リアルタイム字幕放送

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リアルタイム字幕放送(リアルタイムじまくほうそう。リアルタイムキャプション放送とも)は、字幕つきの放送のうち、放送時に字幕を作成・付加するシステムを指す。ここでは、主に日本テレビ放送で、受信機で表示を切り替えられるもの(「字幕放送」)を述べる。

概要

日本の字幕放送は事前に収録した番組にしか対応していなかった。生放送における字幕放送は、海外の表音文字のみ使用する場合だと音声認識で対応できたが、日本では同じ音でも複数の表記方法がある表語文字が使われ、機械的や技術的な問題があり行われていなかった。聴覚障害者高齢者にも情報バリアフリーを推進していこうとNHK放送技術研究所が音声認識ソフトによる文字放送を開発した。2000年3月から日本放送協会(NHK) の一部番組で実施されており、現在は民間放送(2013年現在は前者の日本テレビTBSテレビフジテレビテレビ朝日テレビ東京各系列と、その番組を同時ネットする一部の独立局や、一部のBS放送局およびCS放送局)でも実施されている。

原理

リアルタイム字幕の原理には、音声認識技術を用いた音声認識方式と、キーボードから文字を入力する方式の2方式が存在する。

字幕を生成する過程以外では、通常の字幕放送と同じ流れでデータが重畳され、電波に乗せられて届けられる。原理的に字幕を生成する部分での遅延が避けられないので、字幕は発声の数秒遅れで表示される事になる。

音声認識方式

基本的には音声認識による文字情報の直接生成を用いたものである。音声認識は現在でも100%の変換が難しいものであるが、ニュースにおいては語調や使用される単語などを一定の条件に制限できる事から、この用途に限って音声認識を用いる事で高い変換効率を実現した。開発当初、リアルタイム字幕の付加はスタジオなどでのアナウンサーの発声に限られる場合が多く、VTR映像などの音声には同様の字幕が付かない事が殆どだった。スポーツイベントやNHK紅白歌合戦などの番組では、専門のアナウンサーが字幕生成のためにセリフを再発声する事で同様の条件を達成している(リスピーク方式)場合がある。

キーボード入力方式

放送音声を入力オペレータが聞きながら同時に打ち込みを行う。入力は複数人で分担して行われるが、方式によって役割分担が異なっている。

主に2つの方式がある。

  • 一般的なキーボードを用いた方式
  • 速記キーボードを用いた方式
    • スピードワープロ[1]ステンチュラといった速記用に最適化されたキーボードを使う。聞き取った音を入力する人と、その文字を漢字に変換する人に分担されている点が前項とは異なる。このため本方式ではかならず2人単位の人員を要する。トップスピードでは前項の方式に勝るものの、オペレータの養成に2 - 9年というかなりの期間を要するため未だ人員が足りず、放送局の需要に追いついていないのが現状。スピートワープロ研究所[2]ワードワープ[3] が採用しており、NHKやいくつかの民放がこれらの会社と契約をしている。

通常は打ち込み速度が放送音声より遅れるため、入力オペレータと校正オペレータの組を複数セット用いてリレー方式で入力を行う。

通常の字幕放送との違い

テンプレート:特殊文字

  • 音声認識・キーボード入力共に、放送音声から字幕が表示されるまで数秒の遅延が発生することは、基本的に避けられない。アメリカのクローズドキャプションも同様。
    • NHKの生放送番組(ニュース番組以外)ではVTR収録部分や予め決めているコメントがあるときは事前に作成しているためか遅延なしまたは微妙な遅延程度に抑えて表示することもある。
  • 民放の番組ではCMや提供クレジットに入ると字幕が表示されなくなることがあり、CM明けでも表示されなく、全ての発言が表示されない事がある(収録の場合は画面下中央または左右端に表示されていても字幕が表示されることがある)。テレビ東京系列の夕方のニュース番組では特集VTRや現地中継映像放送時と天気予報放送中にも提供クレジット(BSジャパンはノンスポンサーのため放送局区別のための局ロゴ)が表示されるため字幕表示は一時中断されるが、提供クレジット表示終了後、後追いで一時中断した続きの字幕が表示されるため、全ての発言が欠けることなく表示されている。
  • 歌や音楽の音符・効果音の記述「(○○の音)」等、音関係の表示が少ない(一部番組では実施)。
  • 表示位置は半固定。モニタの設定ができる場合をのぞき、常時同じ場所に表示される(NHKではほとんどの番組でテロップなどが隠れないように、字幕の位置を動かしている)。
  • 注意しないと誰が話しているのか分からないことがある。アメリカのリアルタイム字幕放送同様に話し始めは“>>”の記号を挿入。記号の前に名前を入れることで回避することが出来、NHKの大相撲中継などが実施しているが、未実施が多い。ただ、NHKでは生放送でも話している人の苗字が表示されることもある。
  • 日本の字幕放送は色別に区分けする事ができるが、リアルタイム字幕での実施例はNHKの大相撲中継などのスポーツ中継など少ない。
  • 一部の録画番組では、放送日時近くまで番組制作をしていて、通常の字幕放送の制作方法では放送に間に合わないためか、リアルタイム字幕放送と同様の形式で字幕が表示されている場合がある(日本テレビ系列番組に多い)。
  • 人名などの固有名詞が発せられると、その漢字が判明するまで字幕の進行が止まってしまうか、すぐに判明しない場合はひらがなもしくはカタカナでの入力を余儀なくされる(事前に準備しておいた資料と突き合わせられれば、かなりの改善が期待される)。
  • 携帯電話・固定電話・常用ではない漢字などの図形情報の表示ができない(普段は図形情報で表示される草彅剛の"彅(なぎ)"などはひらがなで表示)。
  • 放送局によって話がテロップ表示されている箇所も字幕表示するかしないかが異なる(日本テレビ系とフジテレビ系はテロップ表示部分も字幕表示〔外国語を訳したテロップ表示を除く〕)。
  • まれに誤字や脱字が出る場合もある。そのため番組開始冒頭に事前に作成した「生放送のため誤字を生じる場合があります」や「誤字脱字の場合があります」などといったその旨の断りを表示している。

実施番組

ローカルに差し替わった部分では行わない場合がある。

NHK(特記がない限りすべて総合テレビ)

  • おはよう日本(7時台の全国ニュース枠と首都圏ローカル枠。祝日では祝日特集枠も含む)
  • あさイチ(2011年10月3日放送分より)
    • NHKニュース(月曜 - 金曜9時00分。祝日およびスポーツ中継が組まれている場合は8時15分からに変更する場合あり。2009年度は8時30分からだった)
  • NHKニュース(正午)
  • ひるブラ(2011年11月28日放送分より不定期で実施。2012年度より連日実施。ただし、事前収録の回と総集編「ひるブラ特選」は通常の字幕放送となる)
  • NHKのど自慢(2013年度より、事前収録および毎年12月最終週放送の「熱唱・熱演・名場面」は通常の字幕放送となる)
  • NHKニュース(13時、2009年度より)
  • スタジオパークからこんにちは2010年度より。アンコール放送は通常の字幕放送となる)
  • お元気ですか日本列島(2010年度より)
  • NHKニュース(14時・15時、2013年度より)
  • NHKニュース(16時、開始は2012年度だが、実際は2012年3月14日放送分より実施。大相撲中継期間中も16時過ぎからの中断ニュースで実施。)  
  • ゆうどきネットワーク(2010年11月29日放送分より不定期で実施、2011年4月より連日実施)
  • NHKニュース(16時55分)(2008年度より。大相撲期間中も17時00分過ぎからの中断ニュースで実施)
  • ゆうどきネットワーク 関西発
  • NHKニュース(18時)(2011年度より)
  • 首都圏ネットワーク(茨城県を除く関東地方向け、2012年9月18日より)
  • てれまさむね宮城県向け)
  • ほっとイブニング東海3県向け、2013年4月より)
  • ニューステラス関西大阪府向け、2013年4月より)
  • 九州沖縄のニュース・気象情報(九州・沖縄向け)
  • 熱烈発信!福岡NOW福岡都市圏筑後地方向け)
  • NHKニュース7
  • クローズアップ現代(2009年8月より。全編収録の場合は通常の字幕放送となる)
  • 首都圏ニュース845(茨城県を除く関東地方向け、2012年9月18日より)
  • ニュースみやぎ845(宮城県向け、祝日は字幕放送なし)
  • ニュース845東海(東海3県向け、祝日は字幕放送なし、2013年3月11日より)
  • 関西845(大阪府向け、祝日は字幕放送なし、2013年3月11日より)
  • ニュース845福岡福岡県向け、祝日は字幕放送なし)
  • ニュースウオッチ9
  • 特報首都圏(関東・甲信越地方向け。ろーかる直送便内の再放送では通常の字幕放送となる)
  • 首都圏スペシャル(関東・甲信越地方向け、生放送時のみ実施)
  • 週刊ニュース深読み  
  • NHK歌謡コンサート(録画放送に変更される場合は通常の字幕放送となる。2010年度まで放送されていたBS2では録画放送であるため通常の収録番組と同じく喋っている内容を同時にタイムラグなしで表示する他、一部追加修正されていた。)
  • 思い出のメロディー(中断ニュースを含む)
  • 紅白歌合戦(大晦日、中断ニュースを含む)
  • 大相撲中継(15時台から。総合テレビは16時00分過ぎおよび17時00分過ぎからの中断ニュースを含む。なお、総合テレビが15時台・16時台に国会中継や特設ニュースが組まれ、BS1(サブチャンネルの102chも含む)で代替放送する場合、または総合テレビで特設ニュースにより、Eテレで代替放送する場合でも実施される)
  • NHKプロ野球(主に総合テレビで放送される巨人戦が中心だが、他の一部試合も対応している。BS1は当初放送予定の総合テレビで特設ニュースが組まれる関係で代替放送される場合に限り実施。かつてはBShiでも総合テレビと同時放送の場合に実施していた)
  • 全国高等学校野球選手権大会中継(開会式、決勝、閉会式のみ)
  • NHKとっておきサンデー(内包される連続テレビ小説のダイジェストも含む)
  • ハートネットTV(Eテレ 生放送時のみ実施し、収録時は通常の字幕放送となる。)
    • その他にも不定期で各種スポーツ中継や特集番組の一部でも実施されている。
    • ニュース番組全般および「クローズアップ現代」以外の番組では開始冒頭に「生字幕放送でお伝えします」と表示される。一時期、番組によっては字幕キャスターの氏名も表示されていた。
    • 災害・地震・津波に関する全波一斉放送の特設ニュースで実施する場合については地上波の総合・Eテレ、BS波のBS1・BSプレミアムの国内向けテレビ放送全波で実施される。
    • 生放送でも事前収録部分では事前に制作した字幕を用意して放送のタイミングに合わせて表示される(クローズアップ現代の挨拶のコメントでも同様である)。

民間放送

日本テレビ系列

※その他、各種スポーツ中継においても実施されている。

以下は収録番組だが、音声認識のリアルタイム字幕放送を採用する事がある番組。放送回によってはあるいは特別番組の場合にリアルタイム字幕放送を採用する事もある。そのため、生放送以外では、再放送で通常の字幕放送をするために改善が必要となる。

※リアルタイム字幕放送番組の表示位置は特記のない限り、すべて画面上段に固定表示されている。

テレビ朝日系列

※その他、サッカー日本代表の試合やゴルフ中継等各種スポーツ中継においても実施されている。字幕は画面中央の段に固定表示されている。ニュース番組ではスタジオパート以外の部分には黄色文字で「一部には字幕が付いておりません。ご了承ください」と表示されることがある。

TBS系列

※その他、各種スポーツ中継においても実施されている。字幕は画面中央(やや下寄り)に固定表示されている。

※TBSからのニュース番組で実施する場合、基本的にキャスターのニュース読みの文末を丁寧体(「です・ます」調)から新聞記事の文章のような普通体(「だ・である」調)に変換して表示している。

(例:ニュース読み「JNNの取材で明らかになりました。」⇒字幕「JNNの取材で明らかになった。」)

また、通常の字幕放送では句点(。)はつけないが、リアルタイム字幕放送では付けている事が多い。

テレビ東京系列

  • 夕方のニュース番組(2008年4月14日、『速ホゥ!』より実施。同時ネットを行っている独立局でも実施。BSジャパンでも2012年3月30日の地上波同時放送打ち切りまで実施していた)
  • ゴルフ中継(2013年9月以降。ただし、同時放送されるBSジャパンは除く)

フジテレビ系列

なお、FNNレインボー発は事前に字幕を用意した、従前の字幕放送。

※その他、各種スポーツ中継や緊急時の報道特別番組においても実施されている。字幕は画面上の段に固定表示されている(表示位置は日本テレビ系列よりも若干下がっている)。

過去に実施された番組

※NHKは総合テレビのみで夜間時間帯と午前の録画放送で実施(Eテレは実施なし)。
※民放はテレビ東京を除く在京キー局系列各局で夜間と深夜(日本テレビ系列・テレビ朝日系列・TBS系列放送分のみ)の時間帯で実施。
※開会式・閉会式の生中継、ハイライト、録画中継のいずれも実施。
  • 60番勝負(NHK・日本テレビ共同制作。2013年2月2日・3日)
※2013年2月2日はNHK(総合テレビ)。翌3日は日本テレビから送出。

参考資料

  • 読売新聞2013年4月9日付24面「テレビ知り隊」生放送の字幕、どう作成?

脚注

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  1. 超高速入力キー「ステノワード」(スピードワープロ研究所)
  2. スピードワープロ研究所
  3. 株式会社ワードワープ