海南市
テンプレート:Infobox 海南市(かいなんし)は、和歌山県北部沿岸部に位置する市。紀州漆器の産地。海草郡南部に位置することから市制施行の1934年にこの名称がついた。
2005年4月1日に、海南市と下津町が合併して誕生し、新市名も海南市となった。本記事では必要に応じ合併前を旧・海南市、合併後を新・海南市として記す。
海南市は、1955年以来50年ぶりに合併した。だが、この合併は編入合併ではなく、新設合併として行われたため、現在では市章も2005年3月31日以前とは異なっている。新設合併として合併したのは海南市が誕生した1934年以来71年ぶりである。
目次
地理
- 市の北半分は丘陵地で比較的なだらかであるが、南半分は長峰山脈と藤白山脈を控え、山岳に覆われている。最高峰は鏡石山で558m。それ以外に熊尾寺山543m、黒沢山509mなど500m級の山が連なる。主な河川は東部を縦貫する貴志川、北部と中央部を縦貫し、和歌山市南部で海に注ぐ亀ノ川、鏡石山に水源をもち、市の中心部で海に注ぐ日方川などがある。旧海南市域には、灌漑・治水を目的とした人工池が多数見られ、中でも亀池は井沢弥惣兵衛が設計築造した農林水産省のため池百選に選定されているため池で四季を通して憩いの場所として市民に親しまれている(下記の「亀池公園」を参照)。市の西側は紀伊水道に面し、四国、淡路島、沼島を望むことができる。
- 気候は瀬戸内気候に属し、年中温暖で降水量はそれほど多くない。但し、夏は高温となり、冬季は曇りがち。小規模であるが地震が頻発することもある。
人口
歴史
弥生式土器や古墳なども見られ古くから人間が生活した痕跡が伺える。熊野古道もあり、古くから都と白浜の湯治場の中継地として栄えていた。市南部の藤白山の麓では有間皇子が非業の死を遂げ、遺恨碑も建てられている。戦国時代には全国を制覇しようと目論む織田信長側とこれを阻む雑賀衆との合戦も行われた。江戸時代、紀州徳川家は黒江地区を紀州漆器の生産地として特別の保護を与え、大いに栄えた。
沿革
- 1934年(昭和9年)5月1日 - 海草郡黒江町・内海町・日方町・大野村が合併して海南市が発足。
- 1955年(昭和30年)4月1日 - 海草郡巽村・亀川村・北野上村・中野上村・南野上村を編入。
- 2005年(平成17年)4月1日 - 海草郡下津町と合併し、改めて海南市が発足。
産業
もとより工芸の町として知られ、黒江地区では紀州漆器が、内海地区では和傘が、日方地区では製塩が行われていた。1960年代に臨海工業基地が造られ、新日鐵住金(和歌山製鐵所)、関西電力(海南発電所)、富士興産(石油精製業)などの重化学工業が進出する。一時期発展するがバブル崩壊以降は、リサーチラボなど先端情報産業の誘致に取り組み、重化学工業への依存体質からの脱却を図ろうとしている。黒江地区では漆器工芸を生かした観光にも取り組んでいる。東部地区は農業地帯で、イチゴ、桃、柑橘類などの果樹栽培が行われている。この他、和雑貨及び醸造が盛ん。特に棕櫚を用いたたわし製造から始まった日用雑貨品生産は、市の代表的な地場産業であり(後述)、醸造は黒江、内海、野上地区で行われている。
家庭日用品産業
和歌山県海南市及び海草郡旧野上町(現紀美野町)一帯は野上谷と呼ばれ、スポンジや洗濯ハンガーなど家庭日用品の一大産地である。これは原料となる良質の棕櫚が近くで採れたため、たわし、箒、縄などの棕櫚加工品の製造が盛んになった。その後、時代の変化と共に原材料はプラスチック、化学繊維製とシフトしていくが、今日でも炊事、洗濯、トイレ、風呂など水回り品におけるシェアは全国の8割強を占め、中小含め企業数は100近くに上る。一部は全国展開するほど大規模で、大都市に販路を持ち、全国のホームセンター、スーパーマーケットやドラッグストアなどに提供されている。近年は安価な輸入品に押されがちであったが、アイデア商品や高付加価値商品を開発することで、差別化戦略を図ってきており、新たな成果が見られている。 また、昔ながらの棕櫚束子、箒、ブラシを手作業で作っている職人もおり、一部は県の伝統工芸品となっている。
主な事業所
- 家庭日用品
- 前述したように、キッチン(スポンジなど)、ランドリー(洗濯ハンガーなど)、バス(ボディタオル、マットなど)、トイレ(便座カバーなど)水回り関連の日用品と棕櫚箒に端を発するクリーニング(掃除)、リビング、収納用品に強みを持つ。以下は「海南漆器まつり」と同時に開催される、「家庭用品まつり」に例年テナント出展を行うなど大規模な企業である。
- 株式会社アイセン (キッチン、ランドリー、バスなど)
- 株式会社オーエ (キッチン、バス、トイレ、ランドリーなど)
- オカ株式会社 (バス、トイレなど)
- 株式会社オカトー・株式会社エルオー (ランドリーなど。100円均一ショップ向け商品も多数開発)
- 株式会社サンコー (キッチン、バス、トイレ、クリーニングなど)
- 東和産業株式会社 (バス、キッチン、ランドリー、トイレ、収納用品など)
- ヨコズナクリエーション株式会社 (トイレ、バスなど)
- ワコー株式会社 (キッチン、バス、クリーニングのほか、その技術を生かしカー掃除用品も手掛ける)
- 株式会社小久保工業所 (トイレ、ランドリー、リビングのほかビューティー用品など幅広く手掛ける。中でも洗顔用泡立てネット『ホイップ洗顔』は同社を代表するヒット商品である)
- 株式会社キクロン (本社ならびに工場は和歌山市にあるが、海南特産家庭用品協同組合に加盟)(キッチン、バス、トイレ、ランドリーなど)
- その他
教育
高等学校
- 和歌山県立海南高等学校
- 和歌山県立海南高等学校下津分校
- 和歌山県立海南高等学校大成校舎 (2008年より和歌山県立大成高等学校から海南高校の分校舎となる)
- 海南市立海南下津高等学校 (海南市立下津女子高等学校が海南市立海南市高等学校を統合して開校。旧海南市立下津女子高等学校の校舎に設置)
- 海南市立海南市高等学校 (2007年に募集停止、2009年3月に閉校)
中学校
- 海南市立海南中学校(2011年3月に第一中学校および第二中学校を廃止・統合し、2011年4月に新設)
- 海南市立第三中学校
- 海南市立亀川中学校
- 海南市立巽中学校
- 海南市立東海南中学校
- 海南市立下津第一中学校
- 海南市立下津第二中学校
小学校
- 海南市立内海小学校
- 海南市立内海小学校冷水分校(休校中)
- 海南市立大野小学校
- 海南市立亀川小学校
- 海南市立北野上小学校
- 海南市立北野上小学校七山分校
- 海南市立黒江小学校
- 海南市立巽小学校
- 海南市立中野上小学校
- 海南市立日方小学校
- 海南市立南野上小学校
- 海南市立加茂川小学校
- 海南市立塩津小学校
- 海南市立下津小学校
- 海南市立大東小学校
交通
熊野古道に沿う形で、紀伊半島を一周する国道42号と紀勢本線(きのくに線)が縦貫している。
海南市街の道は走りやすいが、長峰山脈などではまだ離合困難な道がある。
鉄道
JR以外にかつては和歌山市との間を連絡する路面電車南海和歌山軌道線、野上町との間を連絡する野上電鉄があったが、それぞれ1971年、1994年に廃止されてしまった。
道路
高速道路
国道
県道
観光
観光地
- 黒江 - 漆器(紀州漆器)工芸の伝統的町並みが保存されている。温故伝承館(きき酒ができる)、黒江ぬりもの館(漆器の小物を土産に買うことができる)、紀州漆器伝統産業会館(イチローのサイン入り漆塗りのバットがある)等がある。
- 長久邸 - 中野BCの敷地内にある邸宅で、広大な池泉式日本庭園がある。
- 温山荘園 - 琴ノ浦にある、大正期に大阪の豪商によって立てられた別荘で、広大な日本庭園と洞窟がある。ひらがなで書くと「おんざんそう」であるが、地元では「おんだんそう」と呼ばれる(紀州弁の特徴)。
- 亀池公園 -農林水産省のため池百選に選定されているとともに紀の川市の桜池、平池とともに和歌山県三大用水池の1つとされている。
- 孟子不動谷自然公園
寺院
- 長保寺 - 平安時代創建の勅願寺。国宝建造物3棟。紀州徳川家の菩提寺、和歌山藩主徳川家墓所は国の史跡。
- 善福院 - 鎌倉時代、栄西による創建。現存する釈迦堂は国宝に指定されている。
- 禅林寺 - 地元では「薬師さん」と呼ばれボケよけ寺として知られる。
- 浄国寺
- 願成寺 - アジサイ寺
神社
文化施設
娯楽
- 海南市わんぱく公園
- 黒沢ハイランド - 牧場、乗馬場、キャンプ場、アーチェリー場
- 釣り公園シモツピアーランド - 下津にある海釣り専用施設
- すわん江戸村
- 和歌山マリーナシティ - 当市と和歌山市との間で帰属について訴訟となり、当市が敗訴した。