バナナ
テンプレート:生物分類表 バナナ(甘蕉、実芭蕉、学名 Musa spp. )はバショウ科バショウ属のうち、果実を食用とする品種群の総称。また、その果実のこと。いくつかの原種から育種された多年草。種によっては熟すまでは毒を持つものもある。
目次
概要
別名実芭蕉(みばしょう)、漢名は「香蕉」。食用果実として非常に重要で、2009年の全世界での年間生産量は生食用バナナが9581万トン、料理用バナナが3581万トンで、総計では13262万トンにのぼる。アジアやラテンアメリカの熱帯域で大規模に栽培されているほか、東アフリカや中央アフリカでは主食として小規模ながら広く栽培が行われている。また、花を料理に使う地域もあり、葉は皿代わりにしたり、包んで蒸すための材料にしたりするほか、屋根の材料などとしても利用される。
植物学上の特徴と分布
原産地は熱帯アジア、マレーシアなど。バナナの栽培の歴史はパプアニューギニアから始まったと考えられている[1]。
「バナナの木」と言われるように、高さ数mになるが、実際には草本であり、その意味では正確には果物ではなく野菜(果菜)に分類される。その高く伸びた茎のような部分は偽茎(仮茎)と呼ばれ、実際には、葉鞘が幾重にも重なりあっているものであり、いわばタマネギの球根を引き延ばしたようなものである。茎は地下にあって短く横に這う。茎のような先端からは、長楕円形の葉(葉身)が大きく伸びる。
花
花(花序)は偽茎の先端から出て、下に向かってぶら下がる。花序は1本の果軸に複数の果房(果段)がつき、各果房には10本から20本程度の果指から成っている。大きな花弁に見えるのは苞葉で、果指の部分が本当のバナナの花である。果指一つ一つが一本のバナナに成長し果房がバナナの房となる。なお、開花は一本の偽茎につき一回のみで開花後は株元から吸芽を出して枯れてしまう。
果実
果皮の色は品種によって異なり、一般的に知られるものは緑色から黄色であるが、桃色から紫まで多様である。収穫後時間が経過するにつれて皮の表面に浮かぶ黒い斑点状のものを「スウィートスポット (Sweet spot)」または「シュガースポット (Sugar spot)」と呼び、簡単な熟成のバロメータとなる。また成熟したバナナの皮はクロロフィルの分解物が含まれ、紫外線を照射すると青色の蛍光を発する[2][3]。また、最初は下へ向けて成長するが、後に上へ向けて成長することから湾曲した形を形成する。
キャベンディッシュ種などの食用バナナは三倍体であるため種子を作らない。吸芽の株分けなどで繁殖する。
品種
原種
バナナの原種はテンプレート:Snameiとテンプレート:Snameiである。今日ではこの2種は食用とはされないが、栽培種のバナナはテンプレート:Snamei(二倍体ゲノム構成:AA)およびテンプレート:Snamei(二倍体ゲノム構成:BB)のどちらかまたは双方のゲノムを保有する奇数の倍数体であるものが大部分で、ゲノム構成の違いによって分類されることがある[4]。三倍体などの奇数のゲノム構成のため、減数分裂が正常に進行せず、配偶子形成が異常になるため栽培バナナは不稔となる。
栽培種
キャベンディッシュ (Cavendish)
世界で生産されるバナナのほぼ半数を占め、日本のスーパー等で一般に売られている品種。日本では主にフィリピンから輸入される。太さを保ちつつ長さもある大型のバナナ。デザート用に栽培されている。皮は厚くきれいな黄色になる。AAAの同質三倍体のゲノム構成を持つ。
ラカタン (Lakatan)
色と形はキャベンディッシュとほぼ同じで、大きさは少し小さい。クエン酸が多く含まれ、やや酸味が高く味が濃い。フィリピンではキャベンディッシュよりも味が好まれ、最も流通量が多い品種となっている。
レディ (Lady)
果実の長さが7~9 cmほどの小型バナナ。皮は薄く、果肉はやわらかくて濃厚な甘みを持っている。日本では主にフィリピンから輸入している。モンキーバナナとも呼ばれる。通称としてフィリピン産をセニョリータ、エクアドル産をオリートと呼ぶ。
シマバナナ
日本国内でも南九州・沖縄県を中心にバナナが栽培されている。沖縄県や鹿児島県奄美群島では、普通のものよりはるかに短くて小さいシマバナナという品種もよく見かける。味は酸味がやや強い。皮が薄くて傷みやすい。
プランテーン
AABの異質三倍体のゲノム構成をもつ品種はプランテーンと呼ばれ、バナナとは異なる果物に分類される場合もある。生食されることはなく、加熱調理して食される。世界生産量の2割弱を占める。
グロスミッチェル (Gros Michel)
AAAの同質三倍体のゲノム構成を持ち、広く栽培されている品種には、キャベンディッシュの他にグロスミッチェル(Gros Michel, 愛称 big Mike)種がある。どちらもデザート用に栽培されている。かつてはグロスミッチェル種が最も多く栽培されている品種であったが、20世紀中頃に世界的に蔓延したパナマ病によって大打撃を受け[5]、現在では全生産量の1割ほどに留まっている[6]。グロスミッチェルの代替種として栽培が急速に広がっていったのがキャベンディッシュ種であり、1960年代には完全にキャベンディッシュはグロスミッチェルに取って代わった。
その他
- ハイランド (highland) - ウガンダやタンザニアで栽培される料理用の品種。
- 楽園の実 (M. paradisiaca) - 料理用。名称は学名。
- 知恵の実 (M. sapientum) - 生食用の五尺バナナ。名称は学名。
遺伝子組み換え
遺伝子組み換えによってバナナの新しい品種を作成する試みも行われている。栽培バナナは不稔で花粉や種子ができないため、導入された遺伝子が外界に広がって遺伝子汚染をひき起こす可能性は低く、遺伝子組み換え作物に適していると言われる[7]。また、皮をむけば衛生的であり乳幼児でも摂食できるので、バナナ果肉中に抗原を生産させ、経口ワクチンとして利用するための開発が進められている。衛生環境が悪く、電力が不安定でワクチン保存環境も悪い所でも、現地において衛生的で再生産可能な経口ワクチンになるのではないかと期待されている。
歴史
主食として
東南アジアからニューギニアにかけての地域で栽培化されたバナナは、マレー・ポリネシア系民族が太平洋の島々に移住していくに連れてそれらの島々にも広がっていった。また、西のインドにも栽培化から日をおかず伝播していった。このため、東南アジアからインドにかけての地域においては現在の主要品種以外にも多くの種類のバナナが存在している。東南アジアにおいては、イネがより安定し貯蔵性にも優れたうえ収穫量も高い植物が出現したため、原産地であるにもかかわらずバナナの重要性は限定的なものとなった。一方、伝播した先のオセアニアやアフリカにおいてはバナナをしのぐ栽培植物が出現しなかったため主要な食糧のひとつとなり、非常に重要な地位を占めることとなった[8]。
閑話であるが、ダン・コッペル著「バナナの世界史」によると、古代のインド以西の中東地域においてはバナナはイチジクと呼ばれ、マケドニア人のアレクサンドロス3世はインド遠征でバナナを見たとき、これをイチジクと記したとされる。また、アラビア語で書かれたコーランに出てくる楽園の禁断の果実「talh」はバナナと考えられており、ヘブライ語聖書では禁断の果実は「エバのイチジク」と書かれているとされる。このことから、実は創世記に出てくる知恵の樹の実は、通説のイチジクではなくバナナであったとする仮説がある。なお知恵の樹の実をリンゴとする俗説はこれより後世の誤訳に由来する。確かなことは、リンゴは寒冷な中央アジア原産とされ、エデンの園があったとされるペルシャ湾岸では育たないということである。
一方、西のアフリカにも、マレー系民族の移住したマダガスカルやアフリカ大陸東岸から紀元前後にバナナが伝播した。バナナは熱帯雨林でも栽培ができ、それまでの主作物であったヤムイモに比べて手間もかからず収量も多いため、コンゴ盆地や西アフリカの熱帯雨林地域に急速に広がっていった。コンゴ盆地には5世紀に到達し、これによって熱帯雨林に農耕民が展開することが可能になり、さらに余剰を生み出すことで人口が増加し、交易や文化が発達していった[9]。
アメリカ大陸が発見され、移民が始まると、1516年にカナリア諸島からイスパニョーラ島にバナナが導入された[10]。奴隷貿易によってアメリカに移住させられた奴隷の故郷はバナナ生産地域であり、彼らによってバナナはカリブ海や中南米の熱帯地域へと広まった。
大量生産の時代
ここまでの伝播は主食用の用途を主目的としており、ハイランド・バナナやプランテン・バナナの伝播の歴史であって、果物バナナはそれに付随して伝播していった。これが大きく変わるのは、19世紀の後半にアメリカ合衆国の資本が果物バナナの大規模なプランテーション栽培に乗り出してからである。マイナー・キースの創立したユナイテッド・フルーツ社が1874年にコスタリカに農園を作ったのを皮切りに、大企業が中南米へと進出し、広大な未耕地を開発して大農園を作り上げた。鉄道や船などの輸送手段の改善によってバナナをアメリカの消費者へと送り届けることが可能になり、バナナはホンジュラスやコスタリカ、グアテマラなどの中米の小国において主要輸出品目となるまでになった。20世紀に入るとさらに生産は拡大し、フィリピンなどにおいても商業生産が拡大していった。この生産の急拡大と輸送手段の改善によってバナナは安価な果物として先進諸国において急速に広がっていった。一方で、バナナ会社は寡占化が進み、最大手だったユナイテッド・フルーツ社はバナナ・プランテーション以外にめだった産業のない中南米の小国群を意のままに支配するようになり、こうした国家を指すバナナ共和国という政治用語が生まれるまでになった。
一方で、アフリカのバナナ主食地帯には17世紀に南アメリカからキャッサバが伝来し、バナナよりもさらに手間がかからず多収量であるため、またたくまにバナナ栽培地域へと広まった。これによってかなりの地域で主食がバナナからキャッサバへと移行したものの、バナナを嗜好しバナナを主食作物として作り続ける民族もいまだ数多く存在し、料理用バナナは依然この地域の基幹作物の一つとなっている。
生産
果物バナナ主要生産国 (100万トン) | |
---|---|
テンプレート:Flagicon インド* | 26.2 |
テンプレート:Flagicon フィリピン | 9.0 |
テンプレート:Flagicon 中国 | 8.2 |
テンプレート:Flagicon エクアドル | 7.6 |
テンプレート:Flagicon ブラジル | 7.2 |
テンプレート:IDN | 6.3 |
テンプレート:Flagicon メキシコ* | 2.2 |
テンプレート:Flagicon コスタリカ | 2.1 |
テンプレート:Flagicon コロンビア | 2.0 |
テンプレート:Flagicon タイ | 1.5 |
世界総計 | 95.8 |
ソース:FAO2009年データ、*印は2008年データ[11] |
バナナは熱帯域を中心に世界の広い範囲で栽培されている。FAOの統計によると、2009年の時点で果物バナナ(FAO統計ではBananasと表示)の全世界での年間生産量は9581万トンである。また、右図には表示されていないが料理用バナナ(FAO統計ではPlantainsと表示)の2009年の全世界年間生産量は3681万トンである[11]。もっとも、タンザニアのように料理用と果物用の2つを区別せず、すべてBananasで計上している生産国も存在する。この二つの統計をあわせた総計は、2009年で13262万トンとなる。
生食用バナナは、多くが大規模なプランテーションで栽培されている。生産量ではインドが28%をしめるが、そのほとんどはインド国内で消費され輸出量ではラテンアメリカ諸国が8割を占める。これは、ラテンアメリカ諸国およびフィリピンにおいてはバナナが当初から輸出産業として開発されたのに対し、インドやアフリカなどではまず自給用や国内消費用に生産の主眼が置かれているからである。主な輸入国はアメリカ合衆国で、1998年から2000年の統計では世界の全輸入量の33%を占めていた。ついでECが27%、日本8%となっている[6]。
料理用バナナも東アフリカや中央アフリカでは主食とされる重要な作物であり、世界のバナナ生産量のほぼ4分の1を占める。生産量としてはウガンダが飛びぬけて多く、2009年には951万トンと料理用バナナ生産量の4分の1を占める。ついでガーナ(356万トン)、コロンビア(301万トン)、ルワンダ、ナイジェリア、カメルーン、ペルー、コートジボワール、コンゴ民主共和国の順となり、以上の国家が100万トン以上を生産する[11]。料理用と生食用をあわせて考えた場合、ウガンダのバナナ生産量はフィリピンを抜いて世界第2位となる。
料理用バナナは大規模プランテーションで生産されることはなく、小規模自営農が自らの消費分や近隣市場への出荷分を生産する。また、バナナの木は早く大きくなるため、陰樹で成長の遅いカカオなどと組み合わせると被覆植物としての役目も果たす。これを利用し、ガーナでは新しく拓いた農地にまず主食用のプランテンバナナやヤムイモを植えて食料を確保し、その後にカカオの樹を植えて現金収入を確保するというやり方で生産を拡大し、ガーナは1911年にはカカオの世界最大の生産国となった。
また、昼夜の寒暖の差が大きい地域で生産されたバナナの方がでんぷん含有量が多くなる。
流通と保存
日本では、チチュウカイミバエなどの害虫の侵入を防ぐため、植物防疫法の定めにより熟した状態では輸入できない。このため、輸入するバナナはまだ青い緑熟のうちに収穫して、定温輸送船などで日本に運ばれる。植物防疫法、食品衛生法等の諸手続きを経て輸入通関後、バナナ加工業者の所有する加工室内でエチレンガスと温度、湿度調整によりバナナの熟成を促す(追熟という)。
黄熟バナナ保存の最適温度は 15 テンプレート:℃ 前後(緑熟バナナは 13.5 テンプレート:℃ 前後)であり、一時的にでも 13 テンプレート:℃ 以下に置かれてしまうと熟成がうまく進まなくなるほか、低温障害をおこし皮が変色する。しかしながら家庭で長期保存するには、購入した時点で熟成が進んでいることが多いため冷蔵庫保管が有利。また、接触により傷みやすいため一般に行われている小売店での陳列とは逆の山型の方を上にして置くか、吊るして保存する。完熟したバナナは冷凍しても凍らず包丁で切ることができる[12]。
かつては、輸入に際して防カビ剤や殺菌剤が旧厚生省発行の証明書を元に許諾された薬品[13]を収穫後に使用していた歴史があり、その後に許諾薬品以外を日本行政の希望する使用法とは異なる使われ方がされていたことが問題になった[14]。騒がれた当時は、これらの化学薬品が軸から侵入するため、バナナの最初と最後の数センチは食べない方が良いと提言する人物、団体も存在したが、東京都や福岡市の公的な機関による検証の結果、薬品のバナナ表面における分布には軸と皮で有意な差は認められず、また、果肉からはほとんど検出されなかった。そのため、現在ではバナナの先端を捨てる科学的な根拠はない。
生の黄色い若いバナナを35度のお湯に5分間浸けて置いてから引き上げ、余熱を持ったまま数時間放置すると、その間にバナナ中の酵素であるアミラーゼの働きが活発になり、デンプンが分解され、糖度が格段に上がる。またお湯に浸けることで、バナナ中に抗ストレス物質が生成され、常温で2週間は黒く変色せず、保存性が格段に高まる。
病害
栽培バナナは不稔であるため遺伝的多様性に乏しく、病気が発生すると致命的な打撃を受ける。
フザリウムが引き起こし、実を腐敗させるフザリウム萎凋病(パナマ病) Race 1 は、20世紀中期まで広く栽培されていたグロスミッチェル種を壊滅させた[15]。こののち、Race 1 に耐性があるキャベンディッシュ種が世界的に広く栽培されるようになったが、2001年頃に発見された Race 4 と呼ばれる変異体はキャベンディッシュ種にも感染し、マレーシア、フィリピン[16]、台湾およびアフリカ諸国のバナナ栽培に損害を与え、近年では中国、インドネシア、オーストラリア、ヨルダン、モザンビーク、中米諸国にも深刻な被害が広がっている[17]。2014年時点では対処法は見つかっておらず[17]、また、フザリウムの胞子が土に何十年と生き残るため、土壌の消毒も必要で、このまま世界的に感染が拡大した場合10年以内にキャベンディッシュ種は全滅するとも言われ、品種改良や遺伝子操作、ゲノム解読による対策が急がれている[18]。なお、キャベンディッシュ種の素となった三種類のバナナ品種のうち、パナマ病に耐性の品種DH-Pahangのゲノムが解読された[19][20]。
子嚢菌 Mycosphaerella fijiensis によって引き起こされるテンプレート:仮リンクは、バナナの葉を黒く変色させ、光合成を阻害して収穫量を半減させる病害である。殺菌剤の噴霧で対処できるが、徐々に薬剤耐性を獲得しており、有効性が低下している。
利用
項目 | 分量 |
---|---|
炭水化物 | 22.5 g |
食物繊維総量 | 1.1 g |
水溶性食物繊維 | 0.1 g |
不溶性食物繊維 | 1.0 g |
果実
世界で生産されるバナナの約4分の3はデザート用(生食用)、約4分の1が調理用である。アフリカ諸国には、個人の摂取カロリーのうち半分をバナナに依存する地域も存在する。
キャベンディッシュ種などのデザート用バナナは、皮を剥いてそのまま、あるいはケーキやヨーグルトに入れるなどして生食される。牛乳や氷などとともにミキサーにかけてジュースとすることもある。縁日などでは、バナナにチョコレートを掛けたチョコバナナなどが屋台の定番の一品となっている。カンボジアでは熟成前のバナナは塩・砂糖を振りかけ炭火焼で食べられている。なお、乾燥させたものはバナナチップ(ドライバナナ)として販売されている。
料理用バナナは生食用バナナよりデンプン、繊維質、ビタミンA等が豊富である。生の料理用バナナは果物というより野菜のような青臭い匂いがする。生のままでは皮も身も硬く(生の皮付き料理用バナナは例えるなら石のように硬い)、生食用バナナのように素手で皮を剥いてそのまま食べることはできないので、芋のように刃物で皮を剥き、煮たり蒸したりして加熱してから食べる。味や食感も芋に近く、ほとんど甘さはない。ウガンダをはじめとする東アフリカではこうしたバナナ料理はマトケと呼ばれ、主食として特に重要視される。マトケは蒸したものが基本であり上等とされるが、煮たものもマトケと呼ぶ[22]。料理用バナナはハイランド種やプランテン種をはじめとするいくつかの品種があり、東アフリカにおいてはハイランド種が主食用、プランテン種は軽食用とされるが、西アフリカや中南米においてはプランテン種は主食用とされる[23]。
バナナの揚げ物としては、バナナチップスのように薄く切って素揚げにしたもの(そのままでは甘くないので、パームシュガーの黒蜜をかけることもある)、ベトナム料理の揚げバナナのように衣をつけて揚げるもの、キューバ料理のトストーネスのように潰してから揚げるもの、などがある。
フィリピンでは、バナナの実を煮込んだ上で、着色料を入れて赤色にしたケチャップが作られており、トマトケチャップ同様に一般的に使用されている。
バナナを穀物粉と共に発酵させたアルコール飲料であるバナナ・ビールはアフリカで広く飲まれている[24]。
イギリスのスーパーマーケットでは最も需要の高い食品とされ、年間売上額は7億5000万ポンドに達する[25]。
日本では、手軽に食べられるおやつとしても、親しまれている。
マイナス40度程度まで冷却すると、バナナを金槌のように使って釘を打つことができるが、さらに冷却すると脆くなって打った衝撃でバナナが砕けてしまうので、注意が必要である。
花
フィリピン、インドネシア、タイ、南インドなどバナナの生産地ではバナナの花(蕾)を食用とする地域が珍しくない。それらの地域では食用のバナナの花が市場で売られている。食べ方は、蕾の外側の苞葉を排除して、つまり、蕾の皮を剥くと、可食部である芯が現れる。そのままではアクがあり食べられないため、水にさらしアクを抜いてから炒めて調理する。苦味がある。
葉
バナナの葉は調理器具や食器として用いられる。東アフリカでは調理用バナナをバナナの葉に包んで蒸したマトケが主食である。南インドの正餐では、料理をバナナの葉の上に盛り付けて食べる。サイパンにはココナツとタピオカを練り合わせて作った餅をバナナの葉で包んで蒸し焼きにするアピギギというチャモロ伝統の菓子がある。パプアニューギニアには、地面に掘った穴に、熱した石を入れ、バナナの葉で包んだ肉や魚などをおいて、土をかぶせて蒸し焼きにする「ムームー」という料理がある。
また、熱帯地方では簡易な家屋の屋根を葺く材料としても使用される。
皮
バナナの皮を踏んだ人が滑って転ぶ古典的なギャグが世界的に知られている。バナナの可食部に面する果皮の内側は多量の植物油を含んでいるため、「潤滑効果」と呼ばれる現象が発現し、摩擦係数が低減するため滑りやすくなる[26]。この現象はワックスを塗った床が滑りやすくなるのと同じ原理である。バナナの皮を踏んですべるギャグがはじめて映画に登場したのは1921年のバスター・キートン主演の「キートンのハイ・サイン」であり、その後十年でチャーリー・チャップリンをはじめとする映画監督が多用し一般化した[27]。
なお、バナナの皮には幻覚作用を持つアルカロイド、ブフォテニンが微量ながら含まれているというのは都市伝説である。1967年、Berkeley Barbという新聞に冗談でバナナの皮にはバナナジンが含まれていて麻薬作用を起こすと書かれたのが始まり[28]であり、それが転じてブフォテニンが含まれている、となった。
日本に於ける歴史
テンプレート:Main 日清戦争の9年後の1903年に、日本統治下に置かれた台湾から神戸港に向けて、7カゴのバナナを移入したのがバナナ輸入の始まりと言われている。当時は一般人が入手出来ない高価な希少品で有った。戦中は輸入が途絶えるなどしたものの、戦後には再開されたが、不急不要品としてGHQにより輸入制限が課せられていた為、希少品である事に変わりは無く、価格は4~5本につきサラリーマンの平均給与の2.5%程度(平均月収30万円ならば7500円)であった。1963年にバナナ輸入が自由化され、フィリピン産バナナが台頭するなどにより安価な普及品へと変化した[29]。
2003年前後から、標高700m程度の高地で通常より長い生育期間(70日程度)を経て栽培した食味の良いバナナがスーパーなどに出回るようになり、ブランド化が進んだ。主なものに「スィーティオ」「甘熟王」などがある。 平成22年度においては、日本のバナナ輸入の94.7%はフィリピンからのものであり、ほぼ独占状態にある。ついでエクアドルからが3.6%、ほかに台湾やペルーなどからもわずかに輸入がある[30]。
文化
タイでは、「簡単なこと」や「ありふれたこと」を意味する言葉として「クルアイ・クルアイ」(「กล้วยๆ」「kluay kluay」。「バナナ・バナナ」の意)という言い回しがあり、バナナが日常に根ざしていることが伺える。ウガンダでは「食べ物」と「バナナ」を示す言葉が同じ[18]であり、日本語の「ごはん」と「米飯」が同じであることと似ている。
バナナダイエットブーム
2006年頃から日本では「朝食にバナナを食べる」という「朝バナナダイエット」なる肥満解消法[32]がインターネット上やテレビで取り上げられた[33]。2008年3月には同法の提案者とされる「はまち。」が書籍『朝バナナダイエット』を出版[34][35]。ブームの過熱ぶりにより、日本各地でバナナが一時期品薄状態になった[36][37][33]。
作品
ギャラリー
脚注
関連項目
- バナナ饅頭(菓子)
- 東京ばな奈(菓子)
- バナナの叩き売り
- ブルーバナナ - 西ヨーロッパで特に経済的、人口的に発展しているバナナ型の地帯のことを表す。
- バナナ共和国 - プランテーション農業に依存する小国を表す用語。
- バナナ型神話 - 東南アジアを中心に分布する神話の類型。
- バナナジン - バナナの皮から抽出されると言われている虚構の向精神物質。
- バナナ・ボート - バナナ生産国の労働歌。1956年にハリー・ベラフォンテが歌い大ヒットした。
- モービル1 - 同製品の不凍性の表現として極地では凍ったバナナで釘を打てるというCMが話題となった。
- バナナ等価線量 - バナナに含まれるカリウム40が、放射線を発している。
- バショウ - 英名「ジャパニーズ・バナナ」、観賞用、実が成ることもあるが不食。松尾芭蕉の俳号の由来。
- アイスランドにおけるバナナの生産
- 劇場版それいけ!アンパンマン よみがえれバナナ島南の海に浮かぶバナナ島がメインとなっている。
- ミラクルバナナ
- マジカル頭脳パワー!! - 「マジカルバナナ」というある物から連想して次々に答えていくゲームがある。
外部リンク
- バナナ大学 日本バナナ輸入組合
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- ↑ Simone Moser et al., "Blue Luminescence of Ripening Bananas", Angew. Chem. Int. Ed. 47, 8954 - 8957 (2008).テンプレート:Doi
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- ↑ バナナという作物(「バナナの足」研究会)
- ↑ 「バナナの世界史」p14 ダン・コッペル著 黒川由美訳 太田出版 2012年1月27日第1版第1刷
- ↑ 6.0 6.1 The World Banana Economy 1985-2002
- ↑ Anne Dauwers, "Uganda hosts banana trial", Nature 447, 1042 (2007). テンプレート:Doi
- ↑ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 pp139-140
- ↑ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p68
- ↑ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p138
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- ↑ バナナの食べ頃と保存法 asahi.com
- ↑ ペンタクロロニル
- ↑ 1990年代前半のポストハーベスト農薬問題
- ↑ Randy C. Ploetz, "Panama Disease:A Classic and Destructive Disease of Banana"
- ↑ 2011年秋頃より、キャベンディッシュ種に感染するパナマ病がフィリピンで発見されフィリピン主要紙上で数多く報道されている。
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- ↑ The banana (Musa acuminata) genome and the evolution of monocotyledonous plants, Published online 11 July 2012, Nature
- ↑ 五訂増補日本食品標準成分表
- ↑ 「ウガンダを知るための60章」pp189-190 吉田昌夫・白石壮一郎編著 明石書店 2012年1月10日初版第1刷発行
- ↑ 「ウガンダを知るための60章」p117 吉田昌夫・白石壮一郎編著 明石書店 2012年1月10日初版第1刷発行
- ↑ Practical Answers, "Banana Beer"
- ↑ A・レウィントン「暮らしを支える植物の事典」(八坂書房) 208項
- ↑ バナナの皮はなぜ滑る?
- ↑ 「バナナの世界史」p100 ダン・コッペル著 黒川由美訳 太田出版 2012年1月27日第1版第1刷
- ↑ Cecil Adams, Straight Dope, April 26, 2002
- ↑ バナナとともに65年 - JFTC-日本貿易会
- ↑ バナナ輸入概況
- ↑ 三戸 幸久、『サルとバナナ』、東海大学出版会、2004。ISBN 978-4-486-01553-6
- ↑ 脂肪分解酵素や果糖による代謝促進が肥満解消に効果があるとされている。
- ↑ 33.0 33.1 テンプレート:Cite news
- ↑ 発売後の1年半で関連本や文庫本も含めると120万部のベストセラーとなった。日本国外の5か国で翻訳出版される。 (2009年11月11日の渋谷区立勤労福祉会館での著者による講演の告知より)
- ↑ 書籍『朝バナナダイエット』の韓国語訳版はソウルの大手書店で部門別売り上げ一位になるほどの人気となっているほか、台湾でも繁体字版が出版されている。
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ 日本のテレビ番組では、2008年6月5日放送の『おもいッきりイイ!!テレビ』で取り上げられて以後、何度か紹介された。さらに同年9月19日放送の『ドリーム・プレス社』で森公美子が減量に成功したとの事で反響を呼んだ。