国際放送
国際放送(こくさいほうそう、英語:International broadcasting)とは、国外の受信者に向けて行う放送を言い、ほとんどの場合、短波によるラジオ放送が(近隣国に向けては中波も)用いられる。
目次
概説
他国の人々へ自国の概要、政府の主張を説明したり、在外邦人に情報を伝達する手段として利用されており、ほとんどの国では国が直接・間接に経営する国営放送局または公共放送局が行っている。
日本では放送法第2条第5号に「外国において受信されることを目的とする放送であつて、中継国際放送及び協会国際衛星放送以外のもの 」と定義しており、総務省省令・放送法施行規則第60条に基づく別表第5号の表の第1項国内放送等の基幹放送の区分(2)にもあるので、基幹放送の一種でもある。日本放送協会(NHK)はNHKワールドにより18か国語による海外向け放送、および在留日本人向けの日本語放送(NHKワールド・ラジオ日本)を実施している。
また、特定失踪者問題調査会が広報業務用特別業務の局として「しおかぜ」を開設し、北朝鮮に拉致され抑留中とみられる日本人および北朝鮮国内向けに日本語・英語・中国語・朝鮮語の4か国語で実施している。 但し、特別業務の局が行うのは、電波法令上は同報通信[1]という。 このほか、日本政府の拉致問題対策本部が「ふるさとの風」(イルボネパラム-日本の風)を開設し、北朝鮮に拉致された日本人向けに、第三国の放送施設から日本語・朝鮮語の2か国語で実施している。
BCLブーム
テンプレート:Main 欧米では大人の趣味であるBCLは、日本では山田耕詞が火付け役となり、1970年代に若年層を中心にブームとなった。日本向け国際短波放送を聞くことが流行し、BCLラジオが盛んに発売され、関連雑誌だけではなく国内民放ラジオ局ではBCL関連番組も放送された。同時に世界各国からの日本向け国際短波放送も盛んになった。
今後の展望について
従来、国際放送の大半は、短波による放送が多かった為、「国際放送」と「短波放送」はほとんど同義であった。短波による放送は、出力の小さな放送局でも国際放送の開局を可能とするため、好んで実施された。しかし、短波は中波や長波と比較すると、フェージングやスキップ現象による伝播障害を受け易いため、安定した受信が困難な傾向がある。このため、1970年代から80年代のBCLブームが1990年代に入り下火になると、海外からの日本向けの短波放送、とりわけ日本語放送は大幅に縮小されてしまった。また、国際放送ではないが、日本国内向け短波放送である日経ラジオ社(ラジオNIKKEI、旧日本短波放送=ラジオたんぱ)も、全盛期の1970年代から80年代に比べ、大幅に内容が縮小された。
今日ではインターネット(特にADSLやFTTHといった、ブロードバンドインターネット接続)が、先進国を中心に広く普及したこともあり、多くの放送局が番組(コンテンツ)をインターネットで同時配信(IPサイマル配信)するようになりつつある。また、衛星テレビ放送による国際放送も、欧米の放送局を中心に実施するようになってきた。一方で、従来の短波による国際ラジオ放送は、世界的に縮小傾向にあり、日本のNHKワールド・ラジオ日本も、2007年10月より放送規模が大幅に縮小された(特に英語放送の時間縮小と北米・ロシアを除く欧州向けの日本語放送の廃止があった。1日20時間の日本語放送は維持されるものの、独自制作番組は昼間時間帯のニュース(1日3回)、海外安全情報、その他年数回の特集番組のみに規模を縮小し、残りの時間はすべて国内向けラジオ放送の同時・時差放送に充てられている。日本語放送の1日通算放送時間は2009年度には23時間40分に拡大し、2010年度には完全24時間化となったものの独自制作番組の縮小は変らない。現在は短波の放送のほか、放送衛星を使用したデジタルラジオ放送も行っている)。
しかし、こうした状況はあくまでも先進国のみでの話であり、現実にはアフリカやアジアの広範な地域において、ラジオが人々の唯一の情報源であることが珍しくはない。インターネットは言うに及ばず、テレビさえ視聴不可能な地域が未だに多く存在している。また、先進国も含めて、デジタルメディアはまだまだ地震や気象災害、また戦争や動乱による情報封鎖が行われた場合等では全く役に立たない[2]側面もあり、短波による国際放送は、将来も引続き重要な役割を果たすことになると考えられる。例えば湾岸戦争当時、ラジオ日本はイラクで敵国人として抑留された日本人向けに情報発信を続けた[3]。
日本語放送
日本語放送を行っている国・地域 (2010年11月現在)
- アルゼンチン(RAE)
- イラン(イラン・イスラム共和国放送)
- インドネシア(インドネシアの声)
- 韓国(KBSワールドラジオ)
- 韓国(HLAZ - FEBC)
- 北朝鮮(朝鮮の声放送)
- 中国(CRI中国国際放送)
- タイ(ラジオ・タイランド)
- 台湾(RTI台湾国際放送)
- ベトナム(ベトナムの声)
- モンゴル(モンゴルの声)
- ロシア(ロシアの声)
- ハワイ(KWHR)
- アメリカ合衆国(ファミリーラジオ)
- イギリス(Bible Voice Broadcasting)
- エクアドル→オーストラリア(HCJBアンデスの声)[4]
日本語放送を行っていた局 (過去)
- アフガニスタン(ラジオ・アフガニスタン)
- イギリス(BBC)
- イタリア(RAIインターナショナル)
- フランス(ラジオ・フランス・インターナショナル)
- ドイツ(ドイチェ・ヴェレ)
- ロシア(オウム真理教放送、極東ロシア独立放送)
- マルタ(VOM - 地中海の声)
- バチカン(バチカン放送)
- オーストラリア(ラジオ・オーストラリア)
- サイパン(スーパーロックKYOI、英語版)
- サイパン(FEBC-KFBS「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・ステーション」)
- パラオ(Voice of Hope)
- フィリピン(ラジオ・フィリピン)
- フィリピン(FEBCマニラコーリング)
- フィリピン(ラジオ・ベリタス・アジア)
- アメリカ合衆国(ボイス・オブ・アメリカ (VOA))
- アメリカ合衆国(FEBC-KGEI - 友情の声) ※FEBC-友情の声となる前、第二次世界大戦中にも日本語放送を実施し、文献には「サンフランシスコ放送」と記録されているが、実際の局名アナウンスは不明。
- アメリカ合衆国・アラスカ(KNLS-New Life Station)
- ニュージーランド(ラジオ・ニュージーランド・インターナショナル)
- スリランカ (スリランカ放送協会)
- カナダ (カナダ放送協会・ラジオ・カナダ・インターナショナル)スタート時はラジオNIKKEIで週1回番組提供。その後連日放送となる。
- 国際連合(国際連合放送)
- メキシコ(ラジオ・メキシコ)
- ポルトガル (IBRA)
- アメリカ(Voice of Joy)
- グアム(KATB)
- グアム(KTWR - 太平洋の声=トランス・ワールド・ラジオ)
- グアム(KSDA - 希望の声=アドベンチスト・ワールド・ラジオ)
第二次世界大戦中に実施していた局を除くと、多くは予算削減を理由に日本語放送を廃止している(放送への予算が減ると、一般的でない言語のプログラム、或いはいわゆる先進国向けの放送にしわ寄せが及ぶことが多い)。
国際放送を運営する放送局一覧 (日本語を含む全言語)
ラジオ
ヨーロッパ
南北アメリカ
- カナダに隣接するアメリカ地域向け
アジアおよび南アジア
オセアニア
国名 | 放送局名 | ウェブ |
---|---|---|
テンプレート:Flagicon オーストラリア | ラジオ・オーストラリア | [64] |
テンプレート:Flagicon ニュージーランド | ラジオ・ニュージーランド・インターナショナル | [65] |
アフリカ
国名 | 放送局名 | ウェブ |
---|---|---|
テンプレート:Flagicon モロッコ | MEDI 1 (ラジオ・地中海・インターナショナル) | [66] |
テンプレート:Flagicon チュニジア | ラジオ・チュニス | [67] |
テンプレート:Flagicon アルジェリア | ラジオ・アルジェリア | |
テンプレート:LBY | アフリカの声 | [68] |
テンプレート:Flagicon ナイジェリア | ナイジェリアの声 | [69] |
テンプレート:Flagicon 南アフリカ共和国 | チャンネル・アフリカ | [70] |
その他
- TV5MONDE: フランス、ベルギー、スイス、ケベック州(カナダ)の放送局が合同で設立した、フランス語圏を対象とした国際放送局。ニュースだけではなく、映画や文化面でのコンテンツの放送に力を入れている。
- France 24 [71]: フランスの国際ニュース専門チャンネル。「フランス的な価値観を世界に伝える」ためにフランス政府が画策した。インターネットからフランス語・英語・アラビア語の3チャンネルで放送されている。
- 国際連合放送:国際連合の運営する国際放送局。現在の活動や総会の議題を紹介する広報的色彩が強い。
関連項目
脚注
外部リンク
- ↑ 電波法施行規則第2条第1項第20号 「同報通信方式」とは、特定の二以上の受信設備に対し、同時に同一内容の通報の送信のみを行なう通信方式をいう。(送り仮名の表記は原文ママ)
- ↑ 情報通信主管庁がインターネット・エクスチェンジのネットワークケーブルを抜いたり、アクセス拒否措置を執ったりすれば万事休すとなる。
- ↑ 松田三郎『ラジオ・ジャパン発緊急報道 ~世界を駆ける“日本の声”』日本放送出版協会、2004年
- ↑ 2000年12月31日に一度エクアドル発の定期放送終了後、不定期の特別放送を経て2006年6月3日、オーストラリア(HCJBの自主運営による事実上の国外中継局)から送信することによって定期放送が復活した