回数乗車券
テンプレート:半保護 テンプレート:国際化 回数乗車券(かいすうじょうしゃけん)とは、交通機関が一定の期間内に、一定の区間を複数回利用する旅客に対し、任意の割引率をもって発行する乗車券や金券の一種。一般には回数券(かいすうけん)と呼ばれる。
なお、交通機関以外のものについては回数券を参照。
目次
鉄道
一般的な普通回数券は、11枚綴りのものが普通運賃の10倍の値段で販売されるが、事業者によっては枚数や発売額が異なる場合がある。普通回数券のほか、利用時間等が限られる代わりに割引率の高い「時差回数券」・「土休日回数券」と呼ばれる回数券なども存在する。
利用区間が指定されている回数券と、社局線内のどの駅からも乗車することができる区間運賃額面式の回数券がある(後述)。
回数券は一定区間を複数回利用する乗客のために割引をしている乗車券であるが、複数人が利用しても問題はなく、複数人で同区間を利用する場合の割引運賃としても利用できる。
JR旅客各社における回数乗車券
JRグループにおいては、以下のものが規定されている。
- 普通回数乗車券
- 営業キロ200km以下で山陽新幹線新下関駅 - 博多駅間を含まない任意の区間および宮島航路で発行する。11枚綴りで同じ区間の片道分の普通乗車券の10倍の額で発売する。普通列車の普通車にのみ有効。ただし、急行料金を支払えば、急行列車の利用は可能であり、これは特急列車・新幹線列車についても同様である。JR(国鉄)常備券式(発行時日付スタンプを押す)は、11番目の券片のみ案内書きがある分大きい。最近は自動券売機やマルスでの発行が一般的である。3か月間有効。京阪神地区の民鉄と競合している一部区間については、普通乗車券の9倍の額で11枚綴りを発売している。
- 通学用割引一般普通回数乗車券
- 普通回数乗車券と発行内容は同様であるが、対象が放送大学および通信制学校への通学生であるため、金額は放送大学生については普通回数乗車券より2割引、通信制学校については5割引である。
- ミニ回数券(九州旅客鉄道(JR九州))、6枚回数券(四国旅客鉄道(JR四国))
- それぞれ九州内、四国内のみの普通回数券で、6枚つづりである。発売額は片道運賃の6倍から1割引(10円未満の端数切捨て)。普通回数乗車券と同様に特急券を購入した場合特急に乗車できる。有効期間は1か月(JR九州)、3か月(JR四国)。
なお、特急券と乗車券を同一紙片ないしはそう見なして新幹線各駅ないし周辺駅で発行される「新幹線回数券」など、特急券を含んだ回数券は「特別企画乗車券」(トクトクきっぷ)である。また、特定の特急列車を定期券で利用する場合に回数券形式で発行される特別急行券も同様に特別企画乗車券である。このほか、西日本旅客鉄道(JR西日本)の発行する昼間特割きっぷや、JR九州の2枚きっぷ・4枚きっぷ(特急券あり・なしが存在する)も、本項でいう回数乗車券にはあたらない。
以前には以下の回数乗車券も発行されていた。
- グリーン回数乗車券(発行終了)
- 営業キロ200km以下で、全区間普通列車のグリーン車を利用できる任意の区間で発行した。6枚綴りで、販売額は発行区間の片道分の普通乗車券と普通列車グリーン券の金額を合算し6倍した額から、1割を差し引いて、100円未満の端数を切り捨てた額だった。最終的には東日本旅客鉄道(JR東日本)管内で発行されていたが、2004年10月15日付で発行を終了した。
- 東京山手線内均一回数券・東京都区内均一回数券(発行終了)
- 「東京山手線内均一回数券」は、東京山手線内(山手線と東海道本線東京 - 品川間、東北本線東京 - 田端間、中央本線神田 - 代々木間、総武本線御茶ノ水 - 秋葉原間)に限り利用できた普通回数券で、11枚綴り1600円で販売されていた。また「東京都区内均一回数券」は有効区間を東京都区内に拡大したもので、11枚綴り2900円で販売されていた。どちらも予め区間を決めて購入するものではなく、それぞれのゾーン内ならどの区間でも有効で、しかも一般の普通回数券より安価な区間が多かったが、2000年1月31日付で発行を終了した。なお、この回数券の歴史は古く、1961年にはすでに日本交通公社(現・JTBパブリッシング)発行の時刻表に記載されていた。
私鉄・公営交通・第三セクターにおける回数乗車券
私鉄などJRグループ以外の鉄道事業者の中では、普通回数券として普通運賃10倍の発売額で11枚つづりの回数券を発売しているほか、利用できる日や時間を限定して割引率を変更する回数券がある[1]。たとえば時差回数券は、平日の10時から16時までと土曜・休日の終日有効で、事業者によっては土曜休日は利用できない場合もある[2]。さらに土曜休日回数券(該当日と年末年始の指定日に終日利用できる。事業者によってはお盆に土曜休日ダイヤで運転される日を含む)といった、普通券・時差回数券より割引率の高い回数券もある[3]。また、青森県の弘南鉄道や東京都のゆりかもめ[4](いずれも普通運賃の10倍で12枚綴り)、静岡県の伊豆急行や千葉県の東葉高速鉄道(日中・土休日券)(普通運賃の10倍で13枚綴り[5])などのように、割引率の高い事業者も存在する。また、青森県の青い森鉄道では、苫米地・北高岩両駅からJR八戸線本八戸駅まで、6枚綴りで3か月有効の『連絡ミニ回数券』を発売している。
また鉄道事業者によっては切符型ではなく磁気カードやICカード形式の回数券を導入している。利用する時は直接自動改札機に投入・読み取りするか、自動券売機にて乗車券と引き替える。これらのカードは「回数カード」「回数券カード」などと呼ばれる。仙台市交通局など、鉄道事業者によっては回数券をこれらの形式に限定し、紙の回数券を発行していないところもある。また愛知県の名古屋市交通局、愛知高速交通(リニモ)、名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)や静岡県の遠州鉄道では開通時から、またはSFシステム導入時にカードのプレミアムを回数券の代替と位置づけて回数券の発行を停止したり[6]、最初から発行していなかったりする。大阪市交通局では回数カードと呼ばれるプレミアム付きの減額式乗車カードを標準の回数券と位置づけており、利用区間を指定した回数券は1区特別回数券と連絡回数券を除いて発行していない。
一部の事業者(阪急電鉄など)では、乗り越し額精算時に回数券を金券として使用できる(例:A駅で180円区間の乗車券で乗車→390円区間のB駅で降車時、差額210円を180円回数券+現金30円で支払うことができる)。また、阪急電鉄と阪神電気鉄道は、金額が同一の回数券については相互で利用できる。この相互利用は阪急・阪神経営統合に伴うサービスとして打ち出された(2009年3月20日現在、該当区間は180円,260円,270円,310円区間)。ただし、違う会社の自動改札機に直接投入はできず、自動券売機で引き換える必要がある。
有効期間は、ほとんどの事業者が3か月間(または発売日の翌月から起算して3か月目の月末日、すなわち月初めに購入すれば4か月弱使用できる)だが、1990年代初めまでは関東を中心に1か月間や2か月間の事業者が多かった。新京成電鉄は2010年時点でも有効期間を2か月間としている。
乗り越した場合の精算方法
多くの事業者では、普通乗車券とは違って、回数券は利用区間が指定されており、その区間にある駅であればどの駅でも乗車は可能であるが、下車駅がその区間に含まれない場合は、同じ運賃であってもその区間の末端駅から下車駅までの普通運賃を精算しなければならない。
例えば、JR東海道本線の横浜駅から品川駅までを利用しようとして乗車券を購入したものの、恵比寿駅で降りる場合、普通乗車券で利用した場合横浜 - 品川間の普通運賃と横浜 - 恵比寿間の普通運賃の差額の100円を精算すればよいが、横浜 - 品川間の回数券で利用した場合、品川 - 恵比寿間の普通運賃150円を精算しなければならない(参考:横浜 - 品川間280円〈普通運賃〉+150円=430円、横浜 - 恵比寿間380円)。
ただし、東京地下鉄(東京メトロ)・都営地下鉄・東京急行電鉄や関西の各社局などでは上記の利用区間指定式ではなく区間運賃額面式の回数券を発行している。この場合、購入した駅にかかわらずその社局線内のどの駅からでも利用可能で、乗車した駅から額面以上の駅まで乗車した場合には、乗車駅から下車駅までの運賃と額面との差額を精算することになる。ただし、有効線区は発行元の社局線のみで、普通乗車券の場合のように他線区から乗り入れた際の剰余分を精算額に含ませることや、連絡割引の適用を受けることはできない。
例えば、東京メトロの渋谷駅から新橋駅までを利用しようとして乗車券を購入したものの、西船橋駅まで乗り越した場合、普通乗車券で利用した場合でも、160円区間の回数券で利用した場合でも、渋谷 - 新橋間の普通運賃と渋谷 - 西船橋間の普通運賃の差額の110円を精算すればよい。
長野電鉄のように、窓口では利用区間指定式・券売機では区間運賃額面式で発券しながら、精算時にはすべて利用区間指定式に準じた扱いを行う社局もある。
例外として、泉北高速鉄道と南海電気鉄道との直通回数券の場合、南海線内の利用は中百舌鳥起点での運賃で判断されるため、「難波 - 中百舌鳥 - 泉北線内」の回数券で、「河内長野 - 中百舌鳥 - 泉北線内」での利用も可能である。
バス
バス事業者の場合、先のJRグループ以外の鉄道事業者と同様に一定の区間を区切って発行する場合と、「金券式回数券」と称して同一運賃帯に有効な回数券を発行する場合がある。なお、バス事業者の場合においては区間を区切って発行する場合と、金券式の場合とで有効期限に差異がみられることがある。また、金券式の一部は利用できる金額が発売額を上回るが、乗車時に1回の乗車で全額を使い切ることが道路運送法の「運賃の値引き」に該当するため、拒否される場合がある。これは事業者ごとに解釈が変わるので、事前に確認が必要がある(例、1,100円区間を乗車するために、発売額1,000円利用可能額1,100円の回数券を購入して乗車すること)。
バス会社や地域で、独自の形態の割引が設定されている回数券も見受けられる(後述)が、利用期限が定められていたり、特定日・特定区間・特定対象者しか使用できないこともある。また、長野県の松本電鉄バスでは、回数券は券面の10倍の発売額で13枚つづりの金券式回数券のみ発売している[1]。
東京圏において発行されていたバス共通カードは、個々の事業者が発行する金券式の回数券と同じように扱われていた。
複数の事業者で共通利用できる回数券もあり、例としては
- 京都市域の「京都市域バス共通回数券」(1976年10月から発行されており、2012年5月現在では京都市交通局・京阪バス・京都バス・京阪京都交通・阪急バス・西日本ジェイアールバス・ヤサカバス・京北ふるさとバス・京阪シティバス各社局バスの京都市域を含む区間に乗車できる)
- 長野県長野市近辺をエリアとする、川中島バスと長電バスでは、両社発行の回数券が交互に利用できる[2]。
- 徳島県徳島市近辺をエリアとする徳島市営バスの回数券と、鳴門市近辺をエリアとする鳴門市営バスの回数券は、徳島バスでも利用できる[3][4]。
- 2006年3月まで、秋田市を事業エリアとする秋田市交通局と秋田市および南秋田郡周辺を事業エリアとする秋田中央交通の回数券は相互に利用できた。それ以前から現在テンプレート:いつまで、明記はされていないが、秋田中央交通と、羽後交通・秋北バスの各秋田市乗り入れ路線では、回数券の相互利用が可能となっている。
- 長崎県をエリアとする長崎自動車・長崎県交通局・島原鉄道・西肥自動車・佐世保市交通局では、この5社局(およびそれらの子会社・委託運行事業者)で共通に使用できる回数乗車券を1987年12月から2004年9月まで発行していた。長崎スマートカードを代替に廃止されたが、同カードではこの5社局に加えて長崎電気軌道・松浦鉄道でも共通利用を実現している。
2000年代以降はICカードを用いた回数券も普及している。PASMOは鉄道と共通して使え、「バス利用特典」によって、1か月のバス利用額に応じたプレミアを上乗せして、回数券の機能を踏襲している(相互利用できるSuicaも鉄道利用にはプレミアがつかないがバス利用の場合は同じ)。なお、ICOCAは「普通乗車券」扱いであり、バスと相互利用できてもプレミアはつかない。
なお乗車カード導入により紙製の回数券の販売を終了している事業者も遠州鉄道[7]・京阪宇治バス・福島交通など存在する。
バス回数券の種類
- 区間式
- 指定された停留所区間、またはその区間内で有効。2枚 - 11枚で発売される。高速バスにはこのタイプが多い。有効期限がある場合とない場合がある。
- 金額式
- ある決まった運賃分の券を11枚綴りなどで販売する(例えば270円券の11枚綴りを2700円で販売、等)。有効期限はない場合が多い。事業者にもよるが、券面額10円ごとに種類が分けられていて種類が多い場合、車内では購入できず、窓口でしか購入できない券種もある。昭和自動車では、専用の券売機で好きな額の11枚綴り回数券を買うことができる。堀川バスでは、その路線で需要が多い区間によって、車内で販売する回数券の種類を変えている。
- 金券式[8]
- 10円券・20円券・100円券などを1冊にまとめて1冊1,000円(券面合計は1100円)や2,000円(券面合計は2200円)といった、きりのよい金額で販売する場合と、10円・100円といった券を11枚まとめて10枚分の値段で販売する場合がある。使用区間に制限はないが、使用枚数に制限のある事業者もある。有効期限はない。異なる運賃区間で使用でき、金額式のように種類を揃える必要がないため、このタイプを発売する事業者が多い。
- バスカード
- 金券式を磁気式にしたもの。プリペイドタイプで、テレホンカードのように使用額に応じて穴が開けられる。導入の理由には、金券式における不正利用(表紙ごとや、1枚ずつバラバラにして運賃箱に投入して金額を視認できないようにする)をなくすためでもあった。
- ICカード
- 磁気式バスカードをさらに進化させて、運賃箱にタッチするだけで簡単に利用できる。磁気カードと違い、チャージすることで再利用でき、狭い挿入口にカードを入れる不便も解消した。しかし、導入経費がかさむため、大手事業者や自治体の補助が受けられる事業者に限られている。
その他のバス回数券の種類
- 通学回数券
- バス会社が指定する学校の生徒で、通学の際に利用できる回数券。通信制大学や放送大学の受講生も対象であるケースもある。青森市営バスの学生・生徒専用バスカードもこれにあたる。
- バス利用促進用回数券
- 毎月1日だけ、1日と15日だけなど特定日のみ使用できる回数券である。バスの利用を促すため、一般の回数券より割引率が高い。例としては静岡県のバス事業者がそれぞれ販売する「ゼロの日回数券」[9]の他、栃木県宇都宮市内を発着するバス会社や、福島県内や長野県内の主なバス会社などで見られる。
- 昼間回数券
- 乗車需要が落ち込む昼間に限って利用できる回数券。「買物回数券」と呼ばれる場合もある。通用時間帯は事業者によって異なるが、概ね9時または10時から16時の間のみ有効。土曜・休日は終日利用できる事業者もある。乗車時刻が16時以前なら、降車時刻が16時以降でも有効の事業者と、16時以降の降車では(交通事情により定刻から遅れても)使用できない事業者があるので、利用する際は回数券の注意事項を参照のこと。
- 往復回数券
- 指定された区間を往復する場合、往復割引運賃で発売される。主に各空港と最寄の市内地を結ぶリムジンバスや、先述の高速バスで見受けられる。往復1人分・2枚をセットで発売する場合・数枚をセットで発売する場合や、有効期限があるタイプ・ないタイプ等、種類が色々ある。
- 定期回数券
- 定額の定期乗車券を回数券方式にしたもの。かつて存在していた京阪宇治交通のくずは地区や、現在でも京阪バスなどの一部事業者で設定。京阪宇治交通の定期回数券は50枚綴りで、通常の定期券よりもやや安めに設定されていた。降車の際に氏名と年齢が記名されている表紙を乗務員に見せ、切り離した副券を運賃箱に投入する方式である。海外の交通機関の「定期券」と称する乗車券は、鉄道、バスに限らずこのタイプが多い。
船舶
旅客船、フェリー等においても、鉄道やバスと同様に回数券式の乗船券を発行している。多くは割引付きである。なお、フェリーにおいては、乗船券相当の券を「自動車航送券」と称することが多く、この際の回数券は「回数自動車航送券」と称する。
航空会社
日本の航空会社の場合、かつては回数券が一般に発行される割引率が高い切符として知られていた。また、鉄道事業者のものと異なり、記名式かつ切り離し無効であった(そのため金券ショップでは会員制とした上でレンタルする形で回数券がバラ売りされていた)。
航空会社の回数券は、当初6回分を1冊とした回数券が全区間で発行されていたが、その後4回分で1冊とされた。
後に、予約変更は不可ながら前日まで購入できる特定便割引や早期購入割引等、回数券以外にも割引率の高い各種運賃が普及したことに加え、表紙片を搭乗手続きの際に毎回見せる作業が航空券の全面電子化の流れに対応できないこともあって徐々に縮小され、2008年度上半期の運賃から日本航空(JAL)・全日本空輸(ANA)ともに4回回数券を廃止したことで、航空会社の回数券は全廃された。
ただ、現在では両社ともに自社のクレジットカード会員に限定して、記名式、2券片、90日間有効、自社便への変更可という、回数券に類似した航空券を発売している[10][11][12][13]。また、企業向けオンライン予約システムの契約先だけが利用できる同様の運賃も用意されている[14]。
脚注
外部リンク
- きっぷに関するご案内 回数乗車券 - JR東日本