クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
テンプレート:Infobox Film 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(クレヨンしんちゃん あらしをよぶ モーレツ オトナていこくのぎゃくしゅう)は、2001年4月21日に公開された『クレヨンしんちゃん』の劇場映画シリーズの9作目。上映時間は89分。興行収入は約15億円。キャッチコピーは『未来はオラが守るゾ』。
概要
- 第三十三回星雲賞メディア部門参考候補作選出。
- 第23回ヨコハマ映画祭日本映画ベストテン第8位。
- キネマ旬報オールタイムベスト・テン アニメーション部門7位。
- 日本のメディア芸術100選アニメ部門選出。
- 日本オタク大賞2001オタク大賞受賞。
- 雑誌『映画秘宝』が毎年選定している映画ベスト10において、2001年度にアニメーション枠ではなくすべての洋・邦画を含めた中で初めて1位に輝いた邦画である。同誌ベスト10で1位に選出された邦画は、2013年現在、本作以外存在しない。
エンディング曲に前作と同様、小林幸子(『元気でいてね』)を起用。また、対決の舞台が大阪万博・大人たちの子供時代となっているためか‘60〜‘70年代のフォークソングが挿入歌として多数使用されており、より風情を醸し出している(主題歌欄参照)。
作品中には、トヨタ・2000GT、トヨタ・コロナ(3代目。1600GT?)、マツダ・コスモスポーツ、スバル・360、日産・スカイライン(C110型、通称・ケンメリ)などの名車が(特に2000GTは実車名で)多く登場する。また、随所に洋画『ガントレット』『ブルースブラザース』や『ルパン三世 カリオストロの城』(スバル360が閉まった鉄の扉にぶつかって山積みになるシーン、追っ手がとんでもなく沢山いるという設定)のカーチェイスシーンがオマージュされている。
冒頭に登場する特撮ドラマ『ヒーローSUN』は『ウルトラマン』、バックルから光線を放つスタイルは『ウルトラマン80』のバックルビーム、敵である怪獣はゴモラがそれぞれ元ネタである。敵のケンやチャコも『銀河鉄道999』や『ハレンチ学園』がモチーフになったデザインである[1]。また、本作のタイトルは『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のもじりである。また、ひろしがしんのすけに対し「国会で青島幸男が決めたのか?」と言ったり、ひろし、みさえがシェーをするなど、赤塚不二夫作品の代名詞とも言えるものも目立つ。
ラストにしんのすけが必死に階段を駆け上がるシーンがあるが、これはテレビ朝日の太田賢司プロデューサーの「敵とは戦わずに、しんちゃんが階段を駆け上がるみたいなのが良いのでは」とのアイディアを取り入れたものである。原は「テレビ局の方がそういった冒険的な判断をしてくれてうれしかった。そしてあのシーンは音楽の面の功績も非常に大きい」と感謝の旨を発言している。
しんのすけ役の矢島晶子は2005年の原恵一との対談で本作を劇場版の中で「一番好き」であると断言しており、本作および次回作である『戦国大合戦』の2作は別格で、「これからどうなるかわからないですけど、今のところ、あの2本を超えるのはかなり難しいだろうと思う」と語っている[2]。
ゲストとして小堺一機と関根勤が1シーン出演し、本人役で持ちネタを披露している。この出演は、関根が娘・関根麻里と一緒に映画版を見に行くほどのファンであったことと、原作者の臼井儀人がTBSラジオ『コサキンDEワァオ!』のヘビーリスナーであったことが縁である。また、原作者の番組出演の際、撮影に使われたセル画が送られている。ちなみに本作品がセル画を使用したクレヨンしんちゃんの映画においては最後の作品となっている。
本作のDVDのCMには俳優の阿部寛が起用され、大人の鑑賞にも堪え得る感動作であることを強調した。
本作はクレヨンしんちゃん15周年記念事業の一環として2006年9月29日にテレビでも放送されている。2009年12月18日にも来年度映画の宣伝として放映されている。また、NHKのBSアニメ夜話第3弾(2005年3月29日放送分)では本作が取り上げられた。
クレヨンしんちゃんの劇場版としては最後の非デジタル彩色作品でもある。
テレビシリーズで本作の原型となった回があり、(懐かしのアトラクションが出来て、みんなで行くという話)原は、『これだけで満足すると思ったら、中途半端に、自分の中に火がついてしまって、我慢できずに映画のネタにまでしてしまった。』[3]。と語っている。また、その回のタイトルを忘れてしまったうえ、未ソフト化である為、『誰か録画していたら僕に観せて欲しい』とも。
あらすじ
昔懐かしいテレビ番組や映画、暮らし等が再現された「20世紀博」というテーマパークが日本各地で開催されていた。毎日付き合わされていい加減辟易しているしんのすけら子供達を尻目に、ひろしやみさえら大人達は、懐かしさに触れて20世紀博を満喫する。街中でも旧車やレコード、白黒テレビといった古いものが売れるようになり、帰宅しても大人達は昔の懐かしい特撮番組やアニメ番組のビデオに取り憑かれたかのように夢中になる。ある晩、テレビで『20世紀博』から「明日、お迎えにあがります」という放送があり、これを見た大人達は突然人が変わったようになり、すぐさま眠りについてしまった。
翌朝、町中の大人達に異変が起こっていた。大人達は家事や仕事も忘れて遊びほうけ、子供達を無視していたのだ。しんのすけは困惑しながらも幼稚園に行くが、よしなが先生を初めとする幼稚園の先生たちも様子がおかしくなっており、しかも先生達はしんのすけの事を忘れてしんのすけのことを「しんたろう」と呼んでしんのすけは仲間外れにされてしまう。そしてしばらくすると、街中に沢山のオート三輪(ダイハツ・ミゼット、ダイハツ・CO型)が「証城寺の狸囃子」の曲を流しながら現れた。それを見聞きした大人達(紅さそり隊ら高校生含む)は皆それに乗り込み、子供達を置き去りにしてどこかへ走り去ってしまう。
これは“ケンちゃんチャコちゃん”をリーダーとする秘密結社「イエスタデイ・ワンスモア」[4]による、大人を子供に戻して「古き良き昭和」を再現し、未来を放棄するという、恐るべき“オトナ帝国”化計画の始まりだった。
大人達は『20世紀博』のタワーから発せられる「懐かしいにおい」の虜になってしまったのだった。この「懐かしいにおい」とは、昔を知らない今の子供達には通用しないものであった。そして“オトナ帝国”化計画の矛先は、置き去りにされた子供たちにも向けられた。その日の夜、子供たちに投降を促すケンのメッセージがラジオから流れる。20世紀博からの迎えの車に乗れば親に会わせてやるが、来なかった子供は反乱分子とみなし、翌朝八時に一斉に捕えるという。だが親に会わせるというのは嘘で、実際には子供を隔離して「再教育」を施し、大人と同じように洗脳してしまおうとしていたのだ。
食べる物に困ったしんのすけ達かすかべ防衛隊はとりあえずサトーココノカドー(デパート)で夜を明かすことになったが、しんのすけが目覚しを八時に設定してしまったために逃げる時間をなくしてしまい、子供達を捕まえに来たイエスタデイ・ワンスモアの隊員や洗脳されたひろし達に見つかり追われる事になってしまう。しかし何とか逃げ延び、駐車場で幼稚園バスを見つけたかすかべ防衛隊はバスを運転してサトーココノカドーを脱出する。逃げる先に20世紀博会場があることに気付いたかすかべ防衛隊は各々の両親に会おうと20世紀博に乗り込む。
はたしてしんのすけ達は親たちを、そして未来を取り戻すことができるだろうか・・・
ゲストキャラクター
『クレヨンしんちゃん』のレギュラーメンバーについては割愛する。
クレヨンしんちゃんの登場人物一覧および個別記事を参照されたい。
- ケン
- イエスタディ・ワンスモアのリーダー。紅茶を愛飲し、愛車トヨタ・2000GTを「俺の魂」と呼ぶ。
- 「汚い金」や「燃えないゴミ」ばかりがあふれる21世紀の日本を憂いており、まだ人々が「心」を持って生きていた20世紀への逆戻りを企てる。大人達の懐古心を原動力とした計画の最終段階において、しんのすけの「大人になりたい」という言葉が締め括りとなった野原一家の奮闘を視聴した大人達の懐古心の収まりにより計画を進めることができなくなり、「未来を返す」と敗北を認めた後、大人達を解放する。解放後、タワーの大展望台の屋上からチャコと共に飛び降り自殺を図ったが、しんのすけの叫びと偶然足元に位置していた巣を守ろうとした鳩の抵抗で機を逸してしまう。そしてチャコを労わりつつ何処かへ去っていった。
- チャコ
- ケンの恋人。ケンに共感している。感情が乏しい女性だが、物語の終盤ひろしにスカートを覗かれた際(ちなみにパンツの色は白)には僅かな間ながら怒りを表し、さらには計画断念後に飛び降りの機を逸した際に「死にたくない」と本心を発露した。野原家男性共に認めるイイ女。
放映以降、この両名の消息は不明だがTVアニメにおける12番目のエンディングテーマ『全体的に大好きです。』のイラストには過去の映画に登場したキャラクターたちが存在し、町はずれのアパートに二人で暮らしている様子が描かれている。
キャスト
- 野原しんのすけ - 矢島晶子
- 野原みさえ - ならはしみき
- 野原ひろし - 藤原啓治
- 野原ひまわり - こおろぎさとみ
- シロ 風間くん - 真柴摩利
- ネネちゃん - 林玉緒
- マサオくん - 一龍斎貞友
- ボーちゃん - 佐藤智恵
- よしなが先生 - 高田由美
- まつざか先生 - 富沢美智恵
- 上尾先生 - 三石琴乃
- 園長先生 - 納谷六朗
- 副園長先生 - 滝沢ロコ
- かすかべ書店店長 - 京田尚子
- 中村 - 稀代桜子
- 隣のおばさん - 鈴木れい子
- 風間ママ - 玉川紗己子
- ネネママ - 萩森侚子
- マサオママ - 大塚智子
- 子供時代のひろし - 三田ゆう子
- 野原銀之助 - 松尾銀三
- 野原つる - 北川智絵
- 団羅座也 - 茶風林
- ヒーローSUN - 神奈延年
- 怪獣役者 - 江川央生
- ケン(イエスタディ・ワンスモア) - 津嘉山正種
- チャコ - 小林愛
- 酒屋 - 岡野浩介
- 肉屋 - 大西健晴
- 蕎麦屋 - 鈴村健一
- 魚屋 - 児島ちはる
- アナウンサー - 池本小百合
- 受付 - 宇和川恵美
- 案内係 - 工藤香子
- 隊員 - 伊藤健太郎
- TVの声 - 関根勤、小堺一機
- 不良小学生 - 京田尚子、鈴木れい子 ※ED表記なし
- トラックの運転手 - 江川央生 ※ED表記なし
- 世紀 - ?
スタッフ
- 原作 - 臼井儀人
- 監督・脚本 - 原恵一
- 作画監督 - 原勝徳、堤のりゆき、間々田益男
- 美術監督 - 古賀徹、清水としゆき
- キャラクターデザイン - 末吉裕一郎、原勝徳
- 撮影監督 - 梅田俊之
- ねんどアニメ - 石田卓也
- 音楽 - 荒川敏行、浜口史郎
- 録音監督 - 大熊昭
- 編集 - 岡安肇
- チーフプロデューサー - 茂木仁史、太田賢司、生田英隆
- 絵コンテ - 原恵一、水島努
- 演出 - 水島努
- 色彩設計 - 野中幸子
- 動画チェック - 小原健二
- 演出補佐 - パクキョンスン
- 動画 - じゃんぐるじむ、京都アニメーション、アニメーションDo、手塚プロダクション、シンエイ動画、夢弦館、エムアイ、スタジオ座円洞、スタジオダブ、M.S.J、マッドハウス、スタジオメイツ
- 仕上 - 京都アニメーション、オフィスユウ、ライトフット、エムアイ、スタジオロード、マッドハウス、トレーススタジオM、北京写楽美術芸術品有限公司
- 特殊効果 - 前川孝
- 背景 - スタジオユニ、アトリエローク
- 撮影 - アニメフィルム
- CGI - つつみのりゆき
- エンディング合成 - 柏原健二
- 音響制作 - オーディオプランニングユー
- 音響制作デスク - 加藤知美、山口さやか
- 音響制作進行 - 鈴木紀子、井澤基
- レコーディングスタジオ - APUスタジオ
- ミキサー - 田中章喜、大城久典
- アシスタントミキサー - 田口信孝、内山敬章、山本寿、金子俊也、辻誠
- 効果 - 松田昭彦、原田敦(フィズサウンドクリエイション)
- 効果助手 - 鷲尾健太郎
- 音楽協力 - イマジン、斎藤裕二
- スコアミキサー - 中村充時
- 編集 - 小島俊彦、中葉由美子、村井秀明、川崎晃洋、三宅圭貴
- タイトル - 道川昭
- 現像 - 東京現像所
- 技術協力 - 森幹生、河東努
- デジタル光学録音 - 西尾曻
- 協力 - 日本万国博覧会記念協会
- プロデューサー - 山川順市・和田やすし(シンエイ動画)、福吉健(テレビ朝日)
- 制作デスク - 高橋渉、魁生聡
- 制作進行 - 西川昭彦、高橋麗奈、木野雄、廣川浩二
- 制作 - シンエイ動画、テレビ朝日、ASATSU-DK
原画
- 末吉裕一郎 大塚正実 高倉佳彦 佐藤雅弘 星野守
- 和泉絹子 尾鷲英俊 林静香 松山正彦 鈴木大司
- 吉田忠勝 篠原真紀子 松下佳弘 松本朋之 大久保修
- 清水健一 重頭巌 角張仁美
- 原勝徳 間々田益男
- 京都アニメーション/木上益治 高橋博行
- アニメーションDo/米田光良 上宇都辰夫 上野真理子
- じゃんぐるじむ/三浦貴弘 山口保則 長谷川哲也 鎌田祐輔
- 手塚プロダクション/吉村昌輝 内田裕 三浦厚也 片山みゆき 細居美恵子 中川航
主題歌
- オープニング - 「ダメダメのうた」 (2000年)
- 挿入歌 - 「ケンとメリー 〜愛と風のように〜」 (1972年)
- 挿入歌 - 「白い色は恋人の色」 (1969年)
- 挿入歌 - 「聖なる泉」(『モスラ対ゴジラ』より) (1964年)
- 挿入歌 - 「今日までそして明日から」 (1971年)
- 作詞・作曲・歌 - よしだたくろう
- エンディング - 「元気でいてね」 (2001年)
オープニングテーマには『オラはにんきもの』のカバー曲である『オラたちはにんきもの』(歌:さっちゃん&しんちゃん(矢島晶子))が使用される予定だったが中止された(使用が見送られた理由については不明)。この曲は同作主題歌『元気でいてね』のCDのカップリングに収録されている(DVDの映像特典には『オラたちはにんきもの』と『元気でいてね』の2パターンのTVスポットが収録されている)。
VHS・DVD
脚注
- ↑ 湯浅政明、原勝徳などが手掛けていた人目をはばかる装飾と濃いキャラクター性を持つ(いわゆる「イロモノ」的な)人物ではない点、(自身では)銃撃や格闘などを用いずに理知的にしんのすけ達と戦い追い詰めた点でも、今までの大ボスキャラクターとは一線を画していた。
- ↑ 浜野保樹・原恵一編『アニメーション監督 原恵一』晶文社、2005年、p.165。
- ↑ http://www.cinematoday.jp/page/N0041160 2014年5月14日閲覧。
- ↑ 「昨日よもう一度」の意味で、昨日とはつまり20世紀を示している。元はカーペンターズのヒット曲のタイトル。