グリーン券
グリーン券(グリーンけん)とは、特別車両券(とくべつしゃりょうけん)ともいい、JRグループ(かつての日本国有鉄道)及びそれに乗り入れる鉄道会社のグリーン車(室)に乗車するために必要な料金券である。1969年(昭和44年)5月10日に従来の二等級制運賃が廃され、モノクラス制運賃に移行したのにともない設定されたものである。グリーン車は、二等級制時代の「一等車」に相当するが、二等級制時代の一等運賃と異なり、特別車両とされるグリーン車に乗車するために必要となる、運賃に付加される料金という形である。かつては青函連絡船・宇高連絡船にもグリーン券の制度があった。
なお、1989年(平成元年)4月1日の消費税導入前には10%の通行税を料金に含んで計算されており、券面上に「料金は税共」と表示されていたが、消費税の税率が通行税時代より下がった(10%→3%)ため、料金が安くなっている。
目次
JRグループ
特急・急行列車用と普通列車(快速列車を含む)用の2種類にまず分かれる。なお、旅客営業規則では、前者を特別車両券(A)、後者を特別車両券(B)としている。ぞれぞれさらに指定席グリーン券と自由席グリーン券に分かれる。指定席はグリーン券によって座席指定がなされるため、別途座席指定料金を支払わなくてよい。
料金に大人・小児の区別はなく同額である[1]。
グリーン車で着席せずに車室内やデッキに立って乗車している場合もグリーン券が必要になる。
特急・急行列車用
指定席・自由席の種類によらず、料金は同額である。
原則として1枚で1本の列車についてのみ有効である。なお、新幹線同士など一部の異なる列車を乗り継ぐ場合には乗り継ぎ料金制度がある。自由席の有効期間は購入日(前売りの場合は有効期間開始日と指定した日。以下同じ。)とその翌日の2日間である。
特急列車のグリーン車は原則として指定席のみである。急行列車のグリーン車は指定席が基本であったが、自由席のものもあった。2012年3月17日のダイヤ改正で「きたぐに」が臨時化されたことにより、定期急行列車でグリーン車が連結されているものは全て廃止されている。
なお、指定席の場合の特急料金は、座席指定料金相当額を減じた自由席特急料金と同額の指定席特急料金が適用される。
途中の駅から普通列車になる列車の場合(その逆も含む)、乗車全区間に対して特急・急行列車用として発売されるが、料金は特急・急行列車として運行される区間の分だけでよい[2]。
普通列車用
テンプレート:Vertical images list 一般に設備が特急・急行列車用よりも簡素(特急列車の普通車並み)なため、料金は安価に設定されている。
原則として指定席・自由席の別による料金の違いはないが、後述の#東京圏におけるグリーン券の扱いが適用される場合は違いが生じることがある。また、1枚で1本の列車にのみ有効であるが、同じく東京圏においては乗り継ぎ料金制度がある。自由席の有効期間は購入日当日限りである[3]。
自由席グリーン車が運行されている路線では、乗車券とグリーン券を併せたグリーン定期券も発売される。
東京圏におけるグリーン券の扱い
従来、東海道本線および快速電車を介して横須賀線・総武本線・外房線・内房線・成田線のみに連結されていたグリーン車が、2004年(平成16年)10月16日より湘南新宿ラインを介して新宿駅以北の高崎線・東北本線(宇都宮線)にまで乗り入れることになった。これに伴い、従前の扱いを改変して運用されることになった。なお、グリーン車連結は2007年(平成19年)3月18日からは常磐線にも拡大した。
また、従来から運用されていた東海道本線・横須賀線で実施していた相互の乗り換えによる乗り継ぎ料金制度を拡大し、異なる運転系統へ逆向きになるような形で乗り継ぐ経路を除いて、料金区間内であれば乗り継ぎ可とした。乗り継ぎが不可であるような例は乗り継ぎ料金制度#普通列車を参照のこと。
この取り扱いがなされるのは東京近郊区間を主に運行される普通列車・快速列車の自由席のものに限られ、「中央ライナー」「青梅ライナー」等に連結されている普通列車・快速列車の座席指定制のものについては適用されない。
適用される線区は、以下の区間である。
- 東海道本線(東京駅 - 沼津駅間)
- 伊東線(熱海駅 - 伊東駅間)
- 横須賀線(東京駅 - 久里浜駅間)
- 総武本線(東京駅 - 成東駅間)
- 成田線(佐倉駅 - 成田駅 - 成田空港駅間)
- 外房線(千葉駅 - 上総一ノ宮駅間)
- 内房線(蘇我駅 - 君津駅間)
- 湘南新宿ライン(大宮駅 - 新宿駅 - 大船駅間)
- 宇都宮線(上野駅 - 宇都宮駅 - 黒磯駅間)
- 高崎線・上越線・両毛線(上野駅 - 高崎駅 - 前橋駅間)
- 常磐線(上野駅 - 高萩駅間)
- 相違点として、以下のものが挙げられる。
- 乗車日[4]により料金体系を「平日料金」・「ホリデー料金」の2本立てとした。ホリデー料金は平日料金の200円引きである。
- 従来、乗車に際してグリーン券の有無を問わず同一金額であったものを、乗車前購入時の料金「事前料金」と乗車後に精算する料金「車内料金」が異なるようにした。車内料金は事前料金の250円増しである。なお、モバイルSuicaで購入した場合は事前料金と同額である。
- 料金地帯を従来の150キロまで50キロ刻み及び151キロ以上の4地帯から、50キロ以下と51キロ以上の2地帯とした。
また、Suicaを利用した「グリーン車Suicaシステム」が導入されている。これは、ICカード内にグリーン券情報を記録する「Suicaグリーン券」を自動券売機で購入し(グリーン料金はSuicaのSF残高から差し引かれる)、グリーン車の座席上部にある読取機にSuicaをタッチすることで車内改札を省略することができるチケットレスシステムである。ただし、「湘南ライナー」等に充当される特急用車両および215系のグリーン車はSuicaグリーン券の車内改札省略に対応していない。
これと同時に、従来の定期乗車券・青春18きっぷ・北海道&東日本パスでのグリーン車利用禁止を改め、自由席に限りその乗車券類にグリーン券を別途購入するだけで乗車できるようになった。一方、「グリーン回数券」・「データイムグリーン料金回数券」が廃止された。
2006年3月18日のダイヤ改正で導入線区が拡大された。同時に、ホーム上の自動券売機でのグリーン券発売はすべてSuicaグリーン券のみとなり、紙のグリーン券(磁気グリーン券)の発売が取り止めになった。改札外の自動券売機やみどりの窓口では、磁気グリーン券を引き続き発売している。なお、JR東日本のみどりの窓口が無く、POSでの発券を行っている駅では、POSが平日/ホリデー料金に対応していないため、磁気グリーン券を発売出来ないため、料金専用補充券による発売になる。
Suicaと相互利用可能な他社カードでのSuicaグリーン券の購入は、2013年3月時点で、PASMO・TOICA・Kitacaで可能、manaca・ICOCA・PiTaPa・SUGOCA・nimoca・はやかけんでは不可能である[5]。なお、東海旅客鉄道(JR東海)の駅となる函南駅 ・三島駅・沼津駅から(まで)の利用者はSuicaグリーン券は使用できず、磁気グリーン券を購入する必要がある。
不使用による払い戻し
自由席グリーン券は有効期間中・区間内の任意の列車に有効なため、有効なグリーン券を所持しているにもかかわらず満席で座れないこともある。このために普通車へ移動する場合は、あらかじめグリーン車の乗務員に申し出て不使用証明書の交付を受け、それを駅窓口に提出すれば、グリーン料金の払い戻しを受けられる[6][7] 。グリーン車のデッキや通路に立ったまま乗車し続けた場合は、払い戻しはない。
JR各社のグリーン料金表
JR各社のグリーン料金表を示す。
会社・列車 | 100kmまで | 200kmまで | 201km以上 | 300kmまで | 400kmまで | 500kmまで | 600kmまで | 700kmまで | 701km以上 | 800kmまで | 801km以上 | ||
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開放座席 | JR各社共通 | 1,240 | 2,670 | 4,000 | 5,150 | 6,300 | 7,440 | ||||||
JR東日本 | JR東日本が指定した列車 | 2,670 | 4,000 | 5,150 | 6,300 | 7,440 | |||||||
自社線内のみの利用の場合[8] | 1,000 | 2,000 | 3,000 | 4,000 | 5,000 | - | |||||||
成田エクスプレス | 2,000 (区間均一) | ||||||||||||
JR九州 | 九州新幹線 | 1,000 | 2,000 | 3,000 | - | ||||||||
自社線内のみの利用の場合 | 1,000[9] | 1,530[10] | 2,450[11] | - | |||||||||
DXグリーン席 | 1,600 | 2,600 | 3,600 | - | |||||||||
個室 | JR各社共通 | 1 - 2人用[12] | 3,240 | 4,770 | 6,200 | 7,540 | 8,970 | ||||||
3 - 4人用 | 2,950 | 4,390 | 5,630 | 6,960 | 8,200 | ||||||||
JR東日本 | 定員4名1室の料金 | 6,000 | |||||||||||
JR九州 | 2,000[13] | 3,060[14] | 4,900[15] | - |
会社・列車 | 50kmまで | 51km以上 | 100kmまで | 150kmまで | 151km以上 | ||
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JR各社 | 指定席・自由席共通 | 750 | 950 | 1,620 | 1,900 | ||
JR東日本東京圏 自由席 |
事前購入[16] | 平日 | 750 | 950 | - | ||
ホリデー[17] | 550 | 750 | - | ||||
車内購入 | 平日 | 1,000 | 1,200 | - | |||
ホリデー | 800 | 1,000 | - | ||||
JR九州 | 指定席・自由席共通 | 500 | 700 | - |
他の私鉄・第三セクター鉄道
JRからの乗り入れ特急などにグリーン車を連結している場合、または、自社で同様の車両を保有し運行している鉄道会社でも、自社の制度としてJR各社に倣って「グリーン券」を設定・発売している。なお、自社独自の料金制度として同様のものに、近畿日本鉄道・南海電気鉄道・名古屋鉄道がある。
- 自社車両に「グリーン車」を設定・保有し、「グリーン券」を発売 … 伊豆急行・智頭急行・北越急行・土佐くろしお鉄道・名古屋鉄道(1970年まで)
- JR車両の乗り入れを前提としていたため、同様の制度を設定し「グリーン券」を発売 … 伊勢鉄道・北近畿タンゴ鉄道・テンプレート:要出典範囲・伊豆箱根鉄道(駿豆線・1975年まで)
- 自社独自の制度として「特別車両券」を発売 … 小田急電鉄(スーパーシート券)[18] ・近畿日本鉄道(デラックスシート券)・南海電気鉄道(スーパーシート券)・名古屋鉄道(ミューチケット・1999年以降)
脚注
- ↑ モノクラス制が導入された当初は、グリーン券は完全に乗車券と同じ性格であり、小児運賃の設定もあり、途中下車も可能であった。テンプレート:要出典
- ↑ 旅客営業規則第58条第5項・第130条第3項
- ↑ 2004年10月15日までは、営業キロ101キロ以上の場合は購入日当日と翌日の2日間であった。
- ↑ 0時で区切るのではなく、初列車から終列車までを単位とする。
- ↑ Suicaグリーン券の購入 - JR東日本
- ↑ 旅客営業規則第290条の2
- ↑ 旅どきnet > 普通列車グリーン車 > よくあるご質問の回答 - 東日本旅客鉄道(2012年12月19日閲覧)
- ↑ 当初は東北新幹線 八戸開業キャンペーンとして2002年12月1日~2003年11月30日までの時限措置であったが(特急列車のグリーン料金を値下げします)、2003年10月に好評につき継続(期間は当面の間)と変更され(お求めやすいグリーン料金を継続します)、事実上の恒久化している。
- ↑ 博多駅 - 直方駅間(篠栗線・筑豊本線経由)に運転する特別急行列車「かいおう」の停車駅相互間でのグリーン席は300円。
- ↑ 長崎本線佐賀駅 - 長崎駅間のグリーン席は1,000円。
- ↑ 日豊本線別府駅 - 宮崎駅間に運転する特別急行列車で201km以上の停車駅相互間のグリーン席は1,530円。
- ↑ 1 - 2人用個室が設定されている車両は2010年現在ない。
- ↑ 博多駅 - 直方駅間(篠栗線・筑豊本線経由)に運転する特別急行列車「かいおう」で停車駅相互間でのグリーン個室は600円。但し同列車ではグリーン個室の設定がない。
- ↑ 長崎本線佐賀駅 - 長崎駅間でのグリーン個室は2,000円。
- ↑ 日豊本線別府駅 - 宮崎駅間に運転する特別急行列車で201km以上の停車駅相互間ではグリーン個室は1,530円。
- ↑ モバイルSuicaによる支払いも含む。
- ↑ 該当日は、土曜日、日曜日、国民の祝日に関する法律第3条に定める休日および年末年始(12月29日~1月3日)。12月29日は平日ダイヤの場合も含む。
- ↑ 1991年3月16日から2012年3月16日まで、JR東海御殿場線に乗り入れる特急「あさぎり」に使用されていたロマンスカー20000形RSE車に、JR東海371系電車と客室設備を統一するためにグリーン車を設けていた。なお、自社線および乗り入れる箱根登山線内でこの車両を使用する場合には「スーパーシート」という名称の特別席として運用していた。2012年3月17日ダイヤ改正をもってRSE車の運行を終了したことで、スーパーシート、グリーン車のサービスは終了したほか、371系の「あさぎり」運用も終了した。
関連項目
外部リンク
- きっぷに関するご案内 グリーン券 - JR東日本