風雲児たち

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テンプレート:Sidebar with collapsible lists風雲児たち』(ふううんじたち)は、みなもと太郎による日本漫画作品。第一部として、1979年昭和54年)7月から同年11月の7回を潮出版社が刊行した雑誌『月刊少年ワールド』に、翌1980年(昭和55年)から同社刊行の『コミックトム』に連載。全212話ほか外伝。また、『月刊コミックトムプラス』での連載『雲竜奔馬』(うんりゅうほんば)(1998年平成10年) - 2000年(平成12年))を挟んで、2001年(平成13年)よりリイド社刊の雑誌『コミック乱』において、続編にあたる『風雲児たち 幕末編』(ふううんじたち ばくまつへん)を連載中。

単行本は、潮出版社希望コミックスで全30巻。なお30巻目は番外編として薩摩藩家老平田靱負を軸に「宝暦治水事件」を描く。2000年(平成12年)から2002年(平成14年)にかけて、希望コミックス収録分はリイド社より再編集(巻末エッセイ、ギャグ注など付記)され、「ワイド版」として大判単行本全20巻が刊行。「幕末編」は、現在リイド社SPコミックスとして刊行中。

概要

当初の編集部からの依頼は、幕末の群像を五稜郭陥落まで単行本10巻程度でまとめてほしいというものであったが、幕末の状況はそもそも江戸幕府の成立に根があるとの作者の判断により、関ヶ原の戦いより執筆を開始した。これが編集部の企画を大幅に狂わせ、江戸時代300年を通して時代の発展に関わった人間たちの運命を描く大河ドラマ漫画となる。

漫画やアニメ、漫才師やコメディアンのネタ(特に吉本新喜劇)、時代劇、映画、TV、時事ネタなどをパロディとしてギャグにしているのも特徴である。また、時代を経てわかりにくくなったギャグの解説のため「脚注」をもじった「ギャグ注」を、ワイド版では各巻末に収録している。

執筆当時に入手可能な最新の史的資料を調査した上で執筆されているため、それまでの多くの歴史フィクションでよく見られたステレオタイプの視点や、学校などで習う標準的な歴史観を脱しており、時に保科正之のようにそれまで注目されていなかったマイナーな人物にスポットが当てられたり、田沼意次のように悪人と見られがちな人物を史実に基づき肯定的に描くなどしている。逆に、松平定信のように従来は肯定的に描かれることが多かった人物の否定的側面を取り上げていることもある。人物の善悪を分けたとき、権力側ではなく民衆に立って行動した者を善玉としている。

一方で、現在もよくわかっていない歴史上の事実については、普通なら作中の描写を避けるか、あるいは作者の創作によって補うところを、本作においてはギャグ漫画の文法を利用して「それについてはわかっていない」という事実をはっきり書いてしまうこともあった[1]。さらには作者の勘違いで史実と違うことを描いたり、新資料の発見で史実が覆った場合においても、その事実を作中でギャグとして紹介することも[2]あった。

このように史実に対して忠実であろうとする一方、単なる事実の羅列ではなく、幕末へ向けて連鎖する生きた物語として江戸時代の歴史を捉え直し、描き出している。

『風雲児たち』はある一面では、江戸時代の蘭学の発展と対外政策史を綴った歴史書ともいえる。前者は前野良沢を、後者は林子平を源流として、志を同じくする多くの同志・後輩に受け継がれている様が描かれている。

当初の編集部からの依頼内容とそぐわないことから、連載期間中トラブルが絶えず、レザーノフ事件からゴローニン事件までは編集部の指示により短期間での描写となった(ゴローニン事件に関しては、本来なら単行本1巻分をかけてじっくり描きたかったが、事情により1号分で無理矢理まとめたことを作者が作中で語っている)。

登場人物の作画は、当初はギャグ漫画らしくディフォルメされ、現在も伝わる肖像画とは似ても似つかぬものが多かったものの、作品が進むにつれて劇画的に描かれた人物が多くなっていったが、両者が作中で違和感なく共存している。ただし、「幕末編」に登場する予定の人物を冒頭で予告編的に登場させ、実際に「幕末編」に入ってからその予告通りに登場させているため、「幕末編」においては結果的にディフォルメされた登場人物が再び多くなっている。

登場人物はおおむね、生まれ在所の方言・訛りをそのまま話している(龍馬や武市の土佐弁、西郷や大久保らの薩摩弁、松陰や村田蔵六の防長弁など)。ただ、江戸暮らしが長い学者や大名・旗本が話すときは標準的な武家言葉や、ですます調で通す場合もある(興奮して在所の言葉が出たり、徳川斉昭水戸弁を喋るなどのギャグはそこかしこに存在する)。

潮出版社版単行本は、その出版社の故か書店に並ぶことが少なく、人気作にもかかわらず「書店で見かけない」とファンから悲鳴が上がるほどであった(作中、とある人物の著作が有名になり、これを求める人々の中で「『風雲児たち』の単行本はどこに行けば手に入るのか」と悲鳴を上げる人がいるなど、セルフパロディになっている)。

編集部とのトラブルが絶えない中、1998年に『コミックトム』から『月刊コミックトムプラス』へリニューアルされる際に『風雲児たち』としては強引に打ち切りにし、続編として坂本龍馬を主人公にする形で『雲竜奔馬』の連載を開始した。この件について作者は、編集部が怒るのも無理はないとしているが、双方そりが合わず、全5巻で打ち切りとなり、潮出版社での連載は終了する。また、『雲竜奔馬』終了後間もなく『月刊コミックトムプラス』は休刊となり、潮出版社が刊行する漫画雑誌は消滅した。

2001年、リイド社の月刊誌『コミック乱』にて、『風雲児たち』の正式な続編として『風雲児たち 幕末編』の連載を開始した。結果として『雲竜奔馬』は破棄する形となり、重複する場面は原稿の流用が行われている。

2004年、第8回手塚治虫文化賞(主催:朝日新聞社)特別賞・受賞作品。ただし『歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して』のみなもと太郎の業績に対しての賞であるため、具体的な作品名は挙げられていない。しかし、その受賞内容と選考理由を見れば『風雲児たち』シリーズに対する賞であることは明らかであり、幕末編5巻の帯には堂々と受賞の文字が躍っている。また2010年には『幕末編』で第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞している。

また、製作裏話などを記した『外伝』なる番外編を個人同人誌として製作している。これはコミックマーケットなどの同人誌即売会におけるサークル出展や、公式ファンクラブサイトの通販(外部リンク参照)を通じて売られている。『外伝』の一部分については、単行本として潮出版社やリイド社以外から商業出版されているものも存在する。

登場人物

以下の区分は作品の内容上の区切りを示したもので、各編にまたがって登場しているキャラクターもある。また、各編の区切りの名称は便宜上記したもので、一部は作中にあるものではない。

幕府鳴動編(徳川幕府成立編)

田沼時代編~寛政編(蘭学黎明編)

暴走編~化政編(蘭学鳴動編)

幕末黎明編(風雲児幼年編)

幕末編

「幕末編」のキャラクターは、ほとんどが「幕末黎明編」と重複する。これは、「幕末編」で活躍する者の幼年期・修行時代を「幕末黎明編」で取り上げたためである。

その他

  • フケタ先輩 - 作者の別作品である『あどべんちゃあ』から近藤勇役で出演する大口後輩と共にゲスト出演。
  • 忍者 - 史実に基づいた描写ではなく、フィクションでよく見られるステレオタイプである、忍者装束を身につけた姿で描写される。常に覆面姿のため、目のまわりに日焼けを作っている。

脚注

  1. 例えば保科正之の生母・の父は、希望コミックス版30巻でフルネームがわかるまで一貫して「神尾某」であった。なお、ワイド版においても栄嘉の名は使われず、某のままである。
  2. 希望コミックス版25巻で、「シーボルトが間宮林蔵と遭っていた」という有力な証拠が出たために、それまで作品で採用していた、「シーボルトと間宮林蔵は遭っていなかった説」を覆した旨が語られている。
  3. 夏目房之介『読書学』潮出版社 1993年 121頁 ISBN 4-267-01333-0 なお、同書87頁において、夏目はキャラクターの多さを絶賛する他、『HOW TO DRAW COMICS THE MARVEL WAY』(FIRE SIDE社刊)というアメリカンコミックの描き方のマニュアルに基づいて、みなもとの描く林子平を描いている
  4. 希望コミックス版『風雲児たち』第27巻。また、真田が率いる「猿飛佐助や霧隠才蔵等、架空の人物ら」も杉浦のパロディである。
  5. 関川夏央『知識的大衆諸君、これもマンガだ』なお、本書中で指摘される、大阪夏の陣を「4頁/2コマ(見開き)」で描く手法は島本和彦の『炎の転校生』からとられたのでは、とする説に対してみなもとは、当時島本作品そのものを読んでいなかったとワイド版でコメントしている。
  6. 『日本剣客伝』(『挑戦者』たち所収)で、「最強の剣士」の候補として語られる。

外部リンク

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