気象通報
気象通報(きしょうつうほう)は、気象観測の成果あるいは気象に関する情報を、ラジオ放送、無線電話、テレホンサービス、インターネット等により一般に提供するもの。
日本では気象庁の漁業気象通報、漁業無線気象通報、鉄道気象通報、電力気象通報、大気汚染気象通報、火災気象通報、農業気象通報[1]、海上保安庁の船舶気象通報がある[2]。このうち気象庁発表の漁業気象通報等については、毎日、NHKラジオ第2放送で16時[3]から放送されており、その番組名も「気象通報」である。
目次
気象庁の気象通報
気象庁は気象業務法等の法令に基づいて各種の気象通報を発表している。
気象庁が発表した日本全国各地と周辺近隣諸国主要都市の天気と気温、並びに気象庁海洋気象ブイと船舶からの天気(NHKの気象通報は船舶からの報告のみ)、漁業気象通報については、「気象通報」として毎日、NHKラジオ第2放送(以下、ラジオ第2放送)で1日1回16時から放送されている。[4]
また、船舶、航空機などに向け、専門的な気象資料を迅速に提供するための、「気象無線模写通報」(JMH)が、ラジオファクスの送信形式で、短波により放送されており、天気図や予報資料を画像で受信することができる。
以前は航空用気象無線模写放送(JMJ)があったが、2001年に廃止されているため、厳密な意味での航空向けはない。
種類
気象庁が発表する気象通報には次の7種類のものがある[5]。
- 漁業気象通報
- 漁業無線気象通報(根拠法令:気象業務法)
- 鉄道気象通報(根拠法令:気象業務法)
- 電力気象通報(根拠法令:気象業務法)
- 大気汚染気象通報(根拠法令:大気汚染防止法)
- 火災気象通報(根拠法令:消防法)
- 農業気象通報(根拠法令:気象業務法)
ラジオ番組
NHKのラジオ第2放送では、1日1回、12時(日本時間。以下、全て24時間表記)発表分の天気を、16時台に放送する(放送時間の詳細は後述)。放送される「各地の天気」と「漁業気象」の原稿は、放送翌日の1時40分頃に気象庁のウェブサイトに掲載される。また、1週間分の放送原稿も閲覧することができる。[6]
ラジオの気象通報により各地点の実況・天気概況を知ることができる。さらに、放送された各地点のデータを『ラジオ用地上天気図用紙(NHK第2 気象通報受信用)』に記入し地上天気図を作成することにより、天気予報に役立てることができる。
天気図用紙にはNo.1とNo.2さらに携帯用があり、No.1にはデータを記入する一覧表と地図、No.2は地図のみが記載されている。No.1が初心者向けとされている。携帯用は難易度が高く、登山者向きに作られている。
なお、かつてはラジオNIKKEI第1放送でも「気象通報・海上気象解説」として、毎日15分間放送されていた。当初は12時20分 - 12時35分だったが、東京証券取引所の後場開始時刻変更に伴って早朝5時30分 - 5時45分(3時発表分)に移行し、その後、2005年3月31日の放送を最後に終了している。
放送時間
NHKラジオ第2放送で放送されている。なお、2014年度(同3月31日)の改編により、気象通報の放送が16時からの一日一回のみとなり、9時台(6時発表分)と22時台(18時発表分)の放送枠は同3月30日の放送をもって廃止された。[7]
- 16時00分 - 16時20分(12時発表分)
- 放送中止は、「緊急警報放送などにより、ラジオ第2放送が緊急放送を行う場合」に限られている。2006年11月15日(水曜日)22時放送分と2011年3月11日(金曜日)16時放送分から3月12日(土曜日)は放送中止となった。また、2013年2月6日はソロモン諸島で起きた大地震による津波注意報の発令により、16時から4分間と、16時10分から3分間、ラジオ全チャンネル共通の津波注意報関連の放送を行ったため、漁業気象の一部(等圧線など)が割愛された。
番組構成
各地の天気→船舶からの報告→漁業気象→時間があれば海上保安庁からのお知らせと続く。
番組冒頭で原則、「4時[8]になりました。(気象通報の時間です。)この時間は、気象庁予報部発表・m月d日正午[9]の気象通報をお伝えします。まず、今日正午の各地の天気は、石垣島では……(カッコ内の文言は省略される場合もある)」と始める。近隣外国の予報を伝えるところ(大体セベロクリリスクとハバロフスクの中間)で「引き続き、今日正午の天気をお伝えしています」と断りを入れる場合もあるが、連続して伝える場合も多い(外部リンクの放送原稿転載においてもこの文言が入っている)。
1992年までは冒頭で概況アナウンスを伝えていたが、漁業気象等の情報量の増加に伴い省略され、最初から「今日○時現在の各地の天気」に入る。また台風などが接近し情報量が多い場合は「情報量が多いので、少し早口でお伝えしていきます」と説明することもある。
- 各地の天気
- 東アジア各地の天気
- 船舶からの報告
- 船舶からの報告は、1992年までは「気象庁海洋ブイおよび船舶の報告」と読み上げ、称していた。アナウンサーにもよるが「この時間は○件の報告があります」と断りを入れることがある。船舶からの報告では、気温だけが放送されない。他の要素は陸上の観測地点と同じ。
- 漁業気象
- 海上保安庁からのお知らせ
- 随時、海上保安庁からのお知らせも放送。内容として、日本付近を航行中の船舶に向けて海上自衛隊やアメリカ軍の訓練が行われる海域の詳細(航行警報)、黒潮などの「海流推測」などの情報が提供される。なお、海上保安庁からのお知らせは、2013年3月31日の放送をもって終了した。[10]
- 2013年5月23日午後10時放送の午後6時の漁業気象の原稿が、当日午前6時の原稿を誤って読み上げた。このことについて,翌24日の午後4時放送の正午の漁業気象の原稿を読み上げる前に、前日午後10時放送の気象通報の中で漁業気象の原稿を誤って読み上げたことについて、お詫び申し上げる趣旨の放送があった。こうした放送原稿の取り違えは、数年に一度の頻度で起こることがある。
全ての放送内容が終了してもなお時間が余った場合や、海上保安庁からのお知らせがない場合には、漁業気象の最初の部分を時間まで再度読み上げる。
終了時には原則、「以上で、この時間の気象通報を終わります。(時刻は4時20分になります)」(カッコ内は省略されることがある)とアナウンスして番組が終わる(後に番組ではないものの、コールサインが流れる)。
気象通報における気象要素の読み上げには定まった様式がある(以下を参照)。なお、気圧の単位には現在は「ヘクトパスカル」が用いられているが、1992年11月30日までは「ミリバール」と読み上げていた。
各地の天気
各地の天気は『(観測地名)では、(風向)の風 風力(数値)、(その時点の天気)、(気圧)ヘクトパスカル、(気温)度。』と読み上げる。
- 風向
- 北、北北東、北東、東北東、東、東南東、南東、南南東、南、南南西、南西、西南西、西、西北西、北西、北北西の16方位を用いる。
- 風力
- 気象庁風力階級による。天気図用紙(No.1様式)には記入例が示されている。
- 天気
- 快晴、晴れ、くもり、煙霧、ちり煙霧、砂じんあらし、地ふぶき、霧、霧雨、雨、雨強し、にわか雨、みぞれ、雪、雪強し、にわか雪、あられ、ひょう、雷、雷強し、天気不明の21種類。ただし、自動天気観測の導入されている地点では天気については、「雷」は通報せず、「快晴」は「晴れ」、「チリ煙霧」「砂塵嵐」は「煙霧」、「地吹雪」は「雪」で一律表現する(風向・風力・気圧の測定や天気図の記入方法に特に変更はない)[11]。
- 気圧
- 1000hPaを超える場合は下二桁のみ読み上げる[12](1000hPa以下は全ての数値を読み上げる)。このため一部のアナウンサーは石垣島の天気を読み上げた後「このあと、気圧の方は1000hpaを超える場合は末尾2桁をお伝えしてまいります」と断りを入れている。なお、かつては、1000hpaを超える場合、最初の石垣島のみすべての数字を読み上げ、以降は断りなく下二桁のみ読み上げていた。なお、2013年2月23日22時と24日9時10分の放送では、「各地の天気」で、気圧の単位「hPa」[13]の読み上げを行わなかった。
- 気温
- マイナスの場合は、氷点下(気温)と読み上げる。
石垣島は放送の最初に伝える観測地点であるため、後続の地点の参考になるよう各気象要素名(天気/天候、気圧、気温)を告げ、1000hPaを越える場合でも全ての数値を読み上げる場合もある。また、日本に影響があるとされる台風が接近中の場合は、臨時のアナウンサーが読み上げる。なお、観測状況により部分的な記録不明となる場合があるが、「不明」として放送する。
観測地 | 位置 | 備考 |
---|---|---|
石垣島 | 沖縄県石垣市 | |
那覇 | 沖縄県那覇市 | |
南大東島 | 沖縄県島尻郡南大東村 | |
名瀬 | 鹿児島県奄美市(奄美大島) | |
鹿児島 | 鹿児島県鹿児島市 | |
福江 | 長崎県五島市(五島列島・福江島) | 2009年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
厳原 | 長崎県対馬市(対馬) | 2009年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
足摺岬[14] | 高知県土佐清水市 | 2007年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
室戸岬 | 高知県室戸市 | 2008年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
松山 | 愛媛県松山市 | 以前は広島。 |
浜田 | 島根県浜田市 | 2007年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
西郷 | 島根県隠岐郡隠岐の島町(隠岐島島後島) | 2008年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
大阪 | 大阪府大阪市 | |
潮岬 | 和歌山県東牟婁郡串本町 | 2009年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
八丈島 | 東京都八丈町 | 2009年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
大島 | 東京都大島町 | 2009年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。2011年6月3日12時から7日18時まで天気「不明」[15] |
御前崎 | 静岡県御前崎市 | 2010年10月1日付の通報より自動天気観測導入。 |
銚子 | 千葉県銚子市 | |
前橋 | 群馬県前橋市 | |
小名浜 | 福島県いわき市 | 2008年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で被害を受け、入電が3月11日18時から12日12時まで、および15日18時から18日12時まで途切れた。 |
輪島 | 石川県輪島市(能登半島) | 2010年10月1日付の通報より自動天気観測導入。 |
相川 | 新潟県佐渡市 (佐渡島) |
2007年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
仙台 | 宮城県仙台市 | 以前は石巻。 |
宮古 | 岩手県宮古市 | 2007年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で被害を受け、入電が3月11日18時から4月1日12時まで、および4月8日12時から11日12時まで途切れた。 |
秋田 | 秋田県秋田市 | |
函館 | 北海道渡島総合振興局管内函館市 | |
浦河 | 北海道日高振興局管内浦河郡浦河町 | 2009年10月1日付けの通報より自動天気観測導入。 |
根室 | 北海道根室振興局管内根室市 | 2010年10月1日付の通報より自動天気観測導入。 |
稚内 | 北海道宗谷総合振興局管内稚内市 | |
ポロナイスク | ロシア連邦サハリン州、南樺太地域[16] | 旧地点名シスカ(敷香)のロシア名。代替地点はアレクサンドロフスク。 |
セベロクリリスク | ロシア連邦サハリン州、千島列島[16] | 旧地点のマツア島(松輪島)やウルップ島より北東寄りで、旧副通報地点の「パラムシル島」にある日本領時代には柏原と呼ばれた街。代替地点はオゼルナヤ。 |
ハバロフスク | ロシア連邦ハバロフスク地方 | |
ルドナヤプリスタニ | ロシア連邦沿海地方 | 1995年、観測所の移設に伴い、旧地点名「テチューヘ」を改名[17]。 |
ウラジオストク | ロシア連邦沿海地方 | 旧地点名「ウラジオ」のこと。 |
ソウル | 大韓民国ソウル特別市 | 代替地点は仁川(インチョン)。 |
ウルルン島 | 大韓民国慶尚北道 | 旧地点名「鬱陵島」の韓国語読み。代替地点は浦項(ポハン)。 |
プサン | 大韓民国釜山広域市 | 「釜山」の韓国語読み。 |
モッポ | 大韓民国全羅南道 | 木浦の韓国語読み[18]。 |
チェジュ島 | 大韓民国済州道 | 旧地点名「済州島」の韓国語読み。 |
台北 | 台湾(中華民国) | |
恒春 | 台湾 | 代替地点は台中。 |
長春 | 中華人民共和国吉林省 | |
北京 | 中華人民共和国北京市 | |
大連 | 中華人民共和国遼寧省 | |
チンタオ(青島) | 中華人民共和国山東省 | |
上海 | 中華人民共和国上海市 | 毎月30日の18時の発表は入電なし。 |
武漢 | 中華人民共和国湖北省 | 旧地点名「漢口」の現市名 |
アモイ(廈門) | 中華人民共和国福建省 | |
香港 | 中華人民共和国香港特別行政区 | 現在は香港国際空港 |
バスコ | フィリピン共和国 | 代替地点はラワーグ(2010年10月5日バスコからの入電が再開されるまで、ラワーグからの入電のみが続いた)。 |
マニラ | フィリピン共和国 | 観測場所はニノイアキノ国際空港 |
父島 | 東京都小笠原村 | |
南鳥島[19] | 東京都小笠原村 | 天気の入電はない。 |
富士山 | 静岡県富士宮市 | 2004年より気温のみ、富士山測候所稼動時は風向・風力・風速・天候(12時のみ)の入電があった。 |
船舶の報告
「船舶の報告」では、遠洋漁業従事船などから上がって来る報告を読み上げる。(海域名)、(緯度・経度)、以下気温の報告がない他は陸上の観測と同じ。海洋気象ブイは気圧のみ観測する、などの理由により、不明箇所が多い。
漁業気象
漁業気象では、台風・低気圧・高気圧の位置と勢力、進行方向が、前線の場合は位置のみが報じられる。なお、前線を伴った低気圧については、低気圧の位置とは別に前線の位置を放送する場合もある。他には、強風が吹いている海域や濃い霧が発生している海域(海上警報)も報じられる。台風や勢力の強い低気圧(最大風速が25メートル以上)及び勢力が強くなる可能性がある低気圧の場合は予報円の位置と大きさも発表される(12時間後[20]、24時間後 台風と熱帯低気圧の場合は「70パーセントの確率で」[21]というアナウンスも入る)。最後に日本付近を通る主な等圧線の位置を報じる。
- なお、北緯と東経は2つ目以降は読み上げを省略する(アナウンサーによって「同じく」または「以下」と読み上げる)ことが多いが、西経は誤認を防ぐため省略せずに必ず読み上げる。2つ以上等圧線を紹介する場合は区切りをつけて紹介する。
読み上げ
担当アナウンサー
- 担当はすべてシフト勤務となっており、2014年時点ではNHKOBのアナウンサー(嘱託、日本語センター所属あるいは契約出演者)の担当が中心となっている。
- 担当者は平日の場合、NHKワールド・ラジオ日本独自編成の日本語ニュース担当のアナウンサーが担当。土曜・日曜・平日と重なる祝日の場合(16:00にNHKワールド・ラジオ日本独自編成の日本語ニュースがあるため、これとは別に他のOBアナウンサーまたは現役アナウンサーが担当する)、ラジオ第1で14:00(土曜日は11:00も含む)のニュースも担当する。
自動化への試み
NHK放送技術研究所では「気象通報自動読み上げシステム」の実用化が進められている[22]。これはすでに実用化されている「株式市況」と同様、アナウンサーによる合成音声で伝えるというものである。
気象無線模写通報
気象庁が日本列島近海を航行する船舶向けに各種通報を画像にて放送している。
ただし、電波法令上は特別業務の局による同報通信。
[23]
日本以外にも、気象無線模写通報を送信している国が多く、条件がそろえば日本内陸でも受信することができる。
海上保安庁の気象通報
海上保安庁は、海上保安庁法第5条第23号に基づき灯台その他の航路標識の附属の設備において気象観測を行って船舶気象通報を発表しており、無線電話、テレホンサービス、インターネット等により一般に情報提供されている[24]。
日本国外の気象通報
韓国でもKBS第1ラジオで午前4時42分から気象通報が送信されている。日本でも一部地域で受信可能であり、KBSのインターネット放送でも聴取できる。韓国に加え、日本の各地の気象も送信される(ただし一部省略)。
関連項目
脚注
外部リンク
- FAXデコードソフト(KG-FAX)
- 気象無線模写通報(JMH)スケジュール(気象庁予報部)
- 気象庁・天気図の解説 - 気象通報で読み上げられる各地の観測値および低気圧や前線の位置を掲載。
- 気象庁・過去1週間の「各地の観測値と低気圧や前線の位置」 - 気象通報で読み上げられる各地の観測値および低気圧や前線の位置を一昨日までの過去1週間分掲載。
- 「天気図」を描こう! - 毎12時の気象通報データを掲載。
- 気まぐれファリオン - 6時・12時・18時の気象通報データを掲載。
- 海上保安庁・海洋速報/海流推測図
- 昭和33年気象庁告示第10号 気象庁気象無線模写通報規則
- 昭和39年郵政省告示第677号 無線局運用規則140条の規定による気象通報を送信する無線局の運用第1項第1号 総務省電波関係法令集(総務省電波利用ホームページ)
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