江戸川乱歩
テンプレート:出典の明記 テンプレート:Redirectlist テンプレート:Infobox 作家 江戸川 乱歩(えどがわ らんぽ、旧字体:江戶川 亂步、男性、1894年(明治27年)10月21日 - 1965年(昭和40年)7月28日)は、大正から昭和期にかけて主に推理小説を得意とした小説家・推理作家である。また、戦後は推理小説専門の評論家としても健筆を揮った。実際に探偵として、岩井三郎探偵事務所(ミリオン資料サービス)に勤務していた経歴を持つ。
本名は平井 太郎(ひらい たろう)。筆名は敬愛するアメリカの文豪エドガー・アラン・ポーをもじったものである[1]テンプレート:Refnest。日本推理作家協会初代理事長。位階は正五位。勲等は勲三等。
目次
経歴
1894年(明治27年)三重県名賀郡名張町(現・名張市)に名賀郡役所書記の平井繁男・きくの長男として生まれる(本籍地は津市)。平井家は武士の家柄で、祖先は伊豆伊東(静岡県)の郷士だった。のちに津藩(三重県)の藤堂家に仕え、乱歩の祖父の代まで藤堂家の藩士として勤めつづけた。
2歳の頃父の転勤に伴い鈴鹿郡亀山町(現・亀山市)、翌年名古屋市に移る。(以降、大人になっても点々と引越しを繰り返し、生涯引っ越した数は46件にも及ぶ)小学生のころに母に読みきかされた菊池幽芳訳『秘中の秘』が、探偵小説に接した最初であった。中学では、押川春浪や黒岩涙香の小説を耽読した。旧制愛知県立第五中学校(現・愛知県立瑞陵高等学校)卒業後早稲田大学政治経済学部に入学した。卒業後、貿易会社社員や古本屋、シナ蕎麦屋など多くの仕事を経る。
1923年(大正12年)、森下雨村、小酒井不木に激賞され、『新青年』に掲載された「二銭銅貨」でデビュー。初期は欧米の探偵小説に強い影響を受けた本格探偵小説を送り出し、黎明期の日本探偵小説界に大きな足跡を残した。特筆すべきことに、衆道の少年愛・少女愛、男装・女装、人形愛、草双紙、サディズムやグロテスク、残虐趣味などの嗜好の強さがある。これらは岩田準一とともに研究していたという。これらを活かした通俗探偵小説は昭和初期から一般大衆に歓迎された。
乱歩は海外作品に通じ、翻案性の高い作品として『緑衣の鬼』、『三角館の恐怖』、『幽鬼の塔』などを残している。また、少年向けとして、明智小五郎と小林少年や少年探偵団が活躍する『怪人二十面相』などがある。このほか、探偵小説に関する評論(『幻影城』など)を残している。
戦後は主に評論家、プロデューサーとして活動するかたわら、探偵小説誌『宝石』の編集・経営に携わる。また、日本探偵作家クラブの創立と財団法人化に尽力した。同クラブに寄付した私財100万円の使途として江戸川乱歩賞が制定され、同賞は第3回より長編推理小説の公募賞となる。
晩年は高血圧、動脈硬化、副鼻腔炎(蓄膿症)を患い、さらにパーキンソン病を患ったが[2]、それでも家族に口述筆記させて評論・著作を行った。
1965年(昭和40年)7月28日、くも膜下出血のため死去。享年70。戒名・智勝院幻城乱歩居士。31日、正五位勲三等瑞宝章を追贈さる。8月1日、推理作家協会葬。
作家歴及び業績
作家として
創作活動初期は、「D坂の殺人事件」、「心理試験」など、いわゆる本格派と呼称される短編を執筆し、日本人の創作による探偵小説(推理小説の意。1955年(昭和30年)頃まではこの呼称が一般的であった)の基礎を築いた。トリックや題材に欧米の諸作からの影響を感じさせるが、単なる模倣でなく乱歩の独創性が活かされている。
乱歩は探偵小説の本道というべき本格派を志向していたが、それらの作品は大衆からあまり評価されなかった。大衆は幻想・怪奇小説、犯罪小説に分類できる変格ものと称される作品が好んだ。「赤い部屋」「人間椅子」「鏡地獄」などが代表的な変格ものといえる。
1926年(大正15年)12月より1927年(昭和2年)2月までの約3ヶ月間、朝日新聞に『一寸法師』を連載する。病欠の山本有三の代役だった。作品は評判がよく、映画化された。しかし乱歩は小説の出来に満足できず休筆宣言をし、各地を放浪したという(以後、戦前の乱歩は「休筆中に放浪」というパターンが多くなる)。
1928年(昭和3年)8月、14ヶ月の休筆のあと、乱歩は自己の総決算的中篇「陰獣」を発表する。これは変態性欲を題材にした作品で、不健康とみなされた一方、横溝正史(当時の探偵小説の雑誌「新青年」の編集者)により「前代未聞のトリックを用いた探偵小説」と絶賛された。戦前の本格探偵小説の新時代を築いたといえる。「新青年」は「陰獣」を前後2回に渡り掲載したが、雑誌は増刷するほどで、当時の世評の高さがうかがえる。
通俗長編「蜘蛛男」を、かねてより執筆依頼のあった「講談倶楽部」に連載する。この作品は自身の趣向であった「エロ・グロ・猟奇・残虐趣味」を前面に押し出したものだった。作品は大好評で、これを契機として乱歩は続けざまにヒット作を連発させる。単行本は数十版を重ねた。これは探偵小説をポピュラーな地位に押し上げたといえる(通俗長編について乱歩は、黒岩涙香やモーリス・ルブラン、ポーなどから着想をえたと言っており、事実、そのような作品が多い)。
乱歩の通俗長編が大衆に歓迎された理由は、作品自体の面白さ以外に、時代的背景が影響していたといえる。金融恐慌の影響で、世間にはいわゆる「エロ・グロ・ナンセンス」といわれる退廃的気風が満ちていたのだ。
これらの通俗長編は、初期作品に比べると破綻があり(乱歩自身認めている)、これがミステリの低俗化を招いたとする批判がある。評論家の権田萬治は、著書「日本探偵作家論」において、乱歩の長編は翻案など一部を除きほとんどがプロットに破綻をきたしていると述べ、作品としての完成度を批判している。一方、乱歩と長年親交のあった評論家中島河太郎は、1974年刊の小学館万有百科事典(ジャンルジャポニカ)において、低俗性を認める一方で、市場拡大の貢献を言及している。
1931年(昭和6年)5月、乱歩初の「江戸川乱歩全集」全13巻が平凡社より刊行開始された。総計約24万部の売り上げを記録し、経営の行き詰まっていた平凡社を建て直すきっかけになったという。
乱歩は執筆に関して、長編小説のプロットをまとめることが苦手だったという。多くの長編連載を場当たりで執筆し、筋の展開に行き詰まってしまうことがあった。ストーリー展開の行き詰まりから休筆を繰り返すこととなった。また、長編を作り上げるにあたり、程度の低いものを書いているという意識に苛まれていた。これも休筆の要因といえる。
とりわけ、探偵小説の本舞台である「新青年」に本格ものを書こうとして行き詰まった経緯がある。「悪霊」は1934年(昭和9年)1月号までに3回中断し、探偵文壇の不評をこうむった。これ以外に、木々高太郎、小栗虫太郎らの台頭により、乱歩は自分の時代が過ぎ去ったと感じ始める。
1935年(昭和10年)頃より、乱歩は評論家として広く活躍し始める。評論集「鬼の言葉」は、その最初の成果である。その一方で、1936年(昭和11年)初めての少年ものを執筆する。のちにシリーズ化される「怪人二十面相」を雑誌少年倶楽部に連載したのだ。この作品は少年読者の圧倒的支持を受け、乱歩のもとに多数のファンレターが来たという。以後、乱歩は創作レパートリーに少年ものを定期的に加わえるようになった。
日本が戦争体制を強化していくにしたがい芸術への検閲が強まっていったが、1937年(昭和12年)頃より、その度合いは強くなった。探偵小説は内務省図書検閲室によって検閲され、表現の自由を制限された。一説では、内務省のブラックリストに乱歩の名が載っていたという。1939年(昭和14年)以降は検閲が激化し、無茶な削除訂正が頻発し、「芋虫」が発禁になっている。1941年(昭和16年)に入ってからは原稿依頼が途絶え、旧著がほぼ絶版になった。
太平洋戦争に突入すると、探偵小説は少年ものですら執筆不可能となり、乱歩は小松竜之介の名で子供向きの作品(科学読み物「知恵の一太郎」など)を書くようになった。
太平洋戦争中、抹殺されていた探偵文壇は、戦後、GHQの占領政策のもと急速に復興し始める。乱歩は1949年(昭和24年)1月号より「青銅の魔人」(雑誌「少年」に連載)で少年ものを再開する。また、創作以外に活動の幅を広げ、評論や講演、探偵作家クラブ(後の日本推理作家協会)の結成を行う。特に評論の分野では、1947年(昭和22年)「随筆探偵小説」が上梓された。このほか1951年(昭和26年)に「幻影城」、1954年(昭和29年)に「続・幻影城」、1958年(昭和33年)に「海外探偵小説作家と作品」が上梓される。これらの評論集は、乱歩の優れた批評眼と洞察力がうかがえる探偵小説論・探偵作家論といえる。
一方、乱歩の旧著に関して、大衆は「本格もの」の探偵小説よりも「変格もの」の通俗スリラーを支持した。乱歩の本意である本格ものはあまり反響がなかった。同時期に多数発表された長編探偵小説の中で、戦後継続して再刊されたのは乱歩の作品だけである(空前のリバイバルとなった横溝正史ですら、戦前長編は1,2作を除けば一時的に再刊されただけ)。また、ミステリの枠に留まらず、怪奇・幻想文学において存在意義がある。猟奇・異常性愛を描いた作品は後年の官能小説に多大な影響を残した。
また、戦後に再開した少年探偵団シリーズは子どもたちから絶大な支持を受け、昭和30年代ごろから映像化された。テンプレート:要出典範囲。戦後は雑誌「少年」の発行元だった光文社から「少年探偵江戸川乱歩全集」として全23巻が刊行された。乱歩最晩年の昭和39年頃から光文社は絶版となり、版権はポプラ社へ移動する。ポプラ社では、「少年探偵江戸川乱歩全集」として乱歩が児童向けとして書いた作品を全26巻で刊行し、更に乱歩の大人向けの作品を代作者が児童向けに書き直したものを続けて20巻刊行し合計全46巻の大全集となった。シリーズのほとんどで敵役となっている怪人二十面相は、推理小説に登場する架空キャラクターとしては、シャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパン、明智小五郎、金田一耕助らと並んで、広く親しまれている。なお、戦後に発表されたものについては、戦前に大人向けに書かれた推理小説・怪奇小説を子供向けに翻案したものがあり他者によって翻案なされた影響で、明智小五郎など登場人物の性格が、乱歩自身の設定と異なっていることがあった。
プロデューサーとして
戦後は、新人発掘にも熱心で、筒井康隆、大薮春彦など、乱歩に才能を見出された作家は少なくない。「宝石」編集長時代には、多くの一般作家に推理小説発表の場を与えている。代表的な作家に、歌舞伎評論家の戸板康二がいる。また、小林信彦を宝石社にスカウトし、『ヒッチコック・マガジン』の編集長に推薦している。
日本国外の推理作家との交流にも積極的で、エラリー・クイーンと文通してアメリカ探偵作家クラブ (MWA) の会員にもなったほか、フランスのイゴール・B・マスロフスキー、オランダのロバート・ファン・ヒューリック、W・G・キエルドルフ (nl) 、ソビエト連邦のロマン・キム (ru) 、韓国の金来成らと文通し、彼らを介して各国の推理小説事情を日本に紹介した。
晩年には、空想科学小説に興味を持ち、筒井康隆、矢野徹等、黎明期の日本のSF関係者に助力を与え、その商業出版に援助を惜しまなかった。1959年のインタビューでは、「推理物は一作目にいいものが多く、クリスティを例外に、一般的に年を取るにつれ筆が鈍る。自分にはすでに創意がない。60歳の誕生日会のとき再び筆を取ると宣言したが、書いてみたら納得がいかなかった。代わりに今後は探偵小説史のようなものをまとめたい」と語ったが、その夢は実現されなかった[3]。
生前・没後に各四度[※ 1]も全集・選集が刊行された作家は、日本では分野を問わず他に存在しない。
内外から尊敬を込めて大乱歩とも呼ばれた。山田風太郎は、「『大乱歩』という言葉もある。ほかにも一世を風靡した作家や、大衆から敬意を表された作家や、芸術的にもっと高いものを書いた作家は多いのに、大の字を冠してこれほどおかしくない人も珍らしい」と書いている[4]。
栄典
家族
1919年に鳥羽造船所勤務時代に知り合った村山隆子と結婚。一人息子の平井隆太郎は心理学者で立教大学教授(のち社会学部長、現在は名誉教授)。「少年探偵」シリーズの著作権継承者でもある。孫の平井憲太郎は鉄道雑誌『とれいん』の元編集長である。
作品一覧
- 江戸川乱歩の小説は色々の形で出版され、又全集の類も戦前から何度も刊行されている。現在、小説を児童向けも含めて最も多く収めているのは光文社文庫の「江戸川乱歩全集」(全30巻)である。またこの全集は編集者が入手出来た限りの乱歩生前の各版のバリエーションを比較し主要なものや意味のあるものは校異として巻末に記載されている点でも便利である。
小説
- 二銭銅貨 (『新青年』1923年4月)短編。 デビュー作。しかし、実質的な処女作は 火縄銃。
- 一枚の切符 (『新青年』1923年7月)
- 恐ろしき錯誤 (『新青年』1923年11月)
- 二癈人 (『新青年』1924年6月)
- 双生児 (『新青年』1924年10月)
- D坂の殺人事件 (『新青年』1925年1月) 明智小五郎、初登場作品。但し、まだ名探偵明智小五郎ではなく、素人探偵明智小五郎である。
- 心理試験 (『新青年』1925年2月) 明智小五郎登場作品。
- 黒手組 (『新青年』1925年3月) 明智小五郎登場作品。
- 赤い部屋 (『新青年』1925年4月)
- 日記帳 (『写真報知』1925年4月)
- 算盤が恋を語る話 (『写真報知』1925年4月)
- 幽霊 (『新青年』1925年5月) 明智小五郎登場作品。
- 盗難 (『写真報知』1925年5月)
- 白昼夢 (『新青年』1925年7月)
- 指環 (『新青年』1925年7月)
- 夢遊病者の死 (『苦楽』1925年7月)
- 百面相役者 (『写真報知』1925年7月)
- 屋根裏の散歩者 (『新青年』1925年8月) 明智小五郎登場作品。
- 一人二役 (『新小説』1925年9月)
- 疑惑 (『写真報知』1925年9月)
- 人間椅子 (『苦楽』1925年10月)
- 接吻 (『映画と探偵』1925年12月)
- 闇に蠢く (『苦楽』1926年1月~11月で連載中絶) 1927年に完結
- 湖畔亭事件 (『サンデー毎日』1926年1月~5月)
- 空気男 (原題:二人の探偵小説家)(『写真報知』1926年1月~2月で連載中絶) (未完)
- 踊る一寸法師 (『新青年』1926年1月)
- 毒草 (『探偵文芸』1926年1月)
- 覆面の舞踏者 (『婦人之国』1926年1月~2月)
- 灰神楽 (『大衆文芸』1926年3月)
- 火星の運河 (『新青年』1926年4月)
- 五階の窓 (『新青年』1926年5月) リレー連作小説の第1回目を担当
- モノグラム (『新小説』1926年7月)
- お勢登場 (『大衆文芸』1926年7月)リレー連作小説の第1回目を担当
- 人でなしの恋 (『サンデー毎日』1926年10月)
- パノラマ島奇談 (別表記:パノラマ島綺譚)(『新青年』1926年10月~1927年4月)
- 鏡地獄 (『大衆文芸』1926年10月)
- 木馬は廻る (『探偵趣味』1926年10月)
- 一寸法師 (『朝日新聞』1926年12月~1927年2月) 明智小五郎登場作品。
- 空中紳士 (原題:飛機睥睨)(『新青年』1928年2月~9月) 乱歩を含む5人の作家による合作
- 陰獣 (『新青年』1928年8月~10月)
- 芋虫 (原題:悪夢)(『新青年』1929年1月)
- 孤島の鬼 (『朝日』1929年1月~1930年2月)
- 押絵と旅する男 (『新青年』1929年6月)
- 蟲 (『改造』1929年9月~10月)
- 蜘蛛男 (『講談倶楽部』1929年8月~1930年6月) 明智小五郎登場作品。
- 何者 (『時事新報』1929年11月~12月) 明智小五郎登場作品。
- 猟奇の果 (『文芸倶楽部』1930年1月~12月) 明智小五郎登場作品。
- 魔術師 (『講談倶楽部』1930年7月~1931年5月) 明智小五郎登場作品。
- 黄金仮面 (『キング』1930年9月~1931年10月) 明智小五郎登場作品。
- 吸血鬼 (『報知新聞』1930年9月~1931年3月) 明智小五郎登場作品。小林少年、初登場。
- 江川蘭子 (『新青年』1930年9月) リレー連作小説の第1回目を担当
- 盲獣 (『朝日』1931年2月~1932年3月)
- 白髪鬼 (『富士』1931年4月~1932年4月」) 黒岩涙香「白髪鬼」を乱歩流に書き改めた作。
- 目羅博士 (原題:目羅博士の不思議な犯罪)(『文芸倶楽部』1931年4月)
- 地獄風景 (『平凡社版江戸川乱歩全集』1931年5月~1932年4月) 全集付録冊子への連載
- 恐怖王 (『講談倶楽部』1931年6月~1932年5月)
- 鬼 (『キング』1931年11月~1932年2月)
- 火縄銃 (『平凡社版江戸川乱歩全集』1932年4月) 学生時代(1916年以前)の習作
- 殺人迷路 (『探偵倶楽部』1932年10月) 全集の付録冊子に連載されたリレー連作小説の第5回目を担当
- 悪霊 (『新青年』1933年11月~1934年1月で連載中絶) (未完)[※ 2]
- 妖虫 (『キング』1933年12月~1934年10月)
- 黒い虹 (『婦人公論』1934年1月) リレー連作小説の第1回目を担当
- 黒蜥蜴 (『日の出』1934年1月~11月) 明智小五郎登場作品。
- 人間豹 (『講談倶楽部』1934年1月~1935年5月) 明智小五郎登場作品。
- 石榴 (『中央公論』1934年9月)
- 緑衣の鬼 (『講談倶楽部』1936年1月~) イーデン・フィルポッツ「赤毛のレドメイン家」の翻案。
- 大暗室 (『キング』1936年12月~)
- 幽霊塔 (『講談倶楽部』1936年12月~) 黒岩涙香「幽霊塔」を乱歩流に書き改めた作。
- 悪魔の紋章 (『日の出』1937年9月~) 明智小五郎登場作品。
- 暗黒星 (『講談倶楽部』1939年1月~) 明智小五郎登場作品。
- 地獄の道化師 (『富士』1939年1月~) 明智小五郎登場作品。
- 幽鬼の塔 (『日の出』1936年4月~) ジョルジュ・シムノン「聖フォリアン寺院の首吊男」の翻案。
- 新宝島 (『少年倶楽部』1940年4月~1941年3月)
- 智恵の一太郎 (『少年倶楽部』1942年1月~)
- 偉大なる夢 (『日の出』1943年11月~)
- 断崖 (『報知新聞』1950年3月~)
- 三角館の恐怖 (『面白倶楽部』1951年1月~) ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」の翻案。
- 畸形の天女 (『宝石』1953年10月~)
- 女妖 (『探偵実話』1954年1月~)
- 兇器 (『大阪産業経済新聞』1954年6月) 明智小五郎登場作品。
- 悪霊物語 (『講談倶楽部』1954年8月~)
- 化人幻戯 (『別冊宝石』~『宝石』1954年11月~) 明智小五郎登場作品。
- 影男 (『面白倶楽部』1955年1月~) 明智小五郎登場作品。
- 月と手袋 (『オール讀物』1955年4月~) 明智小五郎登場作品。
- 探偵少年 (『読売新聞』1955年9月~)
- 防空壕 (『文芸』1955年7月~)
- 大江戸怪物団 (『面白倶楽部』1955年7月)
- 十字路 (講談社、1955年11月、書き下ろし) 渡辺剣次による第一稿をリライト。トリック、プロットも渡辺剣次の案出。
- 堀越捜査一課長殿 (『オール讀物』1956年4月)
- 妻に失恋した男 (『産経時事』1957年10月~11月)
- ぺてん師と空気男 (桃源社、1959年11月、書き下ろし)
- 指 (『ヒッチコック・マガジン』1960年1月)
- 薔薇夫人(未収録作品)
怪人二十面相/明智小五郎/少年探偵団
1936年1月から1962年12月にかけて発表された少年向けの小説。少年探偵団や怪人二十面相が登場するもの。
- 怪人二十面相 (『少年倶楽部』1936年1月~12月)
- 少年探偵団 (『少年倶楽部』1937年1月~12月)
- 妖怪博士 (『少年倶楽部』1938年1月~12月)
- 大金塊 (『少年倶楽部』1939年1月~1940年2月)
- 青銅の魔人 (『少年』1949年1月~12月)
- 虎の牙 (『少年』1950年1月~12月)*ポプラ社版では「地底の魔術王」
- 透明怪人 (『少年』1951年1月~12月)
- 怪奇四十面相 (『少年』1952年1月~12月)
- 宇宙怪人 (『少年』1953年1月~12月)
- 鉄塔の怪人 (『少年』1954年1月~12月)*ポプラ社版では「鉄塔王国の恐怖」
- 黄金の虎 (「探偵少年」改題 『読売新聞』1955年1月~12月)
- 灰色の巨人 (『少年クラブ』1955年1月~12月)
- 海底の魔術師 (『少年』1955年1月~12月)
- 黄金豹 (『少年クラブ』1956年1月~12月)
- 魔法博士 (『少年』1956年1月~12月)
- 天空の魔人 (『少年クラブ増刊』1956年1月15日)
- サーカスの怪人 (『少年クラブ』1957年1月~12月)
- 妖人ゴング (『少年』1957年1月~12月)*ポプラ社版では「魔人ゴング」
- 魔法人形 (『少女クラブ』1957年1月~12月)*ポプラ社版では「悪魔人形」
- まほうやしき (『たのしい三年生』1957年1月~3月)
- 赤いかぶとむし (『たのしい三年生』1957年4月~1958年3月)
- 奇面城の秘密 (『少年クラブ』1958年1月~12月)
- 夜光人間 (『少年』1958年1月~12月)
- 塔上の奇術師 (『少女クラブ』1958年1月~12月)
- 鉄人Q (『小学四年生』~『小学五年生』1958年4月~1960年3月)
- ふしぎな人 (『たのしい二年生』1958年8月~1959年3月)
- 仮面の恐怖王 (『少年』1959年1月~12月)
- 名たんていと二十めんそう (『たのしい三年生』1959年4月~12月)
- かいじん二十めんそう (『たのしい一年生』~『たのしい二年生』1959年11月~1960年12月)
- 電人M (『少年』1960年1月~12月)
- おれは二十面相だ!! (『小学六年生』1960年4月~1961年3月)*ポプラ社版では「二十面相の呪い」
- 怪人と少年探偵 (『こども家の光』1960年9月~1961年9月)
- 妖星人R (『少年』1961年1月~12月)*ポプラ社版では「空飛ぶ二十面相」
- 超人ニコラ (『少年』1962年1月~12月)*ポプラ社版では「黄金の怪獣」
随筆・評論
- 悪人志願(1929年)
- 鬼の言葉(1936年)
- 幻影の城主(1947年)
- 随筆探偵小説(1947年)
- 幻影城(1951年。評論集)
- 続・幻影城(1954年。評論集。類別トリック集成を含む)
- 探偵小説三十年(1954年)
- 探偵小説四十年(1961年。乱歩の自伝的回想録。乱歩の目を通して描かれた初期日本探偵文壇史とでも称すべきものであり、貴重な文献資料でもある)
- 探偵小説の「謎」(1956年)
- 海外探偵小説作家と作品(1957年。評論集)
- わが夢と真実(1957年。それまでの随筆のうち、乱歩自身にかかわるものを収録したもの)
- 乱歩随筆(1960年)
- 「彼・幻影の城」(1963年)
翻案・リライト
作品一覧に掲載した作品を含めて、翻案、リライト作品。
- 白髪鬼 (1931年) - メアリ・コレリ(Marie Corelli)作 「ヴェンデッタ」(Vendetta, A Story of One Forgotten)の黒岩涙香による翻案小説「白髪鬼」をリライトしたもの。
- 緑衣の鬼 (1936年) - イーデン・フィルポッツ(Eden Phillpotts)作 「赤毛のレドメイン家」(The Red Redmaynes)の翻案小説。
- 幽霊塔 (1937年) - アリス・マリエル・ウィリアムソン(Alice Muriel Williamson)作 「灰色の女」(A Woman in Grey)の黒岩涙香による翻案小説「幽霊塔」をリライトしたもの。
- 鉄仮面 (講談社、1938年) - 世界名作物語5→少国民名作文庫→世界名作物語→世界名作全集5 黒岩涙香による翻案小説「鉄仮面」を小中学生向けにリライトしたもの。
- 幽鬼の塔 (1939年) - ジョルジュ・シムノン(Georges Simenonlli)作 「聖フォリアン寺院の首吊男」(Le Pendu de Sant-Phollien)の翻案小説。
- 三角館の恐怖 (1951年) - ロジャー・スカーレット(Roger Scarlett)作 「エンジェル家の殺人」(Murder Among the Angells)の翻案小説。
派生作品
映画化
多数あり。「明智小五郎」も参照のこと。以下はその一部である。
- 一寸法師(1927年)
- パレットナイフの殺人 (1946年)
- 一寸法師(1948年)
- 氷柱の美女 (1950年)
- 怪人二十面相(1954年)
- 青銅の魔人 (1955年)
- 一寸法師 (江戸川乱歩の一寸法師)(1955年)
- 少年探偵団/妖怪博士(1956年)
- 少年探偵団/二十面相の悪魔(1956年)
- 死の十字路(1956年)
- 少年探偵団/かぶと虫の妖奇(1957年)
- 少年探偵団/鉄塔の怪人(1957年)
- 少年探偵団/二十面相の復讐(1957年)
- 少年探偵団/夜光の魔人(1957年)
- 少年探偵団/透明怪人(1958年)
- 少年探偵団/首なし男(1958年)
- 少年探偵団/敵は原子潜航艇(1959年)
- 蜘蛛男(1958年)
- 黒蜥蜴(1962年)
- 黒蜥蜴(1968年)
- 盲獣(1969年)
- 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969年)
- 屋根裏の散歩者(1970年)
- 江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者(1976年)
- 江戸川乱歩の陰獣(1977年)
- 押繪と旅する男(1994年)
- 屋根裏の散歩者(1994年)
- RAMPO(1994年)
- 人でなしの恋(1995年)
- 人間椅子(1997年)
- D坂の殺人事件(1998年)
- 双生児 -GEMINI-(1999年)
- 盲獣vs一寸法師(2001年、公開は2004年)
- 乱歩地獄(2005年)
- 人間椅子(2006年)
- 屋根裏の散歩者(2007年)
- 陰獣(フランス映画 2009年)
- 失恋殺人(2010年)
- キャタピラー(2010年)※乱歩の『芋虫』をモチーフとしているが、製作者側は公式には乱歩原作としていない
漫画化
乱歩作品の漫画化は、藤子不二雄による子供向けの『少年探偵団』ものが1959年(昭和34年)に発表されている。初の成人向け作品の漫画化としては、昭和45年に少年誌『週刊少年キング』が「江戸川乱歩恐怖シリーズ」と銘打ち、エロ・グロ物を含む乱歩作品を横山光輝、桑田次郎、古賀新一、石川球太の四者に競作させている。
- 怪人二十面相(藤子不二雄 1959年)
- 白髪鬼(横山光輝 1970年)
- 地獄風景(桑田次郎 1970年)
- 屋根裏の散歩者(古賀新一 1970年)
- 人間椅子、芋虫、白昼夢、お勢地獄(お勢登場)(石川球太 1970年)
- 黒とかげ(高階良子 1971年4月~8月 原題『黒蜥蜴』)
- 血とばらの悪魔(高階良子 1971年11月~1972年2月 原題『パノラマ島奇談』)
- ドクターGの島(高階良子 1974年4月~1974年8月 原題『孤島の鬼』)
- 陰獣(古賀新一 1984年)
- 江戸川乱歩 屋根裏の散歩者(長田ノオト 1994年)
- 大暗室(山田貴敏 1997年)
- 妖怪博士(山田貴敏 1997年)
- 人間椅子(有沢遼 1997年)
- 江戸川乱歩のパノラマ島奇談(長田ノオト 1999年)
- パノラマ島綺譚(丸尾末広 2007年)
- 百面相役者(東元 2007年)
- 双生児(東元 2007年)
- 人間椅子(東元 2007年)
- 鏡地獄(東元 2008年)
- 人でなしの恋(東元 2008年)
- 赤い部屋(東元 2008年)
- 怪人二十面相(山田貴敏)
- 大金塊(山田貴敏)
- 江戸川乱歩の押絵と旅する男(長田ノオト)
- 江戸川乱歩の孤島の鬼(長田ノオト)
- 芋虫(丸尾末広)
参考文献
※代表的な書目の一部で、品切・絶版も含んでいる。
- 入門書・図版本・小著
- 伝記研究
- 作品研究
- 書誌研究
乱歩が登場するフィクション
- 陰獣:乱歩作。自身をパロディした作家「大江春泥」が登場。春泥の本名「平田一郎」も乱歩の本名「平井太郎」をもじっている。
- 呪いの塔:横溝正史作。上記「陰獣」をさらに捻った推理パロディ長編。意外性を狙っているため、乱歩に相当する人物は、親友の横溝以外には困難だったであろう遠慮会釈のない造形となっている。
- 乱歩幻想譜:斎藤栄作。乱歩を主人公にして、作品世界と関連した事件に次々と遭遇する連作短編。
- 加納一朗「浅草ロック殺人事件」1985年 - 乱歩をモデルとした探偵作家「香川幻夢」が登場。
- 映画「まぼろし探偵 地底人襲来」1960年 - 乱歩のパロディである作家「江戸山散歩」がキャラクターとして登場。
- 『コズミック』 - 清涼院流水作。
- 映画「シルバー假面」2006年 - 作家になる前の「平井太郎」として登場。
- 映画「ゴーストライターホテル」2012年 - 著名な作家たちが執筆のために宿泊したというホテル「本天堂」に現れる作家の霊のひとつとして。乱歩役はカンニング竹山。
- 舞台「サンタクロースが歌ってくれた」(演劇集団キャラメルボックス) - 作家になる前の「平井太郎」として劇中映画「ハイカラ探偵物語」に芥川龍之介と共に黒蜥蜴を追い詰める探偵役として登場し、スクリーンから飛び出した黒蜥蜴を追って芥川と共にスクリーンから飛び出す。太郎役は上川隆也と岡田達也(2010年10日限定公演のみ)。
その他
- 乱歩が住んでいた屋敷は、立教大学と隣接していた。その縁で現在は立教大学によって「旧江戸川乱歩邸」として公開保存されている。
- 乱歩は、ファンにサインを求められると必ず色紙に「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」あるいは「晝〔ひる〕は夢 夜〔よ〕ぞ現〔うつつ〕」と書き添えた。
- 昭和55年(1980年)1月になって、大正13年(1924年)9月から東京へ転居する大正15年(1926年)1月まで2階を書斎にしていた、当時「守口町外島694番地」であった大阪府守口市八島町の家が今も残っていることが判明した。この家は一時期一般開放されていたが、平成22年(2010年)に解体された。「江戸川乱歩寓居の跡」と書かれた看板が掲げられていた[※ 3]。
- 乱歩にはお稚児趣味があり、若い歌舞伎役者を可愛がり、ただのファンを超えた関係があった[6]。
脚注
注釈
- ↑ 『全集』は刊行順に、生前は平凡社全13巻(戦前)、春陽堂全16巻、光文社全23巻、桃源社全18巻(近年沖積舎で復刻)、没後は講談社で全15巻、増訂版が全25巻、さらに「文庫版全集」が二度、昭和末期に講談社文庫全66巻、平成(21世紀に入り)に光文社文庫全30巻
- ↑ 途中で話が続けられなくなり中断した。乱歩本人が掲載誌にお詫びとして読者へ謝罪し、中断を発表している。
- ↑ 「心理試験」や「人間椅子」「屋根裏の散歩者」などの初期の作品を含む21作品がこの家で執筆されており、そのほとんどが大正14年(1925年)に創作された。明智小五郎が初登場する「D坂の殺人事件」もこの家で創作された。また乱歩はこの家に住んでいた当時、床の間の天井板を外して踏み台に載り、首だけを出して屋根裏を覗いてみて、その捨てがたい眺めに陶然とした。その経験を元に「屋根裏の散歩者」が書かれた
出典
関連項目
- 平井蒼太 - 乱歩の次弟
- 平井隆太郎 - 乱歩の一人息子
- 松村喜雄 - 乱歩の従妹の息子
- 黒岩涙香 - 乱歩に大きな影響を与えた作家の一人
- 光石介太郎 - 一時期、乱歩の弟子のような立場にあった小説家。『新青年』に乱歩の文体模写小説「類人鬼」を発表している。
- J・B・ハリス - 乱歩の最初の英訳単行本の翻訳を担当
- 美輪明宏 - 三島由紀夫脚色の舞台黒蜥蜴はライフワーク
- 杉原千畝 - 高校、大学とも同窓で知人の外交官
- 江戸川乱歩賞
- 江戸川乱歩の美女シリーズ - 1977年~1985年 テレビ朝日系 土曜ワイド劇場は25作、明智小五郎役は天知茂
- RAMPO 映画
- 乱歩R - 日本テレビ放送網系列のテレビドラマ
- FC鈴鹿ランポーレ - 鈴鹿市を本拠地とするサッカークラブ。前身は名張市を本拠地にした三重FCランポーレ。同市出身の乱歩の名前にちなんで命名。
- 乱歩 (小惑星)
- 横溝正史 - 乱歩の生涯に亘る親友。探偵小説家。名探偵金田一耕助の生みの親として有名。
- ワセダミステリクラブ - 乱歩が初代顧問を務めた。
外部リンク
- 旧江戸川乱歩邸 - 立教大学サイト
- 江戸川乱歩(名張市)
- 江戸川乱歩を歩く - 1・2
- 江戸川乱歩 少年探偵シリーズ 全26巻 ポプラ文庫クラシック版 - ポプラ社の商品情報
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 1959年7月31日の対談「文壇よもやま話」より。カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス「江戸川乱歩」(3)
- ↑ 山田風太郎『風眼抄』p.152(六興出版、1979年)
- ↑ 江戸川乱歩の世界
- ↑ カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス「江戸川乱歩」(3) 元編集者大村彦次郎談