数学
テンプレート:Otheruseslist テンプレート:出典の明記 本記事では数学(すうがく、テンプレート:Lang-el-short, テンプレート:Lang-la-short, テンプレート:Lang-en-short)について解説する。
概要
数学の最も普通の(ありきたりな)定義としては「数および図形についての学問」というものがある[1]。ただし、19世紀のヨーロッパで集合論が提起されてからは、「数学とは何か」ということが問い直されてるようになっており(数学基礎論)、数学の対象、方法、文化史的な価値などについて研究する数理哲学まで生まれており、現代的な意味では数学はもはや「数および図形についての学問」といった単純な定義で済ませておけない状態にある[1]。
上記のありきたりな定義の延長で言うならば、とりあえずは「数学は、量、構造、変化、空間といったものを対象として、いくつかの仮定から始めて、決められた演繹的推論を進めることで得られる体系を研究する学問」などとも言えるかも知れない。 数学とは、狭義には伝統的な数論や幾何学などの分野における研究とその成果の総称として、またそれらの成果を肯定的に内包する公理と推論からなる論理と理論の体系を指して言うものである。また広義には、超数学(メタ数学)などと呼ばれる枠組みにしたがって公理と推論規則が定められた体系一般を指す。現代的な数学においては、公理的に定義される抽象的な構造を、数理論理学を共通の枠組みとして用いて探究する。
数学は、西欧の学問分類では一般に「形式科学」に分類され、自然科学とははっきり区別されている。 方法論の如何によらず最終的には、数学としての成果というものは他の自然科学のように実験や観察によるものであってはならない。
数学、特に伝統的な純粋数学では数学研究が自己目的化されており、数学への内的な興味のために研究がなされる。 このような数学ではいかに本質的な概念なり定理なりを得ていかに体系的な数学を構築するかが重要視されており、数学的対象を記述するのに適した概念や空間を定義したり、数学的事象をうまく表現した定理を得たりすることが数学者の主な仕事である。一方で、美的な理由からそれぞれの分野での研究をしている数学者もいる。彼らは対称性や直観性などその独特の審美眼を以て、数学を芸術に近しいものとみなしているのである。この分野については数学の哲学、数学的な美に詳しい。
伝統的な数学分野で研究される対象は物理現象と深い関わりを持つものが多い。一方、応用分野では数理モデルという形で例えば計算機や言語などといったものを対象とした研究が行われる。もちろん、数理モデルにおける演繹から得られる成果と実際との間にいくぶんかのずれを生じることもあるが、そのずれの評価とモデルの実用性・実効性については多くは数学の外の話である。また、数学とパズルの類似性が指摘される事があるが、数学が本質性や体系性を重要視することに照らせば、パズルはむしろ奇をてらい非体系的である。こうした研究姿勢がしばしば様々な数学の諸分野を統一するような概念へと導いたり、他分野の学問の発展に貢献したりすることに繋がる。
なお、数学の語源について日本語「かず」は、説得力のある語源説は示されていない。提唱されたいくつかの説については数を参照。
歴史
研究
歴史的には、数学の主要な分野は人類が農耕を行うとともに必要となった次の三つの要素から生じたものである。農作物の分配管理や商取引のための計算、農地管理のための測量、そして農作業の時期を知る暦法のための天文現象の周期性の解明。これら三つの必要性は、そのまま数学の大きな三つの区分、構造、空間、変化のそれぞれの研究に大体対応しているといえよう。例えば土木工事などの経験から直角三角形の辺の比は知り得ても、論理的にはこの時点では解明できていない。3 : 4 : 5 は経験的に正しいが、比から導かれる c2 = a2 + b2 (c, b, a は辺の長さ、または比)が普遍的に成立するかは不明である(証明はピタゴラスの定理を参照こと)。かつて数学が独立した学問でなく、純粋な実用数学であった時代には、あたかも自然科学におけるデータのようにこれらの関係を扱い、例を多数挙げることで正しさを主張するといった手法でもさして問題視されなかった。しかし数は無限に存在するため、たとえコンピュータを使って沢山の数を調べても完全に証明することはできない。よってこのような手法では完全な真偽の判定はできず、数学が一つの学問として研究されるようになって以降は当然ながら別の方法が求められることになり、論理を用いて真偽を判定する「数学的証明」という概念が発達した。そのため現在の数学では証明は非常に重視されている。
現代における純粋数学の研究は主に代数学、幾何学、解析学の三分野に大別される。また、これらの数学を記述するのに必要な道具を与える論理を研究する学問を数学基礎論という。
- 基礎付け
- 数学の基礎を明確にすること、あるいは数学そのものを研究することのために、集合論や数理論理学そしてモデル理論は発展してきた。フランスの数学者グループであるニコラ・ブルバキは、集合論による数学の基礎付けを行い、その巨大な体系を『数学原論』として著した。彼らのスタイルはブルバキ主義とよばれ、現代数学の発展に大きな影響をあたえた。個々の対象の持つ性質を中心とする研究方法である集合論とは別の体系として、対象同士の関係性が作るシステムに主眼を置くことにより対象を研究する方法として圏と関手の理論がある。これはシステムという具体性からコンピュータネットワークなどに応用される一方で、極めて高い抽象性を持つ議論を経て極めて具体的な結果を得るようなアブストラクト・ナンセンスなどと呼ばれる形式性も持ち合わせている。
- 構造
- 数や関数、図形の中の点などの数学的対象の間に成り立つさまざまな関係を形式化・公理化して調べるという立場がダフィット・ヒルベルトやニコラ・ブルバキによって追求された。数の大小関係や演算、点の近さ遠さなどの関係がそれぞれ順序構造や群の構造、位相構造などの概念として公理化され、その帰結が研究される。特に、様々な代数的構造の性質を研究する抽象代数学は20世紀に大きく発展した。現代数学で取り扱われる構造は上のような基本的な構造にとどまらず、異なった種類の構造を併せて考える位相線型空間や双曲群などさまざまなものがある。
- 空間
- 空間の研究は幾何学と共に始まる。初めは、それは身近な三次元におけるユークリッド幾何学や三角法であるが、後にはやはり、一般相対性理論で中心的な役割を演ずる非ユークリッド幾何学に一般化される。長い間未解決だった定規とコンパスによる作図の問題は、最終的にガロア理論によって決着が付いた。現代的な分野である微分幾何学や代数幾何学は幾何学を異なる方向に発展させた:微分幾何学では、座標系や滑らかさ、それに向きの概念が強調されるが、一方で代数幾何学では、代数方程式の解となるような集合を幾何学的な対象とする。集合は数学の基礎を成す重要な概念であるが、幾何学的な側面を強調する場合、集合を空間と言い、その集合の元を点と呼ぶ。群論では対称性という概念を抽象的に研究し、空間と代数構造の研究の間に関連を与える。位相幾何学は連続という概念に着目することで、空間と変化の双方の研究に関係する。
- 解析
- 測る量についての変化を理解し、記述することは自然科学の共通の主題であり、微積分学はまさにそのための最も有用な道具として発展してきた。変化する量を記述するのに使われる中心的な道具は関数である。多くの問題は、とても自然に量とその変化の割合との関係になり、そのような問題を解くための手法は微分方程式の分野で研究される。連続的な量を表すのに使われる数が実数であり、実数の性質や実数に値をとる関数の性質の詳しい研究は実解析として知られる。いくつかの理由から、複素数に拡張する方が便利であり、それは複素解析において研究される。関数解析学は関数空間(関数の集合に位相構造を持たせたもの)が興味の中心であり、この分野は量子力学やその他多くの学問の基盤となっている。自然の多くの現象は力学系によって記述され、カオス理論では、多くの系が決定可能であるにもかかわらず予測不可能な現れ方をする、という事実を扱う。
- 計算機
- 人類がコンピュータを最初に思いついたとき(それは実際に作られるより遥かに前のことだが)、いくつかの重要な理論的概念は数学者によってかたち作られ、計算可能性理論、計算複雑性理論、情報理論、そしてアルゴリズム情報理論の分野に発展した。これらの問題の内の多くは計算機科学において研究されている。離散数学は計算機科学において有用な数学の分野の総称である。数値解析は、丸め誤差を考慮に入れて、幅広い数学の問題について効率的にコンピュータの上で数値解を求める方法を研究する。また最近では、計算機科学を駆使して自然科学上の問題を解決する計算科学が急速に発展している。
- 統計
- 応用数学において、重要な分野に統計学が挙げられる。統計学はランダムな現象の記述や解析や予測を可能にし、全ての科学において、利用されている。統計学は隣接する分野である確率論とは違って実際の統計データを扱うこともあることから、「確率論までは数学だが統計学は違う」という考えを持っている人もいる。
分野
以下の分野や項目の一覧は、数学に対する一つの有機的な見方を反映している。
便宜上の分類
- 量
- 数--自然数--整数--偶数--奇数--小数--分数--素数--有理数--無理数--実数--複素数--四元数--八元数--十六元数--超実数--順序数--濃度--p進数--巨大数--整数列--数学定数--数の名称--無限
- 変化
- 算術--微積分学--ベクトル解析--解析学--微分方程式--力学系--カオス理論--関数一覧
- 構造
- 抽象代数学--数論--代数幾何学--群論--モノイド--解析学--位相幾何学--線型代数学--グラフ理論--圏論
- 空間
- 解析幾何学--位相幾何学--幾何学--三角法--代数幾何学--微分幾何学--線型代数学--フラクタル幾何--図形--図形の一覧--ベクトル解析
- 有限数学
- 組合せ論--素朴集合論--確率論--統計学--計算理論--離散数学--暗号法--暗号理論--グラフ理論--ゲーム理論--数理工学
- 数理科学
- 計算科学--数値解析--確率論--逆問題--数理物理学
- 有名な定理と予想
- フェルマーの最終定理--リーマン予想--連続体仮説--P≠NP予想--ゴールドバッハの予想--双子素数の予想--ゲーデルの不完全性定理--ポアンカレ予想--カントールの対角線論法--ピタゴラスの定理--中心極限定理--微積分学の基本定理--代数学の基本定理--四色定理--ツォルンの補題--オイラーの等式--コラッツの予想--合同数の問題--バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想--ヒルベルトの23の問題
- 基礎と方法
- 数理哲学--数学的直観主義--数学的構成主義--数学基礎論--集合論--数理論理学--モデル理論--圏と関手の理論--数学的証明--数学記号の表--逆数学
- 数学の歴史と世界における発展
- 数学の歴史--ユークリッド原論--和算--インドの数学--中国の数学・中国の剰余定理--アラビア数学--数学年表--数学者--フィールズ賞--アーベル賞--国際数学連合--数学の競技
数学に関する賞
- フィールズ賞(国際数学連合)
- ネヴァンリンナ賞(国際数学連合)
- ガウス賞(国際数学連合)
- アーベル賞(アーベル記念基金)
- 春季賞(日本数学会)
- ヴェブレン賞(アメリカ数学会)
- フランク・ネルソン・コール賞(アメリカ数学会)
- ヨーロッパ数学会賞(ヨーロッパ数学会)
- ウルフ賞数学部門(ウルフ財団)
- 「ノーベル数学賞」は存在しない。
脚注
参考文献
- 佐藤泰夫・佐藤純『数学とは何だろう—文化としての数学』(森北出版,1998年)
関連項目
その他
- 数学に関係する記事の書き方に関してはウィキプロジェクト 数学を参照。
- その他の数学に関係する記事の情報に関してはPortal:数学を参照。