ユークリッド原論

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ファイル:Oxyrhynchus papyrus with Euclid's Elements.jpg
エジプト中部のオクシュリュンコスで発見された『原論』のパピルス写本断片。紀元100年ごろの作。図は『原論』第2巻の命題5に添えられたもの。

原論』(げんろん、テンプレート:Lang-grc-short, ストイケイアテンプレート:Lang-en-short)は、紀元前3世紀ごろにエジプトアレクサンドリアで活躍した数学者エウクレイデステンプレート:Lang-grc-shortテンプレート:Lang-en-short ユークリッド)によって編纂された数学書である。

論証的学問としての数学の地位を確立した古代ギリシア数学を代表する名著。

英語の数学「Mathematics」の語源といわれているラテン語またはギリシア語の「マテーマタ」(テンプレート:Lang-grc-short)は「レッスン(学ばれるべきことども)」という意味であり、このマテーマタを集大成したものが『原論』である[1]

内容

構成

本書の内容は現在でもユークリッド幾何学として広く知られるものを含んでいるが、原論そのものは幾何学のみを扱うものではない。全13巻で内容は以下の通り[2]

巻数 定義 公準 公理 命題 内容
第1巻 23 5 5
(又は9)
48 平面図形の性質
第2巻 2 0 0 14 面積の変形(いわゆる幾何学的代数
第3巻 11 0 0 37 の性質
第4巻 7 0 0 16 円に内接・外接する多角形
第5巻 18 0 0 25 比例論
第6巻 4 0 0 33 比例論の図形への応用
第7巻 22 0 0 39 数論
第8巻 0 0 0 27 数論
第9巻 0 0 0 36 数論
第10巻 第1群 4
第2群 6
第3群 6
0 0 115 無理量論
第11巻 29 0 0 39 立体図形
第12巻 0 0 0 18 面積・体積
第13巻 0 0 0 18 正多面体

平面の初等幾何について述べられているのは1234巻と6巻。 ただし、この内容はユークリッド本人の業績というよりは、それ以前にピュタゴラス学派等の貢献により、ユークリッドの時代より前から既に体系化されていた情報を再編纂したものである可能性が高い。

また、5巻、12巻は当時のプラトン学派数学者エウドクソスの業績であるし、10巻、13巻は同じくプラトン学派のテアイテトスの貢献によりもたらされたものと考えられる。 よって、ユークリッド本人は主に既存の知識と最新の学術成果を付け加えて、『原論』を編纂したものと考えられる。

14巻、15巻も存在するが、それらはユークリッドの時代より後になって付け加えられたものだと考えられている。ハイベア・メンゲ編纂の『エウクレイデス全集』では第5巻に14巻、15巻がスコリア(古注)とともに収録されている[3]

定義・公準・公理

『原論』ではいくつかの定義からはじまり、5つの公準(要請)と、5つ(又は9つ)の公理(共通概念)が提示されている。議論の前提となる点や線、直線、面、角、円、中心などの概念が定義され、次のような5つの公準を真であるとして受け入れることにより、作図の問題の基礎を明確にしている。

  1. 任意の一点から他の一点に対して直線を引くこと
  2. 有限の直線を連続的にまっすぐ延長すること
  3. 任意の中心と半径で円を描くこと
  4. すべての直角は互いに等しいこと
  5. 直線が2直線と交わるとき、同じ側の内角の和が2直角より小さい場合、その2直線が限りなく延長されたとき、内角の和が2直角より小さい側で交わる。

これらのうち5番目の公準については古代より、他の公理、公準に比して突出して複雑、自明とするには疑問とされていたが、この疑問により、近代に至ってこの公準が成立しないとする幾何学である非ユークリッド幾何学の発端となる。 さらに公準の後に次のような公理が示される。これはあらゆる学問に共通の真理として受け入れられるものであり、研究において常に参照すべきものとされている。

  1. 同じものに等しいものは、互いに等しい
  2. 同じものに同じものを加えた場合、その合計は等しい
  3. 同じものから同じものを引いた場合、残りは等しい
  4. [不等なものに同じものを加えた場合、その合計は不等である]
  5. [同じものの2倍は、互いに等しい]
  6. [同じものの半分は、互いに等しい]
  7. 互いに重なり合うものは、互いに等しい
  8. 全体は、部分より大きい
  9. [2線分は面積を囲まない]

ただし[]で囲まれた公理は公理に含めないことがある。第5公理は第2公理から導かれる。また第9公理を現代的に言い換えると「異なる2点を通る直線はただ1本だけ存在する」となる。第9公理は幾何学に関するものなので、本来は公準に含められるものと考えられる。

原典と翻訳

日本語訳

英訳

原典

脚注

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参考文献

関連項目

外部リンク

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  1. 高橋(2008), pp. i-ii.
  2. 中村(1996), p. 489.より引用。
  3. Heiberg&Menge(1883-1916)