早坂暁
早坂 暁(はやさか あきら、男性、1929年8月11日 - )は、日本の小説家、脚本家。本名は富田祥資(とみた よしすけ)。愛媛県温泉郡北条町(現松山市)生まれ。
目次
人物・略歴
遍路道の商家で生まれ育ち、幼少の頃からお遍路さんに接した。旧制松山中学を経て、海軍兵学校在学中に終戦。被爆直後の広島の惨状を目撃している。旧制松山高等学校卒業後、東大医学部に合格するも、医業に疑問を持ち入学せず[1]テンプレート:信頼性要検証、日本大学藝術学部演劇学科に進学し同校卒業。
新聞社編集長を経て、いけばな評論家として活躍。日本テレビで制作・放送された『ノンフィクション劇場』には、放送作家として全作品に関わる。その後1000本以上の映画やドラマの脚本、小説を手がけ、常に庶民の目線で独自の作風を築く。ドキュメンタリーや舞台脚本、演出も手がける。
代表作は『天下御免』『夢千代日記』『花へんろ』『ダウンタウン・ヒーローズ』『華日記・昭和生け花戦国史』『戦艦大和日記』など。必殺シリーズでは脚本をはじめ、オープニングナレーションも多数手掛けている。なかでも『必殺からくり人』の脚本は史実と虚・世相を織り交ぜながらの巧みなストーリとなっており、既存の必殺シリーズとは一線を画した内容で評価が高い。
生家が遍路みちに面した大きな商家で、幼少より遍路に接してきたこと、また、遍路に置き去りにされ、生家が引き取って「妹」として育った少女が、広島で原爆に遭い死亡したと思われる(8月5日に広島に行ったまま行方不明)ことなどから、遍路(四国八十八カ所)や原爆に関する作品や論評、活動も多く、生家をモデルにした『花へんろ』、胎内被爆者が主人公の『夢千代日記』につながっている。
勉誠出版から『早坂暁コレクション』を刊行。初の単行本化となる長編小説『戦艦大和日記』や主なシナリオ作品を収録する。
受賞・受勲
- 1968年 「アイウエオ」「石狩平野」「契りきな」 ギャラクシー賞
- 1975年・1977年 モンテカルロ国際テレビ祭脚本部門最優秀賞、国際批評家賞
- 芸術祭大賞
- 1979年 「修羅の旅して」で第20回モンテカルロ国際テレビ祭最優秀脚本賞・国際批評家特別賞受賞、NHK会長賞
- 1979年「 続・ 事件」などで芸術選奨文部大臣賞
- 1981年「夢千代日記」で第8回放送文化基金賞奨励賞受賞、第14回テレビ大賞優秀番組賞
- 1982年「 続・夢千代日記」でNHK放送総局長賞、放送文化賞、プラハ国際テレビ祭大賞、テレビ大賞優秀番組賞・放送文化基金賞ドラマ番組部門奨励賞、放送批評懇談会ギャラクシー賞個人賞
- 1984年「新・夢千代日記」で芸術選奨文部大臣賞受賞、放送文化基金賞、NHK会長賞
- 1986年「花へんろ・風の昭和日記」で向田邦子賞、芸術選奨文部大臣賞、放送批評家懇談会優秀賞、放送文化基金賞個人賞
- 1986年「ダウンタウン・ヒーローズ」 で直木賞候補
- 1990年 『華日記・昭和いけ花戦国史』で新田次郎文学賞
- 1990年 『公園通りの猫たち』で講談社エッセイ賞
- 1991年 『女相撲』で放送文化基金賞
- 1994年春 紫綬褒章
- 1999年 愛媛県教育文化賞
- 2000年 勲四等旭日小綬章
- 2006年 愛媛県功労賞
他、受賞多数。
渥美清との交流
大学時代に銭湯で渥美清と知り合い、何度もプライベート旅行に行くなど親友となった。渥美の死後発見された晩年の手帳には「……家族で旅行に行こう。ギョウさん(早坂暁の暁を音読みしたもの)も一緒に……」と綴ってあった。
2006年に放送された「渥美清の肖像〜知られざる役者人生〜」によると、早坂は渥美が大変才能のある役者であるのにもかかわらず、「寅さん」以外の役をほとんど演じられなかったことを危惧し、渥美主演の作品を数作企画していたが、実現しなかったそうである。しかし、渥美には、初期のテレビドラマ「泣いてたまるか」や、「土曜ワイド劇場」の第1回作品の「田舎刑事」シリーズなどの脚本を書いており、いずれも「寅さん」ではない渥美の魅力が引き出された名作となっている。
著作権法違反
2002年2月21日の共同通信配信記事によると、「新潮45」2001年2月号掲載の「『戦艦大和』日記」(連載第112回)に橋本惠『謀略〜かくして日米は戦争に突入した』の文章の一部を無断転用したとして、2001年、著作権法違反で橋本より京都地裁に提訴されたが、翌2002年に事実を認め謝罪することで和解が成立した。謝罪文は「新潮45」2002年3月号に掲載された。提訴した橋本惠は血縁はないが早坂の遠戚である。自著を出版しようと思いたった橋本が早坂に相談をしたが、複数の出版社から出版がかなわなかった。その後その文章の一部を転用したということである。
その他
脚本の仕上がりが遅いことで有名である。しかし、その脚本は完璧といわれる。たとえば吉永小百合は「『夢千代日記』のスタジオでみんなで原稿を待っていると、早坂さんの手書きの原稿がファックスで1枚ずつ送られてくるのですが、その内容は宝石のように素晴らしく輝いているのです」と話している。また、多くの制作陣が脚本の遅さに、「まいった、早坂さんにはひどいめにあった、と閉口するものの、気がつけばまた早坂さんに依頼してしまうんです。そして、芸術祭などの出品作品を見ると、その早坂さんの作品がずらっと並ぶのです」と証言している。また、役者の新たな一面を見つけ導き出す面にも優れており、中でも『花へんろ』で主演した桃井かおりは、この作品でそれまでのアンニュイなイメージとは全く違う慈悲深い母親役を見事に演じ、役者としての新境地を開いている。また、本人談によると『僕に弟子はいません。「早坂暁の弟子」「早坂暁に師事」「薫陶を受けた」などと名乗る人があるようですが、知人であったとしても弟子ではありません』とのこと。
人気作品
早坂は、自身のドラマ作品の中で最も評価が高いのは『夢千代日記』だと思っていたが、アンケートによると1位が『花へんろ』、2位が『天下御免』で、3位が『夢千代日記』だと知らされたとのこと。
作品リスト
映画
- 日本一の裏切り男(1968年)
- 喜劇 あゝ軍歌(1970年、原作のみ)
- 青春の門(1975年)
- 青春の門 自立篇(1977年)
- 空海(1984年)
- 天国の駅 HEAVEN STATION(1984年)
- 夢千代日記(1985年)
- ダウンタウン・ヒーローズ(1986年、原作のみ。脚本・監督は山田洋次他)
- 蕾の眺め(1986年)
- 公園通りの猫たち(1989年)
- 超能力者 未知への旅人(1994年)
- きけ、わだつみの声 Last Friends(1995年)
- 北京原人 Who are you?(1997年)
- 千年の恋 ひかる源氏物語(2001年)
テレビドラマ
- 少年孫悟空(日本テレビ、1953年-1954年)
- 不思議なパック(NHK、1960年-1961年)
- ガラスの部屋(NTV、1961年)
- 仙人部落(CX、1963年)
- 七人の刑事(TBS、1963年-1966年、1975年、1978年)
- 囚人道路(NHK、1964年)
- 松本清張シリーズ 地方紙を買う女(関西テレビ、1966年)
- 松本清張シリーズ 愛と空白の共謀(関西テレビ、1966年)
- 若者たち(フジテレビ、1966年)
- 真田幸村(TBS、1966年)
- 愛しの太陽(フジテレビ、1966年)
- 泣いてたまるか(TBS、1966年-1967年)
- 剣(日本テレビ、1967年-1968年)
- アイウエオ(NHK、1967年-1969年)
- 三十六人の乗客(NHK、1969年)
- てれびじょん’69(MBS、1969年)
- 鬼平犯科帳(NET、1969年-1970年)
- 剣豪(NET、1970年)
- 乱れそめにし(フジテレビ、1970年)
- 二人の刑事(TBS、1970年)
- 幻化(NHK、1971年)
- 浮世絵 女ねずみ小僧(フジテレビ、1971年-1974年)
- 天皇の世紀(朝日放送、1971年)
- 天下御免(NHK、1971年-1972年)
- 必殺仕掛人(朝日放送、1972年-1973年)
- こんな男でよかったら(読売テレビ、1973年)
- わが愛(TBS、1973年)
- たった一人の反乱(NHK、1973年)
- 天下堂々(NHK、1973年-1974年)
- さよなら・今日は(日本テレビ、1973年-1974年)
- ユタとふしぎな仲間たち(NHK、1974年)
- 斬り抜ける(TBS、1974年-1975年)
- 裏切りの明日(TBS、1975年)
- 現代浮かれ節考(ABC、1975年)
- 必殺からくり人(朝日放送、1976年)
- 渚に死のうと書いたとき(毎日放送、1976年)
- オリンポスの果実(NHK、1977年)
- 新・必殺仕置人(朝日放送、1977年)
- ご存知!女ねずみ小僧(フジテレビ、1977年)
- 冬の桃(NHK、1977年)
- 鞍馬天狗の「家」(テレビ朝日、1977年)
- 新 必殺からくり人(朝日放送、1977年-1978年)
- 田舎刑事・時間よ、とまれ(テレビ朝日、1977年)
- おはん(テレビ朝日、1978年)
- 田舎刑事・旅路の果て(テレビ朝日、1978年)
- 人間の証明(MBS、1978年)
- 必殺からくり人・富嶽百景殺し旅(朝日放送、1978年)
- 東京メグレ警視シリーズ(テレビ朝日、1978年)
- わが兄はホトトギス(RNB、1978年)
- 赤サギ(NHK、1978年)
- 修羅の旅して(NHK、1979年)
- 田舎刑事・まぼろしの特攻隊(テレビ朝日、1979年)
- 続・ 事件 海辺の家族(NHK、1979年)
- 宴のあと-自称“小川真由美”の調書(NHK、1978年)
- 冬の花火 わたしの太宰治(TBS、1979年-1980年)
- 血族(NHK、1980年) 山口瞳原作
- 続・続 事件 月の景色(NHK、1980年)
- 暁は寒かった・誰かが母を殺した日(NHK、1980年)
- 小児病棟(NTV、1980年)
- 関ヶ原(TBS、1981年)
- 新・ 事件 わが歌は花いちもんめ(NHK、1981年)
- 夢千代日記(NHK、1981年)
- 続 夢千代日記(NHK、1982年)
- 新・ 事件 ドクター・ストップ(NHK、1982年)
- 熱帯夜(フジテレビ、1983年)
- 新 夢千代日記(NHK、1984年)
- 新・ 事件 断崖の眺め(NHK、1984年)
- 花へんろ(NHK、1985年-1988年)
- 山頭火・何んでこんなに淋しい風ふく(NHK、1989年)
- 失われし時を求めて-ヒロシマの夢(NHK、1989年)
- びいどろで候〜長崎屋夢日記(NHK、1990年)
- 新金色夜叉 百年の恋(フジテレビ、1990年)
- 実録犯罪史シリーズ 金(キム)の戦争(フジテレビ、1991年) 本田靖春原作
- 女相撲(TBS、1991年)
- グッド・バイ 私が殺した太宰治(CX、1992年)
- 乳の虎・良寛ひとり遊び(NHK、1993年)
- 涙たたえて微笑せよ 明治の息子・島田清次郎(NHK、1995年)
- 悲劇の予言者・海軍大佐 水野広徳(南海放送、1995年)
- 刑事 蛇に横切られる(NHK、1995年)
- 新 花へんろ(NHK、1997年)
- 七人の刑事 最後の捜査線(TBS、1998年)
他、多数
テレビアニメ
作詞
- こんな男でよかったら(作曲:高石ともや、歌唱:渥美清)
- 船出の歌(作曲:山本直純、歌唱:山口崇・林隆三・秋野太作(当時は津坂匡章)
- 川はいいな(作曲:山本直純、歌唱:山口崇・林隆三・秋野太作(当時は津坂匡章)
- 天下堂々(作曲:山本直純、歌唱:上條恒彦)
- 愛の眺め(作曲:三木たかし、歌唱:黛ジュン)
- 涙(作曲:三木たかし、歌唱:黛ジュン)
- 夢千代日記(作曲:吉田正、歌唱:吉永小百合)
- 夢日記(作曲:大沢浄二、歌唱:大月みやこ)
- 花へんろ音頭(作曲:高橋英介、歌唱:石川さゆり)
他
著書
- 『こんな男でよかったら』新樹瞳志編著 日本テレビ放送網 1973
- 『赤サギ』日本放送出版協会 1978
- 『事件シリーズ 海辺の家族』大和書房 1982
- 『事件シリーズ 月の景色』大和書房 1982
- 『事件シリーズ ドクター・ストップ』大和書房 1982
- 『事件シリーズ わが歌は花いちもんめ』大和書房 1982
- 『熱帯夜』大和書房 1983
- 『夢千代日記』大和書房 1983 のち新潮文庫、新風舎文庫
- 『空海』大和書房 1984
- 『新・夢千代日記』大和書房 1984 のち新潮文庫
- 『断崖の眺め 新・事件』大和書房 1984
- 『天国の駅 天国の駅はたった独りでしか乗れない』大和書房 1984
- 『夢千代日記・夢心中』大和書房 1985
- 『ダウンタウン・ヒーローズ』新潮社 1986 のち文庫
- 『天下御免』其の1-2 大和書房 1986
- 『花へんろ 風の昭和日記』大和書房 1986
- 『天下御免 完結篇』大和書房 1987
- 『日本ルイ十六世伝』新潮社 1987 のち文庫
- 『円空への旅』NHKドラマ制作班共著 日本放送出版協会 1988
- 『女からの眺め』大貫哲義編著 日本テレビ放送網 1988 火曜サスペンス劇場特選ノベルズ
- 『公園通りの猫たち』講談社 1989 のち文庫
- 『山頭火 何でこんなに淋しい風ふく』日本放送出版協会 1989
- 『天下御免 番外篇』大西信行共著 大和書房 1989
- 『華日記 昭和生け花戦国史』新潮社 1989 のち小学館文庫
- 『四季物語』PHP研究所 1990
- 『びいどろで候 長崎屋夢日記』全3巻 日本放送出版協会 1990
- 『恐ろしい時代の幕あけ ドラマと人間』岩波ブックレット 1991
- 『東京パラダイス』新潮社 1992 のち小学館文庫
- 『日本の名随筆 別巻 21 巡礼』(編)作品社 1992
- 『眠られぬ夜に 生から死への15章』佼成出版社 1992
- 『夢の景色』文化出版局 1992
- 『遍路国往還記』朝日新聞社 1994 のち文庫
- 『優しい来訪者』日本放送出版協会 1994
- 『首人形 放哉の島』河出書房新社 1995
- 『嫁ぐ猫 公園通りの猫たち、それから』ネスコ 1996
- 『夏少女・きけ、わだつみの声』春秋社 1996
- 『よだかの星 わが子よ、賢治』河出書房新社 1996
- 『花へんろ風信帖』新潮社 1998
- 『テレビがやって来た!』日本放送出版協会 2000
- 『恐ろしや源氏物語』恒文社21 2001
- 『花へんろ 風の巻』文藝春秋 2004
- 『へんろ曼荼羅』創風社出版 2005
- 『早坂暁コレクション』勉誠出版 2006-刊行中
- 『君は歩いて行くらん 中川幸夫狂伝』求龍堂 2010
- 『円空の旅』佼成出版社 2012
- 『戦艦大和日記』勉誠出版 第1~5巻刊行 第6巻執筆中