教育職員免許状

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教育職員免許状(きょういくしょくいん めんきょじょう)とは就学前教育初等教育中等教育などにかかわる教育職員に就くための資格要件とされている日本免許状のことである。

概要

ファイル:教育職員免許状中一種理科.jpg
教育職員免許状の例(中学校教諭一種免許状(理科))

現代日本においては、学校教員に必要な免許状のみがあり、学校教員の免許状は、教員免許状(きょういんめんきょじょう)とも呼ばれる。教員免許(きょういんめんきょ)と略称することもある。なお、以前の教育職員免許状には、校長の免許状、教育委員会教育長の免許状、教育委員会の事務局の職員である指導主事の免許状もあった。

日本では、教育職員免許法昭和24年法律第147号)に基づいて、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第1条に定める幼稚園小学校中学校高等学校中等教育学校特別支援学校の、主幹教諭指導教諭教諭助教諭養護教諭養護助教諭栄養教諭講師(講師については、特別非常勤講師を除く)のに就いている者は、各種の免許状の授与を受けている者でなければならないとされている。ただし、教科の領域の一部に係る事項などを担任する非常勤講師については、免許状を有していなくても都道府県教育委員会に届け出ることにより特別非常勤講師として勤務することができる。また、実習助手については、免許状を必要とされていない(ただし、有する場合は更新講習の受講義務が発生する)。

一般的に教職課程のある大学で所定の教育を受けることにより、教員の免許状が取得できることがよく知られている。このようにして取得する免許状は、普通免許状という形態の免許状であり、この他にも免許状には様々な種類・形態・区分などがある。近年では1989年1998年(特別支援教育に関する科目に関しては、別途2006年の法改正で、特殊教育に関する科目から変更)に法改正が行われており、各改正が適用後に大学に入学したものに対して、教職に関する科目の履修区分や教科に関する科目の法定単位数(一部の教科は履修区分も併せて変更)に変更が加えられている。また、2008年の施行規則改正では、教職に関する科目の一部履修区分の改廃が行われているほか、学習指導要領の改訂などに即して、教科に関する科目の科目区分が施行規則の改定で変更される場合がある(近年では、2010年の施行規則改正で、中学・高校の保健体育と高校の福祉が、2011年度入学者より、教科に関する科目区分が変更されている。それ以外の教科に関しては、2000年度以降大学入学者に適用される1998年の免許法改正時の区分のままになっている)。

教育職員免許状を有する者は、教育に関する基礎的な資質を有するものとされることもある。小学校・中学校・高等学校のうち、いずれかの教諭の免許状を有する者は、同時に児童指導員児童の遊びを指導する者(児童厚生員から名称変更)の任用資格を有する扱いとなる、など、社会福祉児童福祉分野における教育職員免許状の活用もある。

「免状」「教免」「教状」などと略して呼ばれることがある。

各々の免許状の概要

免許状の種類には、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校それぞれの校種ごとの教諭の免許状、助教諭の免許状と、校種を問わない免許状である養護教諭の免許状、栄養教諭の免許状がある。ただし、中等教育学校の教諭・助教諭の免許状はなく、中等教育学校の教員は、中学校と高等学校の教諭または助教諭双方の校種の免許状を原則として有しなければならないことになっている。また、講師の免許状は存在せず、特別非常勤講師を除いて、教諭か助教諭の免許状を有している者が務めることになっている。

さらに取得方法や効力の違いにより、普通免許状(さらに専修免許状、一種免許状、二種免許状に区分)、特別免許状、臨時免許状の3種類の形態がある。ただし、幼稚園、養護教諭、栄養教諭の免許状には特別免許状はなく、栄養教諭の免許状には臨時免許状もない。

なお、中学校と高等学校は普通免許状、特別免許状、臨時免許状のすべての形態で、小学校は特別免許状で、特別支援学校は自立活動等に係わる免許状で、教科や分野ごとに授与される。特別支援学校の普通免許状の場合は、5教育領域のうち、修得している教育領域をすべて包括の上で1枚で授与される形となり、領域追加の場合は、追加の事実を記載の上、元の免許状から差し替えを行う形となる(専修、一種、二種の別は、それぞれの免許状毎の枚数が発行される)。

免許状の例
  • 高等学校教諭一種免許状(公民)
  • 特別支援学校教諭一種免許状(視覚障害者に関する教育)
  • 小学校助教諭臨時免許状

免許状の種類(校種・職種)

原則

教諭、助教諭、講師という一般的な教員を務めるには、校種・職種に応じた免許状を有していなければならない。また、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭という専門的な教員を務めるには、職種に応じた免許状を有していなければならない。

免許状は、次の学校種・ごとに存在している。

学校種 職種職階職位
幼稚園 教諭 助教諭
小学校 教諭 助教諭
中学校 教諭 助教諭
高等学校 教諭 助教諭
特別支援学校 教諭 助教諭
自立教科教諭 助教諭
自立活動教諭 助教諭
(校種区分なし) 養護教諭 養護助教諭
(校種区分なし) 栄養教諭 (栄養助教諭という職種はない)

※特別支援学校については、一般的な学校と比べると多様な業務が求められるため、免許状においては、(一般的な)「教諭」、「自立教科教諭」、「自立活動教諭」などの区分が設けられている。ただし、学校教育法においては、自立教科教諭と自立活動教諭の職はなく、これらの2つの職は、学校教育法においては教諭の職とみなされる。

※これまでの盲学校、聾学校、養護学校の各免許状を有する者は、2007年4月1日施行の改正教育職員免許法により障害種の領域を定めた特別支援学校免許状の授与を受けたものとみなされる。

  • 盲学校教諭免許状→視覚障害者に関する教育の領域を定めた特別支援学校教諭免許状
  • 聾学校教諭免許状→ 聴覚障害者に関する教育の領域を定めた特別支援学校教諭免許状
  • 養護学校教諭免許状→知的障害者、肢体不自由者及び病弱者(身体虚弱者を含む)に関する教育の領域を定めた特別支援学校教諭免許状

例外

以上で述べた原則には、次の通り、例外が存在している。

主幹教諭
「養護をつかさどる主幹教諭」「栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭」を除く主幹教諭については、各相当学校の教諭の免許状を有する者を充てるものとされている。
養護をつかさどる主幹教諭
養護をつかさどる主幹教諭については、養護教諭の免許状を有する者を充てるものとされている。
栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭
栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭については、栄養教諭の免許状を有する者を充てるものとされている。
指導教諭
指導教諭については、各相当学校の教諭の免許状を有する者を充てるものとされている。
中等教育学校の教員
中等教育学校には、中学校と同等である前期課程と高等学校と同等である後期課程の2つが存在する。このため、中等教育学校の免許状は存在せず、主幹教諭(「養護をつかさどる主幹教諭」「栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭」を除く)、指導教諭、教諭、助教諭、講師は、中学校の教員の免許状及び高等学校の教員の免許状を有する者でなければならない。
ただし、教育職員免許法の附則第17項により、中学校か高等学校の一方の教諭の免許状を有する者は、当分の間、中等教育学校のそれぞれ前期課程または後期課程のみの教科を担任する教諭または講師になることができる。
特別支援学校の教員
特別支援学校には、幼稚部、小学部、中学部、高等部があり、それぞれ幼稚園、小学校、中学校、高等学校に相当している。特別支援学校の教員として勤務するには校種(特別支援学校)の免許状に加え、各部に相当する幼稚園、小学校、中学校、高等学校の免許状も有することになっている。なお、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭、自立教科、自立活動を担任する教員については、後者の免許状を有しなくてもよいことになっている。例をあげると、特別支援学校幼稚部の教諭は「幼稚園」と「特別支援学校」の免許状が必要だが、特別支援学校の養護教諭は「養護教諭」の免許状のみ、特別支援学校自立教科の理療を担当する教員は「特別支援学校自立教科(理療)」の免許状のみでよいということである。
ただし、教育職員免許法の附則第16項により、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の教諭の免許状を有する者は、当分の間、特別支援学校の免許状を特に有していなくても各部のみの教諭または講師になることもできる(採用試験では採用後5年以内に特別支援学校の免許を取得することを条件にしている東京都教育委員会のような例もある)。
「学校教育法等の一部を改正する法律(平成18年法律第80号)」が平成18年6月21日に交付、平成19年4月1日から施行される事に伴い、従来の盲・聾・養護学校は特別支援学校に一本化された[1]
講師
講師の免許状は存在せず、教科の領域の一部に係る事項などを担任する特別非常勤講師を除いて、当該校種の教諭か助教諭の免許状を有している者が務めることに なっている。助教諭の免許状と教諭の免許状のどちらの免許状を有していても職名は「講師」となるが、厳密には「教諭に準ずる職務に従事する」講師と「助教諭に準ずる職務に従事する」講師に分けられるとされている。
教諭と講師で免許の種類が分けられているのではなく、基本的に教諭は正規採用の教員、講師は正規採用ではない教員であり、職名の違いは「正規採用されているか否か」による(国籍条項により日本国籍を持たない教職員が正規採用の講師として勤務している地域もある)。

免許状の形態・区分(取得方法・効力・期間・要件)

以前は、正規教員のための普通免許状と臨時教員のための臨時免許状だけが存在したが、教員免許状を有しない社会人などを教員として採用するために特別免許状が創設された。

普通免許状

普通免許状は、日本国内の全域で効力を有する。法改正により2009年4月1日以降に授与された免許状は10年を経過する日の属する年度の末日までの有効期間がある(有効期間の無い旧免許状の扱いについては教員免許更新制を参照)。

一般に教育学部などの大学学部に設けられる教職課程文部科学大臣が指定する教員養成機関などで必要な教育を受けることで、都道府県の教育委員会から授与される代表的な免許状である。また、文部科学省やその委嘱を受けた大学が実施する教員資格認定試験に合格するか、都道府県の教育委員会が実施する教育職員検定に合格することでも授与を受けることができる。普通免許状は、授与を受ける者の学歴などに応じて、専修免許状、一種免許状、二種免許状の3つに区分されている(「1990年から「種」となるまでは「級」であった)。栄養教諭一種免許状や、栄養教諭二種免許状の取得には、栄養士免許証が必要である。栄養教諭専修免許状の取得には、管理栄養士免許証が必要である。栄養士免許証や管理栄養士免許証を所持していない者が、栄養教諭の免許状のみを単独で取得することは出来ない。

管理職になるためには、昭和時代まで授与されていた一級免許状相当の免許状が必要とされる(詳細は後述)。

専修免許状
修士学位を有することを基礎資格とする(教育職員免許法第5条第1項「別表第1」適用時)。一種免許状の要件に加え(ないしは、すでに授与された一種免許状を基礎免許状とした上で)、大学院で教科又は教職に関する科目など[2]の単位を24単位以上取得する必要がある。
また、教諭が採用から一定年数の勤務期間を経て、大学院に在籍し取得することが出来る。採用から一定年数の勤務期間を経た教諭が現職のままで専修免許状を取得したい場合(「別表第3」適用時[3])は、放送大学大学院等、大学院での通信教育や、通学制大学院の科目等履修生となり長期休業中、夜間、土曜日、日曜日の講義で単位を取得し、教育職員検定を得て取得する方法がある(この場合は、15単位以上となる)。高等学校の場合、管理職になるためには専修免許状が必要であるため、この方法で専修免許状を取得する者も多い[4]
かつて授与されていた、高等学校1級の免許状相当とされる。このためか、高等学校の免許状の(上申を含む)授与申請にあたり、施行規則第十条の六第1項[5]の規定[6]の対象外となるため、いきなり専修免許状で申請する場合は段階を踏むか、2000年度以降の科目の単位で一種相当分からすべてそろえる必要がある[7]などの制約がある。このため、別表3ないし4で専修免許状の授与を受ける場合ないしは別表4ないし8の一種免許状を別表1にて上申する場合などは手続きがやや複雑になる。
一種免許状
学士の学位を有することを基礎資格とする。一般的に教科に関する科目と教職に関する科目などの単位をそれぞれ一定数以上取得する必要がある。
また、高等学校・特別支援学校(自立活動教諭のみ)の場合、教員資格認定試験に合格すると、この種別の免許状を受けることが出来る。
一般的に「教員免許」と言えば、この種別を指すことが多い。
かつて授与されていた、高等学校2級ないしは小学校・中学校・特殊教育諸学校の各1級の免許状相当とされる。
二種免許状
短期大学士(みなしを含む[8])あるいは学士の学位を有することを基礎資格とする。高等専門学校で授与された準学士の称号は不可である。一般的に教科に関する科目と教職に関する科目の単位などをそれぞれ一定数以上取得する必要がある。高等学校の免許状にはない区分である。
また、幼稚園・小学校の場合、教員資格認定試験に合格すると、この種別の免許状を受けることが出来る。
この種別の免許状を受けて採用されている場合、将来一種免許状を取得することを奨励される場合が多い。教育職員免許法第9条の5には、二種免許状のみを有する現職教員に対して、一種免許状を取得するように努める義務を課している(一般的には、職務経験を積ませて別表第3で申請するケースと一種の免許状には不足とされる単位を各都道府県教育庁から履修指導を受けたうえで、大学通信教育で必要単位を修得し、別表1で申請・取得させるケースとがある。期間としては、後者の方法が早く授与される)。
かつて授与されていた、小学校・中学校・特殊教育諸学校の各2級の免許状相当とされる。高等学校の免許状に二種がないのはこの為とされる。

特別免許状

特別免許状は、各都道府県内のみで効力を有し、有効期間は10年である(経過日の属する年度の末日)。担当する教科に関する専門的な知識経験又は技能を有し、社会的信望等を持つ社会人経験者等で、雇用者(採用する学校法人等)の推薦を受けた者に対し、教育職員検定を行い合格すると授与される(免許法第5条4項)。

臨時免許状

臨時免許状は、各都道府県内のみで効力を有し、原則として3年間の有効期間が設けられている免許状である。ただし暫定処置として、条件的に都道府県の教育委員会規則で、その有効期間が6年間とされることもある。臨時免許状は、普通免許状を有する者を採用することができない場合に限って実施される都道府県の教育委員会の教育職員検定に合格すると授与される(施行規則「5条第6項」) 。

特例特別免許状(構造改革特別区域の市町村のみ)

特例特別免許状は、(特例)特別免許状授与事業を実施する構造改革特別区域の各市町村内のみで効力を有し、有効期間は10年である(経過日の属する年度の末日)。この免許状の授与の対象となるのは、学校設置会社株式会社)が当該学校の教員に雇用しようとする場合、学校設置非営利法人特定非営利活動法人)が当該学校の教員に雇用しようとする場合、市町村がその給料または報酬等を自己負担して当該市町村の教育委員会が教員に任命しようとする場合である。担当する教科に関する専門的な知識経験又は技能を有する社会的信望等を持つ社会人経験者等が、市町村(〔特例〕特別免許状授与事業を実施する構造改革特別区域の各市町村)の教育委員会が実施する教育職員検定に合格すると、市町村の教育委員会から授与される(構造改革特別区域法 第19条)。

免許状の種類、効力等(新免許法)
種類 区分 基礎資格 効力 有効期間 職階 備考
普通免許状 専修 修士 全国 10年 教諭 10年で更新講習が必要
一種 学士
二種 短期大学士
特別免許状 都道府県 10年 教諭 推薦、専門知識等条件多い
臨時免許状 都道府県 3年(特例6年) 助教諭 採用条件あり
(免許状なし) 特別非常勤講師 授与権者への届け出のみ

教科・分野ごとの授与

中学校と高等学校の免許状、小学校の特別免許状、特別支援学校の自立活動等に係わる免許状は、教科や分野毎に授与される。特別支援学校の免許状は、児童・生徒の障害に応じた5つの教育領域のうち、取得している領域を1枚の免許で授与される(このため、新教育領域追加の際は、追加申請の際に従来所有する免許状の原本の提出が求められ、領域追加後の免許状に差し替えの形で発行される。よって、領域追加申請は授与申請とはならず、有効期限のある既存免許状の有効期間延長や期限のない免許状保有者の更新講習期限の延長の理由として申請することなどはできない。これは、旧養護学校・盲学校・聾学校の免許状を保有しているものであっても、同様に扱われる)。

教員免許状制度に関する事項

教職課程における履修科目など

大学などの教員養成機関で普通免許状に必要な単位を取得するために、教職課程が設置される。「教職に関する科目」、「教科に関する科目」、「養護に関する科目」、「栄養に係わる教育に関する科目」、「特別支援教育に関する科目」、「大学が加える教職に関する科目に準ずる科目」が開講され、授与を受ける免許状によって履修する科目が異なる。

詳しくは教職課程を参照のこと。

免許状の授与申請

免許状の授与申請は、授与権者としての事務を取り扱っている都道府県の教育委員会(教育庁)へ行う。普通免許状については、原則として全国どの都道府県教育委員会に申請しても授与されることとなっている[10](一部の教育委員会では、地元在住者の受付を行うような公告や説明をしている場合もあるが法的な根拠は無い)。

具体的な申請書の様式については教育委員会規則などにより定められているので、あらかじめ申請したい各都道府県の教育庁から取り寄せる必要がある(ホームページからダウンロードできる教育委員会もある。#外部リンクを参照)。

例えば免許法「別表第一」による普通免許状の授与申請では、

  • 教育委員会が定める申請書[11]
  • 基礎資格、課程修了(単位修得)の証明書(卒業証明書学力に関する証明書)…単位を取得した大学と卒業大学が同一の場合は、卒業証明書は不要(2009年3月までは、学力に関する証明書はなく、教員免許申請用の「単位修得証明書」であったため、単位を取得した大学と卒業した大学が同一であっても卒業証明書を別途要した[12])。
  • 介護等の体験の証明書(小学校、中学校の場合。ただし、すでに当該校種の免許状を授与されている者や平成9年度以前に大学に入学している者の場合は不要)
  • その他教育委員会が必要と定めるもの(返信用封筒等)[13]
  • 都道府県により、基礎免許状が必要な場合[14]、あるいは基礎免許状が必要でない場合でも既存の免許状がある場合はその写し(宮城県のように、専用の台紙に免許状を縮小コピーの上で貼付し、所属長などによる原本証明が必要となるケースがあるほか、岩手県のように、免許状のコピーの余白に所属長の奥付証明を要するケースなどがある)

などを揃え提出する。通常は書面のみの手続きである。申請手数料については、申請先の地域の自治体が発行する収入証紙(国の収入印紙ではないので注意)を申請書(秋田県のように、証紙専用の台紙が、申請書とは別途添付されるケースでは、申請書本体ではなく、そちらに貼付)に貼ることで納付するのが普通である(収入証紙を廃止した東京都については例外)。なお、遠隔地からの申請などの理由により、収入証紙が入手できない場合は、無記名の定額小為替普通為替証書などで代用(道府県により若干指定が異なる)し、収入証紙の台紙には、記名だけを行って貼付等は行わない状態で提出、ということを可能としている道府県もある(すべての道府県ではない)。

ほか、例えば免許法「別表第四」による、教育職員検定を利用した普通免許状(既存の免許状と同一校種で他教科の免許状を申請)の授与申請では、

  • 基礎資格証明書[15]卒業証明書。ただし、都道府県により卒業証明書中に卒業年月日の記載がない場合は、別途、卒業年月日までの記載がなされた在籍期間証明書の添付を要する場合がある[16]
  • 教育委員会が定める申請書[11]
  • 学力に関する証明書
  • 人物・身体に関する証明書(指定の様式)
  • 履歴書(指定の様式)
  • 出願要件調書(要しない都道府県もある)
  • その他教育委員会が必要と定めるもの(返信用封筒等)
  • 基礎免許状の写し(宮城県のように、専用の台紙に免許状を縮小コピーの上で貼付し、所属長などによる原本証明が必要となるケースがある)ないしは、該当する免許状に関する教育職員免許状授与証明書


免許状への新教育領域の追加申請

なお、特別支援学校教諭の免許状をすでに授与されているもの[17]が、施行規則5条2第3項の規定により、「新教育領域の追加」の申請を行う場合は、教育職員検定の利用の有無を問わず、「授与申請」とはならない。また、従来の免許状と差替えの形をとる[18]ほか、このケースでの免許状の有効期限の延長はなされない[19]。また、このケースでは、既存の免許状の授与権者に対してでなければ申請はできない。

なお、領域追加については、上記の通り、教育職員検定によるものとよらないものとが存在するが、前者は放送大学の単位や現職教員向け講習受講により追加できるものであり(複数の機関での単位流用が可能)、後者は課程認定大学にて必要科目の単位をそろえて修得することにより行う。

教育職員免許状に付随して取得できる資格

  • 児童指導員任用資格 - 免許状取得により一応において任用資格は発生するものの、児童指導員として採用されてはじめて、任用資格及びその専門性を認められるものである。
  • 児童の遊びを指導する者(児童厚生員から名称変更) - 同上。

特定の単位取得の後に免許状を取得した場合、同時に発生する資格

  • 社会福祉主事任用資格 - 免許状にもれなく付随するわけではない。但し、大学の教職課程を経て免許状を取得した者であって教育学や心理学等、同任用資格の定める単位を取得し卒業することで発生する資格である。

教育職員免許状、一定の職務への従事により発生する資格。

  • 児童自立支援専門員 - 免許状取得後、一年以上、自立支援施設での勤務に従事することで取得できる。

関係法令

現在の教員免許状制度を定めている法令は、戦後の学制改革に合わせて作られた。代表的な法律は、「教育職員免許法」であり、「教育職員免許法施行法」とともに、1949年(昭和24年)に制定された。また、1997年(平成9年)には、「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」が制定されて、1998年4月以降に大学に入学した者が義務教育学校の普通免許状を取得する際に、介護等の体験が必要とされることになった。

詳しくは教育職員免許法を参照のこと。

初等中等教育を除く職における評価

従業者の能力向上・自己啓発のため資格取得が奨励され、資格の取得に対して資格手当が支給されることもあるが、「教育職員の免許状」(現在は「教員の免許状」のみが存在)については、資格手当が支給されない場合が多い。同じ教育関係職であっても、大学教員、図書館の司書、博物館の学芸員、公民館の主事なども資格手当が支給されない場合がほとんどである。

日本においては、家庭教育学校教育(それに類する専修学校における教育各種学校における教育を含む)、学校教育以外の教育施設(省庁大学校公共職業能力開発施設文教研修施設を除く)、農業者研修教育施設など)、地方公共団体一般社団法人一般財団法人等による社会教育図書館博物館公民館などにおける教育)、雇用者・自己による職業教育企業内教育)などが分化しており、「教員の免許状」は、一定の学校種を対象とした教育に対する免許状であり、原則として免許状で定められた学校種において効力を有する。

雇用者が「評価を落とす事項とする」方針をとっている場合は、教育の免許状の授与をめざす、あるいは授与されていることが「教員をめざそうとしている(した)」という印象を与えることがある。説明を求められた際は、教員志望でなければ、そのことを説明する必要が生じることがある。特に教育学部の諸課程など、教員免許状の普通免許状に必要なすべての単位を修得しなければ大学を卒業できない教育課程となっている場合は、このような説明は必須となる。雇用者が「評価を上げる事項とする」方針をとっている場合は、人物面の評価としてプラスの評価をする場合がある。

学習塾・予備校業界では、学習塾・予備校講師のうち免許状を有している者の割合は、一般的には33%程度、学習塾によっては10%を下回るなど、免許状を持っていない者のほうが多い。学習塾の場合は、講師に学生のアルバイトを充てることも多く、学生がすでに「教員の免許状」を有しているのはまれである。

教員免許更新制

2006年7月11日、中央教育審議会は小坂憲次文部科学大臣(当時)に教員免許更新制の答申を提出した。これを受けて2007年6月に教育職員免許法が改正され、2009年4月より教育職員免許状の有効期限は10年とされることになった。

新免許状の有効期間は「所要資格」を得た10年後の年度末

新免許法の施行によって、2009年4月1日以降に授与される普通免許状の有効期間は、「所要資格」を得た日から10年後の年度末と定められた(免許法第9条第4項)。所要資格とは、免許状を授与される資格の要件を満たしていることである。

例えば、教職課程を修了した場合(学位も取得)、所要資格を得たことになり、その時点から有効期間が起算される(授与日から起算されるのではない)。したがって、所要資格を得た後に免許状の申請をしないままでいると、期間満了日までの日数が少なくなるので十分注意する必要がある。

ただし、従前の免許状を有する者が2009年4月1日以降に別の免許状を授与された場合は、この規定によらず、従前の免許状の確認期限に准じたものが適用される。したがって、単位の修得完了時期は問われない。なお、新免許状の有効期限の延長に相当する確認期限の延長は、講習受講義務者のみに限定されるため、事実上、現場から離れているものが新たに免許状を授与されたとしても、確認期限が先送りされることはない。

職業訓練指導員免許との関係

以下の条件に該当すれば、都道府県の実施する職業訓練指導員試験の合格者と同等以上の能力を有する者として、免許申請できる。

教育職員免許法施行前の日本の教員免許状

明治の始めには師範学校卒業証書が教員免許状の役割を果たしたこともあったが、後に教員(代用教員を除く)の資格は教員免許状によることとなった。なお、教育職員免許法施行前の免許状は、法制度上も「教育職員免許状」ではなく、「教員免許状」である。

教員免許状は、師範学校などの教員養成機関の卒業者または教員検定に合格した者に与えられた。

教員免許状を有する者で禁錮以上の刑に処せられ、その他体面を汚辱する所為のあるときは文部大臣または府県知事は教員免許状を褫奪しなければならなかった。

教員検定

教員検定には、試験検定と無試験検定があった。

小学校教員の検定は小学校令施行規則に規定され、この他の学校教員のそれは通常は教員免許令によって、高等学校高等科教員は高等学校教員規程によって、いずれも学力、性行、身体について検定された。その効力は通常、終身かつ日本全国に有効であった。

小学校教員の免許状は府県知事が授与するが、その検定のために各府県に小学校教員検定委員会が設けられた。受験資格は、年齢は制限が無く、身体は強健かつ不具廃疾でなければよかった。試験はおおむね毎年1回は各府県で行なわれ、各府県の広報によって公示されていた。中等学校以上の教員検定は国の統制によって文部大臣の指揮の下に各科について行なわれ(中等教員検定試験(文検)、高等学校教員検定試験(高検)、実業学校教員検定試験(実検))、詳細は官報で公示された。

脚注

  1. 学校教育法等の一部を改正する法律の公布について
  2. 特別支援学校教諭の場合は、「特別支援教育に関する科目」となる。
  3. 特別支援学校教諭の場合は、「別表第7」の規定となる。
  4. 学校教育法施行規則第二十条によるものだが、附則により当分の間、国公立高等学校の校長においては専修免許状又は一種免許状を有していればよい。また、他の条項により専修免許状を有していなくても管理職に登用されることも考えられる。
  5. 条文は、「幼稚園、小学校、中学校若しくは特別支援学校の教諭、養護教諭若しくは栄養教諭の一種免許状若しくは二種免許状を有する者又はこれらの免許状に係る所要資格を得ている者が、免許法 別表第一、別表第二又は別表第二の二の規定により、それぞれの専修免許状又は一種免許状の授与を受けようとするときは、これらの別表の専修免許状又は一種免許状に係る第三欄に定める単位数のうちその者が有し又は所要資格を得ている一種免許状又は二種免許状に係る第三欄に定める単位数は、既に修得したものとみなす。」とある。
  6. 免許状を二種から一種に、あるいは一種から専修に別表1にて上申する際に、上級の免許状の申請にあたって、下級の免許状の単位相当部分を修得済みと「看做す」とするもの。これにより、不足分のみを追加することで上申できると規定している。ただし、幼稚園・小中学校・特別支援学校の免許状に対しては適用対象とされるも、高等学校の免許状に対しては適用対象とならず、特に基礎免許状が別表1によるものでない場合は新たに単位を取り直す必要がある、とされる。
  7. いわゆる、「フルスペック」と呼ばれる状態。
  8. 短期大学士の制度ができる前に短期大学を卒業したケースを指す。
  9. 文部科学省幼稚園教育要領―II 幼稚園教育の内容 国立教育政策研究所
  10. 文部科学省初等中等教育局メールマガジン(第102号)
  11. 11.0 11.1 ほとんどの自治体教育庁では、ホームページ上で公開され、PDFファイル(ワードファイルと両方のケースもある(収入証紙は、自治体により、申請書に直接貼付する場合(宮城県岩手県など)と、申請書とは別になった専用の台紙に貼付する場合(秋田県など)とがある)。まれに、「.jtd」形式のフォーマットの場合もあるため、「.jtd」ビューアが必要なケースもある)でアップされているケースが散見される。しかし、東京都教育庁のように、直接来庁の上で担当職員からの面接説明を受けたうえで手渡しで受け取らなければならない教育庁も存在する(東京都教育庁の場合は、免許状の授与にあたって、書類受取に1回、申請に1回、免許授与に1回と、最低3回は直接の来庁が必要。詳細は、東京都教育庁のホームページ上にある、教育職員免許状の申請について(その1)を参照)。
  12. ただし、2009年3月以前にあっても、教育機関によっては、教員免許状用の単位修得証明書に対して基礎資格の欄を付記していたケースはあったが、そのケースでの卒業証明書の別途添付の要・不要は、申請先の各都道府県教育庁の裁量となっていた。
  13. 現職教員に対しては、経由する地方教育事務所や市区町村の教育局教員委員会事務局に直接取りに来させるという場合があるため、返信用封筒の添付不可としている地方教育事務所・教育局・教育委員会事務局もある。
  14. ただし、一種免許状を基礎資格として、「別表第一」で専修免許状を申請する場合は、基礎免許状となる一種免許状の写しに限定される。あるいは、特別支援学校教諭免許状を単独で申請する場合なども相当する。
  15. 基礎免許状が必要な場合は不要とされる場合があるが、基礎免許状と卒業大学が異なる場合(基礎免許状に記載された大学自体は卒業し、その後別の大学を卒業しているケースなどが該当)、後で卒業したほうの大学の卒業証明書の提出が必要となる(該当する場合は、要問合せとなる)。
  16. ない場合は、年度末あるいは証明書に月まで書かれている場合は、その月末に卒業したものとして看做される場合があるため、正確を期すために要求される場合がある。この証明書上の提示がない場合は、卒業又は修了の年月日に記載される日付が「看做しの日付」とされ、実際の卒業日とは異なる表示となることもある。あるいは、申請自体を差し戻しとされるケースもある。前者の場合は、既存の免許状の年月日表示と新規に授与される免許状の年月日の表示が不一致となる可能性もあるため、(免許管理者ないしは任命権者にとっては)免許管理上問題視される場合もある。
  17. 旧盲学校・旧聾学校・旧養護学校の各免許状も対象だが、3免許状をすでにすべて授与されているものについては、現行の5教育領域をすべて修得しているとみなされるため、「領域追加の申請」は不可能であり、なおかつ「領域追加」を申請する意味もない。また、3つのうち2つの免許状の授与がなされている場合、任意のいずれかの免許状と差替えの形で領域追加がなされる。
  18. 既存の免許状に新教育領域を追加記載する形を取るため。したがって、免許状番号も、差替前の番号と同一になる。
  19. 免許状授与日自体は変更されないため。あくまで、授与日の後に追記内容が発生したという旨が、差換られる免許状に明記されるだけ。

関連項目

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外部リンク