手錠

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手錠(てじょう)とは、手首にはめての自由を奪うことで逃走・暴行自殺を防ぐための拘束具のひとつである。警察官被疑者逮捕する時、また保護しようとした泥酔者が暴れるなどして危険な場合などに用いる。またBDSMにおいても使用される。

性質

手錠は被拘束者のの自由を不完全に奪うが、下半身にはあまり制約が加えられないため、身体的には逃走は可能である(腕を大きく振れないため、走ることには制約がつきまとい、バランスを取るのは難しい。そのうえ容易に外せるものではないため、逃走した場合の被拘束者を示す恰好の目印になる)。また、衣類のボタンの掛け外しなどは支障なくおこなえる枷であり、拘束衣のようなものとは性格を異にする。こうしたことから、手錠や江戸時代の手鎖は、行動や表現の自由を形として奪うものという性格が指摘できる。ただし、現代日本では、手錠には捕縄(ほじょう。腰紐)が付けられており、手錠を嵌めると同時に捕縄で両手を腰部にくくりつけられるという形態である。

同種の拘束具に、両手の親指に嵌めて腕の自由を制限する指錠、足首に嵌めて逃走を防止する足錠というものもある(歩幅が大きく広がらないよう鎖で制限されているため、早く歩くのも困難)。

逮捕と手錠

手錠に対し、しばしば「被疑者逮捕する際、手錠をかけなければならない」「手錠は逮捕するための道具である」と認識されることもあるが、検察官の逮捕執行には手錠は用いられない事を見ても分かるように、誤った認識である(但し「警察24時」では、PRのために、手錠をかける様子を必ず収録させる)。

日本におけるニュース映像などでは1990年代頃から、被疑者に掛けられた手錠を極力映さないようにし、映った場合もその部分にはモザイク処理などで隠されている。これは、ロス疑惑において三浦和義が「有罪が確定していない、推定無罪の被疑者を晒し者にする」として訴訟を起こしたことがきっかけとなった。

映画などでは民間人や非番の警察官が旅客機のハイジャックに遭遇して犯人を拘束する場合、手錠の代用としてビニールテープガムテープを何重にも巻きつける場面が見られることがある。

材質

通常は金属製だが、フレックスカフと呼ばれる樹脂製のものもある。これはかつては電工用のケーブルタイと同種のものであったが、現在では専用の樹脂手錠が作られている[1]。こちらは主にアメリカ合衆国で、被逮捕者を多数出す事が予想される強制捜査などに使用されており、パトロール部門から特殊部隊まで利用される分野は幅広い。

日本における一般的な警察官の手錠は以前はニッケルめっきされた鋼鉄製の重厚なものであったが、容疑者を拘束するのは事実上捜査員のみになっており、制服警官は現行犯逮捕でもしない限りほとんど使用する機会がないため、拳銃警棒と共に装備軽量化が図られ黒色アルミ合金製の物に変更された(状況によっては予備弾や無線機まで持たねばならないわけで、フル装備になると帯革も含めたその重さで腰痛を患う者が続出したという。旧形式の帯革が負革付きで、更に冬上着には支えの金属フックまで縫い付けられていたのはこのため)。しかし簡単にペンチニッパーなど市販の工具で破壊できるようになり、凶悪犯や外国人犯罪者に対して通常逮捕(逮捕状の執行)に行く場合などは旧型手錠に捕縛紐を付けたものが使われる事もある。

販売

日本では司法機関で使用する製品(官給品)が市中に出回ることが禁止されている。手錠の一つ一つに管理番号が刻印されているため、たとえ闇市場などに流通しても出所が確認できる(市場に出回っているとすれば、容易に壊せるプラスチック製の玩具か、鍵がなくても外せるタイプのみとなっている)。また、民間人はもちろんのこと、警察官や看守などの正当な職務者であっても、私的に購入・所持することもできない(過去には、警察官が官給品を私的に購入することが可能な時代もあった)。他方、日本国内であっても、アジア製など粗悪なものを含め、防犯グッズ店、マニア店や通信販売で、鍵がなければ開かない真正品が容易に入手できる。アメリカでは警察官保安官が消耗した装備品を個人購入出来ることもあり、市販されている(ピアリススミス&ウェッソンビアンキ・インターナショナルなどが有名)。

脚注

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関連項目

国際的なメーカー

  • 製品例:Safariland Model 8220 Double Cuff