人間の証明
テンプレート:Portal 『人間の証明』(にんげんのしょうめい)は、森村誠一の長編推理小説。森村の代表作「棟居刑事シリーズ」の主人公・棟居弘一良の初登場作品。2010年現在、単行本・各社文庫本計で770万部を売り、森村誠一のベストセラーとなっている。新刊雑誌への連載を前提に角川春樹から依頼されて執筆した作品である。
森村は代表作と見なされる本作について「代表作とは読者が決めるものであるが、自分にとって相当に重要な作品である」と語っている。映画化、テレビドラマ化されている。
目次
書誌情報
あらすじ
東京・赤坂の高層ホテルの、展望レストランのある最上階に到着したエレベーター内で、胸部を刺されたまま乗り込んできた黒人青年が死亡した。事件は殺人事件と断定され、麹町署に捜査本部が設置される。捜査を担当することになった麹町署の棟居弘一良刑事らは、被害者の名前がジョニー・ヘイワードであり、彼をホテルまで乗せたタクシー運転手の証言から、車中でジョニーが「ストウハ」と謎の言葉を発していたことを突き止める。さらにタクシーの車内からは、ジョニーが忘れたと思われるボロボロになった『西條八十詩集』が発見されるが…。
映画
テンプレート:Infobox Film 岡田茉莉子・松田優作・ジョージ・ケネディがそれぞれ過去に一物を持つ人物を演じ、当時の日本映画では稀なニューヨークロケが行われた。松山善三(プロでありながら、公募に応募して採用された)の脚色により、森村誠一がテーマとした題名「人間の証明」である原作と異なる結末になっている。ラストシーンでは本来無言であったはずの松田が独自に台詞を付けたいとの要望を出し、佐藤純彌も台詞つきのシーンを撮ったが、佐藤の判断で台詞はカットしつつも台詞を言った後の表情がとても良かったため、そちらを採用した。
映画公開時に用いられた有名な台詞「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね ええ、夏、碓氷から霧積へ行くみちで 渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ…」は西條八十の詩がオリジナルであり、劇中でも語られている。ジョー山中が歌う「人間の証明」のテーマソング(「Mama, Do you remember...」と歌詞は西條八十の詩を英訳したもの)もヒットし、ベストテン入りも果たしている。
賞金500万円を掲げて大々的に脚本を公募した。プロアマ問わずとの条件で最終選考に残ったのは、脚本家・監督の松山善三、脚本家の山浦弘靖、俳優・プロデューサーの岡田裕介(現東映社長)、プロデューサー・脚本家・推理作家の小林久三とプロばかりであった。応募者の名を伏せて角川プロデューサー、佐藤監督らによる選考会は『キネマ旬報』に公開されたが、のっけから「ロクなのがない!」「(公募に頼った)考えが甘かった」とボロクソであり、「いちばん修正しやすい」との消極的理由で入選作を決定した。ふたを開けてみれば、誰にとっても大先輩である松山の脚本だったという気まずい結果となった。なお、角川によれば、予算にまで気を配って小さくまとめた悪しきプロ脚本が多かった中、大胆に海外場面を多用した松山脚本が角川映画に相応しいと判断されたという。
偶然に次ぐ偶然によってクライマックスのお涙頂戴になだれこむ展開は、大映が戦後初期に「三倍泣けます」「ハンカチをご用意ください」のキャッチフレーズでヒットさせた「母物」の再来だと批判されたが、角川春樹は石上三登志との対談で、まさにそれをこそ狙ったと語っている[1]。
配給は東映であったが、興行は日比谷映画劇場をメインとした東宝洋画系チェーンが担った。その後、2000年にDVD化され、2009年にBDソフト並びにデジタル・リマスター版DVDがリリースされた。2012年に改めて「角川ブルーレイ・コレクション」の一作品としてブルーレイディスク化された。
スタッフ
- 監督:佐藤純彌
- 製作:角川春樹
- プロデューサー:吉田達、サイモン・ツェー
- 脚本:松山善三
- 撮影:姫田真佐久
- 美術:中村修一郎
- 照明:熊谷秀夫
- 録音:紅谷愃一
- 編集:鍋島惇
- 音楽監督・作曲:大野雄二
- 主題歌:「人間の証明のテーマ」/ジョー山中
- 音楽監督補佐:鈴木清司
- 音響効果:坂井三郎、小島良雄
- 技斗:伊藤浩市
- 写真提供:吉田ルイ子
- 協力:寛斎スーパースタジオ、麻生恒二の美容室、富久娘、シイベル時計、三和自動車、横浜放送映画専門学院、小谷温泉
- 制作協力:日本航空、ホテルニューオータニ、フジテレビジョン、角川書店
- 配給:東映
- 角川春樹事務所・東映提携作品
キャスト
- 八杉恭子 - 岡田茉莉子: 有名ファッションデザイナー。政治家の妻。
- 棟居刑事 - 松田優作: 麹町署の刑事。八杉恭子と因縁がある。
- 横渡刑事 - ハナ肇
- 新見隆 - 夏八木勲: 東洋技研部長。人妻のホステス・なおみと愛人関係にある。
- ジョニー・ヘイワード - ジョー山中: ニューヨーク・ハーレム育ちの黒人青年。東京で殺される。
- 幼少のジョニー・ヘイワード - 山中ひかり(ジョー山中の実の息子)
- ウィルシャー・ヘイワード - ロバート・アール・ジョーンズ
- 郡恭平 - 岩城滉一: 八杉恭子の息子。轢き逃げ事件を起こす。
- 中山静枝 - 竹下景子: 殺された中山タネの孫娘。霧積温泉旅館で働く。
- なおみ - 范文雀: クラブホステス。小山田の妻で新見の愛人。郡恭平に轢き殺され、海に捨てられる。
- オブライエン署長 - ブロデリック・クロフォード: ニューヨーク27分署の署長。
- 三島雪子 - ジャネット八田: ハーレムで写真屋を営む日本女性。
- 澄子 - 坂口良子: おでん屋の女将。
- 朝枝路子 - 高沢順子: 郡恭平の恋人。
- 河西刑事 - 和田浩治:警視庁捜査一課の刑事。
- 下田刑事 - 峰岸徹:警視庁捜査一課の刑事。
- 草場刑事 - 地井武男:警視庁捜査一課の刑事。
- 山路部長刑事 - 鈴木瑞穂:警視庁捜査一課の刑事。
- 捜査本部長 - 山岡徹也:警視庁制服幹部。
- ケン・シュフタン刑事 - ジョージ・ケネディ: ニューヨーク27分署の刑事。棟居と因縁がある。
- おでん屋の板前 - 姫田真佐久
- おでん屋の客A - 大滝秀治
- おでん屋の客B - 佐藤蛾次郎
- 大森よしの - 北林谷栄: 八杉恭子が米兵相手のバーで働いていた過去を知る女性。
- 大森よしのの孫娘 - 西川峰子
- 渋江警部補 - 深作欣二
- ワイドショーの司会者 - 小川宏
- 男性アナウンサー - 露木茂
- 女性アナウンサー - 三上彩子
- 喫茶店・ボーイ - 鈴木ヒロミツ
- 喫茶店・ウエイトレス - シェリー
- ブティックの店主 - 今野雄二
- デザインコンクールの司会者 - E・H・エリック
- デザインコンクールのアシスタント - 奈三恭子
- デザインコンクールの審査委員長 - 河村弘二
- スナックのママ - 田村順子
- 久之浜の警官 - 高並功
- ホステス・君子 - 野川愛
- ハイヤーの運転手 - 中島元
- エレベーター・ガール - 島崎奈々
- 小川宏 - 小川宏
- フロント課長 - 桐島好夫
- 女中 - 青木万里子
- 郡邸の女中 - 金井真喜子
- 若き日のウォルシャー・ヘイワード - アレキサンダー・イーズリー
- 今村弁護士 - 田口計
- 恭子のアシスタント - 大橋芳枝
- 霧積温泉旅館の女将 - 星美智子
- 霧積温泉旅館の番頭 - 相馬剛三
- 霧積温泉の警官 - 室田日出男
- 棟居の少年時代 - 石井明人
- 郡陽平の秘書 - 片岡五郎
- 刑事 - 亀山達也、五野上力、山浦栄、畑中猛重、武田洋和、安永憲司
- 検視医 - 河合絃司
- 棟居の父親 - 菅野忠彦
- ロイヤルホテル従業員 - 中田博久
- エレクトーン奏者 - 和田悦子
- 「たこ安」の女中 - 青木真知子
- 闇市の復員兵 - 角川春樹
- アトリエの女中 - 下村節子、とりい三枝、日向亜希、原あけみ、福王トモ子、ティナ・ユカ、田中美穂、大城信子
- 闇市の巡査 - 玉井謙介
- 闇市の警官 - 高月忠
- ケンの同僚 - パトリック・ファクトリー
- 警部補 - フランク・シンプソン
- ビリー - レニー・グローディン
- 受付の警官 - フランク・ライアン
- アダムス邸・警官 - カールス・クリーブランド
- アダムス邸・ドアマン - ジョージ・ガン
- チャーリー - ルービンチャーチ・
- 拳銃売人のアシスタント - ドナルド・ホークス
- バーテンダー - ジョン・マッカリー
- ハーレムの少年 - ポール・メレス・ハント
- 警官 - ソール・ウェイナー
- 仲間の黒人 - アレックス・プラマー
- 拳銃の売人 - ビル・サンダーソン
- 酒場の男 - モンスーア・ナジー=ウラ
- 酒場の男 - ハディ・デービス
- ドラッグストアの店主 - ジェームズ・ショー
- ホテルのフロント係 - スタンリー・セイヤー
- 店主 - スタンリー・グリーン
- 店主 - P・J・シドニー
- 店主 - ボブ・オコンネル
- 酔っ払い - サム・シングルトン
- 酔っ払い - フラン・サリスバリー
- 酔っ払いの老人 - チャールズ・マクレガー
- セカンド・フロントマネージャー - 近藤宏
- チーフ・フロントマネージャー - 森村誠一
- クラブのママ - 田村順子:なおみが働くクラブのママ。
- ライオネル・アダムス - リック・ジェイソン: 交通事故の慰謝料として被害者の息子ジョニーに6,000ドルを払った金持ち。
- 霧積温泉旅館の主人 - 伴淳三郎
- 小山田武夫 - 長門裕之: なおみの夫。
- 郡陽平 - 三船敏郎(特別出演): 八杉恭子の夫。国会議員。
- 那須警部 - 鶴田浩二: 警視庁捜査一課。ジョニーが殺された事件の捜査を指揮する。
テレビドラマ
テンプレート:Sidebar with collapsible lists
1978年版
森村誠一シリーズの第3作目として放映された。オリジナルの部分が多い(郡陽子のモノローグや扱いに顕著)。
製作は東映であるが、東宝の監督が主に演出している(プロデューサー兼俳優の岡田裕介との縁)。2010年7月21日から8月6日に全4巻のDVDが発売された。各巻3話収録で2巻ずつ同時発売されている。
- 放映期間:1978年1月7日 - 1978年4月1日(全13話)
- 放送時間:毎週土曜日22:00 - 22:55
- 企画:角川春樹事務所、毎日放送
- プロデューサー:青木民男(毎日放送)、桑原秀郎、岡田裕介(東映)
- 脚本:早坂暁
- 音楽:広瀬量平
- 監督:恩地日出夫、大森健次郎、渡辺邦彦、永野靖忠
- 助監督:長石多可男、ほか
- 制作:毎日放送、東映
- 主題歌:「さわがしい楽園』¥」(作詞:及川恒平、作・編曲:井上鑑、歌:りりィ)
キャスト
名前の後ろの※は、原作に登場しない人物。※※は、ドラマ版で著しく登場場面が増えた人物。
- 八杉恭子:高峰三枝子
- 郡恭平:北公次
- 立花典子:多岐川裕美※
- 郡陽子:岸本加世子※※
- 横渡刑事:稲葉義男
- 小山田文枝(なおみ):篠ひろ子
- 小山田武夫:岸部シロー
- 新見雅弘:中丸忠雄
- 朝枝路子:高沢順子
- 映画版でも同じ役で出演している。
- 草場刑事:北村総一郎
- 山路部長刑事:板谷多一 → 河合絃司
- 山本刑事:小野川公三郎※
- 下田刑事:河原裕昌
- ジョニー・ヘイワード:ジャーニー・カイナ
- ダン安川:戸浦六宏※
- 郡陽平:山村聰
- お種:千石規子
- 美波:谷口香※
- 文子:上月左知子※
- 宮武教授:橋爪功
- 森戸:辻萬長
- サラリーマン(事件の目撃者):大和田獏
- 弁護士事務所長(典子の上司):久松保夫※
- 金湯館(霧積温泉)女将:川口敦子
- 女将の舅:藤原釜足
- 中山静枝(お種の孫娘):西真澄
- 足立泰子(恭子の秘書):新海百合子
- 代議士:河村弘二※
- タクシーの運転手(霧積温泉):車だん吉
- よしの(お種の幼馴染):牧よし子
- よしのの孫娘:鶴間エリ
- 村の農夫:橋本功※
- テレビ司会者:村上不二夫※
- 受付の警官:高品格※
- 外事課刑事:小美野欣士※
- 幼稚舎事務長:五藤雅博
- ホテル支配人:入江正徳
- 運転手(郡家):神山寛※
- ホテル・エレベーターガール:小牧りさ
- 路子の母:小笠原まり子※
- ホステス:原良子※
- 捜査本部事務員:佐々木梨里※
- 雑誌編集者:左時枝※
- タクシーの運転手(証言者):左とん平
- ラクチョウのおトキ(街の女):奈美悦子※
- 金沢正男:内田朝雄※
- 塩川広一:高原駿雄※
- 棟居の母:絵沢萌子※※
- 棟居の父:岡田裕介
- 那須警部:佐藤慶
- 棟居弘一良:林隆三(少年時代:斉藤幸一)
- ほか:加藤和夫、早川純一、中島元、岩城和男、柄沢英二、依田英助、林美樹、沢井孝子、伊藤すま子、橘麻紀、桐島好夫、
篠田薫、竹内靖、春田三三夫、山田光一、山浦栄、名川貞郎、高原ユキ、山本緑、白石のり子、北浦昭義、三田明子、
相馬剛三、山田禅二、木村修、久地明、仲塚康介、五野上力、芦葉京子、谷本小代子、大山いづみ、慎れい子、村尾幸三、菊地太、美原亮三、高野隆志、佐川二郎、中野順子、佐竹祥市、甲斐久恵、日笠潤一、小泉茂、山村裕、石堂洋子、今村原兵
テンプレート:前後番組 テンプレート:TBS土曜10時枠の連続ドラマ
1993年版
金曜ドラマシアターで1993年1月8日に放送された。
キャスト
2001年版
タイトルは「人間の証明2001」、「女と愛とミステリー」で放送された。
BSジャパンでは2001年1月7日21:00 - 23:24に、テレビ東京系列では同年1月10日20:54 - 23:18に放映された。
キャスト
2004年版
フジテレビ系連続ドラマとして2004年7月8日から9月9日まで放映された。全10回。初回は15分拡大の22:00 - 23:09に放送。平均視聴率は12.1%だった。
- 脚本:前川洋一
- プロデューサー:鈴木吉弘
- 演出:河毛俊作、久保田哲史、成田岳
- 音楽:岩代太郎
- 主題曲: 河口恭吾 「A Place in the Sun」(スティーヴィー・ワンダーのカヴァー)
- 制作:フジテレビドラマ制作センター
キャスト
- 棟居弘一良:竹野内豊
- 本宮桐子:夏川結衣
- 横渡篤:大杉漣
- ジョニー・ヘイワード:池内博之
- 郡翔平:高岡蒼佑(現:高岡奏輔)
- 朝枝路子:松下奈緒
- 郡さやか:堀北真希
- 小山田文枝:横山めぐみ
- 佐伯友也:田辺誠一
- 那須英三郎:緒形拳(友情出演)
- 郡陽平:鹿内孝
- 河西善行:津嘉山正種
- 相馬晴美:りりィ
- 八杉恭子(郡恭子の少女時代):佐々木梓
- 草場健次:おかやまはじめ
- 田口編集長:久世星佳
- 山路利雄:佐藤二朗
- 富永雅彦:山崎樹範
- 棟居の父親:徳井優
- 西伊豆署の刑事:徳井優(二役)
- 女の子:大橋のぞみ
- ケン・シュフタン:ボー・スヴェンソン(Bo. Svenson)
- 小山田武夫:國村隼
- 新見隆:風間杜夫(特別出演)
- 郡恭子:松坂慶子
サブタイトル
各話 | 放送日 | サブタイトル | 視聴率 | ||
---|---|---|---|---|---|
第1話 | 2004年7月8日 | 遠い橋・ある異邦人の死 | テンプレート:Color | ||
第2話 | 2004年7月15日 | 謹慎 | 12.6% | ||
第3話 | 2004年7月22日 | 母さんに捧げる詩 | 11.9% | ||
第4話 | 2004年7月29日 | 霧積温泉の変死者 | 11.7% | ||
第5話 | 2004年8月5日 | 母の秘密を知る女 | 11.0% | ||
第6話 | 2004年8月12日 | 輝ける青春の記憶 | 11.4% | ||
第7話 | 2004年8月19日 | 南部アメリカ編(01) | テンプレート:Color | ||
第8話 | 2004年8月26日 | 米国編(2)犯人の顔 | 11.3% | ||
第9話 | 2004年9月2日 | 郡恭子最後の一日 | 11.5% | ||
最終話 | 2004年9月9日 | 人間たちの明日 | 13.3% | ||
平均視聴率 12.0%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ) |
- 初回は15分拡大放送。
脚注
- ↑ 『季刊映画宝庫/日本映画が好き!!!』(芳賀書店、1978年刊)