圧縮機
圧縮機(あっしゅくき)とは羽根車若しくはロータの回転運動又はピストンの往復運動によって気体を圧送する機械のことである(JIS B 0132 2005 送風機・圧縮機用語)。コンプレッサーともいう。有効吐出し圧力が200kPa以下の圧縮機をブロワという。
尚、改正前のJIS定義では圧力比によって送風機・圧縮機を分類していたが、ISOなどの国際規格との整合性を保つため2005年に改正された(JIS B 0132 2005 送風機・圧縮機用語 解説)。これにより送風機扱いであったブロワが圧縮機となり、送風機とファンが同義となった。
目次
ターボ圧縮機
遠心式圧縮機
テンプレート:Main 外周部へ吐き出すことで圧力を与えるもの。
軸流式圧縮機
テンプレート:Main 軸方向から吸い込み軸方向に圧力を与えるもの。
回転体の円筒状に植えられた動翼と、静翼の翼列とで一組の段となる。動翼は揚力を用いて気体を圧縮し、静翼は後方の翼列の流入角方向に気体を転向させる。
容積圧縮機
機構内の体積の変化により圧力を与えるもの。
往復圧縮機(レシプロ圧縮機)
テンプレート:Main ピストンの往復運動によるシリンダーの容積変化で圧縮するもの。
- 特徴
- 主な用途
斜板式
ピストンの往復運動で圧縮する原理はレシプロ式と同様であるが、ボアの小さなピストンを同心円上に多数備え、回転軸に取り付けられた斜板がカムとなり、ピストンをストロークさせる。ピストン配置は斜板の片側だけのもの(画像参照)と両側のものとがある。
- 特徴
- 軽量・コンパクト
- 往復部品が小さく、圧縮時のトルク変動も少ないため、振動と騒音を抑えられる。
- 回転数の他、斜板の角度を可変とすることでも吐出量の増減が可能。
- 主な用途
ダイアフラム式圧縮機
往復圧縮機のバリエーションで、ピストンの代わりにダイアフラムを用いたもの。往復式圧縮機と特徴が似ているが、ダイアフラムが主に金属性材料の場合高圧用・危険なガスを取り扱える利点がある。テンプレート:Main
またこれとは別の用途として、簡便な低圧用圧縮機や危険なガス用の圧縮機として、直接ピストンでダイアフラムを動かし、このダイアフラムにゴムやエンジニアリングプラスチックを用いたものもダイアフラム式圧縮機と呼ぶ。
ツインスクリュー圧縮機
テンプレート:Main 2つのスクリュー型の回転体の溝を利用し体積変化させるもの。開発者のアルフ・リショルムにちなんでリショルム・コンプレッサともいう。
- 特徴
- 遠心型と比較して高圧縮比が可能である。
- 往復圧縮機と比較して振動が少ない。
- 給油式では大量の潤滑油を圧縮部に噴射させながら運転することで、吐き出しガスの温度を下げることが可能。無給油式では、隔離して機構冷却を行うが、ガス温度の冷却はさほどよくない。
- 無給油のものも製作可能。最近では潤滑油の代わりに水を利用した水潤滑方式が伸びている。
- 主な用途
シングルスクリュー圧縮機
テンプレート:Main 1つのスクリュー型の回転体と2つの樹脂製ゲートローターを利用し体積変化させるもの。 1960年にフランスのベルナール・ジメルヌ (Bernard Zimmern)[1]によって発明された[2]。
- 特徴
- ゲートローター部が水平対向で平衡しているため、理論上は軸受けにスラスト荷重が発生しない。
- 遠心型と比較して高圧縮比が可能である。
- 往復圧縮機と比較して圧縮機本体の振動が少ない。
- 往復圧縮機と比較して吐き出し圧力の脈動が少ない。
- 大量の潤滑油を圧縮部に噴射させながら運転することで、吐き出しガスの温度を下げることが可能。
- 水潤滑式の制作が可能。
- 主な用途
- 中型冷凍機
- 中型空気圧縮機
スクロール圧縮機
テンプレート:Main 1対の同一形状の渦巻き体を、一方を固定し、もう一方を円運動(相対的には揺動運動)させることにより、圧縮室の体積を小さくし、圧縮するもの。 1900年代にはヨーロッパ・アメリカで特許出願されていた。材料・加工技術の進歩により製品化が可能となり、一般空調用は1980年代に日本の日立製作所が最初に、また同年、自動車空調用として日本のサンデンが実用化した。
- 特徴
- 主な用途
- エア・コンディショナー
- 車両用冷凍機
- 自動車用過給器(フォルクスワーゲン・Gラーダ en:Scroll-type supercharger)
- 小型空気圧縮機 鉄道用空気圧縮機
- 欠点
- 吐出圧力が常に高い運転状態で使用すると逆止弁が破損しやすくなる
- 常に連続して金属面同士が擦れるので、構造によっては金属粉・樹脂粉が出やすく音も甲高い性質の物となる。但し比較的低周波のため、音響低減はツインスクリュー構造と比較するとかなり容易である。
ロータリー圧縮機
回転するピストンとシリンダーの組み合わせにより圧縮するもの。
ロータリーピストン型
テンプレート:Main 高圧側と低圧側とを仕切る羽根がシリンダー側に取り付けられピストン側と接しているもの。発明者のPhilander Roots と Francis Marion Roots(ルーツ兄弟)の名をとって、ルーツ式・ルーツ・ブロワとも言う。効率が良いため一般に使用されている。(出典:ロータリ・ブロワ(ルーツ式) 日本産業機械工業会)
- 特徴
- スクロール圧縮機と比較して小型軽量で製作が容易なため、より小容量に適する。
- 圧縮機にはガス温度が高めになるため無給油式の場合アフタークーラーが必要。
- 圧縮比が高く取りにくい。
- 主な用途
- 家庭用エア・コンディショナー
- 小型除湿機
- 自動販売機用冷凍機
- 携帯型空気圧縮機
スライドベーン型
テンプレート:Main ローター側面に複数取り付けられた羽根(ベーン)が、ハウジング内壁と接しているもの。 ロータリーベーン型、回転翼式とも言う。
- 特徴
- ロータリーピストン型と同様に小型軽量で製作が容易なため、小容量に適する。
- 欠点
- 内部の弁板の精度が悪いと引っかかりが生じてロックする(永久破損)
- 非常に高い精度が要求される
- 主な用途
- ロータリーピストン型に同じ
- パワーステアリング用ポンプ
原動機との接続
全密閉型
電動機が圧縮機とともに溶接された一体型の容器に密閉されているもの。通常の方法では内部の部品の補修・取替えが不可能である。 電動機の冷却は動作流体を使用する。 大量生産される汎用の冷凍機のほとんどをしめる。 冷凍サイクルに水が入り込むとすぐに漏電する
半密閉型
電動機が圧縮機とともにボルト締めされた分割型の容器に密閉されているもの。ボルトを取り外すことにより、電動機・軸受などの補修・取替えが可能である。 実際の所、部品交換は弁板、オイルレベル窓、ガスケットぐらいしか出来ない。 (古いシリンダーに新品の部品を組み合わせるとロックなど故障を起こしやすい)
単段のものは冷蔵用途(全冷媒で)一部の冷媒(CFC-502やHFC-404Aやハロン1301)では冷凍用途で使われる。 R22など比較的低圧冷媒で冷凍温度域まで冷やす時は2段圧縮方式で使われる。 これは初段(吸い込み圧力は負圧)で一旦正圧まで圧縮したあとインタークーラーと液インジェクションで冷たいガスを混合して温度を十分下げてから後段で1.5 - 2MPa程度まで圧縮するものである。
開放型
原動機が同じ容器内に無いもの。軸シール装置が必要である。 軸シール側に低圧(吸入)側を構成し、ガス漏れが最小限で済むようにしてある。 冷凍機器ではサーモオフ停止時にポンプダウンを行い、吸入圧力が飽和蒸気圧力まで上昇しないよう使用する。 このため、カーエアコンは使用しないと圧縮機の吸入側圧力が高い状態で放置されるので僅かずつガス漏れする。(環境保護の観点から密閉型の採用かポンプダウン制御を行うべきである)
電動機以外の原動機の使用が可能である。また、大型化も可能である。
出力側タンクのメンテナンス
圧縮機の二次側にはタンクが装備されることが多いが、空気の圧縮を連続的に行うことから。圧縮後は空気中の湿気が液化して水となってタンク基部に溜まることがある。このためタンク容量が圧迫されて非効率となる。これを避けるために一定の稼働時間に従ってタンクの底部にあるドレン抜きバルブを開いて溜まった水分をタンクから排除して整備する必要がある。
主なメーカー
- アトラスコプコ
- アネスト岩田
- IHI
- 荏原製作所
- エマソン・エレクトリック
- 加地テック
- 川崎重工業
- クノールブレムゼ
- 神戸製鋼所 / コベルコ・コンプレッサ
- サムスン
- サンデン
- ジョンソンコントロールズ - SABROE / YORK / FRICK
- ダイキン工業
- 田邊空気機械製作所
- デンヨー
- 東芝キヤリア
- 豊田自動織機 - カーエアコン用コンプレッサー
- ナブテスコ
- 日機装
- パナソニック
- 日立アプライアンス
- 日立産機システム
- 日立プラントテクノロジー
- ビッツァー
- 富士コンプレッサー
- 北越工業
- 前川製作所
- 三國重工業
- 三井精機工業
- 三洋電機
- 三菱重工業
- 明治機械製作所
- 日本熱源システム
- 東京貿易メカニクス-LPG用コンプレッサー(コーケン社)、PDCコンプレッサー
- Orwak Tomra Compaction-ごみ圧縮減容機
脚注・出典
関連項目
外部リンク
- ジョンソンコントロールズ/産業用冷凍機・空調冷熱機器 - レシプロ式、スクリュー式、ターボ式圧縮機。
- MIKUNI/三國重工業 技術講座 - 往復式の圧縮構造。
- アネスト岩田 技術講座 - コンプレッサーについて判りやすく解説されている。
- 日立産機システム 空圧機器
- 三井精機工業 コンプレッサ技術資料
- whipple社 資料
- IHI コンプレッサー - ターボ式、水潤滑式、レシプロ式の構造。技術講座もあり。
- 田邊空気機械製作所 - 高圧コンプレッサ。金属部品洗浄機も歴史あり
- 川崎重工業 空力機械 - ブロワ、多段遠心圧縮機、天然ガス圧送設備
- 日本エマソン株式会社 エマソン・クライメイト・テクノロジーズ事業部 - 空調・冷凍用スクロール式コンプレッサー
- Orwak Tomra Compaction株式会社 - スウェーデン製オレンジのゴミ圧縮減容機(オーワック)