山内昌之

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

山内 昌之(やまうち まさゆき、1947年8月30日 - ) は、日本の歴史学者。専攻は中東・イスラーム地域研究、および国際関係史。東京大学名誉教授明治大学特任教授。

経歴

北海道札幌市日本国有鉄道職員の家に生まれ、小樽市で育つ。北海道小樽潮陵高等学校卒業後、北海道大学に進学。在学中は社会主義学生同盟(共産主義者同盟の学生組織)で活動家。1971年卒業。1976年、同大学院文学研究科博士課程単位取得退学

1978年カイロ大学文学部客員助教授(-1980年)。1982年、東京大学教養学部助教授

1984年 『現代のイスラム』で発展途上国研究奨励賞。1987年、『スルタンガリエフの夢』でサントリー学芸賞1990年、『瀕死のリヴァイアサン』で毎日出版文化賞1991年、『ラディカル・ヒストリー』で吉野作造賞

1992年ハーバード大学客員研究員(-1993年)。1993年東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻教授(地中海・イスラム地域文化大講座イスラム比較論専攻)。同1993年、東京大学から博士(学術)の学位取得。博士論文は「The Green Crescent under the Red Star: Enver Pasha in Soviet Russia 1919~1922(エンヴェル・パシャとソビエト・ロシア) 」 。

政府機関での委員も多数務め(後述)、2001年から2002年にかけて外交問題に関する小泉純一郎首相の私的諮問機関「対外関係タスクフォース」委員。2002年、一連の業績に対して司馬遼太郎賞。同年、共編著『岩波イスラーム辞典』で毎日出版文化賞

2003年から2005年までは、三回の日本政府中東文化ミッション団長として中東各国を訪問。2006年には紫綬褒章受賞。2007年には内閣官房「美しい国づくり」企画会議座長代理。

2012年 東大を定年退任、同名誉教授。明治大学研究・知財戦略機構国際総合研究所(MIGA)特任教授就任。読売新聞調査研究本部客員研究員、三菱商事顧問、フジテレビジョン特任顧問、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)講師。

内閣官房外務省等の審議会や研究会の委員を委託され、現実の政策立案にも参加している。内閣官房では、安心社会実現会議委員、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会委員。文部科学省では文化審議会委員、中央教育審議会社会科専門部会委員、文化庁「文化発信戦略に関する懇談会」座長、「教育再生実行会議」委員(2013年1月〜)。外務省では外務人事審議会委員、「日本アラブ対話フォーラム」委員。経済産業省では総合資源エネルギー調査会委員を務める。このほか「日中歴史共同研究委員会」委員、「日韓歴史共同研究委員会」委員、中東調査会常任理事、日本学術会議連携会員、日本経団連アカデミック・アドバイザー、トヨタ財団理事、日本ユネスコ国内委員会、日加フォーラムなどの委員も務めた。

文化芸術などにも造詣が深く、各雑誌・新聞などでの書評執筆や読売新聞「地球を読む」のコラムニストなどとして多彩な言論活動を展開している。『嫉妬の世界史』は安倍晋三が総理就任前に読んだ本として紹介されている。

2013年1月、教育再生実行会議 委員。現在、 日本国際フォーラム参与[1]

著作

単著

  • 『現代のイスラム――宗教と権力』(朝日新聞社朝日選書], 1983年) 
  • オスマン帝国エジプト――1866-67年 クレタ出兵の政治史的研究』(東京大学出版会, 1984年)
  • 『スルタンガリエフの夢――イスラム世界とロシア革命』(東京大学出版会, 1986年/岩波現代文庫, 2009年)
  • 『神軍緑軍赤軍――ソ連社会主義とイスラム』(筑摩書房, 1988年/ちくま学芸文庫, 1996年)
  • 『瀕死のリヴァイアサン――ペレストロイカと民族問題』(TBSブリタニカ, 1990年)
    • 改題 『瀕死のリヴァイアサン――ロシアのイスラムと民族問題』(講談社学術文庫, 1995年)
  • 『ラディカル・ヒストリー――ロシア史とイスラム史のフロンティア』(中公新書, 1991年)
  • 『ソ連・中東の民族問題――新しいナショナリズムの時代』(日本経済新聞社, 1991年)
    • 改題 『民族問題入門』 (中公文庫, 1996年)
  • 『イスラムのペレストロイカ』(中央公論社[中公叢書], 1992年)
  • 『新・ナショナリズムの世紀――分裂する国家と民族の行方を探る』(PHP研究所, 1992年)
  • 『民族と国家――イスラム史の視角から』(岩波新書, 1993年)
  • 『世紀末のモザイク――民族から読みなおす世界史』(毎日新聞社, 1994年)
  • 『民族の時代――混沌と共生の21世紀』(PHP研究所, 1994年)
  • 『イスラムとアメリカ』(岩波書店, 1995年/中公文庫, 1998年)
  • 歴史家の本棚』(みすず書房, 1995年) 書評集
  • 『イスラムとロシア――その後のスルタンガリエフ』(東京大学出版会, 1995年)
  • 『近代イスラームの挑戦 世界の歴史20』(中央公論社, 1996年/中公文庫, 2008年)
  • 『帝国の終末論――文明と衝突のパラダイム』(新潮社, 1996年)
  • 『「反」読書法』(講談社現代新書, 1997年) 
  • 『イスラームと国際政治――歴史から読む』(岩波新書, 1998年)
  • 『歴史家の一冊』(朝日新聞社[朝日選書], 1998年) 書評集
  • 『20世紀のプリズム』(角川書店, 1999年)
  • 『イスラームと世界史』(ちくま新書, 1999年)
  • 『納得しなかった男――エンヴェル・パシャ中東から中央アジアへ』(岩波書店, 1999年)
  • 文明の衝突から対話へ』(岩波現代文庫, 2000年)
  • 『イスラームと日本政治』(中央公論新社[中公叢書], 2000年)
  • 『歴史という名の書物』(新潮社, 2001年) 書評集
  • 『歴史の想像力』(岩波現代文庫, 2001年)
  • 『政治家とリーダーシップ――ポピュリズムを超えて』(岩波書店, 2001年/岩波現代文庫, 2008年)
  • 『文明論としてのイスラーム』(角川書店[角川選書], 2002年)
  • 『戦争と外交――イラク・アメリカ・日本』(ダイヤモンド社, 2003年)
  • 『歴史の作法――人間・社会・国家』(文春新書, 2003年)
  • 『帝国と国民』(岩波書店, 2004年)
    • 改題改訂版 『帝国とナショナリズム』(岩波現代文庫, 2012年)
  • 『歴史のなかのイラク戦争――外交と国際協力』(NTT出版, 2004年)
  • 『嫉妬の世界史』(新潮新書, 2004年)
  • 『歴史家の書見台』(みすず書房, 2005年) 書評集
  • 『鬼平とキケロと司馬遷と――歴史と文学の間』(岩波書店, 2005年)
  • 『歴史と政治の間』(岩波現代文庫[2], 2006年)
  • 『歴史と外交』(中央公論新社[中公叢書], 2007年)
  • 『歴史学の名著30』(ちくま新書, 2007年)
  • 『帝国のシルクロード 新しい世界史のために』(朝日新書, 2008年)
  • 『歴史のなかの未来』(新潮選書, 2008年) 書評集
  • 『時代の風を読む』(潮出版社, 2009年)
  • 幕末維新に学ぶ現在』(中央公論新社, 2010年)
  • 『歴史家の羅針盤』(みすず書房, 2011年) 書評集
  • 幕末維新に学ぶ現在 2』(中央公論新社, 2011年)
  • 『リーダーシップ 胆力と大局観』(新潮新書, 2011年)  
  • 『中東新秩序の形成 「アラブの春」を超えて』(NHK出版[NHKブックス], 2012年) 
  • 『世界史 歴史を見る眼を養う』(朝日新聞出版, 2012年) 
  • 『幕末維新に学ぶ現在 3』(中央公論新社, 2012年)
  • 『歴史という武器』(文藝春秋, 2013年)
  • 『中東国際関係史研究 トルコ革命とソビエト・ロシア 1918-1923』(岩波書店, 2013年)

対話集

  • 蓮實重彦)『われわれはどんな時代を生きているか』(講談社現代新書, 1998年)
  • (蓮實重彦)『20世紀との訣別――歴史を読む』(岩波書店, 1999年) 
  • 中村彰彦)『江戸の構造改革』(集英社、2004年) 
    • 改題 『黒船以前 パックス・トクガワーナの時代』(中公文庫、2008年)
  • (中村彰彦)『黒船以降』(集英社、2006年) 
    • 改題 『黒船以降 政治家と官僚の条件』(中公文庫、2009年)
  • (中村彰彦)『名将と参謀 時代を作った男たち』(中央公論新社、2010年/中公文庫, 2013年)

討論:論文

編著

  • 『21世紀の民族と国家――新しい地域像を探る』(日本経済新聞社, 1993年)
  • 『中央アジアと湾岸諸国』(朝日新聞社[朝日選書], 1995年)
  • 『ベーシック世界の民族/宗教地図』(日本経済新聞社[日経ビジネス文庫], 1996年)
  • 『「イスラム原理主義」とは何か』(岩波書店, 1996年)
  • 『史料 スルタンガリエフの夢と現実』(東京大学出版会, 1998年)

共編

  • (民族問題研究会)『入門・世界の民族問題』(日本経済新聞社, 1991年)
  • 長崎暢子)『現代アジア論の名著』(中央公論社[中公新書], 1992年)
  • 大塚和夫)『イスラームを学ぶ人のために』(世界思想社, 1993年)
  • (蓮實重彦)『いま、なぜ民族か』(東京大学出版会[UP選書], 1994年)
  • 蓮實重彦)『文明の衝突か、共存か』(東京大学出版会[UP選書], 1995年)
  • 原暉之)『講座スラブの世界(2)スラブの民族』(弘文堂, 1995年)
  • (蓮実重彦)『地中海終末論の誘惑』(東京大学出版会[UP選書], 1996年)
  • 増田一夫村田雄二郎)『帝国とは何か』(岩波書店, 1997年)
  • 義江彰夫本村凌二)『歴史の文法』(東京大学出版会, 1997年)
  • (義江彰夫・本村凌二)『歴史の対位法』(東京大学出版会, 1998年)
  • 古田元夫)『日本イメージの交錯――アジア太平洋のトポス』(東京大学出版会[UP選書], 1997年)
  • (大塚和夫・小杉泰小松久男東長靖羽田正)『岩波イスラーム辞典』(岩波書店, 2002年)
  • 後藤明)『イスラームとは何か』(新書館, 2003年)
  • 猪口孝田中明彦恒川惠市薬師寺泰蔵)『国際政治事典』(弘文堂, 2005年)

親族

一橋大学学長・法制史学者の山内進は弟。大学院の時に結婚した妻・靖子は、2008年9月にくも膜下出血で急死している。2012年に東京大学退職後、三井理恵と結婚した。

脚注

  1. テンプレート:Cite web
  2. 寺島実郎杉山正明杉田英明宮尾登美子との対談も収録。

関連項目

テンプレート:日本国際フォーラム