土佐弁
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土佐弁(とさべん)は高知市を始め、高知県の中部・東部で話される日本語の方言である。四国方言に分類される。京阪式アクセントの地域が多いが、山間部には垂井式アクセントが分布する[1]。
目次
音韻
- 例:「計算」の発音
- (土佐弁)「ケイサン」
- (標準語、関西弁)「ケーサン」
- 例:「どうした」→「どういた」 「そして」→「そいて」 「あした(明日)」→「あいた」
文法
アスペクト
たとえば「宿題やったが?」という問いに対して、副詞などに頼ることなく、以下のように答え分けることができる。
- 現在進行的なアスペクトの例:
- (土佐弁)「やりゆうよ」
- (標準語)「(今)やっているよ」
- (英語)"I'm doing it(now)."
- 現在完了的なアスペクトの例:
- (土佐弁)「やっちゅうよ」
- (標準語)「(もう)済ませているよ」
- (英語)"I've(already)done it."
「(し)よった」ならば過去進行の、「(し)ちょった」ならば過去完了のアスペクトとなる。完了アスペクトが明示できるというのは西日本方言によくある特徴である。
語彙
人称代名詞
- おら(男の一人称 話者は高齢者、最近はあまり使わない)
- (使用例)おらんくの池には潮吹く魚がおよぎよる。(よさこい節)
- (東京)私の家の池には潮吹く魚が泳いでいる。
- わし(男の一人称)
- (使用例)わしくの子は、川へあいをおさえにいったでよ。
- (東京)私の子供は、川へ鮎を捕りに行ったよ。
- 僕らぁー(男の一人称 複数でも単数でも使用、最近はこれが一番多い)
- (使用例)僕らぁーは、山へいたずり採りにいっちょった。
- (東京)僕は、山へいたどりを採りに行っていた。
- あて(女の一人称 話者は高齢者、最近はあまり使わない)
- (使用例)あてらぁーの時は、きーの値がしよったきに仕事があったで。
- (東京)私達の時代は、木の値段が高かったので仕事があったよ。
- うち(女の一人称)
- (使用例)うちんくのたーは、年がいてよう作らんきに、いのす植えたぞね。
- (東京)私の家の田んぼは、高齢になって耕作できないので、柚子を植えたのよ。
- おまん(男女二人称単数):「ら(ー)」をつけると複数
- (使用例)おまんらーご飯食べー。
- (東京)お前達ご飯を食べなさい。
- おんし(男の二人称)
- (使用例)おんしゃー何しよりゃー?(非難の気持ちがある)
- (東京)お前は何をしているんだ?
- われ(男の二人称)
- (使用例)わしんくの子らはまだ帰らんが、われんとこの子はかえってきちゅうがかよ。
- (東京)私の家の子供達はまだ帰ってこないが、あんたのところの子は帰ってきているのかい。
- おまさん(目上の人に使う二人称)
- (使用例)おまさん、のうが悪いろう。
- (東京)あなた、具合が悪いでしょう。
名詞、動詞、形容詞など
- 親族語など
- おとやん(おとうさん)
- おかやん(おかあさん)
- おんちゃん(おじさん)
- おばちゃん(おばさん)
- じんま(じじい)
- ばんば(ばばあ)
- おどろく(目が覚める)
- (土佐弁)「おとろしい夢を見たきに夜中におどろいたがよ」
- (標準語)「恐ろしい夢を見たので夜中に目が覚めたのよ」
- かく((重いものを)もちあげる)
- ※「駕籠かき」の「かき」である。
- ごくどう(怠惰者)
- ばー(~くらい) どればー(どれくらい)
- ひーとい(一日)
- 中央では廃れた古語「一日(ひとひ)」からの転訛。
助詞、助動詞など
- ~が(終助詞。標準語の「の」に相当。平叙文にも疑問文にも用いられる)
- (土佐)「かまんが?」「かまんが!」「そうながや?」
- (標準語)「いいの?」「いいの!」「そうなの?」
- ~ちや(一般的な終助詞。「~だよ」のような感じ)
- ~ちゃあ+否定語(この構文では「ちゃあ」は疑問詞の後につき、標準語の「も」に相当)
- (土佐)「誰ちゃあおりゃあせん」「なんちゃあない」
- (標準語)「誰もいやしない」「何でもないよ」
- き、きに(理由を示す助詞。標準語の「ので」に相当)
- 例文は上記に数例あるので参照のこと
その他の言い回しなど
- 能が悪い
- (土佐)この道具は能が悪い。
- (東京)この道具は「使い勝手」が悪い
- せられん(禁止の表現)
- (土佐)「いかんちや、せられん」
- (東京)「ダメだよ、やっちゃダメ」
- ~にかあらん
- (土佐)「あの店はラーメン屋に変わったにかあらん」
- (東京)「あの店はラーメン屋に変わったらしい」
- ※「~に違いない」のようなニュアンスも含む。
- よう~せん(~できない)
- (土佐)「むつかしゅうてようせん」
- (東京)「難しくてできない」
- ※おおむね関西弁に同じ。
土佐弁に関連した人物・作品など
- 小説
- 映画
- 鬼龍院花子の生涯 - 主役 夏目雅子が「なめたらいかんぜよ~」と言っている。「いかんぜよ~」であり、「あかんぜよ~」ではない。
- 死国 - 映画、小説ともに全編にわたって土佐弁が話されている(映画版では一部伊予弁が混じる)
- MAZE_(映画)
- 君が踊る、夏
- ドラマ
- 漫画
- 土佐の一本釣り - 青柳裕介の左記作品は、土佐久礼(中土佐町)が舞台。
- たいようのマキバオー
- 銀魂 - 元攘夷志士で今は快援隊リーダー坂本辰馬が土佐弁で喋る。
- GO DA GUN - ヒロインである桜花雪が高知県出身で土佐弁を喋る。
- 亡き少女の為のパヴァーヌ - 室戸香美が土佐弁を喋る。
- シャコタン☆ブギ
- きんこん土佐日記
- アニメ
- ハートキャッチプリキュア! - 敵キャラクターの一人「クモジャキー」が土佐弁で喋る。
- 爆走兄弟レッツ&ゴー!! WGP - オーストラリア代表ARブーメランズが土佐弁で話す。
- 47都道府犬 - 声優バラエティー SAY!YOU!SAY!ME!内で放映された短編アニメ。郷土の名産をモチーフにした犬たちが登場する。高知県は、土佐犬がモチーフの高知犬として登場。「友達がおらんぜよ」「怖がっちゅーみたいぜよ」などと話す。声優は、高知県出身の小野大輔。
- ガールズ&パンツァーの7話で「おりょう」が土佐弁で喋る。
- ゲーム
- 対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』のキャラクター「まこと」が土佐弁で喋る。
- ライブ・ア・ライブ - シナリオの1つの幕末編で「とらわれの男」が使用。
- 幕末恋華 新選組 - 才谷梅太郎が土佐弁を話す。
- VitaminZ - 不破千聖と母親の不破美里が土佐弁を使用。
- 大和彼氏 - 高岡矢太郎が土佐弁を使用。
- ものべの - 舞台が高知県。
その他
- 土佐弁の使いまわしなどについては、高知新聞社刊、「土佐弁さんぽ」に詳しい。
参考文献
- 飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編『講座方言学 8 中国・四国地方の方言』 国書刊行会、1982年
脚注
関連項目
- 幡多弁(高知県西部で話される方言)