パニック映画
テンプレート:Pathnav パニック映画(パニックえいが)は、災害や大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々を描く映画のジャンル。様々な人間の行動を描くためにグランドホテル方式(群像劇とも言う)が用いられることが多い。異常事態を描くために大掛かりな特撮 (SFX) が使われることもある。英語ではディザスター・フィルム(またはムービー。災害映画の意)という。
アメリカ東海岸やヨーロッパの作品では大事故や洪水、伝染病の蔓延などが描かれることが多い。
目次
歴史
「映画の父」とも呼ばれるD・W・グリフィスが1916年に制作した『イントレランス』には、すでにパニック映画の要素が見られた。1930年代の作品においても『桑港』(1936、W・S・ヴァン・ダイク監督)の地震や『シカゴ』(1938年、ヘンリー・キング監督)の火災のようにパニック映画の要素を持つものがある。
1950年代から1960年代初頭のSF映画には『地球最後の日』のように大惨事を描くものが多かった。
1970年の『大空港』の成功により、1970年代はパニック映画が流行した。しかし、スタッフの努力も俳優の好演も見られない作品が矢継ぎ早に作られ、1970年代中頃にはパニック映画というジャンルは消耗し尽されていった。それから10数年後の1990年代中頃、特撮技術の進歩によって迫力のあるスペクタクルシーンの製作が可能となり、パニック映画は復活した。2000年代後半以降、CGの技術が著しく向上し、これらシーンの制作が容易になっていることもジャンルの隆盛に一役買っている。
日本における状況
日本においては、『ゴジラ』に代表される怪獣の出現による政府や市民のパニックを描く映画が1950年代より多作されており、同時に天体衝突や全面核戦争などを描いた作品も作られていたが、これらの作品群は「特撮映画」(またはトリック映画)と呼ばれていた。1970年代にハリウッドで次々とディザスター・フィルムが制作された際、そのジャンルを分かりやすく、かつインパクトを与えるように意訳された「パニック映画」なる言葉が生み出され、『ポセイドン・アドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』『大地震』などの大ヒットにより一般に定着した。以後、「パニック映画」という言葉は配給会社やテレビ局などによって戦略的に使用されるようになり、災害によるものだけでなく、「何らかの異常事態により人々がパニックに陥るもの」がほとんど全てパニック映画として宣伝されるという事態となった。
例えば『カサンドラ・クロス』は「細菌に侵された列車の恐怖」を描いたものだが、クライマックスの鉄橋落下シーンが特に強調された。地下鉄乗っ取りを描いた『サブウェイ・パニック』や、競技場での銃乱射の恐怖を描いた『パニック・イン・スタジアム』などは、原題とは無関係に、そのものずばり「パニック」と入った邦題がつけられている。これらは、本来であれば「ディザスター・フィルム」の範疇とするには微妙な作品である。また70年代中盤には、パニック映画ブームの中で公開され大ヒット作となった『ジョーズ』を筆頭に、『グリズリー』『オルカ』『スウォーム』など、さまざまな動物や昆虫が人間を襲う映画が「動物パニック映画」として次々と公開された
一方、この時期(70年代中期~後半)は『ゴジラ』シリーズなど怪獣映画が下火になったこともあり、オイルショックも重なった日本映画の苦境期だったことから、日本の映画会社が特撮技術のノウハウを活用するためにパニック映画の製作を行ったという内部的な事情もある。東宝の『日本沈没』『ノストラダムスの大予言』『東京湾炎上』『地震列島』や東映の『新幹線大爆破』がそれにあたり、特に『新幹線大爆破』はフランスでも公開され大ヒットした。これらの作品は、火薬を用いた都市やコンビナートの爆発シーンを売りにしていた一方で、地震の発生原因や実際に起きた際のシミュレーションに竹内均、大崎順彦をはじめとした地質学者、建築学者の協力を仰ぐというリアリティの追求も見られる。
主な作品
欧米の映画
- アイス・クエイク - アラスカの永久凍土が溶け、地殻変動が発生。生物を死滅させる液化メタンの大噴出を阻止すべく、地質学者が奮闘。
- アウトブレイク - 未知の病原体に封鎖されたアメリカの地方都市を、科学者が救助に悪戦苦闘する。
- アトミック・トレイン - 核兵器を搭載した貨物車が暴走。暴走機関車を彷彿するような展開だが、前半のみで後半は大幅に異なる。
- アルマゲドン - 地球に接近する隕石を破壊しようとする石油採掘技師達の活躍。
- 生きてこそ - ウルグアイの高校のラグビー選手団とその家族や知人を合わせた一行40名が、チリのサンティアゴでの試合に向かった途中に飛行機が墜落する。
- インデペンデンス・デイ - 地球へ集団で襲い掛かる宇宙人を撃退しようとする米軍の活躍。
- エアフォース・ワン - ハイジャックされた米国大統領専用機を舞台に、大統領がテロリストと対決する。
- エアポート'75 - 小型機と衝突した旅客機をスチュワーデスが操縦する。
- エアポート'77 - ハイジャックされた旅客機がバミューダ海域に不時着。
- エアポート'80 - コンコルドにミサイル攻撃を仕掛ける。
- エアポートシリーズとされるものは80までであり、以下の作品はテレビ向け。
- エアポート'98 - 計器が故障した軽飛行機のパイロットを、別の操縦機上から必死に無線指示で救おうとするジェット旅客機パイロットの実話。
- エアポート'99 - 13歳の少女が墜落寸前の旅客機を操縦。
- エアポート2000 - 旅客機の機内で原因不明の奇病に冒される人々と米政府の陰謀。
- エアポート2001 - 民間人の愉快犯により、機内に爆弾が設置される。
- エアポート'02 - 飛行中、突然貨物室のドアが吹き飛ぶ。
- エアポート フライト323 - 事故原因を突き止めようとする国家運輸安全委員会の調査官の戦い。
- エアポート'08 - 燃料漏れと火災防止装置が故障し、いつ爆発してもおかしくない状態となる。
- エグゼクティブ・デシジョン - ジャンボジェットの自爆テロを防ぐため、特殊部隊がステルス爆撃機で機内へ潜入する。
- エグゼクティブ・コマンド - 「エグゼクティブ・デシジョン」とほぼ同じ設定のサスペンス・アクション。
- 宇宙戦争- 突如発生した火星人侵略に翻弄される家族を描く。
- カサンドラ・クロス - ウイルスに冒された特急列車が、政府の命令で破損した古い鉄橋に迫る。
- 合衆国壊滅/M(マグニチュード)10.5 - サンアンドレアス断層で発生した大規模連鎖地震に立ち向かう人々を描く。
- 激突! - 顔の見えぬ運転手が動かすトレーラーにしつこく追われる。
- コンテイジョン
- サイレント・ワールド - 現代の氷河期。
- ザ・コア - マントル対流の停止が招く全世界の異常現象を防ぐため、科学者が地球の内部に潜入する。
- スピード - 路線バスに爆弾が仕掛けられ、一定の速度が落ちると爆発することが判明する。
- スピード2 - 上記の映画の豪華客船版。
- タイタニック - 実話の豪華客船の沈没事故をもとに、そこで翻弄される人々を描いた。
- タワーリング・インフェルノ - 超高層ビルでの火災と、消防士の活躍。パニック映画の代表的な大作。
- ダンテズ・ピーク - 火山の噴火。
- ダイアリー・オブ・ザ・デッド
- ツイスター - 竜巻。もっともストームチェイサーやトルネードチェイサーなどアマチュアの研究者、また追っかけを描く映画のため、パニック映画とは趣旨が異なる。
- ディープ・インパクト - 地球に接近する隕石を破壊しようとする宇宙飛行士と、それを伝えるジャーナリスト。
- デイ・アフター・トゥモロー - 現代の氷河期。
- デイ・アフター/首都水没 - ロンドンに台風が直撃する映画。
- デイライト - 海底トンネルに閉じ込められる。
- ドレスデン、運命の日 - 第二次世界大戦時ドイツによる都市ドレスデン爆撃を描く。
- ドーン・オブ・ザ・デッド - ウィルスによって発生したゾンビが人々を襲い襲い始める。
- 博士の異常な愛情 - 核を管理する一人の軍人が狂ってミサイル発射したことで人類が全滅する。
- ハプニング - アメリカ各地で謎の自殺事件が多発し、人々は自殺を逃れる為逃げ惑う。
- パニック・イン・スタジアム - アメリカのあるスタジアムでアメフト試合が行われる中、謎のライフル魔に選手やファンや客席を狙い撃ちされ逃げ惑うパニックサスペンス。
- PARIS 2010 パリ大洪水 - 1910年にパリで実際に起きた大洪水を描く。
- ヒンデンブルグ - 実話の飛行船の爆発事故をもとに、爆発の真相を描いた。
- ファイアーストーム - 山火事。
- ブラインドネス - 世界中が失明。
- ポセイドン - 下記のリメイク作品。
- ポセイドン・アドベンチャー - 豪華客船の転覆。同タイトルのテレビ作品もあり。
- ポセイドン・アドベンチャー2 - 上の作品で転覆した豪華客船の中に潜入する窃盗犯の話。
- ボルケーノ - ロサンゼルス市街中心部で火山が噴火。
- ミスト - 霧に包まれた街で巻き起こる怪奇。
- メテオ - 地球に接近する隕石を核ミサイルで破壊しようとする。
- 大地震 - ロサンゼルスの地震。
- 大空港 - 猛吹雪のシカゴの空港においての群像劇。
- 地球が静止する日 - 宇宙人の襲来と説得。
- 暴走機関車 - 脱獄囚達の乗り込んだ4重連機関車が運転士の死によって暴走。実話をモチーフにしており原案は黒澤明。
- 暴走特急 - アメリカ横断鉄道がテロリストにジャックされ、最新鋭の衛星兵器を乗っ取られる。セガール演じるライバックがそれを食い止める。
- 乱気流/タービュランス - ハイジャックされたジャンボ・ジェットが乱気流に飲み込まれる。
- ワールド・ウォーZ - 世界各国でウィルスによって発生したゾンビが人々を襲い襲い始める。ブラッド・ピット演じる国連職員ジェリーが原因究明に世界各地に渡って奮闘する。
怪獣映画
- クローバーフィールド - 正体不明の巨大生物が大都会を襲撃する。
動物パニック映画
- アナコンダ(1997年)
- アニマル大戦争(1977年)
- アラクノフォビア(1990年)
- アリゲーター(1980年)
- 怒りの群れ(1977年)
- オルカ(1977年)
- 巨大クモ軍団の襲撃(1977年)
- 巨大生物の島(1976年)
- 恐竜・怪鳥の伝説(1977年)
- カニングキラー 殺戮の沼 (200x年)
- キラー・ビー(1976年)
- キラーフィッシュ(1978年)
- グリズリー(1976年)
- ジョーズ(1975年)
- ジョーズ2(1978年)
- ジョーズ3(1983年)
- ジョーズ'87 復讐篇(1987年)
- ジョーズ'96/虐殺篇(1996年)
- ジョーズ・リターンズ(1980年)
- スウォーム(1978年)
- スクワーム(1976年)
- スパイダー・パニック(2002年) - アメリカのある田舎町で、産業廃棄物の影響により巨大化したクモ軍団が、住民をエサとして襲い掛かる。
- タイガーシャーク(1977年)
- ディープ・ブルー(1999年)
- 毒蜘蛛タランチュラ・死霊の群れ(1977年)
- テンタクルズ(1977年)
- ドッグ(1976年)
- 鳥(1963年) - アルフレッド・ヒッチコック監督作品。原因不明のまま、あらゆる鳥が一斉に人間を襲い始める。
- パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼(1978年)
- ビッグ・バグズ・パニック ( )
- ピラニア(1978年)
- フェイズIV 戦慄!昆虫パニック(1974年)
- 猛獣大脱走(1983年) - 北ヨーロッパのある都市で動物園の動物たちが暴れだし、大脱走して都市の住民に襲い掛かる。
- 燃える昆虫軍団(1975年)
パロディ映画
- 弾丸特急ジェット・バス - 複数作のパロディ
- フライング・ハイ - 大空港のパロディ
アジア映画
- ザ・タワー 超高層ビル大火災
- TSUNAMI -ツナミ- - 韓国プサン郊外ある海水浴場海雲台に突如時速800kmの「メガ津波」が襲って来てリゾート客や住民たちが逃げまくる韓国のパニック映画。
- ノートに眠った願いごと - 韓国ソウルの三豊百貨店崩落事故を元に描くラブストーリー。
- 超強台風
- 唐山大地震 -想い続けた32年- - 中国、唐山地震を扱った映画
怪獣映画
- グエムル-漢江の怪物- - 黒い両生類のような怪物が韓国・漢江を襲う。
日本映画
- 皇帝のいない八月 - 日本版『カサンドラ・クロス』作品。
- 地震列島 - 東京を襲う直下型地震。大地震と同じような場面が随所に見られる。
- 自殺サークル - アメリカ映画『ハプニング』と似た趣旨で日本各地で集団自殺が多発していく。
- 新幹線大爆破 - 新幹線に爆弾を仕掛けたという脅迫電話から始まる。
- 世界大戦争 - ロシアの核ミサイルの誤認発射が引き金で人類が滅亡する。
- ドラゴンヘッド - 日本各地で火山の噴火が発生して脱線した新幹線から生き延びた3人の高校生を描く。
- 日本沈没 - 日本列島が海に沈むと予言した地球物理学者と政府機関が、国民を救おうと悪戦苦闘する。
- 日本以外全部沈没 - 沈む場所が逆な上記のパロディ。
- ノストラダムスの大予言 - 地球各地で異常規模が発生し、食料価格が暴騰。人心も荒廃し、それによる二次災害も発生し、ついには全世界は核戦争に突入。全世界が死滅しても核ミサイルは自動報復システムにより発射され続け、打ち尽くした後は地球は死の星と化する。
- 東京湾炎上 - 原油積載の20万トン級タンカーのシージャック。石油基地を破壊せよとの脅迫に、日本政府が石油基地破壊の特撮映像を放映して犯人を欺こうとする。
- ひろしま - 本来は反戦・反核映画だが、本編の大部分が広島市への原爆投下の惨状描写に費やされる。
- 復活の日 - ウイルス兵器が全世界に拡散し、南極基地以外の人類が死に絶える。
- 首都消失 - 東京が高濃度の電磁気物質に包まれ、音信不通になる。
- 252 生存者あり - 東京に首都直下型地震が発生。その影響で巨大台風が発生し、台場や新橋を直撃する。
- 吸血鬼ゴケミドロ - アメーバ状の宇宙生物が人間に乗り移り、全人類の血を吸った後、地球を侵略する。
- 回路 - 幽霊によるネットを使った奇襲によって日本全土から人類が失踪していく。
- 感染列島 - 感染症の蔓延で社会機能停止。
- 妖星ゴラス - 地球に接近する妖星から逃れるため、南極にロケットをつけ、地球を移動させようとする。
怪獣映画
- ゴジラ(1984年) - 本来は怪獣映画だが、本作はゴジラ出現による人々の恐怖や日本政府の奮闘や冷戦時の核問題など、パニック映画として描かれている。