ガスタービンエンジン

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テンプレート:RFD notice ガスタービンエンジンは、原動機の一種であり、燃料の燃焼等で生成された高温のガスでタービンを回して回転運動エネルギーを得る内燃機関である。重量や体積の割に高出力が得られることから、現在ではヘリコプターを含むほとんどの航空機に動力源として用いられている。また、始動時間が短く冷却水が不要なことから非常用発電設備として、さらに1990年代から大規模火力発電所においてガスタービン・蒸気タービンの高効率複合サイクル発電(コンバインドサイクル発電)として用いられている。

ファイル:GE H series Gas Turbine.jpg
GE Hシリーズのガスタービンエンジン

作動原理

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ガスタービン遠心式又は軸流式の回転式圧縮機燃焼空気を圧縮して燃焼器に送り込み、燃料を燃焼器に吹き込んで燃焼させる。その際に発生した高温高圧の燃焼ガスが遠心式もしくは軸流式タービンを回転させる。タービン軸は通常、圧縮機と直結しており、圧縮機に圧縮動力を伝え、持続運転する。燃焼ガスの熱エネルギーを全てタービンで回収して出力を取り出す場合と、軸出力は圧縮機の動力としてのみ用いて燃焼ガスの後方噴出により推力を得るジェットエンジンがある。自動車レシプロ機関を持つ航空機等に用いられるターボチャージャーも、エンジンを燃焼器とし出力軸を持たない一種のガスタービンに分類できる。

ガスタービンエンジンは連続的に圧縮・燃焼・膨張・排気する「部位」があるため、レシプロエンジン(ピストンエンジン)と異なりそれぞれの「行程」はない。燃焼は一定圧力のもとで行われ、理論サイクルはブレイトンサイクルで近似される。

歴史

西暦150年ヘロン蒸気機関アイオロスの球)を考案するが、玩具的にしか扱われず、その潜在的能力が認識されるのは何世紀もたってからである。

1500年レオナルド・ダ・ヴィンチが暖炉で調理中のあぶり肉を回転させるためのスモークジャックの図を描いている。これは火から上昇する熱い空気の流れで羽根車を回し、その力であぶり肉を刺した棒を回すものである。1551年タキ=アルジンがスモークジャックと同じ用途の蒸気タービンを発明した[1]ジョバンニ・ブランカ1629年、蒸気タービンを使った砕鉱機を開発した。フェルディナント・フェルビースト1678年蒸気ジェットの力で動く車を開発した。

1791年、イギリスの技術者ジョン・バーバーが世界初の真のガスタービンの特許を取得した。その発明の構成は今日のガスタービンと基本的に変わらない。バーバーはこれを車の動力にしようとしたが、当時の技術では完全に動作するものを製作できなかった。

1894年明治27年)、チャールズ・アルジャーノン・パーソンズは蒸気タービン船のアイデアで特許をとり、タービニアという実験艇を作った。1895年(明治28年)にはパーソンズの蒸気タービンを使った発電機ケンブリッジ発電所に設置され、街灯への電力供給を行った。1903年(明治36年)、ノルウェーのエギディアス・エリングが入力よりも出力が大きい世界初のガスタービンを完成させた(11馬力)。この成果は後にフランク・ホイットルが活用したテンプレート:要出典。1913年、ニコラ・テスラ境界層効果を利用したテスラタービンの特許を取得。1918年(大正7年)、今日もガスタービン製造で知られているゼネラル・エレクトリックがガスタービン部門を創設した。1920年(大正9年)、これまでの経験則的な理論から一歩進んで A. A. Griffith が翼とガス流についての理論を構築した。

1930年(昭和5年)、フランク・ホイットルジェット推進用ガスタービンの設計で特許を取得。ホイットル自身がエギディアス・エリングの業績がなければ自身の発明は難しかったと述べているテンプレート:要出典。ただし、日本ガスタービン学会誌19(73)では「エリングの業績を知っていたか」と問われたホイットルは「知らなかった。知っていたら開発は10年早く出来ただろう」と答えたとされている。実際にジェットエンジンが動作したのは1937年(昭和12年)4月のことである。1934年(昭和9年)、ラウル・パテラス・ペスカラはガスタービン用ガス発生器として使える自由ピストンエンジンの特許を取得した。1936年(昭和11年)、ハンス・フォン・オハインとマックス・ハーンがフランク・ホイットルとは別方式のジェットエンジンの開発に成功した。

特徴

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シリーズハイブリッド式の「丸の内シャトル」

同出力のレシプロエンジン(代表例:ガソリンエンジンディーゼルエンジン)などと比べ、以下のような特徴を持つ。

  • 軽量で比較的小さな体積で高出力が得られ、レシプロエンジンと比べてパワーウェイトレシオが優れている。
  • 低周波振動が少なく、高めの周波数騒音対策だけで済む。
  • レシプロエンジンと比べて、低速回転時と高速回転時の燃料消費率の差が少ない。
    • そのため、低速回転域での燃費はディーゼルエンジン等のレシプロエンジンに比べ完全に劣る。
  • 燃焼効率は比較的高いが、回転数を頻繁に変える用途での燃費が劣る。
  • 常用回転数が高いため出力は大きいがトルクは小さいので、大トルクを要する用途では減速機が必要である。
  • 「大量の空気を膨張させる」と言う条件をクリア出来れば燃料に対する要求が少なく、原理上は多種多様な燃料を使用できる。
    • メタン等のそれほど高価ではない燃料も使用可能であるが、特に航空機の場合、厳密に調合されたジェット燃料が指定されている。
  • 冷却水が不要である反面、耐熱性に優れた素材で製造する必要があり、素材の関係から整備に専門的知識を伴った特殊な技術を要する。
  • 定期的な保守時の作業量がレシプロエンジンと比べて多く、時間とコストがかかる。
    • この様な都合もあり、保守の利便性を考え、全てをユニットとして取り外せる様に(ASSY交換)するため、設置位置に制約が付く事がある。
  • 一定の回転数で動作させることは容易だが、回転数を細かく調整することは困難なため、回転数が頻繁に変わる用途には不向きである。
    • レスポンスがレシプロエンジンと比較して劣る。
    • 条件による違いはあるものの、出力を直接動力とする場合の燃費は、レシプロ内燃機関よりは悪く、蒸気タービンよりは良好である。
  • 始動性は良いが、始動時の消費エネルギーが大きいため、頻繁にエンジンを停止する用途には不向きである。
  • 窒素酸化物炭化水素の排出が少ないが、排気が高温の上に単体の熱効率はやや劣る。
  • 出力特性や燃費の欠点を補う為、電気式ハイブリッドの動力の一つとして用いられる例が多い(シリーズハイブリッドの発電用など。)。

燃料

航空機用の高性能エンジンは厳選された燃料(高度に精製された灯油など)(ケロシンナフサ)を使用する。 陸上設置型や舶用では軽油を使用する。A重油を除き、安価な重油は使用できない[2]。発電用ガスタービンでは天然ガス石炭をガス化して燃焼する機種もある。

分類

軽量型と重構造型

ガスタービンエンジンは航空機に搭載される軽量型と、主に地上に設置して発電などに使用される重量のある重構造型とに大別できる。船舶や車両といった移動体や地上固定式でも小型のものでは、航空機用のジェットエンジンの設計に基づく軽量のものが製造されており、軽量型に分類される。また、これらとは別にかなり小型のガスタービンエンジンも存在する。

軽量型

ジェット機に使用されるジェットエンジンは軽量型である。この固定翼機用のジェットエンジンやヘリコプター用として開発されたターボシャフトエンジンを他の移動体用や小型の地上固定用途で製造・使用されている。ターボファンジェットエンジンではファンの代わりに出力軸を取り付ける必要があり、バイパス比の低いターボジェットエンジンでは排気側にフリータービンを取り付けて出力軸とするなどの変更が必要となるが、ターボシャフトエンジンやターボプロップエンジンではそのまま出力軸を使用することで他用途での利用が可能である。
軽量型は航空機用エンジンの特徴を備え、軽量化のためにケーシングや回転軸などが肉薄になっている。重量が軽く容積が小さい。圧縮機・燃焼器・タービン部が輪切り状に分割出来るようになっている。(モジュラー構造)1軸から3軸と構成に幅がある。柔構造であり熱衝撃に強く、主要軸受けには転がり軸受けを、潤滑油には合成油を使用している。燃料は航空燃料が使用される。始動時間が1-3分と素早く始動する。出力は比較的小さく最大でも40MW程である。補機類がケーシングの近くに付けられることが一般的である。
船舶用エンジンとしてはもともと重構造型が使われていたが、1960年代後半から航空機用ジェットエンジンの転用が始まり、21世紀現在では船舶用でも軽量型のものが主体となっている。

重構造型

ファイル:Gasturbine Montage01.jpg
シーメンス社製のガスタービンエンジンの内部
産業型や重量型とも呼ばれる重構造型は火力発電での蒸気タービンから発展してきたため、重量が重く容積が大きい。軽量化は不要であり、ケーシングや回転軸などが肉厚になっている。保守の利便の為に圧縮機・燃焼器・タービン部のケーシングが個別に上下2分割出来るが回転体は一体となっているものが多い。
1軸の構成が多い。剛構造であり変形には強いが熱衝撃に弱い。主要軸受けにはすべり軸受けを、潤滑油には鉱物油を使用している。燃料は灯油、軽油、A重油天然ガスLPガスが使用される。始動時間が5-15分と少し遅い。出力は大きく最大350MW程である。補機類がケーシングとは別に設置されることが一般的である。再生サイクル、中間冷却サイクル、吸気加湿冷却システム、コンバインド発電、蒸気噴射システムなどを使って総熱効率を高める工夫が行なわれる[3]


マイクロガスタービン

ファイル:GasTurbine.svg
マイクロガスタービンの例(1)

分散型発電機用としてマイクロガスタービンが開発され、コジェネレーションや再生器を使用して総合的な熱効率を高めるようになっている。小型で低価格にすることで事務所や商店等での利用が想定され、潤滑油を廃して空気軸受が使用されるなど、保守の手間を省くよう考慮されている。

特殊なものとしては、直径12mm、厚さ3mmの円盤状で重さ1gの超マイクロガスタービンが、電気出力10-20W程度の発電用途に開発されている[3]

用途

航空機用、船舶用、陸上車両用、陸上設置型の発電用のそれぞれでエンジンとして使用される。

航空機

航空機用のガスタービンは、高温・高圧の排気ガスを後方に勢いよく噴射し、その反作用で推進力を得るものが主で、それらはまとめてジェットエンジンと呼ばれる。

  • 亜音速・遷音速で飛行する一般的な旅客機や大型輸送機では、燃費が良く低騒音の高バイパス比型ターボファンエンジンが主に使用されている。
  • YS-11など、低空を低速で飛行する短距離用の小型旅客機などには、主にターボプロップエンジンが用いられている。
  • 高空・高速飛行を要求される戦闘機などの機体は低バイパス比型ターボファンエンジンを使用しており、アフターバーナーが装備されているものもある。
  • 一昔前のジェット戦闘機や超音速輸送機(SST)のコンコルドTu-144には、アフターバーナー付きのターボジェットエンジンが用いられていた。
  • 近年のヘリコプターの多くはターボシャフトエンジンを用いており、排気の反作用よりもエンジンの回転軸出力を用いている。
  • 航空機用のタービンブレードは、内部に冷却用の空気を流す穴があけてあり非常に複雑な構造となっている。1200℃の温度に耐え、1万時間以上の寿命を持つ。価格は1枚70万円程度し、1セットで200枚程度あるとすると、全部交換して1億円以上かかる計算となる。現在の技術では、燃焼ガスに含まれる硫黄分により硫化しやすく、硫黄分が冷却穴を塞いでしまうので熱を溜め込み破断のうえエンジン停止をもたらす事故をしばしば起こしている。日本でも2005年秋に全日本空輸のボーイング777が立て続けに2件タービンブレードの破断による事故にあっている[4][5]

また、中型・大型旅客機などの後部には、小型のガスタービンで駆動するAPU(Auxiliary Power Unit:補助動力装置)が、推進用のジェットエンジンとは別に搭載されている場合が多い。これは空港に駐機中、機内で必要な電源や油圧を確保したり、ジェットエンジン本体の始動に必要な圧縮空気を発生させたりする際に使用されるものである。尚、APU本体の始動にはバッテリー駆動のモータを使用し、燃料にはジェット燃料がそのまま使用されている。航空機の尾部に見られる小さな排気孔は、この排気用である。

船舶

船舶用のガスタービンエンジンは、主機関に使用する他に船内発電用として、また、船に限らず地上のものと同様に非常用発電機のエンジンとして使用される。主機関として使用される場合には、一般的な減速ギヤー経由でプロペラシャフトへと接続されるものと、発電機で発電した電力で電動機を駆動するターボ・エレクトリック方式がある。減速ギヤーを使用するものでは、逆転用の歯車を組み合わせるものは少なく、可変ピッチプロペラによって逆進を行なうものが多い。

航空機用ガスタービンエンジンから作られた軽量型のものは1基では出力に限界があり、大型船では複数のガスタービンエンジンを備える必要がある。大量の吸排気が必要となりこれらの大きなエアダクトが船体中央部を船底から煙突や船体上部まで貫くが、ガスタービンエンジンの定期保守にはエンジンそのものを陸上に上げる必要があり、保守利便性と空間の有効利用は矛盾するため、設計時に困難が伴う。

海での使用では塩害対策が求められ、燃焼器ライナーと圧縮機の翼に耐蝕コーティングが施されている[3]

軍用艦艇

軍艦に於けるガスタービンエンジンは、航空用エンジンを舶用に転用したエンジンの採用が艦艇を中心に広まり、近年では高速性を重視する艦艇にも採用が進みつつある。船舶用は中間冷却機を備える事で熱効率を上げている。

軽量大出力の艦艇用機関としてガスタービンエンジンを最初に採用したのはイギリス海軍で、1958年に進水したブレイブ級哨戒艇にブリストル・シドレイ社 (Bristol Siddeley) のプロチュース (Proteus) が採用されている。大型艦艇での採用は旧ソ連海軍とイギリス海軍が先鞭をつけた。

1962年から建造が始まった旧ソ連海軍の満載排水量 4,510 トンの61型(カシン型)ミサイル駆逐艦は世界初のガスタービン推進の大型艦となった。イギリス海軍は1966年14型フリゲートの一艦をロールス・ロイス社のオリンパスTM1AとプロチュースによるCOGOG推進に改造して試験に共した。以後のイギリス海軍ではガスタービンと蒸気タービンとの組み合わせによるCOSAG 推進艦を経て、1973年21型フリゲート1975年42型駆逐艦でオール・ガスタービン化されている。1980年に竣工した満載排水量 20,500 トンのインヴィンシブル級航空母艦はオリンパス TM1B を4基用いたCOGAG推進艦で世界最大のガスタービン推進艦となった。

これらの国々に続いてアメリカ海軍では1973年に竣工したスプルーアンス級駆逐艦1976年に竣工したオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートジェネラル・エレクトリック社製の航空エンジンである CF6-50 を舶用に転用した LM2500 ガスタービンによる COGAG 推進を採用している。

海上自衛隊では、11号型魚雷艇などに航空用エンジンを転用したガスタービンを搭載するとともに、昭和29年度計画乙型駆潜艇「はやぶさ」防衛庁技術研究本部三菱重工業長崎造船所が共同で開発・製造した MUK501(運輸省の練習船「北斗丸」に搭載されたものと同機種)がディーゼルと組み合わされ (CODAG) 試験的に搭載された。しかし本機の運用実績は芳しくなく、1970年(昭和45年)にガスタービン用の中央軸を損傷したのを機に撤去された。その後しばらく、護衛艦の主機にガスタービンを推すことを躊躇う風潮が生じ、蒸気タービンとディーゼルが主機に採用され続けたが、1974年(昭和49年)度計画でやまぐも型護衛艦の発展型として、ロールス・ロイス オリンパスTM3BによるCODOG機関を搭載した2500トン型護衛艦の建造が計画された[6]。この計画はオイルショックの影響で中止されたが、3年後の1977年(昭和52年)度計画で、DEである「いしかり」CODOG推進艦として、DDであるはつゆき型COGOG推進艦(巡航用にタイン RM1C を 2 基、高速用にオリンパス TM3B を 2 基使用する)として建造されることとなった。続く1988年あさぎり型ではスペイ SM1A を 4 基組み合わせた COGAG 推進が採用された。エンジンは川崎重工業がライセンスをうけて生産した。1996年に一番艦が竣工したむらさめ型とその改良型であるたかなみ型はロールス・ロイス社のスペイ SM1C とジェネラル・エレクトリック社の LM2500 を採用した世界的にも珍しいメーカーの異なるガスタービンエンジンの組み合わせによる COGAG 推進艦である。このように現代の艦艇ではガスタービン主機が主流となっている。

旧ソ連海軍やイギリス海軍ではいずれも軽量大出力であること、従来の艦艇用主機に比べて整備性が良いこと、出力の増減が迅速に行える点が評価された。一方で、ガスタービンとスクリューではその回転数が極端に異なるため巨大な減速ギアボックスが必要なこと、およびガスタービン主機は燃費が悪く、運転条件によっては多量の燃料を消費するなどのマイナス面もある。過去にカシン型は日本海で燃料切れを起こして立ち往生する事故を起こしている。またガスタービンエンジン搭載艦は従来の蒸気タービン、ディーゼルエンジン搭載艦と比べると大量の給排気、高温の排気、小型軽量であるがゆえの重心上昇などの点を、艦艇の設計にあたって留意する必要があり艦容に大きな影響を与える。

アメリカ海軍では下部が軽くなった分を下部構造を強化して重くし上部構造を軽合金で製作するなどして補正した。ただし軽合金製上部構造はフォークランド紛争やアメリカ海軍の火災事故などでの被害拡大の要因となったとされ、護衛艦では鋼製に戻されている。大量の給排気は煙突と給気筒を大きくすることで対応する。このためガスタービン搭載艦の煙突は太く短い物が多い。高温の排気については煙突からの排気の下流に物を置かないなどの対処がとられる。また蒸気タービン搭載艦などに流行したマック(マスト+スタック(煙突)の造語。両者の機能を併せ持つ構造物)はガスタービン搭載艦では見られなくなっている。

民間船舶

民間船舶の多くには熱効率が非常に優れた低速回転ディーゼルエンジンが用いられている。高速フェリーなどでの軽量化のためや、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の排出が少ない事もあり、ガスタービンエンジンも徐々に使用され始めている。

特に水中翼船ホバークラフトなどでは主流となっている。また従来の舶用機関に比べてガスタービンエンジンの運転時の騒音が、特に低周波成分が少ない点を評価し、大型客船用のターボ・エレクトリック方式の推進機関の主機として採用された例がある。

1990年代半ばの日本では、モーダルシフトに関連して内航船の速度向上をめざす二隻のテクノスーパーライナー (TSL) 実験船が建造された。三井造船の空気圧力式複合支持船型(エアクッション艇)「飛翔(ひしょう)」、及び川崎重工業の揚力式複合支持船型(水中翼船)「疾風(はやて)」は、いずれもガスタービンエンジン主機によるウォータージェット推進の高速船であった。[7]

燃費が圧倒的に高く、エンジンそれ自体の価格と保守にかかるコストもディーゼルエンジンより高額となり、整備のために取り外さなければなたないため船内配置が制約されるなど、ガスタービンエンジンは、舶用主機関としては不利な点が多いため、軽量である利点が生かせる用途にのみ使用される[2]

戦車

第二次世界大戦末期にドイツGT 101ガスタービンをV号戦車パンターに試験的に搭載した。

旧ソ連T-80アメリカM1エイブラムススウェーデンStrv.103など、一部の戦車にガスタービンエンジンが用いられている。小型大出力のエンジンとして評価され、瞬間的なダッシュ力には一定の評価があるが、低速/停車時の燃費の悪さから、この3カ国に続く採用事例はない。最初に戦車へガスタービンエンジンを採用したスウェーデンのStrv.103ではディーゼルエンジンを混載し、ガスタービンエンジンはダッシュ時のみに使用されていた。

湾岸戦争では大量の燃料を輸送することで燃費の悪さを補ったアメリカ陸軍では、この戦訓から停車時の電力供給を目的にM1へAPUを設置した。またT-80では当初トラブルが続出し、改良を加えたT-80Uで是正されたものの、燃費のよいディーゼルエンジンを搭載したT-80UDも併行して生産配備している。

現在、高容量電気二重層キャパシタと組み合わせたガスタービン-電気ハイブリッド式の開発が各国で進められている。

フランスルクレールでは補助動力として使用されている。

鉄道車両

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イリノイ鉄道博物館に保存されているUP 18機関車

鉄道車両へのガスタービンエンジン搭載も様々な方法で模索されてきたが、なかなか成功には至らない様である。前述した通り、細かなエンジン回転数の調整が困難な事・低負荷の状態では燃費効率が悪化する・騒音が大きいなどが理由として挙げられる。

鉄道車両への搭載例は、1941年スイス連邦鉄道が導入した、ブラウン・ボベリ製ガスタービンエンジンと発電機を搭載したAm4/6形が最初の事例とされており、1966年 ユナイテッド・エアクラフト社によるUAC ターボトレインがあり、長期試験の後1968年から米ニューヘブン鉄道で、1973年からカナダ国鉄モントリオール-トロント間で特急「TURBO」として営業運転を行なっていた。試験車両としては旧国鉄が開発した国鉄キハ07形気動車改造車(キハ07 901)と、その結果を元に試作されたキハ391系がある。これらは非電化区間のスピードアップを図るために開発されたが、オイルショックの悪影響もあり実用・量産化が断念されている。フランス国鉄が運行するTGVも、初期にはガスタービン駆動の発電機で発電し電動機を駆動する電気式ガスタービン機関車が計画され試作車両が作られたが、同様にオイルショックのため電気機関車方式に変更された。ただし、実用・量産化の失敗の原因は当時の技術不足の一面も大きく、発電機・電動機の小型化が進んだ現在ならガスタービンエンジンの持ち味を生かせる可能性もあるとも考えられ、現在でもガスタービンで発電機を回して電動機を駆動する「電気式ターボトレイン」の研究が続いており、特にアメリカでは膨大な軍事技術を投入したハイブリッド仕様のターボトレインを研究中で、回生制御の肝となるフライホイールの開発如何によっては非電化高速鉄道の切り札になるといわれている。

その他にも1960年代から1970年代にかけてイギリスやドイツ、チェコスロバキア、スイス、ドイツ、ソビエトなどで開発が進められたがオイルショックの後、開発は下火になった。その後、ロシアでは圧縮天然ガスを燃料とするGT1が開発され、試験運用されている。

なおフランス製のターボトレインはエジプトやイランなどへも輸出され、特にエジプトでは1983年の就役以来、カイロアレクサンドリア間の特急列車として活躍している。

工事用などの産業用機関車では、蓄電池機関車にマイクロガスタービン発電機を搭載した機関車が実用化されており、現場の条件で充電や電池交換が困難な用途向けに使用されている[8]

さらに、本来の用途ではないが、雪かき車としてジェット噴射で除雪する車両が実用化されている。ヘリコプター用の小型ガスタービンを保線用車両に取り付け、排気をダクトで線路面に平行に前方に噴射し雪を吹き飛ばすタイプの除雪車両が、操車場などのポイントの融雪・氷塊除去に使用される。実際、ユニオンパシフィック鉄道ソルトレイクシティ駅で使用されていた。

個々の車両などはCategory:ガスタービン機関車も参照のこと。

自動車など

1950年代から1960年代にかけて、小型で高出力のガスタービンは次世代エンジンとして注目され、ガスタービン自動車の実用化に向けて様々な研究がされてきたが、量産車として成功した例は少ない。 1963年にクライスラークライスラー・ターバインを開発した。 ガスタービンエンジンをセンチュリーに搭載したトヨタ自動車の「トヨタセンチュリー・ガスタービン・ハイブリッド」(1975年第21回東京モーターショー出品)[9]や、スポーツ800にガスタービンエンジンとモーターを搭載したハイブリッドカー(1977年第22回東京モーターショー出品)やトヨタGTV(1987年第27回東京モーターショー出品)[10]がある。

自動車レースの世界では、イギリスローバー1963年1965年にガスタービン搭載車をル・マン24時間レースに出場させた例や、アメリカのSTPが、プラット・アンド・ホイットニー製のエンジンを搭載した車両を1967年1968年インディ500に出場させていた例などがある。

1992年のパリサロンではガスタービン・ハイブリッド車であるボルボのボルボ・ECCが展示された。

1993年にはクライスラーパトリオットが開発された。

ゼネラルモーターズは1990年代半ばにGM・EV1電気自動車にウィリアムズ・インターナショナルで開発されたガスタービンを搭載したハイブリッドカーを開発した。[11]単段式、単軸で熱交換器を備えたガスタービンにより永久磁石式交流発電機を駆動した。ガスタービンの重量は220 lb (99.8 kg)、直径20 inches (50.8 cm)、全長22 inches (55.9 cm)、回転数は100,000 から 140,000 rpmだった。タービンはハイオクタン価の代替燃料圧縮天然ガスが使用された。蓄電池の容量が40%以下になると自動的にガスタービン発電機が作動して40 kWの電力を供給して充電する仕様だった。最高速度は80 mph (128.8 km/h)に達した。

また2006年現在では、アメリカのマリン・タービン・テクノロジー社が、ガスタービンエンジン搭載のオートバイを市販している[12]

他にもマイクロガスタービン発電機をハイブリッド自動車の電源に採用した車両がアメリカやニュージーランドなどで見られ、日本では日の丸自動車興業東京駅周辺で運行している2つの無料循環バス:丸の内シャトルメトロリンク日本橋に採用されている。

2010年に開催されたパリモーターショーで発表されたジャガー75周年記念コンセプトモデル CX-75 は レンジエクステンデッド(航続距離延長型)電気自動車エンジンとして発電用マイクロガスタービンを2個搭載して、 合計70kWの出力を発生する。フル充電してさらにガスタービンを使用した場合900kmの航続距離を実現している。 また0-100km/h・3.4秒で加速可能。

定置型発電

ガスタービンエンジンは、汽力発電などに用いられる蒸気タービンに比べて起動時間が短いため、ピーク時用内燃力発電として1950年代から用いられていた。また、ディーゼルエンジンと比較して、小型軽量で冷却水が不要なため、非常用発電機に用いられる。さらに、高圧部が無いことから設置に際し規制が緩やかで、2000年代に入り電気工作物としての規制も緩和されたため、都市ガスを燃料とする超小型ガスタービンエンジンを用いた店舗用小規模自家発電装置なども普及している。

ガスタービンエンジンは高温で動作するため、その排気もまた十分に高温であり、廃熱回収ボイラーと組み合わせて、電気の他、蒸気をも供給する熱電併給システム(コジェネレーション)や、さらに蒸気タービンによる発電を組み合わせて複合火力発電(コンバインドサイクル発電)とし、総合的な熱効率を大幅に高めることがなされている[13]

ムーンライト計画では中間冷却器熱再生器を搭載した世界最高水準の高効率のガスタービンが開発された。現在は日本工業大学付属工業技術博物館に国産のターボファンエンジンであるFJR710と供に保存、展示されている。

2005年現在、ドイツなどでは、燃焼用の圧縮空気を夜間などの電力需要の小さい時間に岩塩を取り出した跡の岩盤内に蓄え昼間に使用することで圧縮機の必要動力を軽減し、発電量を増加させるものが実証試験中である。

2011年に起こった東日本大震災とそれに付随する福島第一原子力発電所事故により東北電力東京電力管内の供給能力が急減し、この減少分を補うためにLNGを燃料とするガスタービン発電機が既存の火力発電所内に急遽設置されることとなった[14] [15] [16] [17] [18]

ターボポンプ

ロケット等において推進剤をエンジンに供給する為に使用される。高速で回転する為、キャビテーションが発生しないように細心の注意が払われる。ターボポンプの成否が新型エンジンの成功の成否に懸かっているといっても過言ではないくらいでターボポンプの開発は難航する場合がある。

その他

発電用ではない定置式ガスタービンエンジンの例としては、河川の排水ポンプがある。大雨等で水かさが増した河川の水をポンプ汲み上げて排水する時に使用される大型ポンプの動力としてガスタービンエンジンの採用事例がある。小型大出力、起動時間の短さ、整備性の良さ等が評価された結果である。

出典

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. テンプレート:Cite web
  2. 2.0 2.1 池田吉穂著 「図解雑学 船のしくみ」 ナツメ社 2006年5月10日初版発行 ISBN 4-8163-4090-4
  3. 3.0 3.1 3.2 佐藤幸徳著 『マイクロガスタービンの本』 日刊工業新聞社 2003年12月28日初版1刷発行  ISBN 4526052132
  4. ボーイング777#事故・インシデントを参照のこと。
  5. http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20060301/113800/
  6. テンプレート:Cite journal
  7. いずれも経済性等の理由により運行されていない。
  8. メーカー・製品の例(新トモエ電機工業「ターボロコ」
  9. CAR GRAPHIC '76-1 P28
  10. トヨタGTV
  11. テンプレート:Cite web
  12. Marine Turbine Technology Motorcycle
  13. ガスタービン発電,電気事業連合会
  14. テンプレート:Cite web
  15. テンプレート:Cite web
  16. テンプレート:Cite web
  17. テンプレート:Cite web
  18. テンプレート:Cite web

関連項目


参考

  • Stationary Combustion Gas Turbines including Oil & Over-Speed Control System description
  • "Aircraft Gas Turbine Technology" by Irwin E. Treager, Professor Emeritus Purdue University, McGraw-Hill, Glencoe Division, 1979, ISBN 0-07-065158-2.
  • "Gas Turbine Theory" by H.I.H. Saravanamuttoo, G.F.C. Rogers and H. Cohen, Pearson Education, 2001, 5th ed., ISBN 0-13-015847-X.
  • テンプレート:Cite book
  • R. M. "Fred" Klaass and Christopher DellaCorte, "The Quest for Oil-Free Gas Turbine Engines," SAE Technical Papers, No. 2006-01-3055, available at: http://www.sae.org/technical/papers/2006-01-3055.
  • "Model Jet Engines" by Thomas Kamps ISBN 0-9510589-9-1 Traplet Publications
  • Aircraft Engines and Gas Turbines, Second Edition" by Jack L. Kerrebrock, The MIT Press, 1992, ISBN 0-262-11162-4.
  • "Forensic Investigation of a Gas Turbine Event [1]" by John Molloy, M&M Engineering


外部リンク

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