海のトリトン
テンプレート:Sidebar with collapsible lists 『海のトリトン』(うみのトリトン)は、手塚治虫の漫画。および同作を原作としたテレビアニメ。
目次
概要
『サンケイ新聞』(現・『産経新聞』)に1969年9月1日から1971年12月31日まで新聞漫画『青いトリトン』として連載、1972年4月から9月末まで放送されたテレビアニメのタイトルは『海のトリトン』。アニメが放送終了した1972年末に初めて単行本化されたときに原作も『海のトリトン』と改題された[1]。「トリトン」の名はギリシャ神話から引用こそしているものの、内容そのものはギリシャ神話とは何ら関連を持たない独創的なものになっている。
1969年2月末日まで『鉄腕アトム』(後に『アトム今昔物語』に改題)を連載した『サンケイ新聞』編集部の要請により、半年の間を置いて手塚治虫が連載した新聞連載漫画である。当時はスポ根劇画が人気を博しており、『サンケイ新聞』側の希望で特訓などの要素が取り入れられた[2]。当初、海棲人類トリトン族の赤ん坊「トリトン」を拾ってしまった漁村の少年「矢崎和也」を主人公とし、抗争に巻き込まれた第三者の冒険と根性のストーリーになるはずだったが、作者自身が純然たる冒険活劇とした方が作品として面白くなる事に気づき[3]、物語中途で和也を失踪させ、主人公をトリトンに交代させた。
アニメ版のストーリーに比べて、トリトンが陸の人間として成長し、知識と武術を習得して海に出るまでを丹念に描き、水中でも息が出来るだけのようなトリトンが海の怪物にも等しいポセイドン族と互角に戦える理由を説明している。ポセイドン族との抗争の他、トリトン族と人間との好意的とは言いがたい接触がストーリーのもう一本の柱になっている。
登場人物
アニメ版の声優陣は青二プロダクションと東京俳優生活協同組合から起用された。
トリトン族
- トリトン
- 声 - 塩屋翼
- トリトン族の生き残りで13歳の少年。赤ん坊の時に猪の首岬の洞窟に置き去りにされ、和也(アニメでは漁師の一平)に拾われて育てられる。ルカーの話によって自らの出生を知り、村にポセイドンの被害が及ぶことを恐れ、村を捨て自ら海へと旅立つ。アニメでは髪が緑色。原作ではナイフ投げの名人で、アニメ版と比べると最初から精神的に大人である。第32章では最後の決着をつけるべく大型ミサイルの中へポセイドンを閉じ込め宇宙へ放って追放し、自らも運命を共にした。サンデーコミックス版ではポセイドンの要塞に特攻した。パイロットフィルムでは超能力でポセイドン族に立ち向かう。
- ピピ
- 声 - 広川あけみ
- トリトン族の生き残りで人魚の少女。アニメでは第4話から登場しており、北の海でアザラシのプロテウスに育てられる。慎重なトリトンとは対照的に、勝気で好奇心旺盛。その性格が災いして敵の罠に落ちることもしばしば。初期はかなり生意気な牲格でトリトンを嫌っていたが、中期からトリトンとの友情が高まり、素直な牲格になった。
- 原作では当初「ピピ子」として登場。アニメ版とは大幅に異なり、幼いときからおませさんで最初からトリトンの恋人でもある。第22章ではポセイドンの妃に選ばれ、「ピンキー」の名でポセイドン一族を渦潮に誘い込み逃げようとしたが、囚われの身となる。結婚させられる直前に搭から脱出し、第32章でトリトンと結婚。7人の子供を生むが最終章ではトリトンの死により未亡人となった。パイロットフィルムではポニーテールの髪型。
- トリトンの父
- 声 - 野田圭一
- トリトンの母
- 声 - 沢田敏子
- トリトンの子供たち
- トリトンとピピ子の間に生まれた7つ子の子供たちで、虹の色にちなんで(上から順に)ブルー、グリーン、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット、ダークブルーと名付けられた。性別はブルーとレッドのみ男で、ほかの5人は女。7人とも性格は全然違う。トリトンの死後、ブルーはトリトンの名を継ぎ、「ブルートリトン」と名乗った。原作のみに登場。
海の仲間
- プロテウス
- 声 - 滝口順平
- ピピの養父に当たるアザラシ。ミノータスによって氷付けにされ、死亡。
- ルカー
- 声 - 北浜晴子
- 黄金の(アニメでは白)イルカ。トリトンの乳母的な存在。甥にイル・カル・フィンがいる。放送版のアニメのみ額に黄色いV字マークがある。
- イル
- 声 - 大竹宏
- イルカ三兄弟の長男。アニメでは第2話から登場。メガネをかけている。原作ではしっかり者。
- カル
- 声 - 肝付兼太
- イルカ三兄弟の次男。アニメでは第2話から登場。頬の斑点が特徴。原作ではおっちょこちょい。
- フィン
- 声 - 杉山佳寿子
- イルカ三兄弟の三男。アニメでは第2話から登場し、ピンクの法螺貝をヒモで結んで頭につけている。原作では「フニャ〜」しか言わない怠け者で、法螺貝を持っていない。
- ガノモス
- 数千年の年月を生きる体長数十メートルの巨大な亀で海の長老的存在。長命故に知識は極めて豊富で、ポセイドン一族とも親交があるなど、人脈も幅広い。当初は中立的な立場に身をおき、トリトンにはポセイドンと和睦する事を勧めていたが、ポセイドンの裏切りを前にトリトンを連れてポセイドンの砦へ侵攻した。かなりの老齢で寿命が近かったため、戦いの後間もなく死亡し、後にその亡骸は島となってトリトン一族の隠れ家となった。原作のみに登場。
- メドン
- 声 - 外山高士(テレビ版) / 塩見竜介(劇場版)
- 巨大な海亀。フィンの持つ法螺貝は元々メドンの甲羅の割れ目に隠してあった。トリトン救出に向かうが、ドリテアの罠にはまり、海底火山の爆発で命を落とした。原作の「ガノモス」に相当。
- ラカン
- 声 - 峰恵研
- インド洋に住むシーラカンス。ヘプタポーダの脱出を助けた罪でポセイドンによって死なない体に変えられたが、オリハルコンの短剣の輝きで呪いが解けて絶命した。
- ジェム
- 声 - 山本圭子
人間
- 矢崎和也
- 15歳の中学卒業の少年で、赤ん坊のトリトンを岬の下におりていって拾う。同時に襲ってきた津波で父親を失い、海を恨む。血の気の多い性格で、原作ではその性格のせいで彼の給料を横領していた先輩をカッとなって刺殺してしまった。トリトンを弟としてかわいがっている。原作のみに登場。
- 一平じいさん
- 声 - 八奈見乗児
- 本家のばあさん(アニメ版ではオトヨばあさん)
- 声 - 津田まり子
- 和也の父の母。トリトンのせいで和也の父が死んだとして、彼をたたりの子として嫌い、成長して村に戻ってもなお嫌う。原作では少女時代には海人との悲恋物語があった。
- 丹下全膳(原作のみ)
- 井苔流泳法の指南。トリトンに海での闘い方を教える。後に沖洋子が弟子入りする。
- 沖洋子
- トリトンの陸での親友。沖財閥の娘。心臓が弱く医者にスポーツをする事を止められているが、父親への反抗心から、トリトンに泳ぎをならいたい、といって近づく。陸でのトリトン理解者。トリトンとともに村に行った時、ドロテアに毒の海に投げ込まれ、心臓発作を起こし死亡。原作のみに登場。
- 沖波三
- 沖商事の社長。オトヨばあさんと同様にトリトンを嫌う男。ポセイドン族に操られ、ポセイドンの要塞を建設する材料を要求される。原作のみに登場。
ポセイドン族
- ポセイドン
- 声 - 北川国彦
- ポセイドン族の首領で巨大な石像。トリトンの持つオリハルコンの短剣の輝きに引かれる。原作とパイロットフィルムでは獣的なデザインで特殊な言葉でしゃべり、トリトン族だけでなく公害などにより海を荒らす地上人を攻撃するための要塞を建造している。ポセイドン王は代々不死身の体を持っており、歴代の149人のポセイドン王が砦に眠っている。
- ターリン
- ポセイドン族の殺し屋でトリトンの両親を殺した。攻撃を受けても甲殻類のように脱皮する事で何度でも凌ぐ事が出来る。地上では沖家の運転手として働いている。殺し屋なため執念深い性格だが、好意を持った沖洋子の「優しい人」という信頼だけで幸福感を溢れさせるなど、恋愛面に関しては純情。ポセイドン族の掟により陸ではトリトンと対決せず、水中での対決を旨とする。沖洋子に好意を持っており、ポセイドン一族の秘薬を提供するなどして心臓に病気を抱える洋子を守っていた。そのため、トリトンも洋子の生存中は彼女の生命線であるターリンを殺すことが出来なかった。しかしそんなターリンも洋子がドロテアに殺された際には裏切りを考えざるを得なくなり、ドロテアを共通の敵として一時的にトリトンと共同戦線を張った。最期は要塞でトリトンと対決し、対等な形での勝負を図るが皮を脱いだ時点で隙を突かれ、落ちて来たイルカに潰されて敗れる。原作のみに登場。
- ドリテア
- 声 - 沢田敏子
- 北太平洋の女司令官。武器は鞭。トリトン征伐に失敗し、ポセイドン族の掟に従い、海底火山の噴火口に身を投げ自ら命を断つ。原作では「ドロテア」の名だがかなりデザインが異なっている。
- ドロテア
- ポセイドンの一番のお気に入りの娘で頭足類の特性を有する。卑劣な性格で矢崎家のある村の海を毒で汚染し、その罪をトリトンに擦り付けることで地上の人間にトリトンを殺させようとした。トリトンとの対決では胴体の中に内臓が無いという体質を生かして優位に立つも、沖洋子の殺害を恨んで反旗を翻したターリンの攻撃で弱点である頭部を貫かれ致命傷を負わされた。原作のみに登場で、名前は聖女「ドロテア」より引用。
- ヘプタポーダ
- 声 - 中西妙子
- ポセイドンが人間から作り出したポセイドン族でありながら青い海と太陽に憧れていたために、永久追放され、南太平洋のはずれの海グモの牢獄に閉じ込められていたが、望みを叶えるという条件でトリトン征伐に参加する。ポセイドン族には珍しく美しい女性の姿をしている。何匹ものカマスを「生きた剣」に変えて戦う。トリトンとの戦いで自分の憧れていた太陽の下では輝きが強すぎてポセイドン族は生きられないと悟り、ポセイドンを裏切りトリトンに加担する。レハールの居場所をトリトンに知らせるが、自身はレハールに殺される。原作ではポセイドンの娘で陸で沖財閥と取引にした所をトリトンに襲われるが命拾いし、救われ、戦い合う事に疑問を持ち、最後は兄からトリトンを殺すように言われるも自殺した。「あなたとお友達になりたいのよ。」「あなたのことが好きよ。」とのセリフからもトリトンには少なからず好意を抱いていたと推測される。
- マーカス
- 声 - 矢田耕司
- ポセイドンが命令伝達に使う、瞬間移動のできるタツノオトシゴ。ポリペイモス達を見下したり、作戦に難癖をつけたりすることもあり、彼らに煙たがられている。武器は口から吹く毒針。相手を呼ぶときも語頭に「やい!」を付けるのが口癖。
- ポリペイモス
- 声 - 加藤精三
- 鮫人で南太平洋の司令官。幾度もトリトン征伐に失敗し、その責任からポセイドン族の掟に従ってマーカスに処刑される。
- ミノータス
- 声 - 柴田秀勝
- ポセイドンが人間から作った、北極海の司令官。武器は口から吹く冷気。トリトン達を海の墓場に誘い込み、襲撃するも、トリトンのオリハルコンの短剣で倒される。パイロットフィルムではミノータスらしき怪獣が登場した。
- マイペス
- 声 - 加藤修→野田圭一
- ポセイドンが人間から作った、南極海の司令官。ミノータスとは元の人間が兄弟にあたる。兄ミノータス共にトリトン達を海の墓場に誘い込み、襲撃するも、ピピが付けたアルコールランプの炎を浴びて火達磨となり、海底に没した。
- レハール
- 声 - 富田耕生
- マンドリル顔で頭に角を持つ男で幻覚術を使う。ポセイドンの命により2000年の眠りから目覚め、ドリテア、ポリペイモス亡き後の太平洋全域の指揮を任された。裏切り者であるヘプタポーダを倒すも、直後にオリハルコンの輝きを直視したために失明、海底を永久に彷徨うこととなり、ポセイドンにも見捨てられる。原作でも登場するが、かなりデザインが異なる。
- ネレウス
- 声 - 八奈見乗児→今西正男
- セイウチの顔をした参謀。数々の刺客を送り込むもトリトンに大西洋入りを許し、失敗の責任を取ってポセイドンの命を受けたゲルペスに処刑される。
- ゲルペス
- 声 - 兼本新吾→増岡弘
- 赤肌の半魚人。ゴルセノスにそっくり。ポセイドン守護が任務。同族の親衛隊を率いている。
- ブルーダ
- 声 - 中曽根雅夫→山田俊司
- 虎模様で頭に角を生やしたインド洋の司令官。インド洋でトリトンを迎え撃ち、ブーメランを武器に戦うも敗れる。オリハルコンの剣の輝きがトリトンの力から発するものであることに気づいた。
- ゴルセノス
- 声 - 水鳥鉄夫
- 頭に鶏冠の生えた、鱗に覆われた緑肌の半魚人。地中海の司令官。巨大なカブトガニに乗り、砂を使った攻撃や砂の分身でトリトンを苦しめた。乱暴者と言われる割りに頭が働くようで、オリハルコンの短剣を研究して対策を練り、鏡のような大きな盾を使って短剣の輝きを反射してみせたが、最期には砂の分身が洞窟の鍾乳石から滴り落ちる水に触れて固まり、自身は盾を手放したために敗れる。
- クラゲ
- 声 - 渡部猛(第1話未放映版) / 杉山佳寿子→吉田理保子
- トリトン一行の動静を連絡する、連絡係。触手で岩を叩いて連絡を取り合う。
- ポセイドン族長老
- 声 - 渡部猛
- 物語の黒幕。真の目的はトリトン族を倒し狭い世界を出て、広い世界で平和に暮らす事。
- ゴーブ
- ポセイドンとピピ子の身代わりとなったウミワタの間に生まれたポセイドンの34人目の子供。味方すら食べる食欲からポセイドンとトリトンの共闘により倒される。この名前は原作で、アニメでは「バキューラ」として登場した。
その他
単行本
アニメ
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作品概要
1972年4月1日から同年9月30日までABC制作、ABCをキー局にTBS系列で毎週土曜日19時00分から19時30分に全27話が放送された。本作より、この枠はTBS制作番組からABC制作番組に変更になっている。
元々は連載終了後に、手塚治虫が手塚プロダクションでアニメ化する予定でパイロット版が制作された。しかし、虫プロダクションの経営悪化による混乱の中、アニメ化の権利を手塚のマネージャーだった西崎義展が取得して、テレビ局への放送の売り込みに成功した[4]。西崎のテレビアニメ初プロデュース作品であり、富野喜幸(現・富野由悠季)の初監督作品となる。虫プロ商事のスタッフを中心に設立されたアニメーション・スタッフルームで製作されることとなった。実際に制作の中心となったスタジオは主に東映動画のテレビアニメシリーズの下請けをこなしていた朝日フィルムで、監督の富野は虫プロ系のスタッフが使えなかったと後に述べている[5]。そのため、キャラクターデザインに東映動画出身の羽根章悦を起用したのも、虫プロではなく新しいものに挑むという基本方針の下、あえて手塚治虫調ではないキャラクターを選択したものであった[6]。
こうした製作の経緯があったため、手塚は秋田書店版の単行本のカバー袖のコメントで「テレビまんがのトリトンは自分のつくったものではない」、講談社の手塚治虫漫画全集のあとがきで「自分は原作者の立場でしかない」と読者に断っている[4]。これについて富野は、手塚は原作を失敗作だと考えていたのではないかと推察し、ストーリーの改変についても、かなり自由に任せてくれたとも回想していた[7]。
アニメ版では原作にあったトリトン族と人間との関わりの部分を切り捨て、物語全体の鍵を握る「オリハルコンの短剣」を登場させて、圧倒的な敵を相手に戦闘が成り立つことを説明している。本作は『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』などとは異なり、虫プロの色である手塚治虫のスターシステムキャラクターは全く登場しなかった。
本作は富野喜幸の初監督作品として、守るべきものに追われる主人公、主人公たちが作る共同体、そうして最終話で明らかとなる実はトリトン族こそが悪でありポセイドン族が善であったという善悪逆転の衝撃のラストが後の『無敵超人ザンボット3』に繋がるとしてしばしば比較される[8][9][10][11]。
ケイブンシャが発行した『大百科シリーズ112 世界の怪獣大百科』では、本作に出てきた一部のポセイドン族やメドンが紹介されている。
アニメ史上における評価
本作は『宇宙戦艦ヤマト』以前に高年齢層に人気を博した作品で、アニメブームの先駆者として重要とされる作品である。日本で初めてファン主体のテレビアニメのファンクラブが作られたとも言われる作品で、とりわけ女性ファンの人気が高かった[8][12][13][14][15][16]。1972年結成の『海のトリトン』ファンクラブの「TRITON」がそのファンクラブとされる[17]。さらに録音スタジオには、トリトン役の塩屋翼を目当てに女子中学生や女子高校生が見学に訪れるという後のアニメ声優ブームの先駆けとなる現象も見られた[18]。
後に西崎の『宇宙戦艦ヤマト』と富野の『機動戦士ガンダム』が大ヒットしたことで、本作は再評価された。1978年1月25日には、「アニメ愛蔵盤シリーズ」の1作として本作のサウンドトラック『海のトリトン』(CS-7044)が発売され、オリコンLPチャートで最高4位[19]を記録した。
劇場版
やがて『宇宙戦艦ヤマト』に始まるアニメブームが到来し、テレビ版を再編集した劇場版前編(74分)が製作された。西崎義展がプロデュース、劇場アニメ版『宇宙戦艦ヤマト』を監督した舛田利雄が監修し、編集は棚橋一徳が行った[20][21]。
1979年7月14日に東映洋画部が配給した『宇宙戦艦ヤマト』『さらば宇宙戦艦ヤマト』の再上映のアンコールイベント『宇宙戦艦ヤマト・フェスティバル』で公開された。配給収入は5億1千万円[22]。
後編(65分)は劇場公開されず、1984年5月21日発売のビデオで前後編を139分の1本にまとめて、日本コロムビアのコロムビアビデオから発売。初公開された[20][23][24]。1999年12月に東宝から、2002年3月にはパイオニアLDC(現・ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン)から、前後編を合わせて収録したDVDが発売されている。
玩具
スポンサーの中嶋製作所が商品化したポセイドン族は「ウルトラ怪獣」とされ、価格もブルマァクの怪獣ソフビ同様350円で発売された。バキューラやゲプラーなどの怪獣は商品化されなかった。当時、バンダイの「わんぱくイルカ」のヒットに便乗しルカーが同様に水中モーターを搭載して商品化されている。
再放送
1973年には、テレビ神奈川(TVK・独立UHF放送局)で再放送された。
1975年3月31日にABCがテレビ朝日系列にネットチェンジしたことにより、テレビ朝日系列局のある地域では、TBS→テレビ朝日(ANB→EX)、静岡放送(SBS)→静岡けんみんテレビ=現:静岡朝日テレビ(SKT→SATV)、山陽放送(RSK)→瀬戸内海放送(KSB)、中国放送(RCC)→広島ホームテレビ(UHT→HOME)、RKB毎日放送(RKB)→九州朝日放送(KBC)などその局に移譲して再放送が行われていたところもある。後年、毎日放送(MBS)のアニメ再放送枠「ヒーローは眠らない」でも放送された。2010年8・9月にサンテレビで月曜から金曜の朝7時から放送された。
テレビ朝日では、1977年に再放送を行った。本作品のニコニコ動画へのアップロードに対する削除申立者は、テレビ朝日となっていた。
映像ソフト化
1990年12月17日にバンダイビジュアル販売株式会社から全27話を7枚のレーザーディスクに収録したLD-BOXが発売された。翌1991年には同社から全6巻のビデオ版が単品で販売された。
パイオニアLDCより、2001年9月21日にDVD-BOXが発売。 2002年10月25日には、全5巻の単品DVDも発売された[25]。
2009年9月11日に東北新社より、テレビ版と劇場版を完全収録したDVD-BOXが発売された[26]。
アニメ版ストーリー
老漁師一平に岬で拾われた緑の髪の赤子は、トリトンと名づけられ育てられるが不吉な髪の色として疎外される。ある日一頭の白いイルカ、ルカーに出会う。ルカーは、トリトンが人ではなく、海棲人類トリトン族の最後の生き残りであること、トリトン族は七つの海を支配し暴虐の限りを尽くす、ポセイドン族と戦う運命にあることを告げる。トリトンはイルカの言葉が判ること自体に狼狽し、それを信じようとしなかったが、一平がトリトンと一緒に拾ったトリトン族の衣装と宝物「オリハルコンの短剣」を発見し、ルカーのいうことが真実だと知る。そのとき、トリトンを発見したポセイドン族の尖兵が漁村を襲い、トリトンは村を救うため、海への旅立ちを決意する。トリトン族の他の生き残りを探すため、父母の仇、村の仇であるポセイドン族を倒すために。
苦難の旅の果て、ポセイドン族の本拠地へのりこんだトリトンは衝撃の真実を知る。ポセイドン族はアトランティス人によってポセイドンの神像の人身御供として捧げられた人々の生き残りであった。そして、ポセイドン族に滅ぼされ、わずかに残ったアトランティス人が、ポセイドン族に復讐するための武器であるオリハルコンの短剣を託すために生み出した生物兵器、それがトリトン族だった。ポセイドン族がトリトン族を殺戮してきたのは、あくまでも自らの身を護るためだったのだ。
この最終話のプロットは、富野が脚本を無視して絵コンテ作成時に独断で盛り込んだ。このアイデアは第1クール終了頃に思いついたものの、周りに相談すると確実に却下されると考えて富野は沈黙を貫いた。ただし富野は、たとえ何クールの放送になろうと最後はこうすると決めていたという。富野自身「これはもう職権乱用です」と断言している[12]。
最終回の脚本は松岡清治とクレジットされているが、飽くまで名義であり、実際の内容に沿った脚本は存在しない。
スタッフ
- 劇場版
- 原作 - 手塚治虫
- 製作総指揮 - 西崎義展
- 監修 - 舛田利雄
- 構成 - 松岡清治、富野喜幸
- 作画監督 - 羽根章悦
- 演出 - 富野喜幸、棚橋一徳
- 音楽 - 鈴木宏昌、蛙プロダクション
- 音響監督 - 浦上靖夫
- 音響 - 本田保則
- 制作 - オフィス・アカデミー
- 配給 - 東映株式会社
主題歌など
- オープニングテーマ1・エンディングテーマ2「海のトリトン」
- 作詞 - 伊勢正三 / 作曲 - 南こうせつ / 歌 - 須藤リカ、かぐや姫
- 発売元 - 日本クラウン(MW-1002)
- 最初期(第1話 - 第6話)はオープニングテーマだったが、第7話以降はエンディングテーマとして使用された。
- オープニング・アニメーションの作画が放映開始に間に合わなかったこともあり、映像にはトリトンらの主要キャラクターは登場せず、代わりに須藤リカとかぐや姫の実写映像が使われた。
- 初期後半ではトリトンの顔が異なるバージョンが使われていた。
- オープニングテーマ2・エンディングテーマ1「GO! GO! トリトン」
- 作詞 - 林春生 / 作曲 - 鈴木宏昌 / 歌 - ヒデ・夕木、杉並児童合唱団
- 発売元 - 日本コロムビア(SCS-162)
- 「海のトリトン」と表記されることもある。JASRACでは「海のトリトン」として登録されており、副題が「GO GOトリトン〜水平線の彼方へ」となっている。
- 最初期はエンディングテーマだったが、第7話からオープニングテーマになった。劇場版のOPとしても使用。
- 初期後半では本編のカットを使用したバージョンも存在していた。
- ビクターレコードからは藤井健によるカヴァー版が発売された。
- 1978年発売のドラマ編LP(日本コロムビア、CS-7044)には、テレビサイズ用の効果音(火山爆発の音)を編集で重ねたレコード用フルサイズが収録された。
- 早い時期にミュージックエイト社による吹奏楽譜がリリースされたこともあり、多くの学校で吹奏楽の演奏曲目として使用されている。特に高校野球の応援歌で今現在もよく演奏されている。
- 水木一郎が2011年発売の「THE HERO〜Mr.アニソン〜」でカヴァーした。
- イメージソング「海のファンタジー」(本編未使用)
- 作詞 - 山川庄太郎 / 作曲 - 南こうせつ / 歌 - 須藤リカ、かぐや姫
- 発売元 - 日本クラウン(OP1シングルのB面に収録)
- 挿入歌「ピピのうた」
- 作詞 - 丘灯至夫 / 作曲 - 松山祐士 / 歌 - 広川あけみ
- 発売元 - 日本コロムビア(OP2シングルのB面に収録)
- 上記ドラマ編LPでは挿入歌のように使用された。
各話リスト
- 各サブタイトルは画面上表記どおり。映画化に際して反映されたエピソードについても併記する。
- シリーズ全体で構成に影響のない、一話完結エピソード(ボトルショー)は、劇場版では一部のシーンを使われただけで、基本的にカットされている。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | コンテ | 演出 | 劇場版での反映 |
---|---|---|---|---|---|---|
第1話 | 1972年 4月1日 |
海が呼ぶ少年 | 松岡清治 | 斧谷稔 | 富野喜幸 | 物語の初端であるため反映。 |
第2話 | 4月8日 | トリトンの秘密 | 永樹凡人 | 物語の基本設定が固まる話のため反映。 | ||
第3話 | 4月15日 | 輝くオリハルコン | 正延宏三 | ドリテアとトリトンの戦闘、メドンの死を反映。 | ||
第4話 | 4月22日 | 北海の果てに | 辻真先 | 斧谷稔 | 富野喜幸 | ピピ初登場の話のため反映。 |
第5話 | 4月29日 | さらば北の海 | 宮田雪 | 山吉康夫 | ミノータスとの対決とプロテウス戦死を反映。 | |
第6話 | 5月6日 | 行け、南の島! | 松岡清治 | 大貫信夫 | 第10話に統合。トリトンがピピを連れ戻すシーンのみ反映。 | |
第7話 | 5月13日 | 南十字星のもとに | 辻真先 | 山吉康夫 | 一話完結エピソードのためカット。 | |
第8話 | 5月20日 | 消えた島の伝説 | 松元力 | 大貫信夫 | ||
第9話 | 5月27日 | ゆうれい船の謎 | 富田宏 | 山吉康夫 | ||
第10話 | 6月3日 | めざめろ、ピピ! | 松岡清治 | 池原成利 | ほぼノーカットで反映。 | |
第11話 | 6月10日 | 対決・北太平洋 | 宮田雪 | 山吉康夫 | ||
第12話 | 6月17日 | イルカ島大爆発 | 松岡清治 | 斧谷稔 | 前編のラスト。イルカ島崩壊のみ反映。 | |
第13話 | 6月24日 | 巨獣バキューラの追撃 | 松元力 | 山吉康夫 | 第15話に統合。ハイライトシーンのみ反映。 | |
第14話 | 7月1日 | 大西洋へ旅立つ | 辻真先 | 斧谷稔 | 一話完結エピソードのため、カット。 | |
第15話 | 7月8日 | 霧に泣く恐竜 | 宮田雪 | 大貫信夫 | 漂流シーンとポリペイモス処刑を反映。恐竜のシーンはカット。 | |
第16話 | 7月15日 | 怪人レハールの罠 | 辻真先 | 西谷克和 | レハール登場と海底洞窟のみ反映。 | |
第17話 | 7月22日 | 消えたトリトンの遺跡 | 松元力 | 平田敏夫 | 一話完結エピソードのため、カット。 | |
第18話 | 7月29日 | 灼熱の巨人タロス | 辻真先 | 大貫信夫 | ピピとフィンがさらわれるシーンのみ反映。 | |
第19話 | 8月5日 | 甦った白鯨 | 宮田雪 | 佐々木正広 | 一話完結エピソードのため、カット。 | |
第20話 | 8月12日 | 海グモの牢獄 | 松岡清治 | 斧谷稔 | ほぼ反映。 | |
第21話 | 8月19日 | 太平洋の魔海 | 辻真先 | 山吉康夫 | ヘプタボーダの戦死のみ反映。 | |
第22話 | 8月26日 | 怪奇・アーモンの呪い | 宮田雪 | 大貫信夫 | 一話完結エピソードのため、カット。 | |
第23話 | 9月2日 | 化石の森の闘い | 松岡清治 | 斧谷稔 | ほぼ反映。 | |
第24話 | 9月9日 | 突撃ゴンドワナ | 辻真先 | 池原成利 | 前編のドリテアを倒すシーンのため、ガダルを倒すシーンを流用。 | |
第25話 | 9月16日 | ゴルセノスの砂地獄 | 宮田雪 | 斧谷稔 | ネレウス処刑のみ反映。 | |
第26話 | 9月23日 | ポセイドンの魔海 | 辻真先 | 大貫信夫 | 難破船での戦闘のみ反映。 | |
第27話 | 9月30日 | 大西洋 陽はまた昇る | 富野喜幸 | 斧谷稔 | ほぼノーカットで反映。 |
パイロット版
1971年10月に、日本国外への輸出を意図して、頭身の低い洋風のキャラクターデザインで虫プロ商事によって、アクション中心の9分のパイロット版が製作された[4][27]。イーストマンカラー作品。テレビアニメ版制作の前であり、タイトルは新聞連載時の『青いトリトン』となっている。
- スタッフ[27]
- 原作 - 手塚治虫
- 原画 - 上口照人
- 動画 - 小林準治
アニメと原作のラストの違い
- 原作
- 不死身のポセイドンを宇宙へ追放させるため、トリトンはポセイドンと共に宇宙へ去ってしまう。その後、ピピ子との間に生まれた7つ子から息子のブルーがトリトンの後を継ぎ、甲ら島となったガノモスに帰るシーンでラストとなる。
- アニメ
- トリトンはアトランティス大陸の遺跡の中に入り、ポセイドン族の長老の亡骸と対峙。そこでオリハルコンの短剣の秘密が明らかになる。実は、ポセイドン像はプラスエネルギーのオリハルコン、短剣はマイナスエネルギーのオリハルコンで作られていた。そして、ポセイドン族によって滅ぼされた、ポセイドン族を人身御供にしていたアトランティス人はマイナスエネルギーのオリハルコンの短剣を、報復のためにトリトン族に託した。トリトンのオリハルコンの短剣には、ポセイドン族の生命の源であるポセイドン像(プラスエネルギーのオリハルコン)を引き寄せてしまう磁力のような力が存在しているため、ポセイドン族は自らの安泰のためにも、オリハルコンの短剣を始末しなければならなくなった。最終的にトリトンはポセイドン像を破壊、その爆発のためポセイドンの基地も破壊される。ポセイドン族を滅ぼし、報復の連鎖からようやく解き放たれたトリトンとピピは、イルカたちと共にいずこかへ立ち去ってラストとなる。
出典
- ↑ 二階堂黎人『僕らが愛した手塚治虫 激動編』腹書房、2012年、p.21
- ↑ 手塚治虫「あとがき」『手塚治虫漫画全集192 海のトリトン4』講談社、1980年、p.230.
- ↑ 『海のトリトン』秋田書店。手塚治虫の前書き。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 手塚治虫「あとがき」『手塚治虫漫画全集192 海のトリトン4』講談社、1980年、p.231.
- ↑ 富野由悠季『増補改訂版 だから僕は…』徳間書店・アニメージュ文庫、1983年、pp.283-284.
- ↑ 富野由悠季『増補改訂版 だから僕は…』徳間書店・アニメージュ文庫、1983年、pp.285-286
- ↑ NHK総合テレビジョン『トップランナー』2002年2月28日放送。富野由悠季出演回。
- ↑ 8.0 8.1 氷川竜介『20年目のザンボット3』太田出版、1997年、pp.182-184.
- ↑ 氷川竜介「ロボットアニメの系譜が示すガンダムの実像」『BSアニメ夜話Vol.02 機動戦士ガンダム』キネマ旬報社、2006年、p.145.
- ↑ ササキバラ・ゴウ『<美少女>の現代史 萌えとキャラクター』講談社現代新書、2004年、p.130
- ↑ 中島紳介「『海のトリトン』〜『機動戦士Vガンダム』 ニュータイプの夢は終わらない」『別冊宝島330 アニメの見方が変わる本』宝島社、1997年、pp.47-48.
- ↑ 12.0 12.1 『富野由悠季全仕事』キネマ旬報社 1999年、p.64。
- ↑ ササキバラ・ゴウ『<美少女>の現代史 萌えとキャラクター』講談社現代新書、2004年、p.21.
- ↑ 大塚英志『キャラクター小説の作り方』講談社現代新書、2003年、pp.279-282.
- ↑ 辻真先「アニメ脚本の歴史」『テレビ作家たちの50年』日本放送作家協会編、NHK出版、2009年、p.355.
- ↑ 大森望、三村美衣『ライトノベル☆めった斬り!』太田出版、2004年、p.51.
- ↑ 吉本たいまつ『おたくの起源』NTT出版、2009年、p.150
- ↑ 池田憲章編『アニメ大好き! ヤマトからガンダムへ』徳間書店、1982年、p.118
- ↑ 『オリコン・チャートブック LP編 昭和45年-平成1年』オリジナル・コンフィデンス、1990年、331頁。ISBN 4-87131-025-6
- ↑ 20.0 20.1 アニメージュ編集部編『劇場アニメ70年史』徳間書店、1989年、p.75
- ↑ 舛田利雄『映画監督舛田利雄〜アクション映画の巨星 舛田利雄のすべて〜』佐藤利明、高護編、ウルトラ・ヴァイヴ、2007年、p.298.
- ↑ 川端靖男、黒井和男「1979年度日本映画・外国映画業界総決算」『キネマ旬報』1980年2月下旬号、p.129
- ↑ 『アニメージュ』1984年6月号、p.166。コロムビアビデオ広告ページ。
- ↑ 『アニメージュ』1984年7月号、p.160、167
- ↑ 「DVD発売日一覧」8月26日の更新情報 インプレスAV Watch 2002年8月27日。
- ↑ 海のトリトン:手塚原作、富野演出の傑作がDVDボックスに 劇場版前後編と「幻の1話」も 毎日新聞 2009年6月20日。
- ↑ 27.0 27.1 『手塚治虫劇場 手塚アニメーションフィルモグラフィー』手塚プロダクション、1991年第2版、p.42.