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2014年6月29日 (日) 16:22時点における最新版
しおかぜは、四国旅客鉄道(JR四国)および西日本旅客鉄道(JR西日本)が岡山駅 - 今治駅・松山駅・宇和島駅間を宇野線・本四備讃線・予讃線・内子線経由で運行している特急列車である。
目次
概要
特急「しおかぜ」は1972年に、それまで運転されていた急行「いよ」を格上げしたことにより、高松駅 - 宇和島駅間で運転を開始した。同時期に運転を開始した「南風」とともに、四国初の特急列車であり、1986年にエル特急に指定されている。
1988年4月に本四備讃線(瀬戸大橋線)が開通に伴って岡山駅発着に変更され、引き続き高松駅を発着する列車は「いしづち」として運転されるようになった。
列車名の由来
瀬戸内海の「海から吹く塩気を含んだ風」である潮風を平仮名表記にしたものである。「しおかぜ」の名称は、1965年から1968年まで、新大阪駅 - 広島駅間を運行する特急の名称として使用された(「山陽本線優等列車沿革」を参照)。また、房総地区の臨時列車にも漢字は異なるが「汐風」が存在していた。
運行概況
山陽新幹線に接続して、岡山市と香川県の西讃・愛媛県の各都市を結ぶJR四国の主力列車である。岡山駅 - 今治駅間に上り1本、岡山駅 - 松山駅間で上り13本・下り14本、岡山駅 - 宇和島駅間で1往復運転されている。
1990年に2000系の量産車が予讃線に投入された頃から岡山駅 - 宇和島駅間を結ぶ直通列車は宇和島駅発が朝の上り3本、宇和島駅着が夜の下り2本のみとなり偏った状態だった。予讃線の電化完成当初は、岡山駅 - 宇和島駅間を結ぶ直通列車は宇和島駅発が朝の上りと宇和島駅着が夜の下り各1本のみ残されたが、松山駅で2000系同士の乗り換えが1日1回発生していること(=直通可能なのに分断していること)が問題視され、一時的に2往復とされた。2011年3月からは、再度宇和島駅発が朝の上りと宇和島駅着が夜の下り各1本のみに変更された。
2004年12月、岡山駅または児島駅と内子駅方面を行き来する際に、松山駅で8000系電車の「しおかぜ」と2000系気動車の「宇和海」を乗り継いでも特急料金が通算される乗り継ぎ料金制度が設定された。なお、目的地が岡山駅でなく高松駅の場合は同じJR四国管内完結のため、この特例は1990年11月から存在していた。
運行区間のほとんどが単線区間で列車の増発が困難であることから、今治駅 - 岡山駅間の2号を除き、宇多津駅 - 松山駅(10号は宇多津駅 - 宇和島駅間、23・25・27・29号は多度津駅 - 松山駅間)で高松駅発着の「いしづち」を併結している。ただし、多客期(大型連休・お盆・年末年始)は一部列車を除いて宇多津駅または多度津駅での増解結作業を行わず、全編成が岡山駅発着の「しおかぜ」として運転される。この場合、高松駅 - 宇多津駅・多度津駅間に接続列車として臨時「いしづち」が運転され、宇多津駅 - 多度津駅間の各停車駅で乗り換えとなる。また、団体客が乗車する場合も同様で、時刻表に載らない場合が多い。逆に、瀬戸大橋が強風で運転を見合わせる場合は、全列車全編成とも高松駅発着となる。
運用上の特徴として、「いしづち」編成が岡山駅・高松駅側に、「しおかぜ」編成が松山駅側に連結される。このため、松山方面行きでは「しおかぜ」が先に宇多津駅(下り4本は多度津駅)に入り、「いしづち」が駅手前で信号待ちを行う。1998年3月14日 - 2014年3月14日の間は、「しおかぜ」の所要時間短縮のため8000系の向きが編成ごと方向転換されていたが、2014年3月15日のダイヤ改正から元の向きに戻されている。これにより、グリーン車の位置が編成の1号車に統一された。
停車駅
岡山駅 - 児島駅 - 宇多津駅 - 丸亀駅 - 多度津駅 - (詫間駅) - (高瀬駅) - 観音寺駅 - 川之江駅 - 伊予三島駅 - 新居浜駅 - 伊予西条駅 - 壬生川駅 - 今治駅 - (伊予北条駅) - 松山駅 - 伊予市駅 - (伊予中山駅) - 内子駅 - 伊予大洲駅 - 八幡浜駅 - 卯之町駅 - 伊予吉田駅 - 宇和島駅
- ( )は一部列車のみ停車。
使用車両・編成
しおかぜ | ||||||||||||
テンプレート:TrainDirection | ||||||||||||
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原則として、松山運転所所属の車両で運転されている。基本的に伊予西条駅、松山駅、八幡浜駅を境に需要が変わるため、岡山駅 - 松山駅間は5両、松山駅 - 宇和島駅間は3両が基本となっている。なお、いずれも振り子式車両で運転されるが、宇野線・本四備讃線では振り子機能を使用しない。
- 8000系電車
- グリーン車を連結したL編成が充当される。かつては早朝の1往復(1・2号)に「いしづち」用のS編成が充当されていたが、2011年3月のダイヤ改正でL編成に統一された。「いしづち」は編成の上り寄りに6 - 8号車として連結される。
- 2000系気動車
- 「アンパンマン列車」として運転される2往復(下り9・21号、上り10・22号)に充当されている。ただし、車両検査時には一部に一般型車両を連結することがある。1号車の普通車指定席は「アンパンマンシート」となっており、車両連結の有無は鉄道情報システムが運営する「JR CYBER STATION」等で確認できる。
- 「いしづち」は編成の上り寄りに7・8号車として連結される。なお、21号は松山駅で4・5号車を切り離し、松山駅 - 宇和島駅間を3両編成で運行する。
- 多度津駅以西の特急列車は、高松駅 - 伊予西条駅間の1往復を除いて松山所属の車両で運転されているため、原則として2000系の「しおかぜ」にN2000系が連結されることはない。ただし、松山運転所の2000系は車両の配置数に対して運用両数に余裕がなく、高松運転所または高知運転所配置の車両が代わりに連結されていることもしばしばあり、この時にはN2000系が編成中に含まれていることがある。
- JR shikoku 2000series 2004 anpanman train utazu.jpg
2000系「しおかぜ」
(アンパンマン列車)
利用状況と競合交通機関
「しおかぜ」は土讃線の特急「南風」と同様、岡山駅での新幹線接続列車の役割も担っている。「しおかぜ」と直接の競合関係にある公共交通機関は、松山市 - 岡山市間を運行する高速バスのマドンナエクスプレスである。そのほか、本列車と東海道・山陽新幹線を乗り継いで利用することを念頭に置けば、沿線各地と京阪神・福山地区を結ぶ高速バス路線や、松山空港と伊丹空港・関西空港・羽田空港を結ぶ航空路線、またオレンジフェリーや関西汽船・ダイヤモンドフェリーの松山寄港便などの航路が主な競合としてあげられる。しかし、現在は「高速道路の割引」の煽りを受け、阪神地区から松山に寄港するフェリー便は全廃した。
近年は、航空機や高速バスとの激しい競争にさらされている。特に松山自動車道開通後は岡山市・高松市 - 松山市間の高速バス(両備ホールディングス・四国高速バス・伊予鉄道など)の拡充が進んでいる。また徳島自動車道・明石海峡大橋開通後は松山市 - 京阪神間でも激しい競争にさらされている。この区間ではJRバスグループのJR四国バス・西日本JRバスや伊予鉄道・阪急バス・神姫バス・京阪バスの運行する高速バスが合計20往復あり、これらとのシェア争いもある。しかし松山IC・川内ICと松山市内との距離が長く、さらに渋滞が発生しやすいことから高知方面と比べるとバスのアドバンテージがやや低い。
JR四国もシェア確保のため積極的な営業戦略を行っている。具体的には、西日本旅客鉄道(JR西日本)と協力しながら、新幹線との接続改善、特別企画乗車券である阪神往復フリーきっぷの発売、パークアンドライドサービスの実施、四国・瀬戸内海エリアでテレビコマーシャルの放送などが挙げられる。大阪府と愛媛県との間の交通機関別の輸送シェアを2000年と2005年とで比較した調査においては、鉄道のシェアはほぼ横ばいであった[1]。
施設面では2006年(平成18年)11月に、岡山駅の橋上駅舎化による乗換利便性の向上が図られたほか、宇野線の部分複線化工事が2009年(平成21年)に完成し、同年3月14日のダイヤ改正で1 - 2分所要時間が短縮された。
JR四国では特に京阪神方面への高速バスなどとの競合には強く意識しており、岡山駅での「のぞみ」・「ひかりレールスター」との乗り継ぎの改善や阪神地区・大阪環状線のフリー乗車区間が設定された特別企画乗車券を積極的にPRしている。
フリーゲージトレイン化計画
沿線一部自治体が、「しおかぜ」のフリーゲージトレイン化による新大阪駅直通列車運行を要望しており、実際にフリーゲージトレイン試作車による試験運転が行われている。すでに電化されているため、「南風」よりも実現性が高いものの、沿線自治体の姿勢が一貫していない上に、どの自治体も財政が厳しく、強く推進されていないのが現状である。
JR四国は2006年に国土交通省交通政策審議会・交通体系分科会の地域公共交通部会に提出した資料の中で、長期的に望まれる投資として瀬戸大橋線を介したフリーゲージトレインによる新幹線直通列車を挙げている[2]。これとあわせて予讃線の伊予市 - 宇和島間の電化や伊予西条 - 松山間の短絡線(高縄半島の付け根を結ぶ)も挙げられており、フリーゲージトレインが具体化した場合にはこれらの投資の必要性を考えているとみられる。JR四国の松田清宏社長(当時)も2008年の雑誌の対談記事でそうした主旨の発言をおこなっている[3]。
2010年には、松田会長(同年6月に社長から異動)や泉雅文社長が、高縄半島の付け根の短絡線による予讃線の時間短縮について相次いで言及した[4][5]。泉社長はこれを含めた高速化(土讃線・高徳線を含む)の費用を1500億円と述べ、国の支援を求めているとしている。
沿革
国鉄時代
- 1972年(昭和47年):急行「いよ」を格上げする形でキハ181系気動車を使用し、「しおかぜ」3往復運行開始。
- 1977年(昭和52年):「しおかぜ」高松駅 - 宇和島駅間1往復増発し、4往復に。
- 1986年(昭和61年):キハ185系気動車の登場により、急行「いよ」、「うわじま」を格上げする形で「しおかぜ」を9往復増発し、13往復(高松駅 - 宇和島駅間5往復)になる。同時に「エル特急」の仲間入りを果たす。
JR発足後
- 1988年(昭和63年)4月:本四備讃線(瀬戸大橋線)開業に伴い岡山駅発着に変更し、5往復(岡山駅 - 宇和島駅間下り1本上り2本)となる。高松駅発着は「いしづち」に移行する。
- 1989年(平成元年)
- 1990年(平成2年)11月:振り子式車両である2000系気動車を8往復中6往復(岡山駅 - 宇和島駅間2往復)で使用開始。2往復はキハ181系(岡山駅 - 宇和島駅間上り1本)となる。「いしづち」との連結運転中止。
- 1992年(平成4年)7月:8000系電車の試作車が登場し、臨時列車で岡山駅 - 新居浜駅間2往復運転開始。
- 1993年(平成5年)3月:「しおかぜ」2往復増発され10往復に。予讃線新居浜駅 - 今治駅間の電化完成に伴い、「しおかぜ」は以下のように変更。
- 「しおかぜ」8往復を8000系電車化。
- 多度津駅 - 松山駅間で「いしづち」との連結運転が3往復設定される。
- 2000系気動車「しおかぜ」は岡山駅 - 宇和島駅間1往復、岡山駅 - 松山駅間1往復に。
- 全列車児島駅停車になる。 松山駅 - 宇和島駅間については1往復を残して特急「宇和海」に系統分割される。
- 1994年(平成6年)12月:下り1本が増発となり下り11本、上り10本に。多度津駅 - 松山駅間での「いしづち」との連結運転が下り4本、上り3本になる。
- 1997年(平成9年)11月:3往復増発され下り12本、上り11本に。2000系気動車「しおかぜ」は2往復とも岡山駅 - 宇和島駅間の運行となり、多度津駅 - 松山駅間で「いしづち」と連結運転する列車は下り10本、上り9本に増える。
- 1998年(平成10年)
- 3月:岡山方面の所要時間短縮のため8000系電車の編成ごと向きを逆に変えた。多度津駅 - 松山駅間で「いしづち」と連結運転する列車は下り13本、上り12本に増える。
- 10月:平日のみ運行の「しおかぜ」82号が伊予西条駅 - 岡山駅間に上り1本増発され、14往復に。
- 1999年(平成11年)3月:平日のみ運行の「しおかぜ」82号が毎日運行となり、「しおかぜ」2号となる。
- 2000年(平成12年)3月:1往復増発され15往復に。多度津駅 - 松山駅間で「いしづち」と連結運転する列車は下り14本、上り13本に増える。
21世紀以降
- 2002年(平成14年)3月:「いしづち」との連結を行う駅を多度津駅から宇多津駅に変更。
- 2003年(平成15年)10月:宇多津駅 - 松山駅間で「いしづち」と連結運転する列車が下り15本、上り14本に増える。2000系の「しおかぜ」に松山で併結となる上り1本の「いしづち」を平日のみ宇和島始発に変更した。また、車内販売が廃止される。
- 2005年(平成17年)3月:「しおかぜ」29号が全区間単独運転となり、宇多津駅 - 松山駅間で「いしづち」と連結運転する列車が14往復になる。これまで平日のみの運行だった宇和島始発の上り1本の「いしづち」(2000系「しおかぜ」と併結)が毎日運行になる。
- 2008年(平成20年)3月15日:喫煙ルームを除き全席禁煙となる。
- 2009年(平成21年)
- 3月14日:宇野線の一部複線化、瀬戸大橋線の改良工事の完成により、茶屋町 - 児島間で130km/h運転を開始。
- 8月1日:一部列車で丸亀駅 - 観音寺駅間において車内販売を再開。
- 2010年(平成22年)3月13日:単独運転だった「しおかぜ」29号を「いしづち」33号との併結運転(多度津駅 - 松山駅間)に変更し、「しおかぜ」2号以外の全列車が「いしづち」と併結運転となる。宇多津駅で「いしづち」と分割併合を実施する「しおかぜ」は14往復、多度津駅で併合を実施する「しおかぜ」は下り1本となる。
- 2011年(平成23年)3月12日:ダイヤ改正により次のように変更[6][7]。
- エル特急の呼称を廃止。
- 喫煙ルームを廃止し、完全禁煙になる。宇和島駅発着の1往復を松山駅発終着に変更し、松山駅以西は「宇和海」に系統分離。
- 1・2号は8000系3両編成から5両編成に変更される。この結果、「しおかぜ」全列車にグリーン車が連結されることになる。
- 2013年(平成25年)3月16日:「しおかぜ」2号の運転区間を、今治駅 - 岡山駅間に延長。宇多津駅で「いしづち」と分割併合を実施する「しおかぜ」は下り11本、上り14本に、多度津駅で併合を実施する「しおかぜ」は下り4本となる[8]。
- 2014年(平成26年)3月15日:「しおかぜ」・「いしづち」に使用する8000系電車の編成を方向転換し、1 - 5号車を「しおかぜ」、6 - 8号車を「いしづち」に統一した[9]。
- Kiha181 siokaze.jpg
国鉄キハ181系気動車「しおかぜ」
- Kiha185 siokaze.jpg
国鉄キハ185系気動車「しおかぜ」(1986年)
- JR shikoku kiha185 blue shiokaze 1987.jpg
国鉄キハ185系気動車「しおかぜ」(1987年)
- JR shikoku kiha185 blue shiokaze 1989.jpg
国鉄キハ185系気動車「しおかぜ」9両編成(1989年)
- Kiha181 sikoku siokaze.jpg
8両編成中4両がキハ181形の「しおかぜ」
- JR shikoku 8000 series shiokaze utazu.jpg
JR四国8000系電車「しおかぜ」
脚注
関連項目
テンプレート:JR四国の列車- ↑ テンプレート:PDFlink - 運輸政策研究機構運輸政策研究所 p.6
- ↑ テンプレート:PDFlink - 第3回地域公共交通部会(2006年11月14日)資料
- ↑ 「JR四国の20年を語る」鉄道ピクトリアル2008年4月号P.10 - 18。ただしこの記事では財政的な側面については、フリーゲージ車両の製造にかかる1両5億円といわれる費用について「どういう財政スキームが用意できるかという課題」にのみ言及しており、他の設備投資の財政的課題には触れられていない。
- ↑ 西条-松山の鉄道高速化を提案 JR四国会長 - 産経新聞 2010年12月9日
- ↑ 「活路開くか特急高速化」朝日新聞(高知版)2010年9月25日
- ↑ 平成23年3月ダイヤ改正について - 四国旅客鉄道プレスリリース 2010年12月17日
- ↑ 『JR時刻表 2011年2月号』交通新聞社
- ↑ 『JR四国ニュース』平成25年2月号 「平成25年3月16日ダイヤ改正」による。
- ↑ 平成26年3月ダイヤ改正について - 四国旅客鉄道プレスリリース 2013年12月20日