翔べ! 必殺うらごろし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Pathnav テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テンプレート:Sidebar with collapsible lists翔べ! 必殺うらごろし』(とべ! ひっさつうらごろし)は、1978年12月8日より1979年5月11日まで毎週金曜日22:00 - 22:54に、ABC松竹(京都映画撮影所、現・松竹撮影所)が共同製作・テレビ朝日系列で放送された時代劇。全23話。主演は中村敦夫

必殺シリーズの第14作目。

概要

本作は当時のオカルトブームに立脚した作品構成となっており、また殺しの依頼やスタイルなど、当時として奇抜であった必殺シリーズとして見てもかなり異質な作品である(詳しくは作品内容を参照)。毎話ごとに怪奇現象(超常現象)が登場するが、これはその通り不可思議な現象であって、何らかのトリックがあるわけではない。また、その回で取り扱った怪奇現象(オカルト)には、ナレーターによる解説(例えば「ソビエトでテレパシーの研究がなされていた」など)が入るのも特徴である。

しかし、これらある種の斬新的なコンセプトは受け入れられず、必殺シリーズとしては最低の視聴率を記録した。このことによってシリーズ全体の打ち切りすら検討されるに至り、「必殺の決定版を作ろう」というコンセプトで次作『必殺仕事人』が作られることになる(『仕事人』は以後、後期シリーズを代表する大ヒット作となり、打ち切りは撤回される)。

本作は、撮影中に先生役の中村敦夫が負傷したり、おばさん役の市原悦子や若役の和田アキ子が病気を患うなど、オカルトチックなトラブルが相次いだ。特に和田の体調不良は、シリーズ終盤における若の登場機会を著しく減少させるなど展開に多大な影響を与えた。

本作の音楽は比呂公一が担当している。そのためしばしば楽曲が流用される必殺シリーズにおいて、前作までの楽曲が作中で使用されることはなく、以後のシリーズでも本作の楽曲が使用されることは無かった。ただし、スポンサーのテロップ曲だけは前作までと変わらず森田公一作曲「必殺商売人」のBGMが使用された。

作品内容

摩訶不思議な力を持つ行者の「先生」を中心に、記憶喪失の元殺し屋で、生き別れの子供を捜す「おばさん」、人並みはずれた体躯ゆえに女扱いされず、世をすねて男として生きてきた「若」、江戸で殺しの斡旋業をしていた「正十」らが、死者の恨みの声を聞き、その恨みを晴らしていく。

本作はオカルトを扱った異色作であるが、裏稼業(闇の稼業)についても他シリーズと大きく異なる。そもそも本作は稼業として殺しは行っておらず、旅先で出くわした怪奇現象を解決しようとする過程で先生が死者の声を聞き、その恨みを晴らす、というのが基本パターンである。よって、原則として頼みの筋から金を受け取ることはない。ただし、正十が何らかの方法や理由で金を手に入れていることは多く、それを分配するという形で金を手に入れることはよくある。

また、他のシリーズが夜に殺しを敢行することが多いのに対し、(先生が日の出の際に死者の声を聞くこともあって)昼間に敢行するというのも特徴的である。

登場人物

本作で殺しを行うメインの登場人物の3人は、一貫してあだ名で呼ばれ本名が登場しない。

主要人物

先生
演 - 中村敦夫
太陽を信仰する行者。大日如来を示す梵字が書かれた旗竿を掲げ、修行の旅を続けている。
太陽の光を浴びることにより、様々な超人的な能力を発揮する。旅先ででくわす怪奇現象の解決のためには自分の身も顧みない。俗世間的な欲望は全く持ち合わせておらず、正当な報酬であっても金品などの受け取りは基本的に拒否している。一方で一般常識にかなり疎いため、周囲の人物を困らせることもしばしば。食事は薬草を煎じたもののみで賄う。普段から自然食しか口にしないせいか下戸で、酒を呑むと卒倒する。
上記のように本作は頼み人は登場せず、先生が死者の声を聞くことによって、その恨みを晴らす。
演 - 和田アキ子(第21、22話除く)
男装の女性。大柄な体格と人並み外れた怪力を持つばかりに女扱いされたことがなく、世を拗ねて男として生きることを決めている。旅の途中で出会った先生の力を目の当たりにし、彼に弟子入りする。粗野な言動が目立つが、実は心優しい人情家で涙もろい。料理や裁縫が得意。
殺しもするが、正十と共に情報収集を任されることも多い。
終盤は登場機会が減少し、最終話も病気で寝込んだという設定で、最初と最後にわずかに登場するのみである。これは演じた和田の体調不良により取られた措置だったことが後年に明かされている。
最終話では、おねむから「故郷に帰り女として生きるべき」というおばさんの遺言を受け取り、再び若があてもなく旅立つ様子がラストシーンとして使用された。
なお、演じた和田は、オファーが来た当初は「時代劇に出られる」と聞いて、大奥のような優雅な役を想像して喜んでいたが、設定が男と間違われる大女で、さらに殺し方も相手をひたすら殴り殺すということを聞かされ、ショックを受けたという[1]。しかし、後の『テレビ探偵団』(TBS)では殺しのシーンをきれいに撮ってくれたことにも触れている。
また、このときの放送で若が着ていた刺し子は、後番組の『必殺仕事人』の秀の初期衣装に転用されたことも明かした。
おばさん
演 - 市原悦子(第14、16話除く)
4年前、気が付いたら道の真ん中に立っていたという中年女性。それ以前の記憶は無く、あても無く彷徨っていた。先生との出会いで記憶の一部を取り戻し、以後先生と行動を共にする。その正体は殺し屋で、その頃の記憶は無いものの熟練の感覚で標的を葬る。
おっとりとした性格だが曲者揃いの一行のまとめ役であり、若や正十も掛け値なく信頼を置いている。
第22話において記憶を取り戻し、記憶を失った原因が幼い息子に正体を知られたことのショックとわかる。そして最終話にて、息子がそば屋を営む夫婦に拾われて我が子のように育てられていることを知る。しかしその夫婦が外道達に狙われていることを察知し、息子を拾って育ててくれた恩人を守るために行動を起こした末、命を落とした。死後は息子が暮らす町が見える丘の上に、正十らの手により埋葬された。
正十
演 - 火野正平
江戸で殺しの斡旋をしていた男。本人の弁では10年この稼業で生きており、万事任せておけば上手くいくと豪語する。
一見すると楽天的なお調子者だが、抜け目の無い性格で金銭面については非常にがめつい。当初は先生や若にタダで仕事(殺し)をさせ、自分だけ報酬を得ようとした。しかし正十の顔を見たおばさんが彼の素性を突然思い出し、失敗に終わった。それ以降は先生ら一行と行動を共にすれば飯のタネになると考え、旅に付き従う。
殺しは一切行わず、情報収集と一行の世話役を務める。また、その回の恨みの筋とは関係なく金を手に入れ、(結果として)先生達に分配する役目も持っており、これが事実上他シリーズにおける頼み料の代わりとなっている。
第13話で小坂一也演じる同心が正十から目こぼし料を取る際、「あんたみたいな役人が昔の知り合いにいた」とのセリフがあり、同様に火野が演じるキャラクター『新・仕置人』『必殺商売人』の「正八」と共通点が多い。
おねむ
演 - 鮎川いづみ(現・いずみ)[2]
熊野権現の御札を売る旅の巫女。食べ物と眠る所さえあればそれで満足という女で、常にけだるそうに欠伸ばかりしている。先生達と行動を共にしているというわけでもなく殺しには一切関わらないが、一行の行く先々に必ずうろついている。行き倒れていることが多く、正十やおばさんがよく面倒を見ている。
ナレーション
語り・オープニング - 藤田まこと(第1話のみ、一部地方向けは野島一郎が担当)
劇中・エンディング・次回予告 - 野島一郎(ABCアナウンサー(当時)。キャストロールに表記なし)
作 - 早坂暁野上龍雄

ゲスト

第1話 「仏像の眼から血の涙が出た」
第2話 「突如奥方と芸者の人格が入れ替った」
第3話 「突然肌に母の顔が浮かび出た」
第4話 「生きてる娘が死んだ自分を見た!」
第5話 「母を呼んで寺の鐘は泣いた」
第6話 「男にかけた情念で少女は女郎に化身した」
第7話 「赤い雪を降らせる怨みの泣き声」
第8話 「足の文字は生れた時からあった」
第9話 「家具が暴れる恐怖の一夜」
第10話 「女は子供を他人の腹に移して死んだ」
第11話 「人形が泣いて愛する人を呼んだ」
第12話 「木が人を引き寄せて昔を語る」
第13話 「手が動く! 画家でないのに絵を描いた」
第14話 「額の傷が見た! 恐怖のあしたを」
第15話 「馬が喋べった! あんた信じるか」
第16話 「病床で危篤の男が銭湯にいた!」
第17話 「美人画から抜け出た女は何処へ?」
第18話 「抜けない刀が過去を斬る!」
第19話 「童(わらべ)が近づくと殺人者(ころし)が判る」
第20話 「水探しの占い棒が死体を見つけた」
第21話 「夜空を飛ぶ女が見た悪の罠」
第22話 「死人が知らせた金のありか」
最終話 「悪用した催眠術! 先生勝てるか」
  • 長助 - 平井昌一
  • 清右ヱ門 - 永井秀明
  • 利兵ヱ - 浜田晃

殺し技

先生
宙高く飛び上がり、常に持ち歩いている旗の旗竿を槍投げのように投擲して、標的を串刺しにする。また、この時は、馬と併走する脚力など超人的な身体能力を発揮している。
殺しで用いたことはないが、念動力で相手をいなしたこともある。
怪力で、力任せに相手を殴り殺す。特に一撃必殺で殺すのではなく、とにかく殴りつけて、最後にとどめの一撃を放つ。とどめの一撃は、その回によるところが多い。女性ながら基本的には武器・道具の類を用いないのは、必殺シリーズでも唯一の例である。
おばさん
相手の通り道に待ち伏せてぼそぼそと話しかけ、油断したところを匕首で刺し、抉る。最初、相手は何が起こったかわからないという表情を浮かべたまま硬直することが多い。とどめを刺した後、標的に向かって鬼気迫る表情で捨てゼリフを吐く。

スタッフ

  • 脚本 - 野上龍雄、石川孝人、吉田剛、保利吉紀、猪又憲吾、山浦弘靖、荒馬間、松浦佳成、白石裕巳
  • 音楽 - 比呂公一
  • 監督 - 森崎東松野宏軌工藤栄一、原田雄一、高坂光幸
  • プロデューサー - 山内久司、仲川利久(朝日放送)・櫻井洋三(松竹)
  • 制作協力 - 京都映画撮影所(現・松竹撮影所)
  • 制作 - ABC、松竹

主題歌

  • 和田アキ子「愛して」(RCAレコード(現・Ariola Japan[3]))
    作詞・作曲:浜田省吾、編曲:井上鑑
    第1話のみ「やさしく愛して」と表記(一部地方向けに放送されたフィルムのみ)。
    浜田省吾のオリジナル曲「愛を眠らせて」の歌詞違い。必殺シリーズでレギュラー出演者が番組主題歌を歌ったのは、和田が最初である。

放送日程

話数 放送日 サブタイトル 脚本 監督
第1話 1978年12月テンプレート:08日 仏像の眼から血の涙が出た 野上龍雄 森崎東
第2話 12月15日 突如奥方と芸者の人格が入れ替った
第3話 12月22日 突然肌に母の顔が浮かび出た 石川孝人 松野宏軌
第4話 12月29日 生きてる娘が死んだ自分を見た! 吉田剛 工藤栄一
第5話 1979年テンプレート:01月テンプレート:05日 母を呼んで寺の鐘は泣いた 保利吉紀 松野宏軌
第6話 1月12日 男にかけた情念で少女は女郎に化身した 石川孝人 原田雄一
第7話 1月19日 赤い雪を降らせる怨みの泣き声 吉田剛
第8話 1月26日 足の文字は生れた時からあった 猪又憲吾 松野宏軌
第9話 2月テンプレート:02日 家具が暴れる恐怖の一夜 山浦弘靖 原田雄一
第10話 2月テンプレート:09日 女は子供を他人の腹に移して死んだ 松野宏軌
第11話 2月16日 人形が泣いて愛する人を呼んだ 吉田剛 原田雄一
第12話 2月23日 木が人を引き寄せて昔を語る 荒馬間 松野宏軌
第13話 3月テンプレート:02日 手が動く! 画家でないのに絵を描いた 山浦弘靖 原田雄一
第14話 3月テンプレート:09日 額の傷が見た! 恐怖のあしたを 松野宏軌
第15話 3月16日 馬が喋べった! あんた信じるか 松原佳成 原田雄一
第16話 3月23日 病床で危篤の男が銭湯にいた! 山浦弘靖 松野宏軌
第17話 3月30日 美人画から抜け出た女は何処へ? 高坂光幸
第18話 4月テンプレート:06日 抜けない刀が過去を斬る! 石川孝人
第19話 4月13日 童(わらべ)が近づくと殺人者(ころし)が判る 原田雄一
第20話 4月20日 水探しの占い棒が死体を見つけた 山浦弘靖
白石裕巳
高坂光幸
第21話 4月27日 夜空を飛ぶ女が見た悪の罠 猪又憲吾 原田雄一
第22話 5月テンプレート:04日 死人が知らせた金のありか 山浦弘靖 高坂光幸
最終話 5月11日 悪用した催眠術! 先生勝てるか 原田雄一

ネット局

系列は放送当時のもの。
放送対象地域 放送局 系列 備考
近畿広域圏 朝日放送 テレビ朝日系列 制作局
関東広域圏 テレビ朝日
北海道 北海道テレビ
青森県 青森放送 日本テレビ系列
テレビ朝日系列
岩手県 岩手放送 TBS系列 現・IBC岩手放送
宮城県 東日本放送 テレビ朝日系列
秋田県 秋田テレビ フジテレビ系列
山形県 山形放送 日本テレビ系列
福島県 福島テレビ TBS系列
フジテレビ系列
新潟県 新潟総合テレビ フジテレビ系列
日本テレビ系列
テレビ朝日系列
長野県 長野放送 フジテレビ系列
山梨県 テレビ山梨 TBS系列
富山県 富山テレビ フジテレビ系列
石川県 北陸放送 TBS系列
福井県 福井テレビ フジテレビ系列
静岡県 静岡放送 TBS系列 1979年3月まで
静岡けんみんテレビ テレビ朝日系列
日本テレビ系列
現・静岡朝日テレビ。1979年4月から
中京広域圏 名古屋テレビ テレビ朝日系列
鳥取県島根県 山陰放送 TBS系列
岡山県 テレビ岡山 フジテレビ系列
テレビ朝日系列
現・岡山放送。第15話まで
当時の放送エリアは岡山県のみ
第16話から瀬戸内海放送へ一本化
広島県 広島ホームテレビ テレビ朝日系列
山口県 山口放送 日本テレビ系列
テレビ朝日系列
徳島県 四国放送 日本テレビ系列
香川県
→香川県・岡山県
瀬戸内海放送 テレビ朝日系列 1979年3月までの放送エリアは香川県のみ
1979年4月の電波相互乗り入れに伴い岡山県にもエリア拡大
愛媛県 南海放送 日本テレビ系列
高知県 テレビ高知 TBS系列
福岡県 九州朝日放送 テレビ朝日系列
長崎県 長崎放送 TBS系列
熊本県 テレビ熊本 フジテレビ系列
日本テレビ系列
テレビ朝日系列
大分県 大分放送 TBS系列
宮崎県 宮崎放送
鹿児島県 南日本放送

脚注

  1. 日本文芸社刊『和田アキ子だ文句あっか!』(1983年発行)での記述より
  2. 第1話のエンディングでは「お眠む」と表記(再放送ではおねむ)
  3. 原盤権ホリプロが所持しているため、現在は移籍先であるテイチクエンタテインメントから発売

関連項目

外部リンク

テンプレート:前後番組

テンプレート:必殺シリーズ テンプレート:和田アキ子