登録名
テンプレート:WikipediaPage 登録名(とうろくめい)とは、主にスポーツにおいて、選手が統括団体に登録する際に用いる名前のこと。
目次
概要
一般には戸籍等の公的書類で用いられる名前(本名)がそのまま登録名として用いられる。
ただし、登録名は特定の競技大会における選手の識別や記録の一貫性を保つ目的で使用されるので、本名である必然性は特にない(例えば結婚などにより改姓した選手の、旧姓名の使用などがある)。また、特に国際大会ではアルファベット表記に頼らざるを得ず、本名の表記や発音が難しいなどの問題に直面することがある。さらに、プロスポーツにおいては興行面でのアピールという観点から、本名とは異なる名称を冠することが有利に働く事がしばしばある。
こうしたことから、スポーツの世界においては本名以外の名前を比較的自由に登録することが容認されている。
本名による登録名の場合、報道においては下の名前を省略することが多いが、表記において同姓の選手と区別が必要なときは下の名前の一文字目を、そのまま名字の後ろに付けるか括弧で括って付記する形にする場合が多い。見出しなどで大文字の場合は下の名前の一文字目に小さな文字を使用することが多い。かつて同姓同名の選手が同じプロ野球チームに所属していたときがあり、その際には独自の区別が行われた。
日本のスポーツにおける登録名
日本においても、相撲の四股名という形で古くから競技における登録名が用いられていた。また、プロボクシングやプロレスリングなどでは選手の強さを誇示するような登録名(リングネーム)を用いることがしばしばある。
日本のプロ野球における登録名
プロ野球では特に外国人選手が発音や表記の面で本名とは別の登録名を用いることが多く見られる。漢字文化圏以外の選手の場合、表記はファーストネームを頭文字一文字とされることが多い(例:アレックス・ラミレス→A・ラミレス)。日本人選手では古くから本名の、特に下の名前について改名や漢字表記の変更は良く行われてきたが、1994年に鈴木一朗と佐藤和弘(共にオリックス)がそれぞれ登録名をイチロー、パンチとしたことから、日本人選手でも本名と別の登録名を用いることが浸透していった。特に本名の下の名前のみを登録名とするケースが多い。
読売ジャイアンツは、1996年に河野博文の登録名を「ゲンちゃん」で申請したことがある(連盟に却下された)が、現在は原則として認めない方針をとっており[1]、カツノリやサブローは巨人への移籍にあたって登録名を本名に戻している。ただし、認めない方針が一般的に認知されるようになってからも、チーム事情で「GG」となったジェレミー・ゴンザレスや、「MICHEAL」が認められたマイケル中村の例もある。
スコアボードには基本的に名字のみが表示されるが、同じチームに同姓の選手がいれば下の名前の一文字目が付加される。同姓の選手がいなくなれば下の名前が無くなることになるが、希望すれば表記だけを残すことも可能でよく使用される(例:石井琢朗→石井琢[2])。ただしこの場合報道では名字のみとなることが多いため、登録名を名字と下の名前の一文字目を組み合わせた姓名の区切りがないものに変える選手もいる(例:山本昌広→山本昌)。既に有名となった選手と同姓の選手が入団した場合には、新入団した選手のみに名がつけられることもある(松坂大輔→松坂、松坂健太→松坂健)。同姓の選手が兄弟の場合は兄・弟で区別されたケースもある(例:仁村薫→仁村兄、仁村徹→仁村弟)。同姓が多い韓国人選手の場合はフルネームで表示されることが多い。また名前のコールもある程度の選択が許されている(例:清水直行→しみずなお)。
なお外国人選手の場合、ファミリーネームを登録名とすると縁起の悪い意味にとられてしまうことで、ファーストネームやフルネームを登録名とすることもある。バンス・ロー(ファミリーネームが「Low{(成績が)低い}」を連想させるため、マスコミなどの揶揄を嫌いフルネームの「バンスロー」とした)、ジョージ・ヒンショー(ファミリーネームが「貧小」を連想させるため、ファーストネームの「ジョージ」とした)、アレックス・オチョア(ファミリーネームが「おっちょこちょい」を連想させるため、ファーストネームの「アレックス」とした)などがその例である。また例外として、フランク・オーテンジオが、南海ホークスに在籍していたころ、「王貞治を超えてほしい」という球団側の要望を受けて、本名の一部をもじり「フランク・王天上(おうてんじょう)」として登録させた例がある。
プロ野球選手時代は本名と同じ登録名で活動しながら引退後に本名と違う芸名でタレント活動する者、プロ野球選手時代は本名と異なる登録名で活動し引退後に本名とも登録名とも異なる芸名でタレント活動する者もいる(前者が大久保博元→デーブ大久保、内藤尚行→ギャオス内藤、亀山努→亀山つとむ。後者がパンチ→パンチ佐藤、仲田幸司→マイク仲田、アニマル・レスリー→亜仁丸レスリー)
独立リーグでは四国アイランドリーグplusやベースボール・チャレンジ・リーグで本名以外の登録名を認めている。一方、社会人野球を始めとするアマチュア野球では公式戦出場に当たって本名及びその表記変更以外で登録することは禁止されている。
日本のプロサッカー(Jリーグ)における登録名
プロサッカーのJリーグでも、ブラジル人選手を中心として外国人選手が愛称や略称を登録名とすることが多い。日本人選手については改名や表記変更によるものしか認めていない。
ただし、ユニフォームに選手名を入れる際に愛称などを使う場合、Jリーグの承認を必要としており、登録名に準ずるものとされている。(三浦知良の「KAZU」(カズ)、中澤佑二の「BOMBER」(ボンバー)など)
近年では大型電光掲示板が設置されている競技場が多いため基本的に選手はフルネームで表示されるが、未整備な会場では野球風に名字のみで表示されており、兄弟選手が兄・弟で区別されていたことがある(山瀬功治・幸宏の山瀬兄弟など)。
日本のプロゴルフにおける登録名
日本のプロゴルフにおいて、本名とは異なるツアー参戦時の名前を日本プロゴルフ協会または日本女子プロゴルフ協会に申請して審査を通過すれば、登録名として使用する事ができる。
代表的なものにすし石垣が挙げられる。一方、横峯さくらは「さくら」の登録名を申請したが、却下された。
本名以外の登録名の例
- 旧姓を用いる場合
- 結婚及びその他家庭の事情のため戸籍では改姓した後も、登録名としては旧姓の使用を継続する場合がある。土佐礼子(村井、マラソン選手)、上村愛子(皆川、モーグル選手)、横西奏恵(山崎、競艇選手)、藤田伸二(小川、競馬騎手)など。スポーツ以外の例では将棋棋士の沼春雄。
- 但し、英智(蔵本→藤本、プロ野球選手)のように旧姓を用いた後に登録名をファーストネームのみにする例もある。
- また、競技によってはオリンピックなどの国際大会では身分証明としてパスポート提示が義務付けられるため、田中美音子(平井、ハンドボール選手)のように国内大会と国際大会で使い分ける場合もある。一方、小磯典子(バスケットボール選手)は結婚後も旧姓である濱口でプレーを続けたが、日本代表復帰を機に登録名も現姓に変更した。
- 本名の表記を変える場合
- 読みやすい漢字表記に変える他、縁起担ぎや姓名判断などによる場合もある。宝来眞紀子(旧名・麻紀子、バレーボール選手)、浜村健史(孝)・加藤英司(秀司)・梨田昌孝(昌崇)・角盈男(三男)・松井稼頭央(和夫)・津田恒実(恒美、いずれもプロ野球選手)、石川巧(康)・黒崎比差支(久志)・遠藤雅大(昌浩、いずれもプロサッカー選手)、尾崎将司(正司)・中嶋(中島)常幸・近藤共弘(智弘)・わたり(和足)哲也・たにひろえ(谷弘恵[3]、いずれもプロゴルファー)、四元奈生美(直美、プロ卓球選手)、三星マナミ(眞奈美、プロスキーヤー)など。
- 漢字文化圏出身の選手が日本でプレーする際にカタカナ表記で登録するのも広い意味でこれに含まれる(チョ・ジェジンなど)。
- 本名の一部を用いる場合
- 姓(名字)がありふれている(鈴木、田中、佐藤など)、同姓の選手が同じチームにいる、フルネームが長すぎる、ファーストネームが珍しいなどの理由による場合が多い。上述のイチローのほかには、カツノリ(野村克則、プロ野球選手)、ロナウド、リバウド(プロサッカー選手)などがある。また外国人のスポーツ選手はミドルネームなどを持つことが多いが、登録名でミドルネームを省略するのも広い意味でこの例に含まれると考えられる。さらにプロ野球選手が本名の一部をアルファベット表記とした例では、SHINJO(新庄剛志)、MICHEAL(マイケル中村)、TSUYOSHI(西岡剛)がある。
- この変形になるが、オリックス・バファローズでは近鉄・ブルーウェーブ時代から、本名のイニシャルを登録名にすることがある。主な例はダグ・ジェニングスの「D・J」、クリス・ドネルスの「C・D」、ジェレミー・パウエルの「JP」など。前述のジェレミー・ゴンザレスの「GG」もこのパターンである。また、名(ファーストネーム)のみをイニシャルとした例では、M.中村(マイケル中村)、T-岡田(岡田貴弘)がある。
- 西武ライオンズのスティーブ・オンティベロス、テリー・ウィットフィールドは、ラストネームが当時の電光掲示板では表示しきれなかったため、ファーストネームを登録名としていた。
- 変わった例としては、アメリカ人を父に持つ友利結が、アメリカ名と日本名それぞれの名字を取って「デニー友利」を登録名としていた。
- 愛称を用いる場合
- 本名の一部が変化したものから、容姿等を由来とするものまで様々である。ペレ、ジーコ、ロナウジーニョ、カカなど、ブラジル人のサッカー選手に多く見られる。
- 日本では佐藤和弘(プロ野球選手)が初の例といえる。入団当初、同姓の選手が4人いたため髪型を由来とする愛称「パンチ」と呼ばれていたが、鈴木一朗選手がイチローに改名の際、一緒に登録名とした。
- 阪急ブレーブスがグレッグ・ウェルズ選手を「ブームを呼ぶ男」の意味からブーマー・ウェルズ、ブラッド・レスリー投手を「野獣のようなプレースタイル」からアニマル・レスリーと、近鉄バファローズが「タフな奴」という意味からカール・デリック・ローズ選手をタフィ・ローズのように愛称と本名の姓を組み合わせた例も多い。このパターンは古くはアメリカプロ野球のベーブ・ルースやサチェル・ペイジにまでさかのぼる。日本人選手にも「爺(=G.G.)臭い」に由来するG.G.佐藤の例がある。松井啓十郎が日本バスケットボールリーグのレラカムイ北海道において名乗ったKJ 松井もこれに該当する(「KJ」はNCAA時代に呼ばれた愛称)。
- 愛称をミドルネームとして組み込んで登録名とすることもある。特にプロバスケットボールに多く、「ヘリコプターのようなプレースタイル」に由来するジョン・ヘリコプター・ハンフリーがひとつの例とされる。
- 厳密には登録名とはされないが、女子のバスケットボールやバレーボールなどの場合、萩原美樹子の「オー」などコートネームと呼ばれる二文字程度の呼称が使用されており、最近では高橋みゆきの「シン」のようにコートネームをユニフォームに入れる場合もある。男子でも中村友也の「チョモ」や、石島雄介の「ゴッツ」など使用する選手は存在するが、女子ほど多用はされない。
- 変名を用いる場合
- 本人や家族の意思、あるいは興行上の観点などから、本名とも一般に知られた愛称とも異なる登録名を用いることがある。上述の四股名やリングネームはほとんどこの例に含まれる。また、同じく上述のすし石垣も本名の聡志(さとし)が海外で発音しにくいため、日本食の中でも世界的に広く知られている「寿司」から取って「すし」に改名している。
- F1ドライバーのネルソン・ピケやアイルトン・セナのように、モータースポーツに反対する家族から活動を隠すために、母方の姓を登録名とした例もある。
- 1940年、プロ野球巨人のヴィクトル・スタルヒンは、反英米感情の激化により横文字表記が自粛されたことにより、須田博(すた・ひろし)と改名した。ただし、スタルヒンはロシア生まれで(日露関係も緊張状態にあった。なおスタルヒンは白系ロシア人でソ連政府とは敵対する立場)、亡命者のために国籍がなく、幼い頃より暮らしていた日本国籍の取得を希望していた。
- 日本プロ野球では1942年に小鶴誠が、「飯塚誠」の名前で名古屋軍に入団している。それまで小鶴が所属していた八幡製鉄は軍需工業だったため、プロへの入団が認められていなかった。そこで小鶴は大学受験を名目に退団、出身地である福岡県飯塚市から名字を取って、偽名で入団した。
- 新聞紙面上などでの体裁に配慮して本名を変形させた登録名が用いられることもある。たとえば、ランディ・バスは好調・不調にかかわらず、新聞の見出し[4]がバス事業(阪神電鉄バス)も手がけていた(現在は分社化)親会社の阪神電気鉄道にとって不吉なものとなる恐れがあったことから、登録名ではバースと伸ばしている。
- 大毎オリオンズに入団したフランク・マンコビッチは放送コード上の配慮から登録名を「フランク・マニー」とした。ロッテに入団したブライアン・シコースキーも発音としては「シコルスキー」がより近く入団当初はこの呼び方であったが、語感が好まれなかった。
- 主に在日コリアンにおいては日本名(通名)で選手登録を行うケースが多く、これも登録名の一種とみなされる。プロ野球での金田正一、張本勲、新井宏昌、金城基泰、金石昭人、金村義明、中村武志、桧山進次郎、金城龍彦など。東京六大学野球での広沢克己(ただしオリンピック出場のため明大3年の初めに帰化)。バスケットボールの梁川禎浩。女子プロゴルフの滝浪愛。オートバイレースの片山敬済。
- 郭源治は中華民国から1989年9月帰化し日本人としての本名「佳久源治」となったが、引き続き旧名を登録名とした。
- 女子バスケットボール選手の岳婷は中華人民共和国から2010年帰化し日本人としての本名「中岳晴香」となったが、旧名のファーストネーム表記を変えた「岳亭」を登録名とした。
- 陳大豊・陳大順の兄弟は大豊泰昭・大順将弘、母国・台湾でのファーストネームを日本プロ野球における登録名でのラストネームにしていた。
- 台湾プロ野球(中華職業棒球聯盟・台湾職業棒球大聯盟)では、かつて外国人選手の登録名としてスポンサーの商標を使用していた。主な例としてホセ・カノ投手(ロビンソン・カノの父)が統一ライオンズ時代に球団の母体である統一企業から当時発売されていたカップラーメンの商品名から登録名を「阿Q」としている。類似する例として社会人野球の茨城ゴールデンゴールズでも選手毎にスポンサーを募り、練習試合に限り「企業(またはブランド)名+名前」を登録名として使用している。
同姓同名での区別の例
- 日本プロ野球史上、同姓同名の選手が同じチームに在籍した例が過去3例あり、その際には以下のように扱われた。
- 高橋明:1971年 - 1972年に西鉄ライオンズに投手と外野手が在籍。入団は外野手の方が早かったが、後から入った投手はすでに読売ジャイアンツで実績を残し、さらに巨人では高橋一三がいたため「高橋明」表記だったこともあり、投手を「高橋明」、外野手を「高橋外」とした。1972年限りで2人とも引退。
- 佐藤文男:1982年に阪神タイガースに2人の投手が在籍。先に入った方を「佐藤文」、後から入った方を「佐藤男」とした。この年限りで「佐藤文」が引退し、翌年オフに「佐藤男」もロッテオリオンズにトレードされた。
- 田中幸雄:1986年 - 1989年に日本ハムファイターズに投手と内野手が在籍。先にいた投手を「田中幸」、後から入った内野手を「田中雄」とした。1989年限りで投手が中日ドラゴンズにトレードされ、内野手は単に「田中」表記になったが(1992年のみ大内実が「田中実」となった為「田中幸」となる)、2000年に田中賢介が入団したため、2007年の引退までは「田中幸」表記となった。
- また、日本の男子ゴルフでも同姓同名の「渡辺司」が関東と関西に二人いたため、新聞等では「渡辺司・東」、「渡辺司・西」と区別して記述していた。ただし、トーナメントに常時出場していたのは関東の渡辺司であった。
注
- ↑ デイリースポーツonline サブロー、巨人では登録名「大村」濃厚
- ↑ 本名は石井忠徳。
- ↑ 「谷三姉妹」(福美・里美・明美)とは一切関係がなく、漢字表記にしてしまうと誤解を招くためひらがな表記にした。
- ↑ 絶好調の時に「阪神・バス大爆発!!」とか、不調時に「阪神・バス不調」「阪神・バスエンコ」というようにバス事業のマイナス面の影響と誤解される恐れがあった