名取市
テンプレート:Infobox 名取市(なとりし)は、宮城県の中央南部の太平洋沿岸に位置する都市である。仙台市の南東に隣接しており、市内には仙台空港がある。
目次
地理
宮城県の南部に位置し、太平洋に面する。市の西部は陸前丘陵の一部を成す高舘丘陵、東部は仙台平野(名取平野)である。北に接する仙台市との境に名取川が流れ、河口部に閖上港がある。また、東北自動車道、国道4号線、東北新幹線、東北本線が縦貫している。市の中心部は愛島丘陵北側の名取駅周辺に広がる。
名取市北部の下余田字原田が、仙台市太白区内に浮かぶ飛び地のように存在しているが、太白区袋原字定野を突っ切って名取市・原田地区に至る名取市道門ノ目線(北端で仙台市道定野街道線[1]と接続)が幅員数m、長さ280mの細長い名取市域として接続しているため、原田地区は飛び地とはなっていない。
西が高く東が低い地勢にそって、市内の河川は西から東に下る。奥羽山脈から流れるのは名取川だけで、あとは丘陵に源を持つ小河川である。増田川と川内沢川は名取市内から、志賀沢川は岩沼市内の丘陵から流れ出る。平野部にはこれら河川から水を引いた水路が縦横に巡らされ、海岸線に沿って掘削された貞山堀に流れこむ。
歴史
当市から仙台市南部にかけては、4世紀後半の古墳時代前期から多数の古墳が造営された。中でも最大のものが愛島丘陵東端に築かれた東北地方最大の雷神山古墳である。大型前方後円墳はこれ一つだが、多数の中小古墳が作られ、7-8世紀の横穴墓に続いた。
名取に国造は置かれなかったようだが、評(後の郡)は7世紀から建てられたと推定される。名取郡は現在の仙台市南部と当市・岩沼市にまたがり、文献史料に名取郡とだけあるものから場所を現在の名取市域に絞り込めることはあまりない。
平安時代に高舘丘陵北東麓に紀伊国の熊野神社の本宮・新宮・那智社が勧請され、名取熊野三山を形成した。熊野社の分社は多いが、三社を合祀せず別々に設けて三山を引き写したのは全国的にみても珍しい[2]。名取の熊野別当は奥州合戦で敗れた藤原氏にくみしたが、降って赦された。
中世の名取郡は細分され、郡全体を支配する荘園も武士も生まれなかった。戦国時代には14世紀後半に相馬氏の影響が及び、15世紀には伊達氏の覇権に服し、最終的に伊達領に組み込まれた。以後、近世を通じて仙台藩に属した。仙台藩は新しく奥州街道を開き、増田宿を置いた。仙台藩は陸奥国領内を南・北・中奥・奥の4つに分割して各々郡奉行を置き、その下を19の代官区に細分して支配したが、後に名取市にまとまる地域、すなわち増田村など22の村と1つの浜(閖上浜)は、全域が南郡奉行の下に置かれ、高柳村・大曲村・牛野村・小塚原村・閖上浜の4村1浜(明治以降に東多賀村→閖上町)が名取郡北方の長町代官所に、残りの18村が名取郡南方の増田代官所に統治された[3]。増田には三と七がつく日に市が立った[4]。
高 舘 丘 陵 |
高舘村 (431戸) |
増田町 (580戸) |
東多賀村 (570戸) |
仙 台 湾 |
愛島村 (373戸) |
館腰村 (461戸) |
下増田村 (277戸) |
明治時代に入ると、藩政時代の村を基本単位として数か村を様々な組み合わせでまとめて行政単位が置かれた。後の名取市やその前身となる町村の境界をまたぐ形で区画されたことも多く、後に名取市となる区域が意識されることはなかった。
旧・奥州街道沿いに敷設された「日本鉄道」(現・JR東北本線)が1887年(明治20年)に仙台区(現・仙台市)の仙台駅を経て塩竈(現・塩竈市)の塩竈駅(後の塩釜埠頭駅)まで開通すると翌年、増田にも増田駅(後の名取駅)が置かれた。
1889年(明治22年)の町村制施行で、現・名取市の市域には高舘丘陵東麓の高舘村と愛島村、現・東北線沿いの増田村と館腰村、沿岸の東多賀村と下増田村の合計6ヶ村が生まれた。当地で人口が多かったのは、旧・増田宿を中心とする増田村と、閖上浜を中心とする東多賀村だった。1926年(大正15年)には増田村と東多賀村とを結ぶ軽便鉄道「増東軌道」が開通するが、バスとの競合により10年余りで廃止された。
高 舘 丘 陵 |
高舘村 (4,673人) |
増田町 (6,519人) |
閖上町 (9,325人) |
仙 台 湾 |
愛島村 (4,029人) |
館腰村 (4,648人) |
下増田村 (3,049人) |
1953年(昭和28年)制定の町村合併促進法を受け当地でも昭和の大合併の動きが生まれたが、増田町以外は仙台市との合併に傾きがちとなっていたところ、宮城県の働きかけによって6町村での合併となり、1955年(昭和30年)に名取町が成立した[5]。港町の閖上は、合併時の人口が9325人で、6519人の増田より多かったが[6]、町役場は増田町のものを継承し、3年後に市になったとき増田に市役所を新築した[7]。
1964年(昭和39年)、仙台湾地区が新産業都市に指定されたため、根拠法である新産業都市建設促進法の第23条に基いて、当市や仙台市を含む8市町村での「仙塩合併」が議論されたが不調に終わった。
当市は仙台市のベッドタウンとしての機能も持っているが、宅地開発は1980年代後半から大規模に始まった[8]。宅地開発はそれまで市内では人口が少なかった地域で行われ、20世紀中は旧・高舘村や旧・愛島村の村域だった西部の丘陵地帯(高館丘陵および愛島丘陵)、21世紀になってからは旧・下増田村の仙台空港鉄道仙台空港線沿線で活発となっている。
- 高館丘陵・愛島丘陵
- 仙台空港鉄道仙台空港線沿線
- 旧・下増田村 : 杜せきのした・美田園(以上2004年)
高 舘 丘 陵 |
旧・高舘村 (18,539人) |
旧・増田町 (24,121人) |
旧・閖上町 (テンプレート:07,105人) |
仙 台 湾 |
旧・愛島村 (10,864人) |
旧・館腰村 (テンプレート:07,627人) |
旧・下増田村 (テンプレート:04,490人) |
1989年(平成元年)、仙台市が泉市等を合併して政令指定都市に移行し、1990年(平成2年)に仙台空港初の国際定期便が就航すると、仙台空港の滑走路延長や仙台空港アクセス鉄道の整備促進などを理由に、1991年(平成3年)12月24日に県選出の国会議員から当市と仙台市との合併を促す発言があった[10]。また、仙台東部道路や県道仙台館腰線の開通を控えた1994年(平成6年)2月27日、当市の住民有志が「仙台名取合併推進協議会」を設立したことで再び当市と仙台市との合併論議が沸き起こった[10]。このとき、旧住民が多い旧・増田町や旧・閖上町と、宅地開発で新住民が急増していた西部の旧・高舘村や旧・愛島村という対立軸が形成された。しかし、1996年(平成8年)7月14日の名取市長選挙で合併反対派の現職候補が勝利し、合併論議は収束した[10]。
2011年(平成23年)3月11日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、旧・閖上町の中心部や旧・下増田村の沿岸地域が津波の被害を受けて、多数の犠牲者を出した。
年表
- 1869年1月19日(明治元年12月7日) - 陸奥国分割により陸前国に属す。
- 1888年(明治21年)10月11日 - 日本鉄道(現・JR東北本線)に増田駅(後の名取駅)が開業。
- 1889年(明治22年)4月1日 - 町村制施行に伴い、名取郡に増田、東多賀、下増田、館腰、愛島、高舘の6村が置かれる。
- 1896年(明治29年)6月30日 - 増田村が町制施行して増田町となる。
- 1926年(大正15年)11月21日 - 増田と閖上を結ぶ増東軌道が開業。
- 1928年(昭和3年)4月1日 - 東多賀村が町制施行して閖上町となる。
- 1929年(昭和4年) - 閖上町に閖上港開設
- 1939年(昭和14年)9月19日 - 増東軌道が廃止となる。
- 1940年(昭和15年) - 下増田村に日本陸軍の空港「名取飛行場」(後の「仙台飛行場」「仙台空港」)が開港。
- 1955年(昭和30年)4月1日 - 増田町、閖上町、下増田村、館腰村、愛島村、高舘村の2町4村が合併し、名取町となる。
- 1957年(昭和32年)4月22日 - 仙台飛行場に初の定期便が就航。
- 1958年(昭和33年)10月1日 - 名取町が市制施行して名取市になる。
- 1959年(昭和34年)10月1日 - 市章を制定する[11]。
- 1964年(昭和39年)3月 - 仙台飛行場が「仙台空港」に改称。
- 1964年(昭和39年)度 - 国道4号仙台バイパスの市内区間が開通。
- 1972年(昭和47年)- 県道塩釜亘理線(浜街道)の閖上大橋が開通。
- 1985年(昭和60年)4月22日 - 東北本線に市内2番目の駅である館腰駅が開業。
- 1994年(平成6年)3月30日 - 仙台東部道路が開通し、市内に名取ICと仙台空港ICが新設される。
- 1994年(平成6年) - 県道仙台館腰線の太白大橋が開通。
- 2007年(平成19年)3月18日 - 全線が市内を走る仙台空港鉄道仙台空港線が開業し、3駅が新設される。仙台空港アクセス線が運行開始。
- 2011年(平成23年)3月11日 - 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により被災
- Damage of Tsunami in Natori.JPEG
発生約1ヶ月後でも水が引かない水田(2011年4月6日)
- Signpost of prayer and wish.JPG
閖上地区にある日和山(標高6.3m)から見た被災地(2011年4月6日)
行政
歴代町長および市長
- 歴代町長
代 氏名 就任 退任 備考 鹿又峯治 昭和30年(1955年)4月1日 昭和30年(1955年)4月30日 元・増田町長。職務代執行者 1 高橋秀松 昭和30年(1955年)5月1日 昭和33年(1958年)9月30日
- 歴代市長
代 氏名 就任 退任 備考 1〜2 高橋秀松 昭和33年(1958年)10月1日 昭和38年(1963年)5月16日 町長より留任 3〜6 荘司庄九郎 昭和38年(1963年)5月17日 昭和51年(1976年) 7 大友安治 昭和51年(1976年)7月 昭和55年(1980年)7月 8〜13 石川次夫 昭和55年(1980年)7月 平成16年(2004年)7月 14〜16 佐々木一十郎
(ささきいそお)平成16年(2004年)7月25日 現職
経済
産業
姉妹都市・提携都市
- テンプレート:Flagicon 上山市(山形県):1978年(昭和53年)5月10日盟約。上山市は名取市と同じ北緯38度線上に位置する。
- テンプレート:Flagicon 新宮市(和歌山県):2008年(平成20年)10月8日盟約。
- テンプレート:Flagicon グアララッペス市(ブラジル連邦共和国):1979年(昭和54年)3月31日盟約。
市内にある金融機関
- 七十七銀行(指定金融機関)…2013年5月時点で、東日本大震災に伴い、閖上支店が、杜せきのした支店内にブランチインブランチとなっているため、実態店舗は、現在1店舗閉鎖状態となっている。本来は、市内に5店舗擁している(よって、4店舗が実態として稼働)。
- 仙台銀行名取支店・名取支店名取ヶ丘出張所
- 荘内銀行名取エアリ支店
- 岩手銀行美田園支店
- 東邦銀行名取支店
- 宮城第一信用金庫名取支店
- 仙南信用金庫名取支店
- 名取岩沼農業協同組合…2012年6月現在、本店を含め、名取市内に6店舗所在。
地域
人口
隣接する自治体・行政区
健康
- 平均年齢
- 41.1歳(2005年国勢調査のデータによる)
- 病院
- 宮城県立精神医療センター
- 宮城県立がんセンター
教育・文化
- 教育施設
- 文化施設
- 図書館
- 文化会館
- 大中小の各ホールと練習室、楽屋、展示ギャラリー等をそなえた文化施設。プロの演奏会、演劇をはじめ、アマチュア演奏家の発表会や地元の学校の卒業式等、様々な用途に使われている。
- 体育施設
- 市民体育館
- 名取市サイクルスポーツセンター
- 閖上海浜プール
- 十三塚公園(市民球場、陸上競技場)
- 青少年教育団体
- ボーイスカウト名取第1団
- 名取市はボーイスカウト活動が活発で、宮城県で最大の団である。
- ボーイスカウト名取第1団
学校一覧
大学
- 私立 尚絅学院大学
高等専門学校
- 国立 仙台高等専門学校名取キャンパス(旧・宮城工業高等専門学校)
専修学校
高等学校
中学校
小学校
- 名取市立増田小学校
- 名取市立閖上小学校
- 名取市立下増田(しもますだ)小学校
- 名取市立館腰(たてこし)小学校
- 名取市立愛島(めでしま)小学校
- 名取市立高舘(たかだて)小学校
- 名取市立不二が丘(ふじがおか)小学校
- 名取市立増田西小学校
- 名取市立ゆりが丘小学校
- 名取市立相互台小学校
- 名取市立那智が丘小学校 (学力向上フロンティア指定校[12])
特別支援学校
- 宮城県立名取支援学校(知的障害を対象)…仙台市の太白区全域と若林区の一部も本校の学区となっている。
郵便
郵便番号は大半の地域で981-12xxであるが、仙台空港関係施設(下増田字南原)および南部の本郷、堀内地区は岩沼郵便局が担当することを示す989-24xxである。
- 名取郵便局(集配局)
交通
空港
鉄道路線
路線バス
道路
中世までの街道は、丘陵寄りで仙台平野の縁を通っていた。おおよそ現在の宮城県道39号仙台岩沼線にあたる道である。江戸時代に奥州街道が設定されたとき、平野を南北にまっすぐ縦貫する道が開かれた。現在の国道4号(陸羽街道)で、街道に置かれた増田宿は現在の市街中心部にあたる。
- 高速道路
- 一般国道
- 都道府県道
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
- 実方中将の墓(さねかたちゅうじょうのはか)
- ゆりあげ港朝市(ゆりあげみなとあさいち)
- 毎週日曜・祝日に閖上港近くで行なわれる朝市。閖上港で水揚げされた新鮮な魚介類が豊富。
- ゆりあげビーチ
- 東北電力名取スポーツパーク
- 貞山運河(ていざんうんが)
- あんどん松
- 名取川の堤防に沿った松並木。樹齢は300年を超えており、伊達政宗が植えたものであるといわれる。
- 名取夏まつり
- 毎年8月上旬に催される。名取川河口での花火大会など。
- サッポロビールまつり
文化財
名取市は文化財が豊富である。国および宮城県指定の文化財は以下のとおり。
- 雷神山古墳(らいじんやまこふん)
- 飯野坂古墳群
- 国の記念物(史跡)に指定。前方後方墳5基と方墳2基からなる。
- 旧中澤家住宅
- 国の重要文化財に指定。江戸時代の農家。十三塚公園に移築されている。
- 洞口家住宅
- 国の重要文化財に指定。江戸時代の農家。農家レストランとして利用されている。
- 熊野那智神社
- 熊野新宮寺
- 所蔵の一切経(2,568巻)が国の重要文化財に指定。
- 熊野神社
- 道祖神神楽
- 県指定の無形民俗文化財。
名産・特産品、お土産
出身有名人
- 相澤一成 - 俳優
- 吉川団十郎 - シンガーソングライター、陶芸家、ラジオパーソナリティ
- 星孝典 - 野球選手
- 佐々木主浩 - 野球解説者、元野球選手
- 柩 - ミュージシャン(ナイトメア)
- 伊藤真一 - レーシングライダー
- 葛岡碧 - モデル
- 姫宮なぎさ - タレント
- 真山明大 - 俳優
- 橋浦方人 - 映画監督
- 荒川秀之助 - 元 競輪選手
- 柚木亜里紗 - 女優、ローカルタレント
電話番号
名取市で利用されている市内局番は次のとおり。
- 増田収容局…381-1〜3、382〜384、784
- 閖上収容局…381-9、385-2
- 高舘第2収容局…381-6、386
- 岩沼桜収容局…(0223)22〜25(岩沼MA)
- ひかり電話(仙台MA)…仙台市と同一
- ひかり電話(岩沼MA)…(0223)36
岩沼MAは、市南端の堀内地区などが該当する。
脚注
参考文献
- 名取市史編纂委員会『名取市史』、宮城県名取市、1977年。
外部リンク
テンプレート:Navbox- ↑ 仙台市道太白922号・定野街道線
- ↑ 『名取市史』145頁。
- ↑ 『名取市史』775頁。
- ↑ 『名取市史』297頁。
- ↑ 『名取市史』389-391頁
- ↑ 『名取市史』379-381頁。
- ↑ 『名取市史』396頁。
- ↑ 名取の宅地開発(名取市)
- ↑ 名取市統計書(名取市)
- ↑ 10.0 10.1 10.2 テンプレート:PDFlink(宮城県)
- ↑ 図典 日本の市町村章 p37
- ↑ 学力向上フロンティアスクール一覧 【宮城県:38校】 - 文部科学省
- ↑ 東北本線名取駅から分岐する仙台空港線(仙台空港アクセス線)が2007年(平成19年)3月18日開業した。これにより、仙台空港 - 仙台駅間が、最速で17分で移動する事が可能になり利便性が格段に向上した。以前は、仙台駅まで直通バスで約40分かかり、更には交通渋滞等の影響を受けやすいため、鉄道開通を懇願していた経緯がある。
- ↑ 施設閉鎖について(東北電力名取スポーツパーク公式)