特殊急襲部隊

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テンプレート:軍隊資料 特殊急襲部隊(とくしゅきゅうしゅうぶたい、英語Special Assault Team、通称:SAT(サット))は、日本の警察特殊部隊。主な任務は、ハイジャック事件、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等の武器を使用した事件等への対処である。また、刑事部特殊犯捜査係だけでは対処できない凶悪事件にも出動する。

なお、特殊急襲部隊という名称は「Special Assault Team」を日本語に直訳したもので、正式な部隊名ではない。日本警察においてSATの正式な部隊名は特殊部隊であり[1]、さらに所属する都道府県警察名を付けるため、警視庁特殊部隊千葉県警察特殊部隊などと表記されている[2][3]

沿革

1972年9月5日に西ドイツミュンヘンオリンピック事件が発生し、犯行グループによりイスラエル選手11名が殺害された。翌日の9月6日に警察庁は全国の都道府県警察に対して通達を出し、「銃器等使用の重大突発事案」が発生した際、これを制圧できるよう特殊部隊の編成を行う事とした[4]

1974年警察白書には、この通達で編成された部隊が紹介されており、以下のように記載されている。 テンプレート:Quotation 一方、当時警視庁記者クラブ(七社会)に籍を置いた記者は、この特殊部隊について以下のように記載している。 テンプレート:Quotation

警察庁の通達後、1977年9月28日にダッカ日航機ハイジャック事件が発生し、犯行グループは日本政府に身代金の支払いと、獄中メンバーの釈放を要求した。日本政府は犯行グループの要求を受け入れて身代金を支払い、超法規的措置により獄中にいたメンバーなど6人を釈放した。さらに、事件から約1ヶ月後の10月13日には、ルフトハンザ航空機ハイジャック事件が発生し、犯行グループは日航機ハイジャック事件と同様に、西ドイツ政府に身代金の支払いと、獄中メンバーの釈放を要求した。これに対して西ドイツ政府はミュンヘンオリンピック事件を教訓に創設した特殊部隊GSG-9(国境警備隊第9部隊)をハイジャックされた航空機内に突入させた。この突入によりGSG-9は犯人らを制圧し、人質となっていた乗員、乗客を無事救出した。

日本ではこれらのハイジャック事件を教訓として、GSG-9を参考にした対ハイジャック部隊の創設を後藤田正晴衆議院議員(元警察庁長官、後の内閣官房長官)が提唱した。さらに後藤田正晴の命令を受けた佐々淳行警察庁刑事局参事官(後の内閣安全保障室長)が西ドイツに赴いて交渉を行った。その結果、装備、訓練、ノウハウなどでGSG-9の全面協力を得ることになり[5]警視庁大阪府警察警察官数名が研修としてGSG-9や、イギリスのSASに派遣された[6][7]

1977年10月20日に警視庁では対ハイジャック部隊を創設するため、機動隊員の書類選考と面接を開始した[6]。同年11月1日に警察庁は、ハイジャック対策を主要任務とする特殊部隊を警視庁第六機動隊と、大阪府警察第二機動隊に設置した[8][6]。対ハイジャック部隊は創設当初、GSG-9と同じ装備を導入し、GSG-9の隊長を日本に招聘して訓練方法も学び、徐々に日本独自の訓練方法を考案していった[9]。同部隊は、警視庁では特科中隊、大阪府警察では零中隊などと呼ばれており、1980年代初頭から警視庁の部隊はSpecial Armed Police、通称SAPと呼ばれていたが[6]、部隊の存在自体を極秘としていたため、部隊名称も非公式なものであった。これらの部隊は1979年に発生した三菱銀行人質事件などに出動したが、創設から20年近くの間、部隊の存在が公表されることは無かった。その後、1995年全日空857便ハイジャック事件が発生し、SAPが出動したことにより、部隊の存在が初めて公表された。

1996年4月1日に警察庁の通達により、それまで存在していた各特殊部隊が公式部隊として強化、再編成される方針となり[10]、同年5月8日にはSpecial Assault Team、通称SAT という部隊名を定めて編成され、警察庁において隊旗授与式が行われた。授与式では、國松孝次警察庁長官が各隊の隊長に隊旗を授与した。SATは総員200名体制で警視庁、大阪府警察、北海道警察千葉県警察神奈川県警察愛知県警察福岡県警察に編成された。2000年に警視庁SATは、第六機動隊から警備部警備第一課に所属が移され、2001年に大阪府警察SATは、第二機動隊から警備部警備課に所属が移された。これにより、警視庁と大阪府警察のSATは、組織編成上、機動隊から独立した組織となった[11]。道県警察のSATは機動隊に設置されている。

2005年9月6日には沖縄県警察にSATが編成され、沖縄県警察学校において隊旗授与式が行われた。また他の部隊も増員されたことにより、SATは総員250名体制となり、翌2006年にはさらに部隊が増員され、総員300名体制となった。なお各報道機関は沖縄県警察にSATが新設された理由について「米軍基地へのテロ対策である」と報道した。一方、沖縄県警察は報道機関の取材に対して「島嶼県で事件発生時に、本土からの部隊派遣に時間がかかることが新設理由。米軍基地の集中をめぐる『対テロ重点配置』ではない」と述べている[12]

2000年代後半からSATは、銃器使用の立てこもり事件において特殊犯捜査係の支援を行っており、2007年4月には町田市立てこもり事件に警視庁SATが出動した。さらに同年5月に発生した愛知長久手町立てこもり発砲事件では、愛知県警察SATが出動したが、事件を統括指揮していた刑事部捜査第一課との連携や情報共有の不足から、隊員1名が犯人の放った銃弾により死亡した。警察庁は、この事件を教訓としてSATを支援する特殊部隊支援班(SAT Support Staff、通称スリーエス)を創設した。特殊部隊支援班は、都道府県警察刑事部との連携や警察本部長の補佐、警察庁との連絡調整を担当している。また警察庁は死亡した隊員が防弾ベストの隙間から被弾したことから、SATの装備品を再検証する方針であると発表した。

愛知立てこもり事件の発生以来、SATは報道機関に訓練を公開するようになり、2007年には警視庁SATが初めて訓練を公開し、2010年には神奈川県警察SATと愛知県警察SATが訓練を公開した。さらに2013年には千葉県警察SATが訓練を公開した。なお、2007年以降の公開訓練でSAT隊員が着用した防弾ベストは、上腕部を保護するプレートが追加されており、防護範囲が拡大されている。

年表

1972年
9月5日
ミュンヘンオリンピック事件が発生。犯行グループによりイスラエル選手11名が殺害された。
9月6日
警察庁から各都道府県警察に通達「特殊部隊の編成について」が出される。
1977年
9月28日
ダッカ日航機ハイジャック事件が発生。日本政府は犯行グループの要求を受け入れ、身代金を支払い、獄中にいたメンバーなど6人を釈放した。
10月13日
ルフトハンザ航空機ハイジャック事件が発生。犯行グループは西ドイツ政府に対して身代金の支払いと、獄中メンバーの釈放を要求したが、西ドイツ政府はGSG-9を航空機内に突入させることにより犯人を制圧し、人質を救出した。この事件を受け、日本では佐々淳行警察庁刑事局参事官を西ドイツ派遣、さらに警視庁大阪府警察警察官数名を研修のため、GSG-9とイギリスSASに派遣した。
10月20日
対ハイジャック部隊を創設するため、警視庁で機動隊員の書類選考と面接が開始される。
11月1日
警視庁第六機動隊と、大阪府警察第二機動隊に対ハイジャック部隊が極秘裏に創設される。警視庁では「特科中隊」、大阪府警察では「零中隊」と呼ばれ、1980年代初頭から警視庁部隊はSpecial Armed Police、通称SAPと呼ばれていたが、部隊名称は非公式なものであった。
1979年
1月26日
三菱銀行人質事件が発生。零中隊が出動。銀行内に突入し、近距離からけん銃で犯人を射撃することより、人質を救出した。犯人は病院に搬送後、死亡が確認された。突入の際、零中隊の隊員は部隊の存在を秘匿するため、アサルトスーツ(突入服)の代わりにトレーニングウェアを着用しており、犯人への射撃には、S&W社製45口径けん銃を使用した[7]
1987年
後藤田正晴内閣官房長官佐々淳行内閣安全保障室長が、陸上自衛隊習志野演習場においてSAPの訓練を視察。この視察は報道関係者を一切伴わず、非公式に行われた[5]
1995年
3月22日
一連の凶悪事件を発生させたオウム真理教の本部(山梨県上九一色村)への強制捜査にSAPが出動[13]
6月21日
函館空港で全日空機ハイジャック事件が発生。SAPが羽田空港から航空自衛隊C-1輸送機で緊急派遣され、翌22日に北海道警察の機動隊員、捜査員らの機内突入と犯人逮捕を支援した。これが、SAPの存在が認められた最初の事件となった。なおSAPが羽田空港で輸送機に機材を搭載し、離陸した様子は、TBSの報道班が収録、放送したVTRによって確認されている。また、この輸送機は航空自衛隊の八雲飛行場に着陸し、SAPはこの飛行場から函館空港に向かったといわれている。
9月
オウム事件捜査の教訓により、SAPの経験者7名が警備部から刑事部捜査第一課特殊犯捜査係(SIT)に配属される。この人事異動の目的は、SAPの突入技術をSITに取り入れることであった[14]
1996年
4月1日
警察庁から都道府県警察に通達「特殊部隊の再編強化について」と「銃器対策部隊の編成について」が出される。
5月8日
既存の各特殊部隊が公式部隊として強化、再編成され「Special Assault Team」通称SATという部隊名を定め、警察庁において隊旗授与式が行われた。授与式では國松孝次警察庁長官が各隊の隊長に隊旗を授与した。SATは総員200名体制で警視庁、大阪府警察、北海道警察、千葉県警察神奈川県警察愛知県警察福岡県警察に編成された。また公式部隊化と再編成に伴い正規の予算計上が可能となったため、装備は最新のものに更新された。
12月17日
在ペルー日本大使公邸占拠事件が発生。警視庁SATが原寸大の模擬日本大使館を造り、人質救出訓練を繰り返す。神奈川県警察SATも隊員をドイツに派遣、GSG-9から訓練を受ける。
2000年
5月3日
西鉄バスジャック事件が発生。福岡県警察、大阪府警察のSATが出動。広島県警察機動隊に指導を行い、突入を支援した。この事件では、初めて閃光弾を使用することにより犯人を逮捕した。また同年、警視庁SATの所属が第六機動隊から警備部警備第一課に移され、機動隊から独立した組織となった。
2001年
大阪府警察SATの所属が第二機動隊から警備部警備課に移され、機動隊から独立した組織となった。
2002年
5月10日
警察庁が警視庁SATの訓練映像を公開。
2003年
9月16日
名古屋立てこもり放火事件が発生。現場を支援するため、警察庁は愛知県警察SATに待機命令を出した[15]
2005年
9月6日
沖縄県警察にSATが新設され、沖縄県警察学校において隊旗授与式が行われた。授与式には漆間巌警察庁長官、沖縄県警察SAT隊長と隊員約20名が参加した。なお隊員はマスク(目出し帽)で顔を隠し、ヘルメットの防弾バイザーを下ろした状態であった[16]。また同年、他の部隊も増員しSATは総員250名体制となった。
10月20日
北海道において北海道警察と陸上自衛隊が合同訓練を実施。北海道警察SATと見られる部隊が訓練に参加した。なお北海道警察では、SATが訓練に参加したとの公表はしていない。
2006年
SATをさらに増員。総員300名体制となった。
2007年
4月20日
町田市立てこもり事件が発生。警視庁SATが出動し、特殊犯捜査係(SIT)の突入を支援した。
5月17日
愛知長久手町立てこもり発砲事件が発生。愛知県警察SATが出動。犯人の銃撃で重傷を負った警察官を愛知県警察SITが救出した際、犯人が再び拳銃を発砲。この発砲により、SITの後方支援を担当していたSAT隊員が被弾し、病院搬送後に死亡した。SAT隊員が出動現場で殉職したのは、この事件が初めてである。
6月5日
警察庁は、愛知長久手町立てこもり発砲事件において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受け、全国警察本部本部長を集め、東京都内の専用施設において警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。また6月に警察庁は、SATの活動を支援する特殊部隊支援班(通称スリーエス)を創設した。特殊部隊支援班は、都道府県警察刑事部との連携や警察本部長の補佐、警察庁との連絡調整を担当する組織である。
7月5日
東京都内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が報道機関に初めて公開された。
8月16日
大阪府警察SATとみられる部隊が、同年開催の世界陸上大阪大会に向けた総合警備訓練に参加。なお大阪府警察はSATの訓練参加を公表しておらず、参加部隊は銃器対策部隊と発表した。
12月14日
ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件が発生。福岡県警察SATが出動。長崎県警察銃器対策部隊と合同で犯人の捜索に当たり、自殺した犯人の遺体を発見した[17]
2010年
9月6日
神奈川県横浜市内の県警第一機動隊訓練場において、神奈川県警察SATが同年11月開催のAPEC首脳会談に向けた合同警備訓練に参加した。
11月26日
石川県志賀原子力発電所において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、石川県警察銃器対策部隊と愛知県警察SATが参加した。
2012年
11月22日
愛知県豊川市の豊川信用金庫蔵子支店において、人質立てこもり事件が発生。愛知県警察SATがSITと共に出動[18]。この事件は発生から約13時間後にSITが突入し、サバイバルナイフを持って立てこもっていた犯人を逮捕、人質4名を救出した。
2013年
5月11日
福島県の東京電力福島第二原子力発電所において、武装工作員の襲撃を想定した訓練が報道機関に公開され、福島県警察銃器対策部隊と千葉県警察SAT、海上保安庁特殊警備隊などが参加した。

編成

SATは、計8所属の都道府県警察本部に設置されている。また、重大事件やテロ事件が発生した際には、警察車両や警察航空隊のヘリコプター等を使用して、全国に展開できる体制が整えられている。

SATの主な任務はハイジャックやテロ対策であるため、以下の地域に部隊が配備されている。

  • 成田・東京・中部・関西の各国際空港が所在する地域
  • 上記以外で国際・国内線の拠点となる空港が所在する一部の地域
  • 在日米軍関連施設が集中している地域

また、SATが編成されている都道府県警察は以下のとおりである。

警視庁
管内には東京国際空港(羽田空港)を含む、各種重要防護施設皇居総理大臣官邸国会議事堂中央省庁、各国大使館等)が所在。SATは警備部警備第一課に所属。警視庁SATは、SAPが発展した部隊である。
大阪府警察
管内に関西国際空港大阪国際空港、外国の総領事館が所在。SATは警備部警備課に所属。大阪府警察SATは、零中隊が発展した部隊である。
北海道警察
管内に新千歳空港函館空港が所在。SATは機動隊に所属。なお、函館空港では1995年に全日空機ハイジャック事件が発生している。
千葉県警察
管内に成田国際空港が所在。SATは第一機動隊に所属。
神奈川県警察
管内に在日米軍施設が所在。SATは第一機動隊に所属。
愛知県警察
管内に中部国際空港が所在。SATは機動隊に所属。
福岡県警察
管内に福岡空港、在日米軍施設、各国領事館が所在。SATは第二機動隊に所属。
沖縄県警察
管内に在日米軍関連施設、那覇空港が所在。SATは機動隊に所属。沖縄は島嶼県であり、テロ事件等が発生した際に本土からのSAT派遣に時間が掛かるため、編成された。

部隊の規模は警視庁に3個班、大阪府警察に2個班、他の道県警察に1個班の合計11個班が編成されており、隊員の総数は約300名である。なお、警視庁SATの前身である特科中隊は、指揮班、技術支援班、狙撃支援班、制圧一班、制圧二班に分かれていたとされている[6]。また、特科中隊の創設時の体制は警視1名、警部2名、警部補6名、巡査部長12名、巡査30名の計51名体制であり、大阪府警察の零中隊は約半数の規模であったとされている[6]

編成例

例:警視庁警備部第六機動隊特科中隊(当時)の編成

指揮班
部隊の庶務、新隊員の教育を担当。部隊活動の際は部隊の現場指揮所となり、現場調整、情報収集、無線担当、記録、伝令を担当。
技術支援班
偵察用機材(コンクリートマイク等)の設置や、突入時に装備資機材(プラスチック爆弾等)を使用し、突入支援(ドア、壁の破壊等)を行う。
狙撃支援班
狙撃や偵察を担当。
制圧一班、制圧二班
突入を担当。

SAT及び機動隊関連施設

SATの関連する射撃訓練場、及びSATが所在する都道府県で、射撃場を有する機動隊の訓練施設は以下のとおりである。

警視庁術科センター
東京都江東区に所在。術科(射撃柔道剣道逮捕術)の総合訓練施設。総延べ面積は約2万3700平方メートルであり、2010年から全面的な改修工事が行われている。この改修には10年間を要し、改修費用は50億3000万円である[19]
同センターの奥には、厳重な管理体制で護られたSAP専用の射撃訓練場が設置されていたとされる[6]
2007年には警視庁術科センターと「夢の島総合警備訓練場」において、警視庁SATの訓練が報道機関に公開されている[20]
警視庁機動隊総合訓練所
東京都立川市に所在。射撃場を有しており、2010年に射撃場の改修に関する工事が行われている[21]
大阪府警察総合訓練センター
大阪府大東市に所在。射撃場、陸上競技場、車両訓練コース等を有する大阪府警察の総合訓練施設。1997年に完成。
同センターでは、2008年に大阪府警察のSAT隊員が射撃訓練中の事故で負傷している[22]
北海道警察総合訓練場
北海道千歳市に所在。主に機動隊が使用する訓練施設。
2006年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は2849平方メートルである[23]。また、2010年には訓練場敷地内で新棟の建設工事が行われた。この新棟は床面積約6000平方メートルで、射程距離の長いライフル射撃に対応可能な射撃場を有しており、既存棟とともに、重大テロや人質立てこもりなど各種災害警備、救出救助事件の訓練を行う施設である[24]
千葉県警察機動隊総合訓練施設(多古訓練場)
千葉県香取郡多古町に所在。
同訓練施設については、成田空港問題を扱うサイトに「300mの長さを持つライフルの射的訓練場を含む、ハイジャック対策訓練場」と記載されている[25]
愛知県警察機動隊総合訓練場
愛知県小牧市に所在。2006年に完成。鉄筋コンクリート構造2階建て、延べ面積は2412平方メートルである[23]。射撃場を有しており、2011年に標的装置の点検業務に関する随意契約が行われている[26]
福岡県警察機動隊総合訓練場
福岡県福岡市に所在。2005年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は3291平方メートルである[23]。射撃場を有しており、2009年に射撃場の改修工事に関する競争入札が行われている[27]

行動方針

SATが出動した際は、警視総監(道府県警察は本部長)、警備部長がSATの指揮を行い、SAT隊長は現場指揮官として命令を受け任務にあたる。原則としてSAT隊長は突入を独断では行えず、警視総監(または道府県警察本部長)、警備部長の許可が必要といわれている。2007年に発生した、愛知長久手町立てこもり発砲事件の際は、愛知県警察SAT、SIT、応援派遣された大阪府警察MAATの統括指揮を、刑事部捜査第一課長が担当していたとされている[28]

SATの行動方針に関して、警察庁では「被害者・関係者の安全を確保しつつ、事態の鎮圧、被疑者の検挙を実施する」と公表している。報道によれば、SATは「犯人の身柄拘束よりも、現場の危機的状況を狙撃などで排除する」方針であり、一方、SITは「説得を中心に最後まで投降を促し、犯人の逮捕を目指す」方針であるとされている[29]。2007年に公開された警視庁SATの訓練では、隊員が屋内施設に突入した際、複数の人型標的の頭部へ射撃を実施している。

狙撃については複数配置を基本としている。これは、1970年に発生した瀬戸内シージャック事件において、大阪府警察の狙撃手が、人権擁護を標榜する弁護士から殺人罪で告発された事を教訓としており、隊員が犯人を射殺した際、個人を特定・告訴できなくするための措置である[6]

SATに類似する名称の警察部隊として、アメリカ合衆国SWATが挙げられるが、SWATの行動方針は日本のSITに近く、可能な限り犯人の逮捕を優先している。なおアメリカでは、国内でのテロ事件などに対処する部隊として、連邦捜査局(FBI)特殊部隊(HRT)が編成されている。

武器の使用

SATの武器使用は法律(警察官職務執行法第7条)に基づいて行われ、突入の際には機関けん銃や、自動式けん銃などを使用する。また日本の警察では、「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」により、機関けん銃やライフルなどの装備を、「特殊銃」と規定しており、使用や取り扱いの規範を定めている[30]。この規範によれば、特殊銃は、警察本部長(警視庁は警視総監)から指定を受けた「指定警察官」が使用する。さらに特殊銃の「取り出し」、「連射への設定変更」、「使用」は現場指揮官の命令が必要であるが、状況が急迫し、命令を受けることができない場合は、指定警察官の判断で行うことができる。

なお、日本においては法解釈上、警察官が武器を使用する事は、犯罪の予防・鎮圧行為(警察法第2条)とされ、行政警察活動に該当し、犯罪の捜査を目的とする司法警察活動とは区別されている。警察はこの予防・鎮圧行為を、検察庁など他の機関の干渉を受けることなく、独自に行うことができる。

隊員

主に機動隊から入隊希望者を募り、選抜試験を通過した者がSATに入隊する。隊員には高い身体能力、判断能力及び強靱な精神力が必要とされる。

作家の毛利文彦は著書でSAT隊員を「25歳以下の独身の男性警察官」と解説しているが、元SAP隊員の伊藤鋼一は「隊員選考の絶対的条件のなかには「25歳以下」「未婚者」「次男以下の者」というのはない」としてこれを否定している[14][31]。報道によれば、2006年に訓練で負傷した大阪府警察SATの隊員は、事故当時28歳であった。また2007年に愛知長久手町立てこもり発砲事件で死亡した愛知県警察SATの隊員には妻子がいたことが明らかとなっている。伊藤鋼一によれば隊員に求められるものは「死を恐れぬ精神力」「プロ意識(実戦では100点か0点しかなく、平均点はない。)」「(制圧第一であるが)仲間を見捨てない」とされる。[32]

入隊すると隊員は、「部隊で見たり聞いたりしたことを他人に話せば、時には法で罰せられる。家族に対しても同様である。」という訓示を受け、保秘を徹底させられると言われている[6]。例として、愛知長久手町立てこもり発砲事件においてSAT隊員が死亡した際、隊員の両親は「死亡するまで、息子がSAT隊員であることを知らなかった」と報道されている。

通常、SAT隊員は個人が特定できないようにするため、氏名も階級も部外には公開されず、報道関係者の前ではマスク(目出し帽)を着用して素顔を隠している。もしも隊員個人が特定されれば、テロリストや諸外国の公安機関によって隊員および親類縁者に危害が加えられたり、脅迫あるいは獲得工作が行われることが懸念されるからである。一方、SAT隊長は狙撃や突入を実行しない責任者であるため、隊旗授与式等で報道関係者に対して素顔を公表している。1979年に発生した三菱銀行人質事件の際には、突入を行った零中隊の隊長が犯人を制圧後「機動隊員」として報道陣に姿を現し、記者会見に応じたことがある。

在隊期間はおおむね5年とされ、昇任した後に再びSATに入隊することもある。再入隊すればさらに5年間在隊することになる。昇任試験は一般の警察官と同様に行われる。

また近年、警視庁ではSATを除隊した一部の隊員が、刑事部特殊犯捜査係(警視庁SIT)に配属されている。これは刑事部がSAT隊員の射撃技術などを即戦力として期待した結果、起用したものである[6]。確認できる最も古い刑事部への配属は1995年9月に行われた。この人事異動ではオウム事件の捜査を教訓として、警視庁SATの前身であるSAPの経験者7名が警備部からSITに配属された。なお、配属された警察官の階級別内訳は警部補1名、巡査部長2名、巡査4名であった[14]。 この他にもSATの除隊者は、機動隊のスカイマーシャル[33]等に配属されていると言われている。

訓練

SATの装備品や訓練施設の大半は、地方予算(都道府県警察予算)ではなく、国家予算(国費)で賄われている。そのため通常の機動隊に比べて装備、訓練施設は充実している。

日本国内には、先述のようにSATの関連施設が設置されており、訓練が行われている。訓練は危険を伴い、過去においては隊員が重傷を負う事故も発生している。2006年には大阪府警察SATの隊員が射撃訓練中、首からさげた自動小銃を構える際に引き金に指がかかり、実弾1発を暴発させ、自身の左足ふくらはぎを貫通し、全治約1カ月の重傷を負った[34]

専用の訓練施設以外では、陸上自衛隊駐屯地小銃を使用した狙撃訓練や、ヘリコプター降下の訓練を実施したとされている[6]。またオーストラリアパースに所在する大規模な市街戦・屋内戦用の訓練施設(通称キリングヴィレッジ)で訓練を行ったと言われている[35]。さらに、フランス国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)と合同訓練を実施したことも確認されている。

部隊の具体的な訓練内容については、創設以来、非公開とされていたが、2002年サッカーワールドカップ開催を前にして、警察庁は同年5月10日に警視庁SATの訓練映像を公開した。映像ではヘリコプターからの降下訓練や、航空機、バスへの突入訓練、狙撃や潜水器具を使用したプールでの訓練などが公開された。

2007年6月5日に警察庁は、東京都内の警視庁の専用施設に全国警察本部本部長を集め、警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。この合同訓練は、愛知長久手町立てこもり発砲事件において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受けて行われたもので、全国の警察本部長にSATとSITの技能や効果的な運用方法に関する理解を深めさせ、実践的な訓練や事件対応に生かすことが目的であった。訓練内容は人質立てこもり事件において犯人が警察官に向かって銃撃し、建物から出て来るとの想定に基づき、SATとSITは閃光弾やけん銃を使った突入や狙撃銃での狙撃など、役割を分担して訓練を実施した[36]

2007年7月5日には東京都内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が初めて報道陣に公開された。この訓練は同年7月に北海道洞爺湖町で開催された主要国首脳会議(サミット)に備えたもので、屋内突入による犯人制圧と人質救出訓練や、ヘリコプターからの降下、狙撃訓練などが行われた。

2010年9月6日に神奈川県横浜市内の県警第一機動隊訓練場において神奈川県警察、警視庁、関東管区警察局の合同警備訓練が行われた。この訓練は同年11月に神奈川県横浜市で開催されたAPEC首脳会議に備えたもので、関係者が乗ったバスがハイジャックされたとの想定に基づき、神奈川県警察SATの狙撃班がヘリコプターからビル屋上に降下して狙撃配置に付き、突入班が閃光弾を使用してバスに突入し犯人を制圧、人質を救出した。

また、2010年11月26日には石川県志賀原子力発電所において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、石川県警察銃器対策部隊愛知県警察SATが参加した。この訓練を視察した安藤隆春警察庁長官は「朝鮮半島の緊張が高まる中、警察としては、全国の重要施設の警備に張り詰めた意識を持ってあたりたい」と発言した[37]

2013年5月11日に東京電力福島第二原子力発電所において、警察と海上保安庁の合同テロ対策訓練が行われた。この訓練はテロリストが復旧作業中の福島第一原子力発電所を襲撃したとの想定で行われ、千葉県警察SATと福島県警察銃器対策部隊、海上保安庁特殊警備隊(SST)などが参加した。この訓練では千葉県警察のSATが初めて報道機関に公開されており、訓練に参加した隊員は放射線による汚染環境下を想定し、放射線防護服を着用してテロリストの制圧を行った。

他組織との連携

SATを支援する部隊として、機動隊銃器対策部隊が編成されている。

2007年5月に発生した愛知長久手町立てこもり発砲事件でSAT隊員が殉職したことを受け、警察庁は同年6月、「特殊部隊支援班(SAT Support Staff、通称スリーエス)」を発足させた[38]。特殊部隊支援班はSATの効果的な運用と、隊員の受傷事故防止を目的としており、警察庁のほか、警視庁、大阪府警察のSAT経験者、現役隊員ら10人程度で構成される。SATが出動した際は、特殊部隊支援班から2~3人が現地に赴き、警視総監や警察本部長にSATの態勢や活用方法を助言し、刑事部との連携や警察庁警備局などとの連絡調整を担当する。

近年では、武装工作員等によるテロゲリラ事案に共同で対処することを目的として、関係各機関の間で様々な協定が締結されている。2002年には陸上自衛隊と都道府県警察により、治安出動の際における治安の維持に関する現地協定が締結された。さらに2004年には、防衛庁運用局長(当時)と警察庁警備局長により、武装工作員等共同対処指針が策定された。これを受け、警察と自衛隊による共同対処訓練が全国各地で実施されており、2005年10月20日には北海道において、北海道警察(総勢150名)と陸上自衛隊(総勢200名)による合同訓練が行われた。この訓練では、陸上自衛隊第18普通科連隊の隊員と、北海道警察の機動隊員がヘリコプターから降下し、他の機動隊員(銃器対策部隊)を現場まで誘導する部隊輸送訓練が行われた。なおヘリコプターから降下した機動隊員に関しては、装備やリペリング(ロープ降下)技術などから、軍事専門誌の記事で「北海道警察のSAT」と記載された[39]。一方、北海道警察では同訓練にSATが参加したとの公表は行っておらず、参加部隊は機動隊であると公表した。

またSATは思想的背景のある犯罪者や、テロリストを主に取り扱う警備部に所属しており、ドイツGSG-9や、フランス国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)と交流があるといわれている[40]

主要装備

銃器類

けん銃

H&K USP
2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用。専用のフラッシュライト(ITI社製、M2)を装着したもの。
2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが使用。
2010年11月に公開された警備訓練において、愛知県警察SATが使用。
H&K P9S
警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている[6]
S&W M3913
2005年に北海道で実施された北海道警察と陸上自衛隊の合同訓練の際に、北海道警察SATと見られる部隊が使用。
以下3種類のけん銃は、2002年に警察庁が公開したSAT訓練映像で使用が確認されたもの。
SIG SAUER P226
SIG SAUER P228
GLOCK19

また、1979年に発生した三菱銀行人質事件において零中隊が使用したけん銃は、S&W社製の45口径けん銃だったとされている[7]。事件当時の日本の警察が装備していたけん銃で該当するものは、S&W社の「M1917」回転式けん銃である。この銃はニューナンブM60が配備される以前に、米軍から支給されたものである。

狙撃銃

豊和工業 M1500
2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用したボルトアクションライフル。照準器と二脚を装着したもの。
2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが使用。
豊和工業 ゴールデンベア
照準器とニ脚を装着したボルトアクションライフル。警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている[6]
豊和工業 64式7.62mm小銃
照準器を取り付け、狙撃用としたもの。警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている[6]

その他の狙撃銃として軍事専門誌の記事には、SATが日本仕様に改修したH&K社製PSG-1と、アキュラシーインターナショナル社製L96A1を配備と記載されている[41]

また近年では日本の銃器代理店(日本特装株式会社)が、自社のカタログに「アキュラシーインターナショナル社製の対物ライフルを警察に納入した」と記載している。対物ライフルは、ハイジャック事件における狙撃用として、各国の対テロ部隊に配備されている。その理由は、通常の7.62mm弾を使用する狙撃ライフルでは、航空機の風防ガラスを破壊し、かつ標的に達することができないためである。

機関けん銃

H&K MP5シリーズ

MP5については、複数の仕様が確認されている。

MP5A5
銃床伸縮型のもの。2007年に実施された公開訓練において、警視庁SATが、EOテック社製のレーザーホログラムサイトを装着したMP5A5を使用。
2007年5月に愛知県で発生した立てこもり事件において、愛知県警察SATが、銃身にフォアグリップを装着したMP5A5を使用。
2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATがMP5A5を使用。
MP5F
銃口に消炎制退器を装着しており、銃床が伸縮型のもの。
2005年に北海道で実施された北海道警察と陸上自衛隊の合同訓練の際、北海道警察SATと見られる部隊が使用。2013年5月に東京電力福島第二原子力発電所において行われたテロ対策訓練の際、千葉県警察SATが使用。
MP5SD6、MP5K
MP5SD6は、減音器を装着しており、銃床が伸縮型のもの。また、MP5Kは銃床が無く、銃身が短縮型のもの。警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている[6]

自動小銃

豊和工業 89式5.56mm小銃(折曲銃床式)
2004年に政府が有識者を集めて開催した「安全保障と防衛力に関する懇談会」の第9回懇談会において、警察庁が作成し、配布した資料に「SAT装備品」として写真入りで掲載されていたもの。

その他の銃器

高圧放水銃
犯人制圧用の装備であり、主に犯人が可燃性物質(ガソリン等)を所持している際に使用する。SATでは個人携行型の圧縮空気泡消火システム(CAFS)を使用しており、機動隊特殊犯捜査係が使用しているインパルス消火システムとは異なる(警察庁調達資料及び危機管理産業展等で確認)。
なお、警察では装備の名称を「銃」とすると、銃刀法や、けん銃取り扱い規範等の法令が適用され、使用の際に様々な制約を受けるため、「放水銃」という名称は使用しない。

銃器以外の主要装備

特殊閃光弾
「スタングレネード」、または「フラッシュバン」などと呼ばれているもの。閃光と爆音で犯人の視覚や聴覚を一定時間失わせ、無力化する。
ヘルメット
ケブラー製のヘルメットにポリカーボネート製の防弾バイザーを付けたもの。また、2007年に公開された訓練において、警視庁SATの狙撃班がプロテック社製のヘルメットを使用。このヘルメットはABS樹脂製で、防弾機能は無い。
なお、警視庁の特科中隊(SAP)はチタン合金製のヘルメットを使用していたとされている[6]
防弾ベスト
銃弾から胴体を防護するベスト。下腹部を防護するプレートが付属。2007年以降に行われた公開訓練では、上腕部を防護するプレートが付属している。また、タクティカルベストと一体化したものも装備している。
タクティカルベスト
予備弾倉無線機など、様々な装備品を収納できるベスト。防弾ベストの上から重ね着をして使用する。イーグル社製の「TAC-V1」を使用。
アサルトスーツ
紺色の突入服。機動隊が使用している「出動服」とは異なる。また、2002年に警察庁が公開した訓練映像や、2007年の公開訓練において、警視庁SATの隊員はアサルトスーツ右上腕部に部隊のワッペンを装着している。
なお、警視庁の特科中隊(SAP)はハイジャック対策訓練の際、灰色の突入服を使用していたとされている[6]
小型防弾盾
ポリカーボネート製の透明防弾盾。片手で所持して使用する。2002年に警察庁が公開した訓練映像、および2007年の公開訓練では、SAT隊員が左手に小型防弾盾を持ち、右手にけん銃を所持して突入を行っている。
大型防弾盾
ケブラー製の黒色防弾盾。覗き窓にも防弾ガラスが付けられている。防弾盾には、アルファベットの「J」を逆さにしたような形状の取っ手が設置されている。2007年の公開訓練の際、警視庁SATが使用。また2013年の公開訓練では、千葉県警察SATが覗き窓を大型化した灰色の防弾盾を使用。
結束紐
商品名「タイラップ」、「インシュロック」などと呼ばれているもの。手錠より軽量で、素早く犯人を拘束できる。バンド(紐)の片端にロック用部品が付いており、これに反対側の端を通して結束する。2007年に公開された訓練において、警視庁SATの隊員が装備しているほか、2010年の北陸電力志賀原子力発電所における訓練では、愛知県警察SATの隊員が工作員役を拘束する際に使用した。さらに、2013年の東京電力福島第二原子力発電所での訓練において、千葉県警察SATの隊員がテロリスト役を拘束する際に使用した。
バッティングラム
鉄製の大型ハンマー。ドアを破る際に使用する。2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用。
各種突入、偵察用機材
プラスチック爆弾暗視装置潜水用機材等(水中から船舶へ突入する際に使用)。

部隊支援用装備

警備車両
特型警備車や、銃器対策警備車などを装備している。これらの車両は防弾仕様の装甲車であり、主に突入支援に使用される。また、隊員輸送車(大型バス、ワンボックスカー、4WD車など)や、資器材搬送用のトラック、無線指揮車なども保有している。なお、アメリカのSWATでは犯罪者に対する威圧効果と犯罪抑止のため、車体に大きく「SWAT」と書かれた専用車両を使用することがある。一方、SATはテロ対処を主要任務としており、現場に展開していること自体を犯人(テロリスト)や、報道関係者などから秘匿する必要があるため、部隊名が書かれた車両を使用していない。
ヘリコプター
都道府県警察の航空隊に所属するヘリコプターを使用。また、一部の航空隊にはSATとの連携を想定したテロ対策機が配備されている。これは中型ヘリコプター、ベル412EPに夜間飛行用の赤外線カメラや、電線切断用のワイヤーカッター等を装備したもので、機体は抗弾仕様であると言われている。また、災害発生時には災害支援ヘリコプターとして使用される。

上記以外にも様々な資機材があり、国産品だけでなく、世界各国のメーカーが製造した装備品を採用している。このような傾向は、日本においては陸上自衛隊特殊作戦群や、海上自衛隊特別警備隊海上保安庁特殊警備隊にも見られる。

なお、2007年に発生した愛知長久手町立てこもり発砲事件では、SAT隊員が銃撃を受けて防弾ベストの隙間から被弾したことにより、死亡した。そのため、当時国家公安委員会委員長だった溝手顕正は、同年5月18日の記者会見で「装備の検証が必要」との見方を示し、これを受けて警察庁は装備を再検証する方針であると発表した。

SATが登場する主な作品

注釈

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:日本の特殊部隊
  1. 警察庁通達「特殊部隊の再編強化について」平成8年4月1日乙備発第6号
  2. 警視庁組織規則に記載
  3. 千葉県警察ホームページ内の資料に「千葉県警察特殊部隊指揮支援班運用要綱の制定について 平成19年8月23日例規(備)第63号」という例規通達があり、SATの名称を「千葉県警察特殊部隊」と表記している[1]
  4. 警察庁次長発各都道府県警察の長宛通達「特殊部隊の編成について」昭和47年9月6日乙備発第11号
  5. 5.0 5.1 『ザ・ハイジャック、日本赤軍とのわが「七年戦争」』(著者佐々淳行、文藝春秋、2010年)の「第二章『よど号』模倣犯ハイジャック」に記載
  6. 6.00 6.01 6.02 6.03 6.04 6.05 6.06 6.07 6.08 6.09 6.10 6.11 6.12 6.13 6.14 6.15 6.16 『警視庁・特殊部隊の真実』(著者伊藤鋼一、大日本絵画、2004年)に記載
  7. 7.0 7.1 7.2 『戦慄 昭和・平成裏面史の光芒』(著者麻生幾、新潮社、1999年)の『三菱銀行「梅川事件」の地獄絵巻』に記載
  8. 平成9年 警察白書 第1章第2節3 我が国のテロ対策の現状
  9. 『警視庁捜査一課特殊班』(著者毛利文彦、角川書店、2002年)の「第五章 刑事警察の特殊部隊」に記載
  10. 警察庁通達「特殊部隊の再編強化について」平成8年4月1日乙備発第6号。なお警察庁は同日に「銃器対策部隊の編成について」平成8年4月1日丙備発第50号という通達も出している
  11. 警視庁組織規則、大阪府警察組織規則に記載
  12. 朝日新聞』沖縄版、2005年9月7日
  13. 『極秘捜査 政府・警察・自衛隊の[対オウム事件ファイル]』(著者麻生幾、1997年、文芸春秋)の「第五章Dデー」に以下の記述がある。『サティアンを取り囲む機動隊員たちは、第一線の部隊に続き、第二線、第三線、第四線の部隊が突入の機会を窺っていたが、その一番後方で身を低くしている五十名ほどの”集団”がいたことはテレビ局も気がつかなかった。』『警視庁が”国家機密”としている対テロ特殊部隊は、極力目立たぬよう、最後方で待機していた。』
  14. 14.0 14.1 14.2 『警視庁捜査一課特殊班』(著者毛利文彦、角川書店、2002年)の「第九章 SITとSAT」に記載
  15. 読売新聞2003年9月17日
  16. 沖縄県警察SATの隊旗授与式の様子は『SATマガジン』NO11に掲載された記事「沖縄県警SAT発足」に写真付きで記載。
  17. 中国新聞』2007年12月16日
  18. 朝日新聞デジタル』2012年11月22日
  19. 『建通新聞電子版』に記載[2]
  20. 公開訓練の場所に関しては「SATマガジン」2007年9月号に掲載された記事「警視庁SAT公開訓練」に記載。
  21. 『警視庁国費案件平成21年度年間工事発注予定表』に記載[3]
  22. 産経新聞』(2006年8月23日、大阪版朝刊)に記載。
  23. 23.0 23.1 23.2 訓練場の設計を担当した『株式会社大建設計』のホームページに掲載[4]
  24. 苫小牧民報社』2010年2月12日の記事「道警の総合訓練場を拡張へ」に記載[5]
  25. 『成田空港サーバー』1998年8月9日の記録に記載[6]。1998年8月9日の記録には、訓練場の建設に関して「22日に地元説明会が開かれることになっており、これによって詳細がわかるものと思われます。」との記載がある。また同サイトの1999年3月22日の記録には、『千葉県警の、「ハイジャック対策」のためと言っている「ライフル射撃練習場」』との記載がある。
  26. 愛知県警察ホームページの随意契約情報に記載 [7]。なお、支出は国費(国家予算)で行われている。
  27. 福岡県警察ホームページに記載[8]
  28. 週刊新潮』2007年5月31日号
  29. 産経新聞』2007年5月29日
  30. 「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」第二条では、警察法第六十八条第一項の規定により警察官又は皇宮護衛官が貸与される小型武器(けん銃)以外のものを「特殊銃」と規定している。
  31. コンバットマガジン』2002年8月号に掲載された記事「SAT 日本警察特殊急襲部隊」に記載
  32. 2014年4月24日朝日放送ビーバップ!ハイヒール「ヒミツのベールに包まれた警察特殊部隊SAT」
  33. なお、日本の警察において「スカイマーシャル」とは航空機警乗組織のことであり、大阪府警察と千葉県警察の機動隊に設置されている。
  34. 産経新聞』、2006年8月23日大阪版、朝刊
  35. 『特殊部隊全史』(著者マーティン・C・アロステギ、平賀秀明訳、朝日新聞社、1998年)の『第7章「キリングハウス」を越えて』に以下の記載がある。『第二ニSAS連隊、デルタ・フォース、日本の警察のSWATチームなどさまざまな部隊がパースを訪れ、モーケスのいう「世界で最も高性能なCT訓練施設」を利用するため、高額のカネを落としていった』
  36. 時事ドットコム』2007年6月5日
  37. 『読売オンライン』2010年11月26日
  38. 組織の正式名称は『警察白書』平成20年度版の第4章第3節「国際テロ対策」に記載
  39. 『SATマガジン』12号
  40. 軍事専門誌『Jグランド』第9号に掲載された記事「フランス特殊部隊GIGN&RAID」には、「現在でもGIGNとSATの教官クラスは交換留学トレーニングを行っている。」と記載されている。
  41. 『SATマガジン』2009年1月号に掲載された記事「日本警察の拳銃」に記載