埼玉県立伊奈学園中学校・伊奈学園総合高等学校
埼玉県立伊奈学園中学校・伊奈学園総合高等学校(さいたまけんりつ いながくえんちゅうがっこう・いながくえんそうごうこうとうがっこう)は埼玉県北足立郡伊奈町学園4丁目にある県立中高一貫校(一部併設型)。通称・伊奈学(いながく)。
目次
概要
伊奈学園総合高等学校は、1984年に創設された、全国で初めての総合選択制の普通高校である。2003年に伊奈学園中学校を開校し、一部中高一貫校となった。名称に「学園」が使われているが埼玉県立であり、「総合」の名も使われているが総合学科ではなく普通科の高校。スーパーイングリッシュランゲージハイスクール (SELHi) に指定された。
学校の規模が大きく、標準の高校の約3校分の生徒(約2,400人)が在籍している[1]。そのため「ハウス」と呼ばれる6つの校舎と教科棟により構成される。この6つのハウスと教科棟はモールと呼ばれる大きな渡り廊下によって繋がれている。モールには購買部のほか、昼休み時には弁当・パン・飲料の売店も設けられる。
また、校内には「文字情報システム」と呼ばれる液晶モニターがハウスホール・ハウスセンター(職員室)・モールなどに設置されており、常に校内の最新情報、生徒への諸連絡、部活動等の最新の成績などが放送されている。年に数回、放送部による番組も放映される。この文字情報システムは2005年から2006年にかけてシステムが大きく更新され、下段には国内外の最新ニュースもスクロール表示できるようになった。なお、1ハウス付近のモニターでは、付属中学校の生徒向けの独自放送がなされている。
本校ではテレフォンサービスを運営しており、伊奈学園の近況をテープの音声で聞くことができるサービスを提供している。
さらに、15万5千平方メートルのキャンパスに、サッカー場、ラグビー場、野球場、ハンドボール場、弓道場、ソフトボール場、テニスコートなど、各部活ごとにグラウンドが備えられている。伊奈町の「いなまつり」での花火の打ち上げは伊奈学園のラグビー場から行われる。
2006年には、すべての教室にクーラーが設置された。また、教育面でも日本初の総合選択制の導入や7つの学系の導入など、ユニークなシステムをとっている。学系とは、系統的な学習をするためのコース制である。
学校には国内外から視察団が訪れている。1984年には松永光文部大臣、1993年には森山真弓文部大臣、今上天皇・皇后が視察している。
総合選択制
当校における総合選択制とは、時間割を生徒自身で決定し組み立てる事ができるシステムの事である。伊奈学園には約190もの講座(科目)があり、生徒ひとり一人が自分にあった時間割を作ることができる。ただし、ごく稀ではあるが講座の人数が不足すると不開講になることもあり[2]、必ずしも自分の作った時間割通りになるという訳でもない。
学系
学系とは、系統的な学習をするためのコース制である。 伊奈学園には人文系・理数系・語学系(英語・ドイツ語・フランス語・中国語)・芸術系(音楽・美術・工芸・書道)・スポーツ科学系・情報経営系・生活科学系の7つがある。入学選抜試験の出願時に学系を選択する(途中変更不可)。伊奈学園中学校からの内進生(内部進学生徒)は原則として人文系・理数系からの選択となる。
- 人文系
- 理数系
- 語学系
- スポーツ科学系
- 芸術系
- 生活科学系
- 情報経営系
ハウス制
伊奈学園には、以下の「ハウス」とよばれる6つの校舎があり、生徒は学系等に関係なくいずれかのハウスに所属する。各ハウスそれぞれに職員室(ハウスセンター)があり、それぞれに教頭(ハウス長)がいる。体育祭や文化祭行事は、ハウスごとに競う。各ハウスにはそれぞれハウスカラーがあり、ハウスカラーの校章・上履きがある。自転車に貼る鑑札もハウスごとに色が異なる。また修学旅行の行き先もハウスごとに異なる。
- 第1ハウス(国語棟)
- 第2ハウス(外国語棟)
- 3階には外国語科の教科教室がある。ハウスカラーは黄色。付属中学校からの内進生は、全員2ハウスに所属する。
- 第3ハウス(社会棟)
- 3階には社会科の教科教室がある。ハウスカラーは白色。
- 第4ハウス(数学棟)
- 3階には数学科の教科教室がある。ハウスカラーは緑色。モールに出てすぐに購買コーナー・進路センター(1階は保健センター)がある。
- 第5ハウス(理科棟)
- 3階には理科の教科教室がある。ハウスカラーは水色。
- 第6ハウス(理科棟)
- ※芸術・家庭・商業棟
- 校内で唯一4階建ての建物である。1階が工芸教科教室・中央図書館・開放棟[3]、2階が美術教科教室・商業教科教室、3階が家庭教科教室・書道教科教室、4階が音楽教科教室という配置になっている。ハウスカラーは茶色。
- ※体育棟
- 大体育館、第1体育館、第2体育館、第3体育館、剣道場、柔道場、保健体育教科教室、更衣室、シャワー室がある。ハウスカラーは橙色。
- ※管理棟
- 事務局、校長室、会議室などがある。ハウスカラーは黒色。
通常の高校では自分の所属するクラス(ホームルーム)で授業を受けるが、伊奈学園は一人ひとりによって時間割が違うため、特に選択科目では自分のHRで授業を受けることが出来ず、講座が開かれる教室へ移動して授業を受ける。たとえば化学の授業を受けるには理科棟に移動して授業を受けることになる。
部活動
約50の部活・同好会がある。 高校では珍しいラクロス部(女子)などがあるほか、サッカー部などの大きなクラブでは部員が100名以上に達し、二軍、三軍が設置されている。また過去には野球部が第62回選抜高等学校野球大会に出場した経験もある。
主な成績
- 吹奏楽部
- 全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞
- 全日本マーチングコンテストで金賞を受賞
- 管楽合奏コンテスト全国大会で最優秀賞を受賞
- 第15回環太平洋音楽祭に出場、同グランプリを受賞
- 第27回ウィーン国際青少年音楽祭に招待出場、同ウィーン大賞(グランプリ)受賞
- 音楽部(合唱)
- 全日本合唱コンクールで金賞を受賞
- 硬式野球部
- 男子バレーボール部
- 第63回全日本バレーボール高等学校選手権大会出場
- 全国高等学校バレーボール選抜優勝大会(春高バレー)出場(3回)
- 弓道部
- 全国高等学校総合体育大会(インターハイ)出場
- 陸上競技部
- 毎年インターハイ・ジュニアオリンピックに多数出場
- 平成18年度インターハイ女子400m8位入賞、その他走り高跳び2名、走り幅跳び、4×100mリレー、マイルリレー、七種競技などが出場
- 400mトラック・ウェイトルーム(短距離)及び1kmタータントラック(長距離)完備
その他にも水泳部・バスケットボール部・硬式テニス部などが全国高等学校総合体育大会(インターハイ)に出場。 軟式野球部などが関東大会に出場
進学実績
- 進学校であり、例年埼玉大学をはじめとした国公立大学には30名前後の合格実績がある。2010年には東京大学への合格者を輩出した他、近年では一橋大学や東北大学などへの輩出もしている。私立大学への合格実績では早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学・東京理科大学に各20名前後。明治大学・中央大学・立教大学・法政大学には各大学30名前後、120名近い合格者を輩出している。青山学院大学や学習院大学への合格者も毎年10名ほどに上る。また日本大学や東洋大学・駒澤大学・獨協大学などの合格者数も非常に多い。普通科ながら芸術や情報等の専門分野を重視して学べるため、東京音楽大学等の所謂音大や美大、各種専門学校など専門分野への進学率も高い。
文化祭
通称「いなほ祭」。毎年9月初旬の土曜日と日曜日の二日間開催される。全クラスが参加し、各教室や校舎敷地の一部を利用したさまざまな催し物、模擬店が出される。クラス毎にオリジナルのシャツ(クラスTシャツ)を作り、着用することも広く行われている。また、各ハウス校舎はそれぞれのハウスの独自色を出したモニュメントや飾りつけが施され、一般来校者や校長らの投票によって優劣が競われる。 体育館では応援部の演技や教員、学生らによるライブ、吹奏楽部の演奏会などが行われる。閉祭式ではその年のハウスモニュメントのベスト3、クラスごとの催し物のベスト3、クラスTシャツのNo.1が発表される。閉祭式後に中庭で行われる一般非公開の後夜祭は、任意参加ではあるが、市や企業協賛でないものとしては規模の大きい打ち上げ花火などもあり、多くの生徒が参加する。
一般来場者は毎年約15,000人にも上り、高校の文化祭としては非常に大規模であり、校舎の広さと相まって要所に案内人が配される他、迷子放送が流れることもある。また埼玉新聞やテレビ埼玉などのマスメディアも取材に来ることが多い。2007年にはNHKニュースおはよう日本の中継コーナー(全国放送)でも特集された。同祭の来場者のために埼玉新都市交通伊奈線(ニューシャトル)や同校を発着する路線バスでは、この開催日にあわせて臨時ダイヤが組まれ、大幅な増発が行われる。
校風・学校生活
- 比較的自由な校風。
- 文武両道の流れから、スポーツにも力を入れている。準備体操として「伊奈体操」と呼ばれる独自の体操が行われている。体育は、春はスポーツテスト、夏は水泳、秋から冬にかけては柔道・ラグビー・バレーボール・サッカー・マラソンなどが行われる。なお、ラグビーは県内でもごく一部の高校でしか行われていない。
- 伊奈副都心と呼ばれる学校付近の周辺地域には、大型ショッピングセンター(UNICUS伊奈)をはじめ、飲食店など多くの商業施設が立ち並んでいる。また、それにあわせ住宅街やマンションも建設され、近辺は急速に開発が進んでいる。
- 男子の制服は珍しい紺色の詰襟、女子は紺色のブレザー・赤系統のネクタイである。
- 生徒の男女の割合は例年女子の方が多く、近年では1学年で男子より200名以上多くなる年もある。
- 体育祭は例年上尾運動公園で行うが、2007年度は同公園改装のため鴻巣市立陸上競技場で行われた。
- 選択授業が多く、バラバラになることが多いためか、入学から卒業までクラス替えがない。原則として担任の変更もない。ただし、付属中学校にはクラス替えがある。
- かつて県立高校に学区制が採用されていた頃でも、特例として県内全域からの通学が認められていた。さいたま市・上尾市・伊奈町・桶川市などの近隣から通う生徒が多数を占めるが、鴻巣市や川口市・春日部市・深谷市・羽生市などに在住の生徒も多い。遠いところでは川越市・日高市・三郷市・秩父市・上里町・狭山市・加須市・美里町から通う生徒もいる。
- 修学旅行は高校としては遅く、2年次の3月に行われる学年末考査が終了してから。主な行き先は、北海道・東北(盛岡等)・関西(京都・奈良・大阪・神戸・広島)・九州(長崎等)・沖縄でありハウスごとに行き先は毎年決める。取り扱い業者もハウスごとに異なる。
図書館
正式名称「伊奈学園中央図書館」。同図書館は蔵書数8万冊を超え、学校図書室としては県内はもとより全国的にも屈指の蔵書数がある。そのため、建物として独立しているわけではないが、「図書室」ではなく「図書館」と呼ばれている。蔵書の種類も多種多様で、辞典・六法全書などをはじめ、電撃文庫や富士見ファンタジア文庫などまである。語学系の生徒のほか、海外からの留学生やALT(Assistant Language Teacher)などもいるため、ハリー・ポッターの英語版など外国語の書籍も充実している。また、図書館内にも「文字情報システム」のテレビモニターが設置されている。中学校にも図書室がある。
著名人出身者
*年長順
- 政治・行政
- 芸術・文化
- スポーツ
- 銭場一浩(投手、現社会人野球・東芝硬式野球部コーチ)
- 杉浦大輔(サッカー指導者)
- 伊藤琢矢(サッカー選手)
- 金子朋未(陸上競技選手)
- 石田智子(陸上競技選手)
- 谷内謙介(サッカー選手)
- 大島翼(サッカー選手)
- 竹内優(サッカー選手)
- 菊地俊介(サッカー選手)
- 芸能
- 高石明彦(映像プロデューサー)
- 水樹たま(タレント・グラビアアイドル)
- ミムラ(女優)
- TRIBAL CHAIR(ロックバンド)
- 岩井勇気(お笑いコンビ、ハライチ)
- 孫暐(モデル・Popteen在籍)
- 川田希(女優)
- 黒須あゆ美(女優)
- 佐藤大樹(EXILE)
交通
- 埼玉新都市交通伊奈線(ニューシャトル)、羽貫駅下車徒歩10分。
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)高崎線上尾駅東口より、朝日バス「伊奈総合高校」行きで約24分。
- JR高崎線北上尾駅東口より、けんちゃんバス「伊奈学園」行きで約23分。
- JR宇都宮線蓮田駅西口より、朝日バス「伊奈学園」行きで約20分(朝夕のみ運行)。
- JR宇都宮線白岡駅・蓮田駅、JR高崎線北上尾駅・桶川駅より、自転車でそれぞれ約25分。
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:Asbox- ↑ かつては3,000人を超えていた時期もあり、「3000」という数字が文化祭テーマなどで象徴的に用いられている。現在でも全国の公立高校のなかでは最も生徒数が多く、埼玉県立高校で唯一副校長がいる。また教頭も他校では通常1人のところ、本校では5人いる。
- ↑ 原則として最低講座開講人数は8人だが、芸術系科目等においては、それ以下の人数で行われる授業もある。
- ↑ 開放棟は、地域住民が公民館のように利用できることを目的として設けられた地域開放向け施設である。しかし現在は音楽・美術・家庭科の教室に改装され、生徒の授業・部活動に使用されている。この開放棟には、校内で唯一の自動ドアが設置されているほか、廊下にも冷暖房が完備されている。