浅草
浅草(あさくさ)は、東京都台東区の地名。浅草一丁目から七丁目までが置かれている。郵便番号は111-0032。
目次
地理
江戸時代以前から東京随一の繁華街として栄えてきた。関東大震災では浅草台地の固い地盤で揺れによる被害よりも主に火災で焼かれた後、東京都の都市計画により道路拡張をはじめ新たに市街地化された。第二次大戦では壊滅的な被害を受けたが目覚ましい復興を遂げた。高度経済成長期以降は山手線沿線の池袋・新宿・渋谷などの発展により、東京都が制定する副都心(7ヶ所)として、上野と共に上野・浅草副都心を形成。現在も江戸の下町情緒を感じさせる街として賑わっている。
近隣には厨房で使用する業務用調理器具関連用品を取り扱う合羽橋道具街など個性的な商店街なども存在する。
ランドマーク
古くからの浅草地区のランドマークとして浅草寺山門である雷門(かみなりもん)が知られる。明治後期には、第六区に建てられた十二階建ての凌雲閣が有名となり、浅草十二階と呼ばれランドマークとして認知されていた。しかし、大正期の関東大震災で崩壊。昭和初期には西浅草に森下仁丹が広告塔を建設。仁丹塔の愛称で戦後も長らく親しまれたが1986年に解体された。1990年代以降には吾妻橋対岸の墨田区本所にあるアサヒビール本社ビルも、その屋上の特徴的なオブジェが浅草の風景の一部として認知されている。また、同じく対岸の墨田区押上の東京スカイツリーが街の背景に臨め、浅草の景観に彩りを添えている。
歴史
628年推古天皇の時代、この土地の漁師、檜前浜成・竹成兄弟が、隅田川で観音像を網で掬い上げ礼拝供養した。浅草寺一帯は太古の時代から浅草台地の微高台で現在の待乳山、弁天山、蔵前、鳥越神社付近などから陸地化が進み隅田川の河口近くで海の幸にも恵まれ、官道も通り、やや高台でもあって災害からも避難しやすい土地だったため町の発展が早かった。「吾妻鏡」の1181年(養和元年)の条に浅草の名が見える。古くから浅草寺の門前町として栄えていた。また江戸湊や品川湊と並んで、武蔵国の代表的な港である浅草の港が、石浜(現在の台東区橋場)や今津(現在の台東区今戸町)にあったとされる。また、隅田川は江戸時代に境目が変更される以前は武蔵国と下総国の境目であり、中世後期には浅草から石浜にかけて境目の城である石浜城が築かれていた(ただし、荒川区南千住に所在地を比定する説もある)。
江戸時代に浅草が発展した要因は、浅草御蔵(蔵前)に米蔵が設置され札差(株仲間)が登場してきたためと言われている。蔵前では、日本全国から集められた侍や江戸庶民たちの食用米、城で働く武士たちの給料としての米などを保管していた。いわば金蔵みたいなもので、これを守るために大勢の警備が配置され、下級役人が暮らしていた。
江戸時代、武士の給料は米で支払われていたため、武士たちのために、米を保管するだけでなく現金にも替えてくれる札差という商人が出てきた。札差は預かった米から手数料を引いて、米と現金を武士に渡していた。そして、現物で手元に残った分の米は小売の米屋たちに手数料を付けて売っていた。札差は武士と小売の両方から手数料を取るため莫大な利益が出た。さらに、儲かったお金を武士たちに利子を付けて貸していたため札差は大富豪が多く豪遊する場として、浅草の粋な江戸っ子文化が発展した。
また、両国を中心に蔵前商人は店を構えていたので、商人や武士たちの多くが浅草周辺に集まった。中でも浅草は江戸で最も人が集中するところで人・物・金が集まってきた。1657年(明暦3年)の明暦の大火の後、新吉原遊郭が移転してきた。1841年(天保12年)人形町の中村座の失火をきっかけとして市村座、浄瑠璃の薩摩座、操り人形の結城座が焼失したことから、河原崎座を含めた江戸市中の芝居小屋を現在の浅草六丁目一帯(丹波園部藩主、小出邸の跡地面積約一万坪)に集め、猿若町と名づけて芝居町とした。
札差は武士と共に新吉原や歌舞伎座を借り切りし豪遊(接待)したり、舟遊びをしたと伝えられる。当時、芝居小屋や吉原に出入りしては粋(いき)を競い、豪遊を行った町人を通人(つうじん)と呼んだが、中でも「十八大通」と呼ばれた人々がおり、その多くは札差連中であった。歌舞伎の演目「助六」のモデルとも言われている大口屋暁雨などが有名である。浅草の庶民文化、江戸の粋にはこのような背景がある。
明治時代には東京市15区の名前の一つに「浅草」が採用された。また浅草寺を中心とした地域を明治時代に公園化し東京初の都市公園である浅草公園となった。浅草公園を6つの区に分けたことから、浅草公園六区ともよばれた。なおこの言い方はその中で一番にぎやかだった地域である第六区のみを指す場合が多い。
明治時代に凌雲閣(12階)などが建てられ、江戸以来の繁華街として新たに演芸場や劇場等が建ち、東京らしい文化の発信地、歓楽街として知られるようになった。関東大震災以降の興行界は、松竹の進出が本格的となり戦前の昭和においては有楽町に進出した東宝と覇を争った。戦後は松竹歌劇団(SKD)の本拠地である国際劇場やロック座、フランス座などのストリップ興行で賑わった。 昭和に入り、戦災により一時期の繁栄の勢いが失われたが、戦後には千束地域には朝鮮マーケットが開かれ[1]、浅草寺周辺をはじめ、田原町、蔵前、合羽橋周辺の旧浅草区の道路インフラ整備が進み、拡幅された碁盤の目をもつ街並みとなった。
テレビの普及に因り昭和30年代後半から六区にあった映画館が次々と閉館し、それらの煽りで昭和40年代に入るとめっきり人通りは減少した。しかし平成を迎え浅草サンバカーニバルや隅田川花火大会などの開催がテレビで取り上げられるようになると徐々に活気を取り戻すようになる。加えて地方から観光バスが来るようになり、また人力車などの観光ガイドなどが雷門周辺に現れるようにもなった。更には昭和を懐かしむ高齢の観光客が増加していることや、羽田空港・成田空港の両空港と鉄道で直結されるようになったこと、つくばエクスプレスの開通効果でマンション建設、飲食店の新規出店、雑誌やTV番組のグルメレポートで紹介された店目当てに訪れる人々が増えたこともあって平日でも賑わうようになってきている。そして外国人観光客は移り変わりの激しい銀座よりも昔ながらの佇まいを色濃く残す浅草を東京の名所として訪れる傾向が強くなり、宿は浅草地区を代表する浅草ビューホテルの需要が著しく高い。隅田川を隔てて望む東京スカイツリーが建設されるようになると隅田公園での桜まつりは史上空前の賑わいを見せた。
しかし、2012年、株式会社中映が惜しまれつつも映画劇場を相次ぎ閉鎖。他の劇場跡地もパチンコ店やドンキホーテ建設が決まってしまい、浅草から映画館が無くなるという事態となってしまった。日本のブロードウェイとしての栄華は儚く消え去ろうとしている。
観光
- 食べ物
- 神谷バー(日本初のバー・電気ブランが名物)
- 前川(鰻)
- 初小川(鰻)
- 小柳(鰻)
- 浅草今半(すき焼き)
- ちんや(すき焼き)
- 米久(牛鍋) - 1886年(明治19年)創業、ひさご通りにあり、大女将は松竹映画を中心に活躍した元女優の泉京子。
- 中清(天麩羅)
- 葵丸進(天麩羅)
- 三定(天麩羅)
- 駒形どぜう(どぜう鍋)
- どぜう飯田屋(どぜう鍋)
- 並木藪そば(そば)
- 尾張屋(そば)
- 十和田(そば)
- 釜めし春
- 大黒屋(天丼)
- ヨシカミ(洋食)
- レストラン大宮(洋食)
- アリゾナキッチン(洋食)
- ぱいち(洋食)
- 浅草むぎとろ
- 雷おこし
- 舟和(芋ようかん、あんこ玉)
- 人形焼
- 浅草海苔(アサクサノリ)
- やげん堀唐辛子本舗(七味唐辛子)
- 捕鯨船(鯨料理)
- 鮒忠(焼き鳥)
- 浅草ラスク
交通
つくばエクスプレスの浅草駅は他線の浅草駅から600mほど離れており、乗換駅ではない。
- 路線バス
- リムジンバス
- 東京空港交通(浅草~成田空港、羽田空港)
- 高速バス
- レインボー号(東北急行バス)
- TOKYOサンライズ号(東北急行バス・山交バスとの共同運行)
- フライングランナー号(東北急行バス・近鉄バスとの共同運行)
- ままかりライナー(東北急行バス・両備バスとの共同運行)
- いわき号(ジェイアールバス関東・新常磐交通・東武バスセントラルの共同運行。上りのみ)
- つくば号(ジェイアールバス関東・関東鉄道との共同運行。上りのみ)
- 新宿・東京 - 常陸太田線(ジェイアールバス関東・茨城交通との共同運行。上りのみ)
- 新宿・東京 - 常陸大宮・大子線(茨城交通。上りのみ)
- 常総ルート(関東鉄道・関鉄パープルバスとの共同運行。上りのみ)
- 千葉中央バス(京都→浅草雷門)
- アルピコ交通(上野・浅草~松本・長野)
- 浅草通り(東京都道463号上野月島線)
- 江戸通り(国道6号)
- 国際通り(東京都道462号蔵前三ノ輪線)
- 言問通り(東京都道319号環状三号線)
- 春日通り(東京都道453号本郷亀戸線)
- 雷門通り
- 仲見世通り
地域
- 浅草地域に該当する現町名
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- 旧浅草区 地名
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- 浅草新平右衛門町
- 浅草上平右衛門町
- 浅草下平右衛門町
- 浅草茅町一丁目~二丁目
- 浅草榊町
- 浅草森田町
- 浅草新森田町
- 浅草御蔵前片町
- 浅草寿町
- 浅草黒門町
- 浅草新片町
- 浅草旅籠町一丁目~二丁目
- 浅草新旅籠町
- 浅草須賀町
- 浅草新須賀町
- 浅草瓦町
- 浅草福井町一丁目~三丁目
- 浅草新福井町
- 浅草猿屋町
- 浅草新猿屋町
- 浅草町
- 浅草東町
- 浅草北元町
- 浅草南元町
- 浅草北富坂町
- 浅草南富坂町
- 浅草福富町
- 浅草新福富町
- 浅草老松町
- 浅草元鳥越町
- 浅草西鳥越町
- 浅草小島町
- 浅草北三筋町
- 浅草西三筋町
- 浅草東三筋町
- 浅草栄久町
- 浅草八幡町
- 浅草三好町
- 浅草黒船町
- 浅草諏訪町
- 浅草森下町
- 浅草三間町
- 浅草駒形町
- 浅草材木町
- 浅草並木町
- 浅草茶屋町
- 浅草東仲町
- 浅草西仲町
- 浅草北東仲町
- 浅草田原町一丁目~三丁目
- 浅草北田原町三丁目
- 浅草高原町
- 浅草阿倍川町
- 浅草北松山町
- 浅草南松山町
- 浅草七軒町
- 浅草永住町
- 浅草北清島町
- 浅草南清島町
- 浅草神吉町
- 浅草松葉町
- 浅草松清町
- 浅草田島町
- 浅草柴崎町
- 浅草新谷町
- 浅草新畑町
- 浅草馬道町一丁目~八丁目
- 浅草花川戸町
- 浅草山ノ宿町
- 浅草金龍山下瓦町
- 浅草聖天町
- 浅草聖天横町
- 浅草山川町
- 浅草田町一丁目~二丁目
- 浅草亀岡町一丁目~三丁目
- 浅草象潟町
- 浅草五十間町
- 浅草今戸町
- 浅草清川町
- 浅草石浜町
- 浅草橋場町
- 浅草吉野町
- 浅草山谷町
- 浅草元吉町
- 浅草千束町
- 浅草光月町
- (浅草公園地)
- 新吉原江戸町一丁目~二丁目
- 新吉原揚屋町
- 新吉原角町
- 新吉原京町一丁目~二丁目
- 向柳原町一丁目~二丁目
- 猿若町一丁目~三丁目
浅草ゆかりの著名人・文化人
あ行
- 浅倉大介 - ミュージシャン、音楽プロデューサー
- 東貴博 - コメディアン
- 東八郎 - コメディアン
- 安達祐実 - 女優
- 内海好江 - 漫才師
- 池波正太郎 - 小説作家。西浅草の中央図書館内に池波正太郎記念文庫がある。
- 永六輔 - 放送作家、タレント、作詞家、エッセイスト。実家は元浅草の「最尊寺」。
- 大野純一 - 翻訳家
- 岡崎友紀 - 女優、歌手
か行
さ行
た行
な行
- 中本賢 - コメディアン、俳優。旧名・アパッチけん
- 並木路子 - 「リンゴの唄」を唄った歌手
- ナイツ (お笑いコンビ) - 漫才師 漫才協会
は行
ま行
や行・ら行・わ行
浅草を舞台・背景とした作品
- 浅草紅団(川端康成)-浅草の不良少年達を描いた作品。多くの「浅草もの」の先駆的作品。
- ヰタ・セクスアリス(森鴎外)
- 浅草公園(芥川龍之介)
- 鬼平犯科帳(池波正太郎)-浅草聖天町生まれ
- 押絵と旅する男(江戸川乱歩)-10作品以上に登場。
- 如何なる星の下に(高見順)
- 小説 浅草案内(半村良)
- 江戸から東京へ(二)浅草上(三)浅草下(矢田挿雲)
- 彼岸過迄(夏目漱石)
- 随筆集 日和下駄(永井荷風)
- 註文帳(泉鏡花)
- 鮫人(谷崎潤一郎)
- 飯塚まもる「Sumidagawa」-浅草を背景に自身の半生を歌った曲。
- あこがれベビー(1981年) - 日本テレビ・火曜劇場
- こころ(2003年) - NHK・連続テレビ小説
- タイガー&ドラゴン(2005年)- TBS
- セーラー服と機関銃(2006年)- TBS
- 浅草ふくまる旅館(2007年)- TBS・ナショナル劇場
- 海の若大将 - 若大将の自宅「田能久」は今半別館がモデル
- 異人たちとの夏
- しゃべれどもしゃべれども
- えんこえれじー 浅草哀歌
- 浅草堂酔夢譚
関連項目
- 浅草芸能大賞
- スターの広場
- 浅草御蔵
- 浅草紙
- 浅草文庫 - 江戸時代から明治時代にかけて昌平坂学問所の書物を保管した図書館。
- 浅草鉄銭 - 江戸幕府が浅草で鋳造した貨幣である。天保期のものは一文銭で、安政期のものは四文銭。
- めぐりん - 台東区のコミュニティバス
- いとうせいこう - 三社祭で氏子として担ぎたいがために浅草に転居。
- アニマル浜口 - 「アニマル浜口トレーニングジム」を開き、一般向けのフィットネスの他に、プロレスラー養成や浜口京子のようなアマチュア選手のトレーニングを受け持っている。TVに映る浜口京子の応援団は京子を子供の頃から知る浅草の人々である。
- ちい散歩 - テレビ朝日の番組。地井武男が第1回(2006年4月3日)放送をはじめ何度も訪れている。
- 田原源一郎・慶子夫妻 - 元浅草にある「田原屋」の取締役および馬主で、冠名の「アサクサ」は浅草が由来となっている。アサクサデンエンなど。
- 浅草火力発電所 - 61mの巨大煙突を備えた明治-大正期の発電所。関東大震災で倒壊。
- 浅草米兵暴行事件
- 東京都の観光地
- 東浅草
- 西浅草
- 元浅草
- 浅草六区
参考文献
- 堀切利高『浅草東仲町五番地』 論創社 2003年6月 ISBN 4-8460-0539-9