運動エネルギー
テンプレート:古典力学 運動エネルギー(うんどうエネルギー、テンプレート:Lang-en)は、物体の運動に伴うエネルギーである。物体の速度を変化させる際に必要な仕事である。英語の テンプレート:En は、「運動」を意味するギリシア語の テンプレート:Polytonic(kinesis)に由来する。この用語は1850年頃ウィリアム・トムソンによって初めて用いられた。
歴史
後述する一般的説明がなされる以前にも、ガリレオ・ガリレイによって、物体の振り子運動の観察により、
- <math>2gh = v^2</math>
という関係が発見されていた。ここでv は物体の速さ、h は物体の基準点からの高さ、g 重力加速度である。
質点の運動エネルギー
ニュートン力学において、物体の運動エネルギーは、物体の質量と速さの二乗に比例する。 つまり、速度 v で運動する質量 m の物体の運動エネルギー K は テンプレート:Indent で与えられる[注 1]。
ニュートンの運動方程式が テンプレート:Indent{dt} = \boldsymbol{F}(t)</math> }} と表されているとき、この力 F が時刻 t0 から t1 の間に為す仕事 <math>W_{t_0\to t_1} </math> は テンプレート:Indent{dt} \right) dt \\
&= \int_{t_0}^{t_1} \left( m\frac{d\boldsymbol{v}}{dt} \cdot \boldsymbol{v}(t) \right) dt \\ &= \int_{t_0}^{t_1} \frac{d}{dt}\left( \frac{1}{2}m \boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{v} \right) dt \\ &= \int_{t_0}^{t_1} \frac{dK}{dt}\, dt \\ &= K(t_1) -K(t_0)
\end{align} </math> }} となる。 従って、物体の運動エネルギーの変化量は、その物体に加えられた仕事に等しい。
特に物体に一定の力 F が加えられ、物体の位置が <math> \boldsymbol{x} </math> から <math>\boldsymbol{x}+\Delta \boldsymbol{x}</math> まで、<math>\Delta \boldsymbol{x}</math> だけ変化したとき、
- <math>\frac{1}{2}mv^2(t_1) - \frac{1}{2}mv^2(t_0)
= \boldsymbol{F}\cdot\Delta\boldsymbol{x}</math>
という等式が成り立つ。例えば物体が地表付近で自由落下する場合、重力加速度は一定と見なせるので、上記の等式が利用できる。 また、力F を物体の質量m と加速度 α の積で置き換えれば、等式は物体の質量に依存しない形に書き直される。
- <math>v^2(t_1) - v^2(t_0)
= 2\boldsymbol{\alpha}\cdot\Delta\boldsymbol{x}.</math>
回転運動の運動エネルギー
同様に回転運動をする物体の運動エネルギーは、慣性モーメント I と角速度 ω の2乗に比例する。であるから
- <math>K = \frac{1}{2}I \omega^2</math>
解析力学における運動エネルギー
ラグランジュ力学の出発点となるラグランジアン L は運動エネルギー K とポテンシャルエネルギー V の差として定義することができる。
- <math>L(q,\dot{q};t)=K(\dot{q})-V(q)</math>
この際、ラグランジアンの変数は一般化座標 <math>q(t)</math> とその時間微分 <math>\dot{q}(t)</math>、及び時刻 <math>t</math> である。 多くの場合、一般化座標として位置 <math>x</math> や 回転角 <math>\theta</math> とするので、運動エネルギーは
- <math>K=\sum_i \frac{1}{2}m_iv_i^2+\sum_j \frac{1}{2}I_i\omega_j^2</math>
となる。
ハミルトン力学の出発点となるハミルトニアンH はラグランジアンのルジャンドル変換から、
- <math>H(q,p;t)=\sum p\dot{q}-L</math>
として定義される。ハミルトニアンの変数は一般化座標 <math>q(t)</math> と一般化運動量 <math>p(t)</math> である。元のラグランジアンでポテンシャルが <math>\dot{q}(t)</math> に依存せず、運動エネルギーが上の形をしていれば、
- <math>p_i(t)=\frac{\partial L}{\partial v_i}=m_iv_i</math>
- <math>l_j(t)=\frac{\partial L}{\partial \omega_j}=I_j\omega_j</math>
( l は回転角度 θ に共役な角運動量)となり、運動エネルギーは
- <math>K=\sum_i\frac{1}{2m_i}p_i^2+\sum_j\frac{1}{2I_j}l_j^2</math>
となる。
脚注
- ↑ v は速度 v の大きさを表す。
参考文献
関連項目
- 位置エネルギーは、重力などのポテンシャルエネルギーによって発生する運動エネルギーが潜在している状態であるともいえる。