- 暴力の街(1950年) - 戸山検事 役
- また逢う日まで(1950年、東宝) - 田島英作 役
- 長崎の鐘(1950年、松竹)
- 戦火の果て(1950年、大映)
- 愛妻物語(1951年、大映) - 坂口監督 役
- 真説石川五右衛門(1951年、東映) - 不思議な老人 役
- 長崎の歌は忘れじ(1952年、大映) - 牧原宗雲 役
- 原爆の子(1952年、近代映画協会) - 岩吉じいさん 役
- 山びこ学校(1952年、八木プロ) - 無着の父 役
- 忠治旅日記 逢初道中(1952年、東映) - 加部安左衛門 役
- 母のない子と子のない母と(1952年、新教映) - 解説
- 縮図(1953年、近代映画協会) - 猪野 役
- 夜明け前(1953年、近代映画協会) - 青山半蔵 役
- 心臓破りの丘(1954年、大映) - 慧海和尚 役
- 黒い潮(1954年、日活) - 山名部長 役
- 泥だらけの青春(1954年、日活) - 森川重役 役
- 忠臣蔵 花の巻・雪の巻(1954年、松竹) - 吉良上野介 役
- 和蘭囃子(1954年、新東宝) - 高橋作左衛門 役
- 初姿丑松格子(1954年、日活) - 岡っ引き常吉 役
- 青春怪談(1955年、日活) - 阿久沢 役
- 六人の暗殺者(1955年、日活)- 坂本竜馬 役
- 自分の穴の中で(1955年、日活) - 青山の叔父 役
- 青銅の基督(1955年、松竹) - キリシトファ・フェレラ 役
- 沙羅の花の峠(1955年、日活) - 検事 役
- 江戸一寸の虫(1955年、日活) - 小笠原地頭 役
- 神阪四郎の犯罪(1956年、日活) - 今村徹雄 役
- 倖せは俺等のねがい(1957年、日活) - 重田糸治 役
- 鳴門秘帖(1957年、大映) - 脇伊豆 役
- 九人の死刑囚(1957年、日活) - 田所弁護士 役
- 春高楼の花の宴(1958年、大映) - 筑紫白鳳 役
- 盗まれた欲情(1958年、日活) - 山村民之助 役
- 忠臣蔵(1958年、大映) - 吉良上野介 役
- 紅の翼(1958年、日活) - 長沼純平 役
- キクとイサム(1959年、大東映画) - カメラの男 役
- 男が爆発する(1959年、日活) - 室戸米次 役
- 次郎長富士(1959年、大映) - 黒駒勝蔵 役
- 男なら夢を見ろ(1959年、日活) - 小野寺幸一 役
- 海軍兵学校物語 あゝ江田島(1959年、大映) - 河村校長 役
- かげろう絵図(1959年) - 中野石翁 役
- 野火(1959年、大映) - 安田 役
- 千姫御殿(1960年、大映) - 柳生但馬守 役
- 青年の樹(1960年、日活) - 総長 役
- 天下を取る(1960年、日活) - 鬼平五左衛門 役
- 甘い夜の果て(1961年、松竹) - 本堂 役
- 処刑前夜(1961年、日活) - 山際一作 役
- あいつと私(1961年、日活) - 阿川正男 役
- 釈迦(1961年、大映) - アシユダ仙人 役
- 酔っぱらい天国(1961年、松竹) - 専務 役
- からみ合い(1961年、文芸プロダクション) - 倉山杏一郎 役
- 青年の椅子(1962年、日活) - 菱山 役
- 雲に向かって起つ(1962年、日活) - 川本総理 役
- 愛と死のかたみ(1962年、日活) - 飯島牧師 役
- 泥だらけの純情(1963年、日活) - 清水 役
- 何か面白いことないか(1963年、日活) - 松下政治郎 役
- 死闘の伝説(1963年、松竹) - 語る人 役
- 嘘(1963年、大映) - 裁判長 役
- 夜霧のブルース(1963年、日活) - 野上源造 役
- 愛と死をみつめて(1964年、日活) - 中山仙十郎 役
- 怪談(1965年、東宝) - 作者 役
- 霧の旗(1965年、松竹) - 大塚欽三 役
- 城取り(1965年、石原プロ) - 直江山城守兼続 役
- 徳川家康(1965年、東映) - 語り手
- 鉄火場仁義(1966年、日活) - 木沢 役
- 青春大統領(1966年、日活) - 黒田 役
- 白昼の通り魔(1966年、創造社) - 声
- 愛と死の記録(1966年、日活) - 病院長 役
- 絶唱(1966年、日活) - 園田惣兵衛 役
- 白い巨塔(1966年、大映) - 船尾徹 役
- 秩父水滸伝 影を斬る剣(1967年、日活) - 県令吉田 役
- 黒部の太陽(1968年、日活) - 太田垣士郎 役
- 祇園祭(1968年、日本映画復興協会) - ナレーション
- 昭和のいのち(1968年、日活) - 笹島医師 役
- 座頭市と用心棒(1970年、大映) - 烏帽子屋弥助 役
- 戦争と人間(日活) - 伍代由介 役
- 第一部 運命の序曲(1970年)
- 第二部 愛と悲しみの山河(1971年)
- 第三部 完結篇(1973年)
- 甦る大地(1971年、石原プロ) - S金属会長 役
- 雨は知っていた(1971年、東宝) - 重役 役
- 内海の輪(1971年、松竹) - 大学教授 役
- 華麗なる一族(1974年、芸苑社) - 宮本開発銀行頭取 役
- 天保水滸伝 大原幽学(1976年、農村映画協会) - 林伊兵衛 役
- 皇帝のいない八月(1978年、松竹) - 佐橋総理大臣 役
- 天平の甍(1980年、東宝) - 良弁 役
- さくら隊散る(1988年、近代映画協会) - 証言者
テレビドラマ
- 東芝日曜劇場(TBS)
- 第179話「執行前三十分」(1960年)
- 第225話「雨の庭」(1961年)
- 第1696・1697話「林檎の木の下で」(1989年)
- 文芸劇場 第4話「ちちははの記」(1961年、NHK)
- 創作劇場 / 駆け込み訴え(1963年、NHK) - キリストの声
- おかあさん 第390話「手紙」(1967年、TBS) - 声
- 大河ドラマ(NHK)
- 銀河ドラマ / ゼロの焦点(1971年、NHK) - 室田儀作 役
- 天皇の世紀(1971年、ABC) - ナレーター
- ふりむくな鶴吉 第38話「その父その子」(1975年、NHK)
- うしろの正面(1975年、NET) - 二宮 役
- 落日燃ゆ(1976年、テレビ朝日) - 広田弘毅 役
- 横溝正史シリーズ / 獄門島(1977年、MBS) - 鬼頭嘉右衛門 役
- 土曜ドラマ / 松本清張シリーズ・棲息分布(1977年、NHK) - 井戸原俊敏 役
- ゴールデンドラマシリーズ / 球形の荒野(1978年、CX) - 野上顕一郎 役
- 木曜ゴールデンドラマ / ガン回廊の朝(1980年、YTV)
- 若き血に燃ゆる〜福沢諭吉と明治の群像(1984年、TX) - ナレーター
- 忠臣蔵 風の巻・雲の巻 - ナレーター